無能の瞳 その者は世界の共犯者〜魔力なしで無能と蔑まれ、他力本願の力に依存する。【憑依召喚】で体を乗っ取られて、もうすぐ俺が最強だ〜

一章

第15話：闇への道標: 未知なる明日への誓い（3/4）

『赤』が独り言をつぶやいた。「どの口で手を出すなと……。まあいい。さらばだ」

　彼もまた、瞬く間に姿を消した。

『風』と『土』が『白』に別れを告げた後、彼らもまた静かにその場を去った。

　残されたのは、静寂と空間だけ。そして、彼らが持っていた映像装置からは、レンの姿が静かに消え去った。

　残された『目』担当、右目と左目の二人が、静かにその日のかたずけを開始した。見た目はまだ十代の少年と少女だが、その行動はいつも通り確実である。

「『色つき』の人々は皆帰ったな。今日の役目もここまでか」と右目が言う。その声には、日々のルーチンに対する慣れと安堵が込められていた。

　しかし、この日は何かが違った。「あれ？　少し待って……何か変だよ？」と、左目が不思議そうに口にする。彼女の声には、いつもと異なる何かを察知した緊張と警戒が滲み出ていた。

「ん？」と右目が返す中、二人の目に映し出されたのは、直視してくるレンの姿だった。その瞬間、視界は暗転し、二人は混乱に陥る。

「え？　まさか！　ウッ！　ウワー！」と、突然叫びだし、右目は消えてしまった。

「何？　一体何が起きているの？　もしかして！　キャー！」と左目もまた、声を上げると同時に消滅した。そして、部屋にはもう誰もいない――。

　
　時を少し遡り、レンとルナは、何か今までとは異なる違和感があった。突然、視界が赤く染まると、深淵の瞳を発動。全てが予期せぬ出来事だった。

「なんだこれは……どうなっているんだ？」レンの口調には、戸惑いと好奇心が混在していた。

「紅目だよ？　レン、どうしたの？」ルナの声には、無邪気な疑問が込められていた。

　レンは、目を凝らし、突如現れた二人の姿を見つめながら言った。「あの方向からの視線を感じて、力を入れたら、人が二人見えて……一瞬で消え去ったんだ。全く理解できん」

「もしかすると遠見の投影魔法の術者かもしれないね。それで、術者の一部がここに来たってこと？」ルナは推測する。


　視界が赤く染まる中、見ず知らずの二人の直前の記憶を垣間見る。そして「なるほど。そういうことか……」とレンは理解を示した。

　この謎解きの過程を通じて、レンは『色つき』の人々や各教団の存在、さらには『八啓』や『十一人の勇者』、『四騎士』といった重要な情報を少しずつ掴み始める。そして、それが今後の大きな鍵となることを悟る。

　この一連の出来事から、レンは自分たちがこれまで知らなかった力や組織、さらには世界の深淵に触れたことを感じ取った。それらの知識が、これからの旅にどのように役立つのか、レンにはまだはっきりとは見えなかったが、確かな手掛かりを得たことは疑いようのない事実だった。

　月詠がその場に現れた時、彼女の存在はすべての答えを知っているかのように感じられた。彼女の鷹揚な態度と上から目線のセリフは、彼女が持つ神秘的な力の大きさを物語っていた。

「すべてを見通す深淵の瞳……『今』教えられるのはそれぐらいじゃ」と月詠は意味深な笑みを浮かべながら言った。彼女の声には、無限の知識と慈悲が込められており、レンに対する深い愛情を感じさせた。

　レンはその言葉の重みを理解しながらも、何故今すぐ全てを知ることができないのかという疑問を抱えつつ、月詠の『今』と言う言葉を受け入れた。「次の機会を楽しみにするよ」と、レンは期待に満ちた声で応えた。

　月詠は、その返答に満足したように微笑んだ。「物分かりが良い殿方は好感が持てるぞ」と、彼女は優しく言い、その言葉にはレンへの深い信頼と尊敬が込められていた。