異世界転生してBL漫画描いてたら幼馴染に迫られた

はちも

文字の大きさ
9 / 14

9話

しおりを挟む
誰に起こされるでもなく、自然に目が開いた。
ほとんど眠っていた脳味噌の、少しだけ起きていた部分で、ノーバートがベッドに運んでくれたことを覚えている。
毛布を掛けてくれて、おでこと唇にキスしていったことも。

だからこそ、枕元に当の本人がいないことにがっかりしてしまった。

……ん?がっかり……?

左手でおでこを、右手で口元を覆う。
首から上が、耳の先まで激熱。

わー、まじかー。
絆されてるじゃん、僕。

寝返りを打って、枕に顔を沈める。
頭を抱えて叫ぶ声は、思った通り枕に吸い込まれた。

もそもそと起き出して、服を着替える。
時計を見ると昼を過ぎたばかりだ。
しっかりと寝たから頭はスッキリとしている。

ベッドで一通り悶えたけど、目が覚めてノーバートがいなくてよかった、ということにしておく。
出会い頭にキスして来た男が、絆された僕を見て何もしないとは思えないからな。

それにまだ、絆された程度なんだから。

作業机の原稿を見ると、きちんと整えられていた。
オールエロシーンな画面が、伏せられている。

多分読まれた。
読まないわけはないよな。

伏せられてるってことは、ドン引きされたかもしれない。
前読まれたのも今回のも、よりによって濃厚なエロシーンだ。
もしかしたら、感情が反転したまであるかも。
……愛想尽かされてないといいなあ。

ノーバートが部屋に来る気配はない。
お腹も空いたし、僕が部屋から出ることにする。
そろそろお茶の時間だから、サロン辺りに誰かいるだろう。

部屋で待つのも他で待つのも変わらない。
約束したお茶の準備もしなきゃだし。

どうやっても、会話はするべきだし。

両手で頬っぺたを軽く叩いて、気持ちと表情を引き締める。

原稿に重しを乗せて窓を開けると、僕は部屋を後にした。

廊下を歩いて階段を降りると、サロンとは逆方向から、にぎやかな話し声が聞こえてきた。

開け放たれている扉からそっとパルロワール応接室の中を窺う。

ソファセットの手前側に座っているのは、僕と同じ金髪の二人。
奥側に座っているのは、黒髪の二人だ。

兄二人とノーバート。
それからもう一人は――。

「リィ!久しぶりだね」

僕を見つけて立ち上がったのは、黒髪の内ノーバートではない方。

「王子……?」

思ってもいない人の登場に、僕の喉から掠れた声が漏れる。

アルバート第一王子。
子供の頃から僕を「リィ」と呼ぶ、唯一の人だ。

王子は、びっくりして固まっている僕のところに来て、思い切り抱きしめてきた。

僕には見えない王子の体の向こうで、ガタンっと大きな音がする。

「落ち着いてください、ノーバート様。
いつものことでしょう」

長兄ユリウスが諫めるような声を上げ、次兄セシルはクスクスと笑い出す。

ユリウス兄の声からちょっと間を置いて、ドスンと音がした。

見上げると、いたずらそうな笑顔で王子が僕を見下ろしていた。
たまにノーバートをからかってるの、まだやってるんだ?
子供の頃から変わらないな。

このハグはノーバートを煽ってるんだろうな。
意図はよくわからないけど、ノーバートの反応から考えて、多分気持ちわかっててやってる。

――たぶんね。

僕は王子の腕から抜け出て、兄二人が座るソファへと向かう。

ノーバートの顔が険呑すぎる。
自分が仕えて、護衛してる人に向ける顔じゃないよ。

兄二人が僕の座る場所を開けてくれたので、二人の間に腰を下ろす。
王子も自分の席に戻り、隣のノーバートを気にするでもなく、優雅にお茶を飲む。

「ていうか王子、なんでここにいらしているんですか?」

最大の疑問を、僕はようやく口にできた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精

英雄の溺愛と執着

AzureHaru
BL
転生した世界は前世でどハマりしたBLゲーム。最推しは攻略対象!ではなく、攻略対象達の剣術の師匠である、英雄の将軍閣下。メチャクチャイケオジでドストライクだった主人公はこのイケオジみたさにゲームをやっていた。その為に、ゲームの内容など微塵も覚えていなかった。 転生したからには将軍閣下を生でみないとというファン根性で付きまとう。 付き纏われていることに気づいていた将軍だか、自分に向けられる視線が他とは違う純粋な好意しかなかったため、戸惑いながらも心地よく感じていた。 あの時までは‥。 主人公は気づいていなかったが、自分達にかけらも興味を持たないことに攻略対象者達は興味をそそられ、次第に執着していく。そのことにいち早く気づいたのは剣術指南役の将軍のみ。将軍はその光景をみて、自分の中に徐々に独占欲が芽生えていくのを感じた。 そして戸惑う、自分と主人公は親子ほどに歳が離れているのにこの感情はなんなのだと。 そして、将軍が自分の気持ちを認めた時、壮絶な溺愛、執着がはじまる。

婚約者の前で奪われる!?王太子が僕の番だった夜

BL
僕は辺境伯家の嫡男レオン・グレイスフィールド。 婚約者・隣国カリスト王国の辺境伯家、リリアナの社交界デビューに付き添うため、隣国の王都に足を踏み入れた。 しかし、王家の祝賀の列に並んだその瞬間、僕の運命は思わぬ方向へ。 王族として番に敏感な王太子が、僕を一目で見抜き、容赦なく迫ってくる。 転生者で、元女子大生の僕にはまだ理解できない感覚。 リリアナの隣にいるはずなのに、僕は気づけば王太子殿下に手を握られて…… 婚約者の目の前で、運命の番に奪われる夜。 仕事の関係上、あまり創作活動ができず、1話1話が短くなっています。 2日に1話ぐらいのペースで更新できたらいいなと思っています。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

推し変したら婚約者の様子がおかしくなりました。ついでに周りの様子もおかしくなりました。

オルロ
BL
ゲームの世界に転生したコルシャ。 ある日、推しを見て前世の記憶を取り戻したコルシャは、すっかり推しを追うのに夢中になってしまう。すると、ずっと冷たかった婚約者の様子が可笑しくなってきて、そして何故か周りの様子も?! 主人公総愛されで進んでいきます。それでも大丈夫という方はお読みください。

異世界で孵化したので全力で推しを守ります

のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着最強×人外美人BL

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

処理中です...