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9話
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誰に起こされるでもなく、自然に目が開いた。
ほとんど眠っていた脳味噌の、少しだけ起きていた部分で、ノーバートがベッドに運んでくれたことを覚えている。
毛布を掛けてくれて、おでこと唇にキスしていったことも。
だからこそ、枕元に当の本人がいないことにがっかりしてしまった。
……ん?がっかり……?
左手でおでこを、右手で口元を覆う。
首から上が、耳の先まで激熱。
わー、まじかー。
絆されてるじゃん、僕。
寝返りを打って、枕に顔を沈める。
頭を抱えて叫ぶ声は、思った通り枕に吸い込まれた。
もそもそと起き出して、服を着替える。
時計を見ると昼を過ぎたばかりだ。
しっかりと寝たから頭はスッキリとしている。
ベッドで一通り悶えたけど、目が覚めてノーバートがいなくてよかった、ということにしておく。
出会い頭にキスして来た男が、絆された僕を見て何もしないとは思えないからな。
それにまだ、絆された程度なんだから。
作業机の原稿を見ると、きちんと整えられていた。
オールエロシーンな画面が、伏せられている。
多分読まれた。
読まないわけはないよな。
伏せられてるってことは、ドン引きされたかもしれない。
前読まれたのも今回のも、よりによって濃厚なエロシーンだ。
もしかしたら、感情が反転したまであるかも。
……愛想尽かされてないといいなあ。
ノーバートが部屋に来る気配はない。
お腹も空いたし、僕が部屋から出ることにする。
そろそろお茶の時間だから、サロン辺りに誰かいるだろう。
部屋で待つのも他で待つのも変わらない。
約束したお茶の準備もしなきゃだし。
どうやっても、会話はするべきだし。
両手で頬っぺたを軽く叩いて、気持ちと表情を引き締める。
原稿に重しを乗せて窓を開けると、僕は部屋を後にした。
廊下を歩いて階段を降りると、サロンとは逆方向から、にぎやかな話し声が聞こえてきた。
開け放たれている扉からそっとパルロワールの中を窺う。
ソファセットの手前側に座っているのは、僕と同じ金髪の二人。
奥側に座っているのは、黒髪の二人だ。
兄二人とノーバート。
それからもう一人は――。
「リィ!久しぶりだね」
僕を見つけて立ち上がったのは、黒髪の内ノーバートではない方。
「王子……?」
思ってもいない人の登場に、僕の喉から掠れた声が漏れる。
アルバート第一王子。
子供の頃から僕を「リィ」と呼ぶ、唯一の人だ。
王子は、びっくりして固まっている僕のところに来て、思い切り抱きしめてきた。
僕には見えない王子の体の向こうで、ガタンっと大きな音がする。
「落ち着いてください、ノーバート様。
いつものことでしょう」
長兄ユリウスが諫めるような声を上げ、次兄セシルはクスクスと笑い出す。
ユリウス兄の声からちょっと間を置いて、ドスンと音がした。
見上げると、いたずらそうな笑顔で王子が僕を見下ろしていた。
たまにノーバートをからかってるの、まだやってるんだ?
子供の頃から変わらないな。
このハグはノーバートを煽ってるんだろうな。
意図はよくわからないけど、ノーバートの反応から考えて、多分気持ちわかっててやってる。
――たぶんね。
僕は王子の腕から抜け出て、兄二人が座るソファへと向かう。
ノーバートの顔が険呑すぎる。
自分が仕えて、護衛してる人に向ける顔じゃないよ。
兄二人が僕の座る場所を開けてくれたので、二人の間に腰を下ろす。
王子も自分の席に戻り、隣のノーバートを気にするでもなく、優雅にお茶を飲む。
「ていうか王子、なんでここにいらしているんですか?」
最大の疑問を、僕はようやく口にできた。
ほとんど眠っていた脳味噌の、少しだけ起きていた部分で、ノーバートがベッドに運んでくれたことを覚えている。
毛布を掛けてくれて、おでこと唇にキスしていったことも。
だからこそ、枕元に当の本人がいないことにがっかりしてしまった。
……ん?がっかり……?
左手でおでこを、右手で口元を覆う。
首から上が、耳の先まで激熱。
わー、まじかー。
絆されてるじゃん、僕。
寝返りを打って、枕に顔を沈める。
頭を抱えて叫ぶ声は、思った通り枕に吸い込まれた。
もそもそと起き出して、服を着替える。
時計を見ると昼を過ぎたばかりだ。
しっかりと寝たから頭はスッキリとしている。
ベッドで一通り悶えたけど、目が覚めてノーバートがいなくてよかった、ということにしておく。
出会い頭にキスして来た男が、絆された僕を見て何もしないとは思えないからな。
それにまだ、絆された程度なんだから。
作業机の原稿を見ると、きちんと整えられていた。
オールエロシーンな画面が、伏せられている。
多分読まれた。
読まないわけはないよな。
伏せられてるってことは、ドン引きされたかもしれない。
前読まれたのも今回のも、よりによって濃厚なエロシーンだ。
もしかしたら、感情が反転したまであるかも。
……愛想尽かされてないといいなあ。
ノーバートが部屋に来る気配はない。
お腹も空いたし、僕が部屋から出ることにする。
そろそろお茶の時間だから、サロン辺りに誰かいるだろう。
部屋で待つのも他で待つのも変わらない。
約束したお茶の準備もしなきゃだし。
どうやっても、会話はするべきだし。
両手で頬っぺたを軽く叩いて、気持ちと表情を引き締める。
原稿に重しを乗せて窓を開けると、僕は部屋を後にした。
廊下を歩いて階段を降りると、サロンとは逆方向から、にぎやかな話し声が聞こえてきた。
開け放たれている扉からそっとパルロワールの中を窺う。
ソファセットの手前側に座っているのは、僕と同じ金髪の二人。
奥側に座っているのは、黒髪の二人だ。
兄二人とノーバート。
それからもう一人は――。
「リィ!久しぶりだね」
僕を見つけて立ち上がったのは、黒髪の内ノーバートではない方。
「王子……?」
思ってもいない人の登場に、僕の喉から掠れた声が漏れる。
アルバート第一王子。
子供の頃から僕を「リィ」と呼ぶ、唯一の人だ。
王子は、びっくりして固まっている僕のところに来て、思い切り抱きしめてきた。
僕には見えない王子の体の向こうで、ガタンっと大きな音がする。
「落ち着いてください、ノーバート様。
いつものことでしょう」
長兄ユリウスが諫めるような声を上げ、次兄セシルはクスクスと笑い出す。
ユリウス兄の声からちょっと間を置いて、ドスンと音がした。
見上げると、いたずらそうな笑顔で王子が僕を見下ろしていた。
たまにノーバートをからかってるの、まだやってるんだ?
子供の頃から変わらないな。
このハグはノーバートを煽ってるんだろうな。
意図はよくわからないけど、ノーバートの反応から考えて、多分気持ちわかっててやってる。
――たぶんね。
僕は王子の腕から抜け出て、兄二人が座るソファへと向かう。
ノーバートの顔が険呑すぎる。
自分が仕えて、護衛してる人に向ける顔じゃないよ。
兄二人が僕の座る場所を開けてくれたので、二人の間に腰を下ろす。
王子も自分の席に戻り、隣のノーバートを気にするでもなく、優雅にお茶を飲む。
「ていうか王子、なんでここにいらしているんですか?」
最大の疑問を、僕はようやく口にできた。
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