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16話
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街道は景色が単調で、僕はぼーっと窓の外を流れる景色と雲を眺めている。
領を出てからもう二日。
そろそろ王都が近くなってきた。
あともう一泊で、旅も終わる。
天災みたいなノーバートの襲来。
不意打ちの王子の来訪。
あれよあれよと退路を絶たれて、今こうして長兄と馬車に乗っている。
珍客達はその日のうちに、ジルバー領を発った。
せっかく出来た恋人との別れは、そんなに辛くはなかった。
まあ流されて絆されて、盛り上がりきる前に、現実が追いかけてきたからな。
ノーバートは僕と離れたくなさそうだったけどね。
これが気持ちの差だよな。
あいつ次第で育つだろうから、そこはそれ。
急転直下で忙しくなったから、存在すら忘れかけたくらいだもん。
急な引越しで、荷造りにてんやわんやして。
懇意にしていた工房や工場、お店に挨拶をして。
今の収入源にも新しい道筋つけて。
原稿も描いたもの全部は持っていけないから整理して。
描きかけのバートとエリスの話はとりあえず荷物に入れて。
飛ぶようにひと月が過ぎて行った。
いつまでに来いとは言われてなかったけど、早いほうがいいだろうとなって、そこを目処にした。
セシル兄は王子の視察旅の帰路に合流して、先に王都に行った。
そんなに荷物はないからだって。
ユリウス兄は業務の引き継ぎもあったみたいで、僕と一緒に行ってくれることになった。
両親とも今回の話は、両手を上げて大賛成だった。
うちの財布ごと差し出すようなものなのに、それは投資だってさ。
息子三人分、返ってくる利益は確かに計り知れないだろう。
長男が財務官として上層に食い込めば。
次男が王宮騎士としてそれなりの地位に上がれば。
三男が王子付きの侍従からのし上がれば。
確かにうちは美味しいな。
……美味しいけどもさあ。
「エリアス、聞いているか?」
脳内で恨み節を吐き散らかしていたら、ユリウス兄に肩を揺さぶられた。
「へ?」
「聞いていなかったな。頭の中にまで閉じ籠もるのはやめなさいと言っているだろう?」
わしわしと頭を撫でられる。
……撫でるというより、頭ごとぐるぐるされてるな、これ。
「酔う……酔うから……。
ユリにぃごめんなさい、ちゃんと聞くからやめてえ」
「王都に着いたら、私はうちの王都邸に行くが、お前は王城に行きなさい。住むのはそちらだ」
……は?
「侍従たるもの、仕える主の近くに居なければならない。わかるな」
「え、でも僕は通いでもいいって……」
「アルバート殿下がお心変わりされたのだろう」
やだ!やだやだ!!
じゃあいつ原稿描けるんだよ!
約束と違うじゃん!!
「その旨はこちらからも申し上げたんだが、その辺は十分に配慮してくださるそうだ。
安心して来るように、との仰せだった」
駄々こねてたのが声に出てたみたいだ。
ユリウス兄は頭に置いたままの手を、優しく動かして、僕の乱れた髪を梳いてくれた。
まあ乱したのもユリウス兄だけど。
王子の指示じゃ断りようもないよな。
諦めるようにため息をつく。
「そんな悲観的な顔をするな。朗報もある。
護衛騎士のノーバート様と、隣室か同室か選べるようだぞ」
言いながらユリウス兄は苦笑いした。
「……それは朗報でもなんでもないよ」
ノーバートと一緒じゃ落ち着かないし、なにより原稿の時間が確保出来ないじゃないか。
隣の部屋にしたら、ノーバートがしょんもりしそうだし、入り浸られて結果は変わらない気がするし。
さらに悲観した顔にでもなったみたいで、ユリウス兄は僕の表情が落ち着くまで、さらさらと髪を、頭を撫でてくれた。
領を出てからもう二日。
そろそろ王都が近くなってきた。
あともう一泊で、旅も終わる。
天災みたいなノーバートの襲来。
不意打ちの王子の来訪。
あれよあれよと退路を絶たれて、今こうして長兄と馬車に乗っている。
珍客達はその日のうちに、ジルバー領を発った。
せっかく出来た恋人との別れは、そんなに辛くはなかった。
まあ流されて絆されて、盛り上がりきる前に、現実が追いかけてきたからな。
ノーバートは僕と離れたくなさそうだったけどね。
これが気持ちの差だよな。
あいつ次第で育つだろうから、そこはそれ。
急転直下で忙しくなったから、存在すら忘れかけたくらいだもん。
急な引越しで、荷造りにてんやわんやして。
懇意にしていた工房や工場、お店に挨拶をして。
今の収入源にも新しい道筋つけて。
原稿も描いたもの全部は持っていけないから整理して。
描きかけのバートとエリスの話はとりあえず荷物に入れて。
飛ぶようにひと月が過ぎて行った。
いつまでに来いとは言われてなかったけど、早いほうがいいだろうとなって、そこを目処にした。
セシル兄は王子の視察旅の帰路に合流して、先に王都に行った。
そんなに荷物はないからだって。
ユリウス兄は業務の引き継ぎもあったみたいで、僕と一緒に行ってくれることになった。
両親とも今回の話は、両手を上げて大賛成だった。
うちの財布ごと差し出すようなものなのに、それは投資だってさ。
息子三人分、返ってくる利益は確かに計り知れないだろう。
長男が財務官として上層に食い込めば。
次男が王宮騎士としてそれなりの地位に上がれば。
三男が王子付きの侍従からのし上がれば。
確かにうちは美味しいな。
……美味しいけどもさあ。
「エリアス、聞いているか?」
脳内で恨み節を吐き散らかしていたら、ユリウス兄に肩を揺さぶられた。
「へ?」
「聞いていなかったな。頭の中にまで閉じ籠もるのはやめなさいと言っているだろう?」
わしわしと頭を撫でられる。
……撫でるというより、頭ごとぐるぐるされてるな、これ。
「酔う……酔うから……。
ユリにぃごめんなさい、ちゃんと聞くからやめてえ」
「王都に着いたら、私はうちの王都邸に行くが、お前は王城に行きなさい。住むのはそちらだ」
……は?
「侍従たるもの、仕える主の近くに居なければならない。わかるな」
「え、でも僕は通いでもいいって……」
「アルバート殿下がお心変わりされたのだろう」
やだ!やだやだ!!
じゃあいつ原稿描けるんだよ!
約束と違うじゃん!!
「その旨はこちらからも申し上げたんだが、その辺は十分に配慮してくださるそうだ。
安心して来るように、との仰せだった」
駄々こねてたのが声に出てたみたいだ。
ユリウス兄は頭に置いたままの手を、優しく動かして、僕の乱れた髪を梳いてくれた。
まあ乱したのもユリウス兄だけど。
王子の指示じゃ断りようもないよな。
諦めるようにため息をつく。
「そんな悲観的な顔をするな。朗報もある。
護衛騎士のノーバート様と、隣室か同室か選べるようだぞ」
言いながらユリウス兄は苦笑いした。
「……それは朗報でもなんでもないよ」
ノーバートと一緒じゃ落ち着かないし、なにより原稿の時間が確保出来ないじゃないか。
隣の部屋にしたら、ノーバートがしょんもりしそうだし、入り浸られて結果は変わらない気がするし。
さらに悲観した顔にでもなったみたいで、ユリウス兄は僕の表情が落ち着くまで、さらさらと髪を、頭を撫でてくれた。
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