月光の道標

笹井ひなか

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序章

とある国の物語

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昔々、小さな国がありました。王様はとても優しく国を、民を愛していました。

貧民街の者に煙突掃除など仕事を与え、鉱山で採れた鉱石を使用した細工を売り。

子供達が着飾って花冠をつけ後方に職人たちが楽器を演奏し街を練り歩く祭りにも顔を出す。

民から愛された王様がいました。




ですが幸せは終わる物。鉱山を狙った隣国に攻撃を宣言されました。

「鉱山と私の国は隣接している!私達にも鉱山の所有権があるはずだ!!独占していいはずがない!」

王様は悩みました。闘わずに済むならそうしたい。隣国の言葉を聞く必要はない。ここで舐められたら終わりだと王様は考えました。

徹底的に民を、国を、資源を護らなければ。





王様は貴族に隣国からのスパイがいるとわかると広場に首だけ並べ、隣国の兵士も無惨な方法で殺しました。生きたまま苦痛を浴び続けたものもいます。そんな変わり果てた王様に民は混乱して怯えています。


いつの間にか血まみれ国王と呼ばれ、民たちは恐怖に怯えました。臣下たちも王様の側から離れてしまいます。


隣国が敗戦しても手を緩めることはありません。隣国から来るものは生きたまま磔にされ後に殺害されました。いつしか隣国はこの国に関わることはなくなり、むしろ隣国であることに恐れるようになりました。



そしてついに神の怒りを買うのでした。


『何が国王だ。血でしか解決できない哀れな仔山羊よ。多少は目を瞑ったが限度を超えたのはお前だ。そんなに血に溺れたいなら血の奴隷として生きるがいい!愛する民がどんどん生を終える様を見続け孤独に生きるがいい!』



神の怒りによって国王は吸血鬼にされてしまいました。




それから20年が立ち王様は憔悴していました。


「何がいけなかったんだ…私はただ国を守りたかった…」


「優しいからこそ限度を超えてしまったのだと思います」

背後にいたのは一人の青年でした。隣国との闘いで失ったはずの臣下の1人。

「私はかつてあなたの臣下にいたアランの息子、アレクといいます。国王様、私にあなたのお世話をさせてください」


「嫌だ…嫌だ…お前も私をおいていくのか!?」

「そんなことありません!」

たった1人城に残され民に会うことに怯えていた王様を抑えます。

「嫌だ……嫌だ…!!」

王様が城を飛び出してしまいました。アレクは慌てて後を追います。


王様は20年ぶりに街に降りました。晴天の中王様は広場へ走りました。国民が恐怖の目で見ている。それでも王様は確実に変わらないことに気づき晴れやかな顔で言いました。

「私は……やっぱりこの国が好きだ……この国に生きるものを愛している…すまなかった!私は愚かだった!!すまなかった!」

小さな子供が王様に近づこうとした瞬間、王様は灰になって消えてしまいました。その時に神様の声が聞こえる。

『このような結末を迎えるとは…貴様が変わりに罰を受けるか?』

「……はい。私は王様の正しい歴史を伝えなければいけないので」

王様にかけられた呪いがアレクに移ります。アレクは日差しがキツくなり日陰に逃げました。


自分が吸血鬼になったことに気づきました。











これはそんな不老不死になった私、半吸血鬼《ダンピール》のアレクの物語です。















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