月光の道標

一章

神に呪われること

ノーブルはすっと手を掲げると犬が走ってきた。いつか見た犬だ。

「私の眷属だよ。君を見てもらっていたんだ。私の願いを聞くに相応しいかをね」

「なぜあなたの願いを聞かなければならないんですか？」

「フフフ、もっともな話だな。ならば話をしよう。昔話だ」

ノーブルは静かに話し始めた。遠い昔の話。





ここから離れた東方の地にカグヤと呼ばれる美しい人がいた。ノーブルはその噂を聞きつけてふらりとその地日本へ向かった。その美しさから多くの人が魅了され求婚するもカグヤは無理難題を伝え求婚した人物を殺した。

「なぜだと思う？」

「なぜ？そんなこと僕にはわからないよ…」

「それは美しさしか見ない愚か者に嫌気が差したんだよ」




『皆、私の見た目しか見ないのだ…私は装飾品でしかない。自慢したいがために私を手に入れようとする…異国の青年よ、あなたの国ではどうだ？美しいものは装飾品か？』




「そう笑うカグヤは恐ろしいくらい美しかったよ。そしてカグヤは神に呪われていると明かしたんだ」

懐かしそうに悲しそうに笑うノーブル。

「カグヤは神に呪われていたがゆえに短命だった。最期には愛するものといたかったと告げた。私はカグヤが最期を迎える際に周りを騙すため月へ帰ったように見せたんだよ…カグヤは唯一愛した祖父母に看取られて最期を迎えた。20年も生きられなかった…」

ノーブルは窓の外を眺めた。そこには夜空に優しく輝く月が浮かんでいた。ノーブルは僕を見る。

「君に頼みがあるんだ。カグヤは身も心も愛せるものができれば呪いは解けると言った。神に呪われていたカグヤ。神はそんなに甘くない。だから未来でもしカグヤが現れたら、君がカグヤを愛せると思ったら救ってほしいんだ」

真剣な目で僕を見るノーブル。そこには悔しさや悲しさ様々な感情が見えた。彼は後悔しているのだろう。

「君にこんなことを頼むのは間違ってるかもしれない。しかしカグヤの言葉が神の呪いに勝てるというのを私は見届けたいんだ」