月光の道標

笹井ひなか

文字の大きさ
3 / 7
一章

来客

しおりを挟む
僕が半吸血鬼になってから数百年。その間に起こったことを言うと僕は母の死を看取った。

「あなた、ごめんなさいね」

そう言いながら僕の頬に触れる。母の記憶に僕はいない。

「大丈夫だからゆっくりお休み。愛してるよ」

「えぇ、私も」

柔らかく微笑んだ母はゆっくり目を閉じた。

そして息を引き取るのを見送った。父はどうなったのかわからない。僕は城内へ戻る。あらゆる場所を探しだが何も見つからない。

「父さん…頼むよ…何か手がかりがないか探してんだよ…」

母の死から数百年。何も見つからない。孤独に耐えられず遊び歩いたりもした。夜にしか会えない僕に彼女は不信感を抱きながらもそばにいてくれた。それでも最終的に化け物と呼ばれ皆、離れていく。仕方ない。僕は化け物なんだから。

『年老いた私を笑ってるんでしょ!?最悪ね…。あなたみたいな出会った頃から見た目も変わらない化け物にはわからないのよ!!醜い女を笑ってるんでしょ!!』

30年連れ添った彼女に言われた言葉。傷ついたのは確かだがそれ以上に彼女を傷つけた。僕の不用意な言葉で傷つけた。

それでも寂しくて誰かといたくて街に出ても時が経てば周りの人はいなくなる。

孤独が僕を苦しめる。永遠の命、不老不死そんなもの必要ない。誰かと歳を重ねることの素晴らしさも僕には不可能なんだ。


僕はずっと孤独なんだ……。




「おやおや、半吸血鬼とはいえ辛気臭いなぁ。吸血鬼の印象が悪くなるではないか?」

月明かりだけが差し込む真っ暗な城内の廊下。突然聞こえた声にあたりを見回す。小さな虫、いや無数のコウモリが人型のように集まっている。

「誰…?」

「私はノーブル。君とは違い生まれながらの吸血鬼だよ。だから君のような弱点は無いのだ。鏡にも映るし銀にも触れる。川だって超えられる。十字架なんて平気だしニンニク料理も大好きだ。臭いがキツイけどね」

コウモリがフワリと消えたかと思うと貴族のような男が現れた。長い髪をゆるく一纏めにしたシルクハットの男。手には杖を持っている。年齢は30代前後だろうか。

「始めまして。君に話があって探していたんだよ」

「どういうことですか?」

「半吸血鬼でも神に呪われたものにしか出来ない話があるんだ」

ノーブルはシルクハットを取るとゆっくり近づいてきた。改めてみると恐ろしいほど綺麗な男だった。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...