イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺

ユッキー

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好感度最底辺アイドル

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 【オーバーウェルミング】

 それは3年前に結成された男性アイドルグループで、トップアイドルーーにはまだ遠いが着実にファンの数を増やしている。その魅力はメインボーカル深山影月(みやま えいげつ)の圧倒的な歌唱力、そして漣陽太(さざなみ ようた)の限られたスペース内だというのに縦横無尽に動きながら歌う圧倒的なパフォーマンス力だ。
 因みにメンバーはもう1人いて、それが俺間桐真緒(まとう まお)だ。俺を表するなら圧倒的な平凡力だったりする。エゴサでファン達がそう呟いてるのを発見した時、膝から崩れ落ちたのは苦い記憶だ。だが言わんとしていることは理解できる。
 歌は音痴じゃないしキーも合っている、ただ記憶に残るような特徴的なものでは無い。というか深山君が異次元なだけで、漣君も普通に歌が上手いのでそんな二人と一緒に歌っているのだから俺の歌声は完全に埋もれている。
 ダンスも下手では無いが、躍動感が無く観客の目を惹きつけれない。そして運動音痴という訳ではないのによく転んでしまう。いつも漣君が難なく支えてくれてなんとかなっているが、彼の助けがなければわりと大惨事になりかねなかったりする。因みに深山君は歌以外にまったく興味が無く、曲の間本当に微動だにしない。それでもスタッフもファン達も文句を言わない。いや、言えない。彼の歌には有無を言わせない力があるのだ。

 ファンは歌の影月にダンスの陽太と口にしている。因みに邪魔者の真緒と続く。ふぐぅうう。そう、何を隠そう、俺は今や大人気アイドルグループのオーバーウェルミングの一員だというのに、アンチ>ファンなのである! そうはならんやろ……。因みに二人のサジェストが【イケメン】とか【カッコイイ】なのに対して、俺のは【邪魔】【脱退しろ】【うざい】だ。そうはならんやろ……。二人には段ボールで山ほどファンレターが届く。俺も負けないくらい手紙は届く。二人と違って10割アンチからだが。そうは(以下略)。

 ご時世的に開催していないが、握手会なぞ開こうものなら俺の列だけスカスカなのが安易に予想出来てしまう人気なのである。ふぐぅうう。シンプル泣きたい。というか泣いてる。俺のハンカチはいつも涙でべしょべしょだ。
 ファンからは完全に嫌われているが、メンバーからは――もちろん嫌われている。そりゃそうだ。完全お荷物だもん。結成された当初は俺も3人でトップアイドル目指すぞ~! と意気込んでいたが、3年も経てば流石に気づく。多分これ二人でデビューしてたら早々にトップアイドル入りしてた。というか事務所の人が陰で愚痴って居るのを何度も聞いている。実際最初は二人でデビューさせる予定だったらしいのだ。
 それが何故俺という邪魔者がカットインしたかというと、うん、その俺の父さんは大手芸能事務所シリウスの社長。で、オーバーウェルミングはシリウス所属。あとは分かるわね? うん、まぁそう。つまりはコネデビューだったりする。勿論俺にはそんなつもりはなかったが、これだけ活動を続けてきたら流石に嫌でも理解できてしまう。父さん超が付くほどの親馬鹿だから……。
 そもそも事務所に所属するのも狭き門なのだが、それも免除されてたりする。権力ってすげー! いや、ほんとこれに関しても最近ようやく知ったというか。周りからコネだのなんだの陰口叩かれてたのを、出る杭は打たれるって奴だな! とスルーしていたのだが全然違った。俺自身は1mmも出ていないので打つ場所なんて無いのである。彼らが全面的に正しかったのだ。
 
 そこまで分かってるならメンバーの為にもファンの為に脱退すれば良いのにと思うかもしれない、でも俺はオーバーウェルミングを脱退するつもりはない。
 俺は幼少時父親に連れられてドームで見た、あのキラキラしていたアイドル達のようになりたいのだ。目を逸らすことが出来なかったいっそ暴力的なまでの輝き。会場全体が熱気に包まれ、誰もが歓喜していた。数多の人を幸せにする、そんな人に俺もなりたいと思ったのだ。それがアイドル間桐真緒のオリジンで、その願いが果たされるまで諦めるつもりは無いのだ。それがどれだけ身勝手な願いだとしても。


 これはそんなアンチ>ファンの好感度底辺アイドルがやがてトップアイドルに至る物語、だったらいいなぁ。

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