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余命宣告された俺を、手酷く振ったはずの元カレ二人が手を組んで逃がしてくれません
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「『神崎蓮、ワールドカップ決勝戦で優勝点を強豪ブラジルから華麗に奪い取る』ね。あいつ相変わらず豪快なプレイをしてるな。それでこっちは『Reo、ワールドツアー大盛況で幕を閉じる。次回開催は!?』あのひよっこがワールドツアーね。出来れば現地で聞きたかったが、流石に無理か」
ベッドの上でスマホを操作して神崎蓮とReoこと一条玲央の情報を目に入れる。実はこの二人、俺——天城朔の元カレって言って一体誰が信じるだろうか。まぁ二人とも付き合ってた期間は一年も無かったけど。自分でもこんな毛色の違う世界的スター二人と付き合ってたというのが信じられない。だが彼らの活躍は誇らしい。自分の選択は間違ってなかったのだと安心できるから。
「まぁあいつらからしたら、どの面でそんなこと思うんだって感じだろうけど」
別れはどちらも俺から口にした。二人共納得するはずが無いので手酷い振り方で強引に捻じ伏せた。二人からしたら俺は黒歴史、最悪の元カレだろう。とうに忘れ去られてるかもしれない。いや、その方が良いな。こんな奴の事覚えていたって彼らの人生に何の益ももたらさない。
「さて、検診時間まで蓮の試合を見るか、玲央のコンサート映像を見るか」
イヤホンさえしてれば看護師から文句も言われまい。そう俺は今病院のベッドにいる。一年もここで過ごしているのである種古株だ。多分あと半年もすればこのちっぽけな人生にも幕が閉じるだろう。その時、誰か悔やんでくれるだろうか? 家族とは疎遠だし、入院するまで無茶をしていた人生なので友達なんて作る余裕なんて無かった。強いて挙げるとすればこの病院を手配してくれたあのオッサンくらいか? まぁでもあれは友愛や親愛なんて温かいものでなく、ただ借りを返しているだけだろうけど。ほなら誰も居ないか。まぁそれが良い。俺みたいな最低野郎はひっそりと消えるぐらいで良いのだ。
……って人が感傷に浸っているというのに今日はやけに病院内が騒がしいな? 救急病院じゃないから事故で人が搬入されたとかでもないだろうし、というかこのざわめき段々とこっちに近づいてきてないか? まぁ俺には関係な――えぇ……なんか勢いよく個室の扉開けられたんだけど。しかも一方的に見知った顔がどんどん近寄ってくるんだけど。え、え、え!? なにこれぇ~!?
「こんなとこに居やがったか朔!」
「ずっと探してたよ朔先輩」
目の前にいるのは先程までスマホ画面で目にしていた神崎蓮と一条玲央。なんだって世界的スターの二人がこんな場所に!? そりゃ片方だけでも騒ぎになるだろうに、二人そろって登場なら病院も大騒ぎだろう。とりあえず頬をつねってみるが痛みを感じる、どうやら夢では無いようだ。夢であって欲しかった。こいつらとは二度と会うつもり無かったのに。
「よう、蓮に玲央。良い未来を掴めたみたいだな」
とりあえず活躍を讃えておこうと思ったんだが、俺の一言で空気が凍った。あれぇ? 俺変なこと言ったか?
「よくもそんな事が言えたな……! こんなの最低の未来だったよ!」
怒髪天を衝くかのごとく怒り狂っている蓮。なんでなんでなんでなんでぇ!? そんな怒るようなセリフじゃないだろ!? 思わず玲央の方を見ると微笑んでる。良かったこっちは話が通じそうだ、なんて一瞬思ったが目の奥が笑ってないことに気づいてぞわりと震える。あ、こいつ蓮と同じくらい怒ってるわ。
「貴方が去ってから俺達がどんな思いで過ごしてたのか分かりますか?」
「え? 最低野郎と縁切れて最高?」
「あ?」
「は?」
「ひえっ」
なんで二人してぶちキレるんだよ!? いやいや、だって俺みたいなクソ野郎が居なくなって、お前らに相応しい人間が傍に居たんじゃないのか? そもそも俺なんて中学時代と高校時代に一年付き合っただけの存在だろ。なんでわざわざ探してこんな場所に辿り着いてんだよ。
「朔、分かってないようだから言うが、俺はお前の事を今も愛している。お前以外を愛した事なんてない!」
「俺もこの心にいるのは朔先輩だけです。貴方が居なくなってから俺の心にはずっと大きな穴が開いたままなんです」
「えぇ……お前ら俺以外に恋人作ってないの?」
「なんで嫌そうな顔をされるのか理解不能だが、そうだよお前だけだよ!」
「朔先輩以外なんて考えたこともないです」
……うーん一言言うなら重い。なんでこんなヘビー級の想い向けられてんの!? 俺そんな良い恋人じゃなかっただろ。どこにでもある普通の恋しかしてないだろ。終わり方が酷かったくらいで。……え? これが原因? でも仕方なかったんだ。俺が傍に居たら邪魔にしかならないって分かり切ってたのだから。彼らがここまで輝く存在になるのは『分かっていたから』。ただこんな展開は知らない。『視て』いない。俺は思わず右目の眼帯を外そうと手を伸ばすが、その手を玲央が抑えた。
「朔先輩、それは駄目だ」
「朔、お前未来を視ようとしたな?」
「へ!? なんのことか朔君わかんにゃ~い」
「お茶らけて濁せるなんて思ってんじゃないよな?」
「俺らにこれ以上隠し事をしないでください」
……え、これ俺の右目の事ばれてる? 今眼帯で封印している右目は未来を『視る』。望んだタイミングでも視れるが、どちらかというと一方的に遥か先の映像を脳に送り付けてくる。二人が世界的スターとして活躍する姿を俺に突きつけてきたように。高校を卒業してからこの右目の力で人助け紛いの事を沢山こなしてたから、一応隠してはいるが知る人は知っている。だからその事実に二人が辿り着くことは可能だが……この病院にまで辿り着けたということは。
「げ、あのおっさん口滑らせたな?」
「総理大臣をオッサン呼ばわりするな馬鹿」
「朔先輩それは流石に……」
「えぇ~でもオッサンはオッサン呼びで構わないって言ってるぜ? なんだかんだ10年の付き合いだし」
オッサンこと織田源蔵も、俺の右目で救った人間の一人だ。唯一の二度も救う羽目になった人間だが。一度目は10年前に選挙の応援演説中を狙われた暗殺阻止。二度目は国会議事堂の襲撃テロの阻止だったかな? まぁ二回目は俺が直接動いて阻止したんじゃなくて情報だけオッサンに渡しただけだけど。
ここ数年、誰だか分からないが周辺を探られているのは分かっていたから、情報遮断してくれるように頼んでいたのだが、何嬉々として情報を渡してるんだあの狸。
「えぇ……一応聞くけどどこまで知ってる?」
「お前が俺達の未来の為に別れた、ことくらいか?」
「それと貴方が余命半年だということですね」
「……全部ばれて~ら」
俺が墓まで持っていこうとしていた事実を、一番知られたくなかった二人に知られてしまっている。最悪だ。思わずうなだれてしまう。どうしてこんな事になってしまったのか。俺はふと始まりを思い出す。
力を手にするまで、俺は本当に平凡な少年だった。そんな俺と、当時からサッカーで活躍していた蓮との接点はクラスメートというだけだった。サッカー上手くて凄いな~くらいの感情しか抱いて無かったのだが、何故か蓮から告白された。男同士だし、人気者からの告白だし、とにかく俺はテンパった。が、告白してきた蓮も滅茶苦茶テンパっていた。お互いあわあわした後、なんだか馬鹿らしくなって二人で笑って、それで付き合う事になった。蓮曰く、一目ぼれだったらしい。
俺平凡な見た目なのに、何に惹かれたんだって戸惑ったら、カツアゲされている後輩を助けようとしてボロボロになっている姿を見てだったらしい。そんなカッコ悪いところに惚れる要素あるか? って不思議そうな俺に「カッコ良かったし、綺麗だった」と臆面もなく告げてくる蓮に、俺は内心お手上げだった。
蓮はサッカークラブに所属しているから二人で過ごせる時間はほとんどなかった。それでも俺達は幸せだった。夏祭りの夜、初めて蓮からキスされた。驚き戸惑う俺に、蓮はしてやったりって顔で笑っていて。そんな幸せの絶頂を迎えている時だった。俺の右目が急に熱を持ち、『視え』るようになったのは。
サッカー選手として世界で活躍する蓮の姿、けれどその傍に俺は居なかった。俺はずっとずっとこの関係が続くと思ってた。でも蓮はそうじゃなかった? 俺の事なんてそんなに好きじゃなかった? そんな風に考えている内にある事実に気づく。男と付き合っているなんて醜聞、世界で活躍するこいつの足を引っ張るのだと。未来の俺が彼の傍に居ない理由、それが理解できてしまった。そうしてもう一つ見た未来、それは若くして病室で一人寂しく終わりを迎える自分。それだけだったが分かってしまった。この力を得た代償なのだと。
「朔?」
右目を押さえて蹲る俺に戸惑う蓮の声が聞こえてくる。蓮は優しい、全てを話したらきっと自分の輝かしい未来なんて捨てて俺の傍にずっと居てくれるだろう。なんて、そんな悍ましい選択肢を考える自分が心底気持ち悪く思った。そんな事を思い浮かべてしまう化け物に、こんな輝いている存在は相応しくない。きっと彼にはもっと相応しい相手がいる。だから――。
「あ~つまんないの。一年近く付き合ってようやくキスかよ。おままごとじゃ無いんだからさ」
「朔? 急に何を……?」
「蓮は知らないだろうけど俺お前がサッカーの練習に励んでいる時さ、別の奴と居たんだよ。ぶっちゃけセックスもそいつと経験済み」
「……え? 朔……?」
「ピュアな蓮で遊ぶのは楽しかったけど、飽きちゃった。俺達別れようぜ?」
「あそ、び? 俺の事……遊びだったのか?」
「そうだよ? 蓮のことなんてちっとも好きじゃなかった。これぽっちも」
「嘘だ朔はそんな事をする奴じゃ……!」
「お前が俺の何を知ってるの? あはは、俺はこういう奴だよ。自分が楽しければそれで良い奴。ありがとな蓮、この一年本当に た の し か っ た よ」
「うわぁあああああああああああ!!!」
走り去った蓮を見て俺の目から汗が流れた。涙じゃない。こんな酷い事をした化け物から涙なんて流れるはずが無いから。そうして俺と蓮の関係は終わった。俺はそれ以来オッドアイの金色に変わってしまった右目に眼帯を付けるようになり、未来を『視る』のを止めた。
それから時が流れて、高校二年になった頃、図書委員だった俺は図書室によく通っている、髪が邪魔でろくに顔が見れないやぼったい後輩と過ごす時間が増えた。人嫌いで潔癖症の玲央は何故か俺の事は避けず、懐いていた。
「玲央少年はさぁ、何? お兄さんの事が好きなの?」
「っっ~!? え、あ、な!?」
ちょっとからかったつもりが玲央の可愛らしすぎる反応からガチだと判明した。自分の先がない事を知ってた俺は、やんわりと振ったのだが、何故か髪をばっさりと切ってそのイケメン顔を晒した玲央は、執念深く俺に付き纏った。完全に根負けだった。そして玲央は意外と肉食系だった。初めて訪ねた玲央の部屋で美味しく頂かれた俺は、恨みがましい目で玲央を見た。玲央は嬉しくて仕方ないと表情だけで分かる満面の笑みで笑っていた。お前そういう顔を俺以外にも見せたら人が寄って来るのに、いや今でも十分か。髪切ってから女子達が凄い勢いで食いついてきてるもんな。
「ねぇ朔先輩、俺実は趣味で曲を作ってて」
「おらおら、なに後輩の分際で先輩に隠し事してんだよ」
「わわっ!? だから今言ったじゃないですか!」
「さっさと聞かせろって」
「それはいいけど……朔先輩服着て。じゃないと俺我慢出来ない」
「えぇ……お前どんだけ……」
「俺は健全な男子高校生なだけだから!」
「はいはい……」
着替えなんて持ち合わせなかったからぶかぶかの玲央の服を着て、それを見て発情した玲央を制して曲を聴く。どうやら玲央が声を入れているようだ。そして最後まで聞いて――俺は絶望した。芸術に疎い俺でもはっきり分かった。この曲から溢れ出る圧倒的なまでの才能の暴力が。蓮との一件以来ずっとしていた右目の眼帯を外す。俺が願うよりも先に、待っていましたと言わんばかりに右目は玲央の未来を『視せた』。世界中の人間が彼の声に聞き惚れていた。言葉の壁さえ、彼の才能の前ではあまりに薄っぺらかった。ああ、何を思いあがっていたんだ。化け物が、幸せになんてなれる訳なんて無かったのに。分かっていた。俺は玲央の輝かしい未来の邪魔になると。
今別れたら玲央の才能は世間にばれずに終わってしまう。それが分かっていた俺は玲央との付き合いを続けながら、玲央に動画投稿サイトへ楽曲を投稿することを勧めた。玲央は乗り気じゃなかったが、俺が勧めるならと渋々曲を投稿した。そして一瞬でバズった。若き天才としてテレビで特集されたのを見て、もう大丈夫だと安堵した。
「玲央、別れよっか」
「は? え? ……何言って」
「お前なんかが俺の事を独占できると本気で思ってたのか? お前の伝手で人気アイドルと知り合えてよ、付き合えることになったんだわ。ありがとな玲央」
「え、嘘……嫌、嫌だ……朔先輩! 俺を捨てないで!」
「ダーメ。お前との関係はもう終わりなんだよ」
「やだっ、やだよ! 朔先輩っ! さく、せんぱっ!」
「俺が憎いか? 許せないか? 見返したいなら俺が今付き合っているアイドルより輝いてみろ。世界的アーティストにでもなってみろよ。まぁお前には無理だろうがな。じゃあな玲央。お前との時間はまぁそこそこ楽しかったよ」
高校の卒業式の際、そう言って俺は玲央に別れを告げた。ここまで馬鹿にしておけば見返してやろうと思い、音楽を止めはしないだろう。因みに玲央の伝手で本当に人気アイドルとは知り合っているが、付き合ってなどいない。冷静になって調べられたらばれてしまう嘘だが、俺に異常なほど入れ込んでいた玲央が立ち直る頃には俺は姿を消していて、今更調べようと思わないだろう。
必死にしがみつこうとする玲央を振り払って、別れてから。俺は右目の力を積極的に使うようになった。俺は蓮と玲央、二人の気持ちを滅茶苦茶にした化け物だ。けどせめて人の役に立つ化け物であろうと思ったのだ。そして9年ほどがむしゃらに走り続け、多くの人を救った。その結果身体がろくに動かなくなって入院生活を送る事になったのだが、悔いはなかった。ずっとずっと彼らの活躍は聞こえていたから。
そう怪物は病院で一人寂しく終わる筈だった。なのに何故か俺は蓮と玲央が用意した高級マンションの一室にいる。いや、ほんとなんでぇ? あの後病院で『お前が居ない未来に意味は無いんだ』的な事を二人から熱く語られたから、死にゆく者が傍にいても何の意味もねぇだろ、って返したのよ。そしたら二人共激怒してこうなった。解せぬ。
現代の医療ではどうしようもない事だから、まぁ病院じゃなくても良いのはそうなんだが。定期的に医者が往診に来てくれるみたいだし。
一年前から俺の両脚は筋肉・神経共に何の問題も無いのに動かない。半年もしない内に、心臓もそうなる未来が来る事は知っている。まぁつまりジ・エンドって奴だ。この説明を笑いながらしたら二人から怒られた。やはり解せぬ。最早笑い話やろがい!!
「朔、身体の調子はどうだ?」
「あのなぁ、一日に何回同じこと聞いてくるんだ。別に問題無いって」
「朔先輩が信用ならないから悪いんだよ」
「えぇ……」
二人は活動を休止して、俺の傍に居る。それを知ったのはメディアの情報からで、反対するには手遅れだった。泣きながら、せめて最後は傍に居させてくれて縋りつかれたら、流石に振り払えない。というかトイレに行くのすら蓮か玲央、どちらかに運んで貰わないとなので自力で逃げようがない。まぁ仮に動けても世界で活躍する二人が手を組んでなりふり構わず囲い込んでるから、俺みたいな一般人じゃ逃げられないだろうなぁ。
二人が活動休止した事は騒ぎになっているが、二人共まったく気にしている素振りを見せない。二人共俺の事が漏れていないならそれで良いらしい。多分漏れて俺の事がマスコミやSNSで叩かれたら、こいつら烈火の如く激怒するんだろうなぁ。10年以上前の初恋を引きずる二人は正直ちょっと怖い。
あと玲央は「約束通り世界的アーティストになりましたよ?」って笑ってきたが、あれ別に約束と違くない~? 俺はただ煽ったつもりだったんだが。そのやり取りを見て、蓮が俺は約束ないのにずるいって顔してた。しらんがな。忘れて欲しかったんだから約束なんてする訳ないやろがい。
「そういえば蓮って良いプレイした後、よくカメラ目線してたけど意外とちやほやされたい欲があったんだな」
「そりゃ見てもらいたかったからな、誰かさんに」
「あうふ……」
雑談のつもりが藪をつついて蛇を出してしまったらしい。え、何? ファンサとか、人気になりたいとかじゃなくてずっとモニター越しに俺を見てたの? うっわ重。
「だからなんで嫌そうな顔するんだよ。普通喜ぶだろそこは!」
「まぁまぁ、落ち着きましょうよ神崎さん」
「お、玲央が珍しく俺の味方だ」
「ちなみに俺も指定されている時以外は全部朔先輩へのラブソングしか作ってませんからね?」
「おっと? 味方のふりして背後から撃ってくるじゃん」
俺の元カレ、重量級しかいねぇのかよ。勘弁してくれ。
「ファンとかどうでもよかったし、朔先輩に届く為にだけ歌ってました」
「えぇ……ファンが可哀想」
「一条がファンのこと興味無いのはわりと有名だったろ?」
「え、蓮って玲央の事知ってたの?」
「あのなぁ、これだけ有名なアーティストを知らない訳ないだろ」
「ちなみに俺も神崎さんの活躍は見てましたよ。まぁ調査して先輩の元カレだって分かってからですが」
「えぇ……お前どんな感情で見てたの?」
「どんな感情だと思います?」
知りたくないので玲央から視線を逸らす。どうやらこれ以上追撃はしてこないようなので、ほっとする。俺、ホラーとか駄目なんだよね。ふむ、もしかして蓮もファンの事興味なかったのか?
「あのなぁ、顔に出てるから言うが俺は普通にファンに感謝してるぞ。まぁ積極的にファンサービスとかをするつもりは無いが」
「その心は?」
「めんどくさいファンが増えるから」
「あ~」
顔、いいもんな。分かる。それでいてフィールドで活躍するきりっとした姿とは違う、フランクなファンサなんて見たらそりゃ堕ちるよな。蓮が悪い。
「そんなその他大勢の事は置いておいて、朔先輩、俺と神崎さんのこと、何だと思ってるんですか?」
「え? 重たい元カレ?」
あ、なんか選択肢間違えたっぽい。部屋の空気がマイナスになった。へへっ、バナナでも凍らせそうだ。
「俺達病院で告白し直したよな?」
「……あ、あれってそういうことだったの」
「神崎さん、しばらく朔先輩をトイレに蓮れて行かないでください」
「その心は?」
「お仕置きで失禁してもらいます」
「おけ、把握」
おい、なにハイタッチしてやがる。そこで最悪な結託するんじゃないよ。28にもなってお漏らしなんて嫌だが!? 何プレイだよ!
「えぐいえぐいえぐいえぐい。なんでそんな事しようとするの!? 人の心とかないんかぁ?」
「そっくりそのまま返してやるわ馬鹿」
「朔先輩の可愛い姿を見たいだけです。あ、ちゃんとシーツは交換するんで安心してください。先輩が十分悶えた後に」
「何一つ安心できる要素が無いかな!?」
いやでも、俺みたいなゴミ屑野郎に二回目の告白をしてくるなんて思わんやん。お前らの成功よりも自分の幸せを選ぶ未来を思い描いてしまうような化け物だぞ? お前ら目か脳がおかしいんじゃね? 病院行く?
「で、返事は?」
「先輩の想いを教えてください」
「え~……」
「だからなんで嫌そうなんだよ」
「一般人に世界的スター二人からの愛は重いって」
「図太いお前なら潰れないから大丈夫だ」
何その信頼、全然嬉しくない。
「あ、ちなみにどちらか選べないからどちらも選ばないというのは無しですからね。俺と神崎さんはそこは納得済みですから」
「どういうこと?」
「二人でお前を愛するってことだ」
「あ~、え? それって三人でお付き合いするって事?」
「まぁ渋々ですが」
「しゃーないだろ。お前選べないだろうし」
「まぁ、そりゃどっちか選べって言われても無理かな。どっちも同じくらい大切だし」
散々傷つけておいて今更どの口がって感じだけど。
「別にお前が俺の事を愛してくれてるならそれで良い。……愛してくれてるんだよな?」
「う~ん、まぁどちらかというと?」
「そこは断言しろよ……」
「朔先輩絶対この10年で性格めんどくさくなってますよね?」
「あ~まぁそれは自覚ある」
二人の事を散々言っておいてなんだが、俺も別れて10年以上の恋愛を引きずってるので、色々とこじれてるのだ。う~ん、ますますこの二人に相応しくないような。
「そういう所も愛おしいから問題無いですよ」
「だな」
「えぇ……お前ら変だって」
「仮にそうだとしても元凶はお前だから責任を持て」
「う~ん、そう言われると何も言えない」
責任を負うのは好きではないが、この二人の事なら受け入れざるをえない。
「というかふと思ったんだが、俺もう一つ責任があるっぽい?」
「なんだそのふわふわした発言は」
「いやさ、蓮って俺以外に恋人作らなかったんだよな?」
「ん? ああ、そうだがそれがどう繋がるんだ?」
「お前ってまさかその顔で童貞なの?」
「ぶふっ!?」
「あっ……え、素人童貞とか?」
「お前以外を抱く訳ないだろうが!」
「えぇ……」
世界で活躍するプロサッカー選手、神崎蓮(童貞)。う~ん字面が酷い。一途に俺を想ってくれてたんだ、みたいなのより重たいって感情の方が上回る。せめて風俗くらい使えばいいのに。
「……ところで一条、お前この話題になってから急に静かになったが」
「…………いや、その……」
「こいつ性欲なんてありませーんって顔してるけど、付き合って一週間で部屋に蓮れ込んで俺の事抱いてるぞ?」
「ちょっ!? 朔さん!?」
「…………そうかそうか、一条君はそういう男だったんだな」
「いや、俺は健全な男子高校生だったんで! そんな軽蔑するような目で見ないでください! 神崎さんが付き合ってたのは中学の時ですよね? それなら……」
「でも玲央なら中学でも襲われてたって確信はあるぞ?」
「うぐっ!? け、健全な男子中学生だっただけです!」
「まぁそうだな。付き合って一年くらい経ってようやくキスしてきた蓮が奥手だったというかピュア過ぎただけか」
「結局こっちに飛び火すんのかよ!? え、朔もしかして嫌だったのか?」
デカい図体して不安そうな顔であわあわしている蓮を見て思わず笑ってしまう。俺は手でちょいちょいと蓮を引き寄せて、その頬に口付けた。
「お前と付き合っていた日々は今でも色褪せないくらい輝いてるよ」
嘘偽りない、俺の本音だ。あの日々があったから9年間無茶してこれたんだ。勿論玲央と付き合ってた日々もそうだ。だからそうやって拗ねた顔をするな。可愛いだけだぞ。俺は自分から顔を寄せてきた玲央のほっぺにも口付けた。
「まぁ、俺に責任がある事案が判明したのでするか」
「? 何をだ?」
「そりゃセックスだろ」
「ぶふっ!? な、な、何言って!?」
いい歳してセックスって単語だけでなに顔真っ赤にして照れてるんだ。中学生の頃じゃないんだぞ? まぁ今でも可愛いが。
「え、お前プラトニック派? それなら……うーんでも。どうせお前の事だから俺が死んでも誰ともそういう関係になるつもりないんだろ?」
「当然だ!」
「じゃあやっぱ、やろうぜ? 今でもアレだけど、プロサッカー選手、神崎蓮30歳(童貞)とかになるのはファンの一人として俺が嫌だ。さっさと俺で脱童貞しとけ」
「いや、おまっ。こういうのはもっと雰囲気とか!? というかお前の身体に負担が掛かるのにそんなことできるわけっ!? 助けろ一条!」
「う~ん、立場的にこの一件には俺口出しし辛いかな」
まぁ非童貞だもんな玲央は。しかも俺が筆おろししてるし。そりゃ口出しできんよ。ふぅ仕方ない、恥ずかしくて言いたくなかったが口にするか。
「蓮に俺の全てを知ってもらいたいんだけど、ダメか?」
「……そんなん言われて断れる男がいるかよちくしょう……」
「あ、でも激しいのは流石に勘弁な?」
「分かってる! 任せろ!」
「いや、童貞ってがっつくからさぁ……」
「なんだその経験の籠った呟き……あっ」
「俺は健全な男子高校生だっただけです!!」
「玲央、泣いても止めてくれなかったから……」
「いやだって泣いてる朔さん凄く可愛かったから!」
うーん、今までの会話から察するにこいつさては泣き顔フェチだな? 好きな子程泣かせたい的な。こっわ。
「ゴムもローションも準備してあるんで、さっさとしてください。これ以上俺に飛び火しても困ります」
「いや、なんでそんなもん用意してんだよ……? え、おまえまじか……」
「そういうとこだぞ玲央」
「あぁあああああ!」
墓穴を掘った玲央が頭を抱えて蹲ってる。まぁ健全な27歳(笑)だもんな。……いや、よく俺と別れてからセックス無しでやってこれたな。いや、聞いて無いけど確信がある。こいつも俺以外に誰とも関係を持ってないだろ。はぁ……元カレ――違った彼氏が重い。
「あ、そうそう。俺はろくに動けないから玲央も手伝ってくれよ?」
「別にお前ぐらい抱えれるぞ?」
「あのね、俺も10年ぶりなの。そんないきなりハードなプレイは勘弁してくれ。それにまぁ……蓮がヒートアップした時のストッパーとして居たほうが良いかなって」
「どんだけ俺は信用されてないんだ……」
「……ある意味元凶俺な気がするんで手伝うのは受け入れます。色々と複雑ですが」
「あ、玲央とはまた別日な。流石に連続は無理だ。その時は蓮がフォローしてくれ。まじで。頼む」
「……任せておけ」
「いや、ほんと大丈夫ですよ?」
「蓮、頼んだからな?」
「全く信用して貰えてない……」
病人? とセックスする気満々で準備してる奴をどう信用しろと? あと前科。
自分じゃどうにもならないので、準備諸々は二人に全力介護してもらって、さぁやるぞって段階に来て蓮はまだ雰囲気が~とかもにょもにょしてるから口にキスして黙らせた。俺の裸見てギンギンになっておきながら今更何言ってんだか。よく俺のケツほぐしている間暴発しなかったな。自分で言うのもあれだがあの時俺、思いっきり喘いでたのに。比較対象が居ないのであれだが、多分俺は感じやすいタイプだと思う。
「ほらほら、筆おろししてやるからさっさと入れやがれ」
「だから雰囲気が……」
「あ~うっせぇな。蓮、お前の体温を俺に教えて?」
「っっ~~!?」
なんか完勃ちしてやがる、ちょろいとは思ったが黙っておいた。
「挿れるぞ?」
「あぁ……」
まぁ俺も10年ぶりのセックスなので実は緊張してたり。あと玲央と違って、蓮は男との経験が無いから途中で萎えられたら怖いなとか。まぁその心配は杞憂だったのか、ゆっくりと蓮のが俺の中に挿入されていくが、それの高ぶりが衰える様子は無かった。それが嬉しくてつい笑みがこぼれてしまう。すると蓮が愛おしそうな表情で俺の頬をそっと撫でた。童貞の癖に随分余裕があるじゃないか。経験者としてリードしなくちゃと思ったが、身体を自由に動かせなくて諦めた。いーや、蓮に丸投げだ。
「朔のなかっ、すげぇ……きもちぃ……」
「ははっ、それは良かった」
良かったが……それ全部入るかな? 蓮はガタイに比例してかチンコも滅茶苦茶デカくて長かった。正直久々の俺では全部を相手できる自信が無い。
「ばーか。安心しろ。全部は挿れねぇからよ」
俺の不安を見抜いたのか、蓮が俺の頭をくしゃくしゃと撫でる。無意識に強張ってたのがほぐれたのが分かった。俺に負担が掛からない様に、ゆっくりと動かすだけ。激しく動きたいだろうに、額から汗が零れ落ちているくらい我慢しているのは伝わってきた。それでも、俺が愛おしくて仕方ないって甘い顔で俺を見つめて、口づけを交わしてくる。
「好きだ、愛してる朔」
「うん、俺も」
茶化す余裕もなく、俺も素直な気持ちで答えた。ずっとずっと、あの夏祭りの日に止まってしまった関係が進んだ。それが嬉しくて涙が零れ落ちる。
「泣くなよ朔」
「うるせぇ……」
目尻にキスを降らせてくる蓮からつい顔を背けたが、逃げるなと言わんばかりに引き戻される。緩やかで、それでいて熱烈な愛情に俺は戸惑うばかりだった。
「んっ……そこ気持ちいい」
「ここか?」
「んあっ!」
ゆっくりと、けれど的確に俺の弱点を突く蓮の所為で、俺はどんどん昂っていってしまう。そろそろ、まずいかな? なんて思って蓮を見ると、蓮も息が上がり限界のようだった。
「朔、俺もうっ……!」
「んっ、おれ、もっ……!」
少しだけ突き上げられる速度が上がる。けれど、それは俺が苦しくない程度の差でしかない。そして、蓮はイク直前に抜いてゴムの中で果てた。別に中で出して良かったのだが、というか生で良かったのだが、それは口にしなかった。また雰囲気がって言われそうだし。
「さくっ……さいこうっ、だった」
「なら、よかった」
「ずっとずっと。お前が俺の傍から居なくなっても愛しているからな」
「っ……!?」
忘れてしまえばいいのに、切り替えればいいのに。こいつは本当にずっと俺だけを想い続けてくれるんだろうな。それが今はただ、嬉しくて仕方なかった。まぁそれはそれとして。
「れ~お」
「なんですか朔先輩?」
「俺エッチだった?」
「……それ聞きます?」
「うん、聞きたい」
「滅茶苦茶エッチでした。今すぐ抱きたいくらいに」
「それは流石に無理かなぁ~」
蓮が本当に丁寧に行為を行ってくれたから、ただただ見てるだけになった玲央だったが、その下半身は熱が籠っている。俺で興奮してくれたのが嬉しくて、ついそれに頬ずりするとびくりと跳ねた。
「本番は無理だけど、手でしてやるから出して?」
「口で――」
「ぶっ飛ばすぞお前。そんな体力ねぇわ」
馬鹿言ってる玲央の頭は蓮が代わりに叩いてくれた。こつ、じゃなくてゴツンって感じでかなり痛そうだけど。蓮は痛がる玲央を放置して、俺の身体を拭きだした。蓮はゴムをしていたが、俺自身が射精で腹部を中心に色々と汚してしまっていたのだ。「辛いとこ無いか?」なんて聞きながら甲斐甲斐しく俺の世話を焼いてくれる。うーん、ほんと玲央は蓮を見習え。
俺は眼前に突き出されたその膨張した男根に手を添え、ゆっくりと扱く。そういえば付き合ってた頃も、こいつがすぐ挿れたがるから、手コキなんてした事なかったな。自分で処理するのとは感覚が違って、上手くできない。
「わりぃな下手で」
「上手かったら解釈違いです」
「そ、そうか」
本当にこいつ面倒くせぇな。まぁそういう所も可愛く思えてしまう辺り、俺も重症だ。
「さくせんぱっ……!」
慣れない行為の所為で時間は掛かってしまったが、玲央もちゃんと感じてくれているようで、昂ぶりが解き放たれそうなのが伝わってきた。ああ、このままじゃせっかく蓮が拭いてくれたのにまた汚しちゃうな。なんて考えが過ぎって、俺は上半身を浮かして玲央のを口に咥えた。
「っっ~~!?!?!? くっ……!」
自己処理をそんなにしてないのか、俺の口から溢れ出るくらいびゅるびゅると飛び出してきた精液を全部受け止めきることはできず、結局身体を汚してしまった。分かってはいたが、精液ってやっぱ不味いんだな。少し飲み込んでしまったのが喉の中でねばついてえずいてしまう。慌てた蓮がペットボトルの水を持ってきてくれ、「汚れを気にせず吐き出せ」って言ってくれたので遠慮なくベッド上に口に含んだ水を吐き出した。その間は玲央はあわあわとしているだけだった。お前他人の世話とか慣れてないもんな。
そして蓮から「二度とするな」って般若の如き顔で睨まれて、フェラは禁止になった。因みに玲央はまた頭どつかれていた。ガチのやつで。なんかごめん玲央。
それから一週間後、今度は玲央とセックスすることになったのだが、まぁ案の定? 玲央は暴走して蓮に止められていた。やっぱ頼んでおいて良かったわ。恋愛という意味ではどっちも俺にしか向いてないが、なんていうか情? というものが蓮は周囲の人間にある程度あるのに対して、玲央はまじでない。だから全部俺に向いてて暴走しやすいのかもしれない。
「好きです、あの時から変わらず、貴方だけの事を愛しています!」
「俺もだから泣くなよ馬鹿」
普段はクールで近寄りがたい人間なのに、俺にだけは感情を全力で表出する。それがとても愛おしかった。まぁこいつが抱かれたい男ナンバーワンなのは納得いかないが。世の女性は騙されてる。いや、でもこういう一面も意外と人気になるのか?
一週間前に経験してるからか、蓮ほど大きくないからか(玲央のが小さいのではなく、蓮のが規格外)負担は少ない。だからか自然と声が漏れてしまう。
「あっ、あっ……! れおっ……!」
「朔先輩の中相変わらず最高すぎっ……!」
10年ぶりだというのに玲央は俺の弱いところばかり的確に突いてくる。ずるい、俺ばかり一方的に感じている。後輩のくせに! だが他人には見せないとろけるような甘い表情で見つめられ、まぁいいかと俺は抵抗を諦めた。ちなみに今回はゴム無しだ。蓮は反対したが俺がゴリ押しした。やっぱ愛した男達の全てを知って居たかったのだ。
「ふあっ、あっ、あっ、あっ! っく、っ……イクっ!!」
「朔先輩先にイっちゃたんですか? まぁ、可愛かったので許します」
「はぁ……はぁ……おまえも、よゆうぶってないでっ、さっさとイケ!」
「ははっ、朔先輩とセックスしてるのに余裕なんてあるわけないじゃないですか。俺だって必死ですよ」
そんな風には見えないが、まぁこいつは嘘はつかないだろ。でも、なんかムカつくから――。
「俺を孕ませてくれ」
なんて耳元で囁いておいた。すると俺の中に入っているものが一際大きくなったのを感じる。玲央の目が獰猛な捕食者のそれに変わっていた。俺を食い尽くしたくて仕方ないと言わんばかりに。それでも流石に学習したのか、俺に無理がない程度の動きだった。
「さくせんぱっ! 俺もうっ……!」
「俺の願い、分かってるよな?」
「はっはっ、ちょっ反則だろこれっ! っっ~~! イクッッッッ!!」
腹の中に玲央の精液が吐き出されたのを感じる。本当に孕めたら良かったのに、なんて不毛な事を考えてしまう。それは玲央も同じだったかもしれない。玲央は俺のお腹を擦っていた。
当然のようにタオルを準備して俺の身体を拭こうとする蓮を、ちょいちょいと引き寄せる。
「俺の中、今なら蓮のも全部挿ると思うぞ?」
「おまっ、何言って!?」
「蓮は俺に中出ししたくないのか? 孕ませたくないのか?」
「……お前煽りやがって、覚悟しろよっ」
玲央が察して場所を譲り、さっきまで挿っていたものが忘れられないのか、ひくついてるそこに蓮は昂ったそれを押しあてた。どうやら俺と玲央のセックスにあてられていたようだ。相変わらず蓮は丁寧に、ゆっくりと挿入する。すこしもどかしい。一気に挿入されて蓮の形に変えて欲しい、なんて思いは恥ずかしいので絶対口にしない。
「前より挿れやすいだろ?」
「それはそうだが……色々と複雑だ」
「まぁそりゃそうか。でもそれを選んだのはお前らだろ?」
「ま、そうだな。逃すくらいなら、絶対に手に入る方を選びたかったからな」
「え?」
「悪い口が滑った」
「…………」
「今、重いって思っただろ」
「常に思ってるから安心しろ」
「ははっ、この野郎」
本当に俺の恋人達は重すぎる。まぁ俺がふわふわしてるから、それくらいの方がつり合い取れて良いのかもしれんが。
「っっ……!」
「わりぃ! 痛かったか?」
「別に大したことねぇよ。良いから全部挿れろって。お前の全部で俺を味わいやがれ!」
「はぁ……朔には勝てねぇな。残り一気に行くからな?」
「んぐっ……!」
「大丈夫か? 全部入ったぞ」
正直全然大丈夫ではない。デカすぎんだよ馬鹿。こんな奥深く、玲央だって知らねぇよ。あ、思考を読まれたのか蓮が嗤った。あ~あんまり表に出さないけど初めてを玲央に奪われてたのかなり気にしてたんだなこいつ。そんな顔されたらなんも言えなくなるだろうが。
「ふぅ……ふぅ……悪い、まだ動かないでくれ……」
「分かってる。このままでも十分気持ち良いから気にすんな」
「十分じゃヤダ」
「っっ~~! おまっ! 俺の恋人が可愛すぎる……無理、しんどい……」
「ははっ、限界オタクじゃん」
因みに俺も蓮と玲央の限界オタクだ。勿論同担拒否のな。最古参だぞ!
「お前とのセックス中は雰囲気とかは求めても無駄なんだろうな……」
「嫌いになったか?」
「なわけ、毎秒どんどん好きになっていく。朔を好きになる気持ちに限界なんてない」
「…………」
「だからなんで嫌な顔をするんだ」
いや、これ悪いの俺か? 重すぎね?
「そろそろ動くぞ?」
「ああ、大丈夫だ」
慎重にゆっくりと蓮は俺の中を蹂躙していく。本来届いてはいけない場所だから、その優しい刺激ですら脳が揺さぶられる。
「ふあっ、あっ~」
頭がおかしくなりそうになりながら、必死に意識を保つ。これ思ってたよりやばいかも。こんな奥で中出しされたら、俺どうなってしまうんだ。
「何勝手に想像だけでよだれ垂らしてるんだ。この奥で俺が射精するのを期待したのか? 朔はやらしいな?」
「ちがっ……!」
「本当に?」
「…………ちがわ、ないけど」
「そっか。じゃあ期待に応えないとな」
俺と玲央のセックス中ずっと興奮してたからなのか、初めて根元まで挿入したからなのかは分からないが、蓮はもう限界だったみたいだ。
「出すぞ……! くっ……! イクっ!」
濃厚な精液が俺の深いところで解き放たれる。その瞬間、俺は射精せずに達していた。メスイキだ。気持ちよくて仕方ないのに声も出ない。頭が真っ白だ。
「俺の子を孕めよ?」
けれど耳元で囁かれた蓮の声ははっきりと聞こえてた。
「大丈夫か朔?」
「…………大丈夫に見えるか?」
「わりぃ」
体を動かすとケツからドロリと白濁液が零れ落ちてくる。蓮と玲央、二人の混ざり合ったそれは二人から愛されてる証の様で少し誇らしかった。それはそれとしてしんどい。だるい。このまま寝たいが、風呂入らないとだよな。まぁ自分じゃどうしようもないから二人任せなんだが。
「朔先輩?」
焦ったような玲央の声が聞こえて、ふと気づく。そういえば右側の視界があるな、と。どうやらセックス中に眼帯が外れてしまったようだ。だが何も怖くない、以前の様に独りぼっちで亡くなる未来は来ない。二人に抱きしめられて、穏やかに亡くなる未来が視えるだけ。そう思った。思っていた。けれどいつまで、待っても未来は『視え』なかった。そしていつも感じていた、右目の熱が消え失せていた。
「朔、お前右目って金色に、なっているんだよな?」
「ああ、お前ら見た事ないんだっけ? そだよ」
「朔先輩、右目……黒いんだけど?」
「は?」
玲央が持ってきてくれた手鏡で確認するが、確かに右目が黒色になっている。訳が分からない。そんな俺に更に新情報が入る。
「朔、お前足動かしてないか……?」
「え?」
そう無意識だったが、俺は両脚を動かしていた。一年前から完全に動かせなくなっていたはずなのに。『視え』ない未来に、元の黒色に戻った右目、そして動くようになった両脚。そんな嘘みたいな話があるのだろうか。
「あのさ……多分未来が見えなくなった」
もう『視え』ることは無いのだと、根拠のない確信があった。そして。
「俺もう少し生きていられる、かも? 分かんないけど、ぬか喜びさせちまうかもだけど、もしかしたらまだお前らの傍に居られるかも」
「朔、それは、ほんとうか!?」
「朔先輩……!」
玲央が泣いていた。いや、玲央だけじゃない、蓮も。そして二人を見た後、頬を触ってようやく自覚したが俺自身も。未来なんて無いと思っていた。だから二人の傍から離れた。でも、未来があるなら――。
未来ってなんだ?
分からない。今までずっと右目が教えてくれていた。でももう右目は映してはくれない。それじゃあ何を頼って生きていけば良いんだ? 俺を苦しめていた異能から解放されたはずだった。なのにどうしてこんなに苦しいんだ。どうして、こんなに怖いんだ?
震える俺は左右から抱きしめられる。蓮と玲央だ。
「朔、怖がらなくて良い」
「未来は俺達が切り開くから」
いつの間にか震えは止まっていた。もう俺は未来を『視る』ことはない。けれど、隣を歩いてくれるこの二人がいるなら、俺の未来はきっと怖くない。
それから半年、定期健診やリハビリを経て、俺は一人で歩けるようにまで回復した。因みに渋る二人のケツを蹴飛ばしてさっさと活動を再開させている。色々とごたごたはあったようだが、問題無く活動できるようになったようだ。二人の事は相変わらずマスコミやネットで騒がれていたが、俺の事はついぞ触れられることは無かった。日本だけならまだしも二人の活躍は海外も含まれる。だから総理大臣が味方だからって、どうにかできる問題じゃないのではないか? と不思議に思っていたのだが。オッサン曰く「君に救われたのは私だけでは無いからね」とのことだ。自分が死んでも誰も悲しむことは無いと思っていた。でも蓮と玲央は勿論、多分もっと多くの人が俺の事を大切に思ってくれていたようだ。
「朔」
「朔先輩」
二人が手を差し伸べてくる。その手を俺は躊躇うことなくとった。
どうやら俺は、とてつもなく幸せ者らしい。未来なんて『視え』なくても。
ベッドの上でスマホを操作して神崎蓮とReoこと一条玲央の情報を目に入れる。実はこの二人、俺——天城朔の元カレって言って一体誰が信じるだろうか。まぁ二人とも付き合ってた期間は一年も無かったけど。自分でもこんな毛色の違う世界的スター二人と付き合ってたというのが信じられない。だが彼らの活躍は誇らしい。自分の選択は間違ってなかったのだと安心できるから。
「まぁあいつらからしたら、どの面でそんなこと思うんだって感じだろうけど」
別れはどちらも俺から口にした。二人共納得するはずが無いので手酷い振り方で強引に捻じ伏せた。二人からしたら俺は黒歴史、最悪の元カレだろう。とうに忘れ去られてるかもしれない。いや、その方が良いな。こんな奴の事覚えていたって彼らの人生に何の益ももたらさない。
「さて、検診時間まで蓮の試合を見るか、玲央のコンサート映像を見るか」
イヤホンさえしてれば看護師から文句も言われまい。そう俺は今病院のベッドにいる。一年もここで過ごしているのである種古株だ。多分あと半年もすればこのちっぽけな人生にも幕が閉じるだろう。その時、誰か悔やんでくれるだろうか? 家族とは疎遠だし、入院するまで無茶をしていた人生なので友達なんて作る余裕なんて無かった。強いて挙げるとすればこの病院を手配してくれたあのオッサンくらいか? まぁでもあれは友愛や親愛なんて温かいものでなく、ただ借りを返しているだけだろうけど。ほなら誰も居ないか。まぁそれが良い。俺みたいな最低野郎はひっそりと消えるぐらいで良いのだ。
……って人が感傷に浸っているというのに今日はやけに病院内が騒がしいな? 救急病院じゃないから事故で人が搬入されたとかでもないだろうし、というかこのざわめき段々とこっちに近づいてきてないか? まぁ俺には関係な――えぇ……なんか勢いよく個室の扉開けられたんだけど。しかも一方的に見知った顔がどんどん近寄ってくるんだけど。え、え、え!? なにこれぇ~!?
「こんなとこに居やがったか朔!」
「ずっと探してたよ朔先輩」
目の前にいるのは先程までスマホ画面で目にしていた神崎蓮と一条玲央。なんだって世界的スターの二人がこんな場所に!? そりゃ片方だけでも騒ぎになるだろうに、二人そろって登場なら病院も大騒ぎだろう。とりあえず頬をつねってみるが痛みを感じる、どうやら夢では無いようだ。夢であって欲しかった。こいつらとは二度と会うつもり無かったのに。
「よう、蓮に玲央。良い未来を掴めたみたいだな」
とりあえず活躍を讃えておこうと思ったんだが、俺の一言で空気が凍った。あれぇ? 俺変なこと言ったか?
「よくもそんな事が言えたな……! こんなの最低の未来だったよ!」
怒髪天を衝くかのごとく怒り狂っている蓮。なんでなんでなんでなんでぇ!? そんな怒るようなセリフじゃないだろ!? 思わず玲央の方を見ると微笑んでる。良かったこっちは話が通じそうだ、なんて一瞬思ったが目の奥が笑ってないことに気づいてぞわりと震える。あ、こいつ蓮と同じくらい怒ってるわ。
「貴方が去ってから俺達がどんな思いで過ごしてたのか分かりますか?」
「え? 最低野郎と縁切れて最高?」
「あ?」
「は?」
「ひえっ」
なんで二人してぶちキレるんだよ!? いやいや、だって俺みたいなクソ野郎が居なくなって、お前らに相応しい人間が傍に居たんじゃないのか? そもそも俺なんて中学時代と高校時代に一年付き合っただけの存在だろ。なんでわざわざ探してこんな場所に辿り着いてんだよ。
「朔、分かってないようだから言うが、俺はお前の事を今も愛している。お前以外を愛した事なんてない!」
「俺もこの心にいるのは朔先輩だけです。貴方が居なくなってから俺の心にはずっと大きな穴が開いたままなんです」
「えぇ……お前ら俺以外に恋人作ってないの?」
「なんで嫌そうな顔をされるのか理解不能だが、そうだよお前だけだよ!」
「朔先輩以外なんて考えたこともないです」
……うーん一言言うなら重い。なんでこんなヘビー級の想い向けられてんの!? 俺そんな良い恋人じゃなかっただろ。どこにでもある普通の恋しかしてないだろ。終わり方が酷かったくらいで。……え? これが原因? でも仕方なかったんだ。俺が傍に居たら邪魔にしかならないって分かり切ってたのだから。彼らがここまで輝く存在になるのは『分かっていたから』。ただこんな展開は知らない。『視て』いない。俺は思わず右目の眼帯を外そうと手を伸ばすが、その手を玲央が抑えた。
「朔先輩、それは駄目だ」
「朔、お前未来を視ようとしたな?」
「へ!? なんのことか朔君わかんにゃ~い」
「お茶らけて濁せるなんて思ってんじゃないよな?」
「俺らにこれ以上隠し事をしないでください」
……え、これ俺の右目の事ばれてる? 今眼帯で封印している右目は未来を『視る』。望んだタイミングでも視れるが、どちらかというと一方的に遥か先の映像を脳に送り付けてくる。二人が世界的スターとして活躍する姿を俺に突きつけてきたように。高校を卒業してからこの右目の力で人助け紛いの事を沢山こなしてたから、一応隠してはいるが知る人は知っている。だからその事実に二人が辿り着くことは可能だが……この病院にまで辿り着けたということは。
「げ、あのおっさん口滑らせたな?」
「総理大臣をオッサン呼ばわりするな馬鹿」
「朔先輩それは流石に……」
「えぇ~でもオッサンはオッサン呼びで構わないって言ってるぜ? なんだかんだ10年の付き合いだし」
オッサンこと織田源蔵も、俺の右目で救った人間の一人だ。唯一の二度も救う羽目になった人間だが。一度目は10年前に選挙の応援演説中を狙われた暗殺阻止。二度目は国会議事堂の襲撃テロの阻止だったかな? まぁ二回目は俺が直接動いて阻止したんじゃなくて情報だけオッサンに渡しただけだけど。
ここ数年、誰だか分からないが周辺を探られているのは分かっていたから、情報遮断してくれるように頼んでいたのだが、何嬉々として情報を渡してるんだあの狸。
「えぇ……一応聞くけどどこまで知ってる?」
「お前が俺達の未来の為に別れた、ことくらいか?」
「それと貴方が余命半年だということですね」
「……全部ばれて~ら」
俺が墓まで持っていこうとしていた事実を、一番知られたくなかった二人に知られてしまっている。最悪だ。思わずうなだれてしまう。どうしてこんな事になってしまったのか。俺はふと始まりを思い出す。
力を手にするまで、俺は本当に平凡な少年だった。そんな俺と、当時からサッカーで活躍していた蓮との接点はクラスメートというだけだった。サッカー上手くて凄いな~くらいの感情しか抱いて無かったのだが、何故か蓮から告白された。男同士だし、人気者からの告白だし、とにかく俺はテンパった。が、告白してきた蓮も滅茶苦茶テンパっていた。お互いあわあわした後、なんだか馬鹿らしくなって二人で笑って、それで付き合う事になった。蓮曰く、一目ぼれだったらしい。
俺平凡な見た目なのに、何に惹かれたんだって戸惑ったら、カツアゲされている後輩を助けようとしてボロボロになっている姿を見てだったらしい。そんなカッコ悪いところに惚れる要素あるか? って不思議そうな俺に「カッコ良かったし、綺麗だった」と臆面もなく告げてくる蓮に、俺は内心お手上げだった。
蓮はサッカークラブに所属しているから二人で過ごせる時間はほとんどなかった。それでも俺達は幸せだった。夏祭りの夜、初めて蓮からキスされた。驚き戸惑う俺に、蓮はしてやったりって顔で笑っていて。そんな幸せの絶頂を迎えている時だった。俺の右目が急に熱を持ち、『視え』るようになったのは。
サッカー選手として世界で活躍する蓮の姿、けれどその傍に俺は居なかった。俺はずっとずっとこの関係が続くと思ってた。でも蓮はそうじゃなかった? 俺の事なんてそんなに好きじゃなかった? そんな風に考えている内にある事実に気づく。男と付き合っているなんて醜聞、世界で活躍するこいつの足を引っ張るのだと。未来の俺が彼の傍に居ない理由、それが理解できてしまった。そうしてもう一つ見た未来、それは若くして病室で一人寂しく終わりを迎える自分。それだけだったが分かってしまった。この力を得た代償なのだと。
「朔?」
右目を押さえて蹲る俺に戸惑う蓮の声が聞こえてくる。蓮は優しい、全てを話したらきっと自分の輝かしい未来なんて捨てて俺の傍にずっと居てくれるだろう。なんて、そんな悍ましい選択肢を考える自分が心底気持ち悪く思った。そんな事を思い浮かべてしまう化け物に、こんな輝いている存在は相応しくない。きっと彼にはもっと相応しい相手がいる。だから――。
「あ~つまんないの。一年近く付き合ってようやくキスかよ。おままごとじゃ無いんだからさ」
「朔? 急に何を……?」
「蓮は知らないだろうけど俺お前がサッカーの練習に励んでいる時さ、別の奴と居たんだよ。ぶっちゃけセックスもそいつと経験済み」
「……え? 朔……?」
「ピュアな蓮で遊ぶのは楽しかったけど、飽きちゃった。俺達別れようぜ?」
「あそ、び? 俺の事……遊びだったのか?」
「そうだよ? 蓮のことなんてちっとも好きじゃなかった。これぽっちも」
「嘘だ朔はそんな事をする奴じゃ……!」
「お前が俺の何を知ってるの? あはは、俺はこういう奴だよ。自分が楽しければそれで良い奴。ありがとな蓮、この一年本当に た の し か っ た よ」
「うわぁあああああああああああ!!!」
走り去った蓮を見て俺の目から汗が流れた。涙じゃない。こんな酷い事をした化け物から涙なんて流れるはずが無いから。そうして俺と蓮の関係は終わった。俺はそれ以来オッドアイの金色に変わってしまった右目に眼帯を付けるようになり、未来を『視る』のを止めた。
それから時が流れて、高校二年になった頃、図書委員だった俺は図書室によく通っている、髪が邪魔でろくに顔が見れないやぼったい後輩と過ごす時間が増えた。人嫌いで潔癖症の玲央は何故か俺の事は避けず、懐いていた。
「玲央少年はさぁ、何? お兄さんの事が好きなの?」
「っっ~!? え、あ、な!?」
ちょっとからかったつもりが玲央の可愛らしすぎる反応からガチだと判明した。自分の先がない事を知ってた俺は、やんわりと振ったのだが、何故か髪をばっさりと切ってそのイケメン顔を晒した玲央は、執念深く俺に付き纏った。完全に根負けだった。そして玲央は意外と肉食系だった。初めて訪ねた玲央の部屋で美味しく頂かれた俺は、恨みがましい目で玲央を見た。玲央は嬉しくて仕方ないと表情だけで分かる満面の笑みで笑っていた。お前そういう顔を俺以外にも見せたら人が寄って来るのに、いや今でも十分か。髪切ってから女子達が凄い勢いで食いついてきてるもんな。
「ねぇ朔先輩、俺実は趣味で曲を作ってて」
「おらおら、なに後輩の分際で先輩に隠し事してんだよ」
「わわっ!? だから今言ったじゃないですか!」
「さっさと聞かせろって」
「それはいいけど……朔先輩服着て。じゃないと俺我慢出来ない」
「えぇ……お前どんだけ……」
「俺は健全な男子高校生なだけだから!」
「はいはい……」
着替えなんて持ち合わせなかったからぶかぶかの玲央の服を着て、それを見て発情した玲央を制して曲を聴く。どうやら玲央が声を入れているようだ。そして最後まで聞いて――俺は絶望した。芸術に疎い俺でもはっきり分かった。この曲から溢れ出る圧倒的なまでの才能の暴力が。蓮との一件以来ずっとしていた右目の眼帯を外す。俺が願うよりも先に、待っていましたと言わんばかりに右目は玲央の未来を『視せた』。世界中の人間が彼の声に聞き惚れていた。言葉の壁さえ、彼の才能の前ではあまりに薄っぺらかった。ああ、何を思いあがっていたんだ。化け物が、幸せになんてなれる訳なんて無かったのに。分かっていた。俺は玲央の輝かしい未来の邪魔になると。
今別れたら玲央の才能は世間にばれずに終わってしまう。それが分かっていた俺は玲央との付き合いを続けながら、玲央に動画投稿サイトへ楽曲を投稿することを勧めた。玲央は乗り気じゃなかったが、俺が勧めるならと渋々曲を投稿した。そして一瞬でバズった。若き天才としてテレビで特集されたのを見て、もう大丈夫だと安堵した。
「玲央、別れよっか」
「は? え? ……何言って」
「お前なんかが俺の事を独占できると本気で思ってたのか? お前の伝手で人気アイドルと知り合えてよ、付き合えることになったんだわ。ありがとな玲央」
「え、嘘……嫌、嫌だ……朔先輩! 俺を捨てないで!」
「ダーメ。お前との関係はもう終わりなんだよ」
「やだっ、やだよ! 朔先輩っ! さく、せんぱっ!」
「俺が憎いか? 許せないか? 見返したいなら俺が今付き合っているアイドルより輝いてみろ。世界的アーティストにでもなってみろよ。まぁお前には無理だろうがな。じゃあな玲央。お前との時間はまぁそこそこ楽しかったよ」
高校の卒業式の際、そう言って俺は玲央に別れを告げた。ここまで馬鹿にしておけば見返してやろうと思い、音楽を止めはしないだろう。因みに玲央の伝手で本当に人気アイドルとは知り合っているが、付き合ってなどいない。冷静になって調べられたらばれてしまう嘘だが、俺に異常なほど入れ込んでいた玲央が立ち直る頃には俺は姿を消していて、今更調べようと思わないだろう。
必死にしがみつこうとする玲央を振り払って、別れてから。俺は右目の力を積極的に使うようになった。俺は蓮と玲央、二人の気持ちを滅茶苦茶にした化け物だ。けどせめて人の役に立つ化け物であろうと思ったのだ。そして9年ほどがむしゃらに走り続け、多くの人を救った。その結果身体がろくに動かなくなって入院生活を送る事になったのだが、悔いはなかった。ずっとずっと彼らの活躍は聞こえていたから。
そう怪物は病院で一人寂しく終わる筈だった。なのに何故か俺は蓮と玲央が用意した高級マンションの一室にいる。いや、ほんとなんでぇ? あの後病院で『お前が居ない未来に意味は無いんだ』的な事を二人から熱く語られたから、死にゆく者が傍にいても何の意味もねぇだろ、って返したのよ。そしたら二人共激怒してこうなった。解せぬ。
現代の医療ではどうしようもない事だから、まぁ病院じゃなくても良いのはそうなんだが。定期的に医者が往診に来てくれるみたいだし。
一年前から俺の両脚は筋肉・神経共に何の問題も無いのに動かない。半年もしない内に、心臓もそうなる未来が来る事は知っている。まぁつまりジ・エンドって奴だ。この説明を笑いながらしたら二人から怒られた。やはり解せぬ。最早笑い話やろがい!!
「朔、身体の調子はどうだ?」
「あのなぁ、一日に何回同じこと聞いてくるんだ。別に問題無いって」
「朔先輩が信用ならないから悪いんだよ」
「えぇ……」
二人は活動を休止して、俺の傍に居る。それを知ったのはメディアの情報からで、反対するには手遅れだった。泣きながら、せめて最後は傍に居させてくれて縋りつかれたら、流石に振り払えない。というかトイレに行くのすら蓮か玲央、どちらかに運んで貰わないとなので自力で逃げようがない。まぁ仮に動けても世界で活躍する二人が手を組んでなりふり構わず囲い込んでるから、俺みたいな一般人じゃ逃げられないだろうなぁ。
二人が活動休止した事は騒ぎになっているが、二人共まったく気にしている素振りを見せない。二人共俺の事が漏れていないならそれで良いらしい。多分漏れて俺の事がマスコミやSNSで叩かれたら、こいつら烈火の如く激怒するんだろうなぁ。10年以上前の初恋を引きずる二人は正直ちょっと怖い。
あと玲央は「約束通り世界的アーティストになりましたよ?」って笑ってきたが、あれ別に約束と違くない~? 俺はただ煽ったつもりだったんだが。そのやり取りを見て、蓮が俺は約束ないのにずるいって顔してた。しらんがな。忘れて欲しかったんだから約束なんてする訳ないやろがい。
「そういえば蓮って良いプレイした後、よくカメラ目線してたけど意外とちやほやされたい欲があったんだな」
「そりゃ見てもらいたかったからな、誰かさんに」
「あうふ……」
雑談のつもりが藪をつついて蛇を出してしまったらしい。え、何? ファンサとか、人気になりたいとかじゃなくてずっとモニター越しに俺を見てたの? うっわ重。
「だからなんで嫌そうな顔するんだよ。普通喜ぶだろそこは!」
「まぁまぁ、落ち着きましょうよ神崎さん」
「お、玲央が珍しく俺の味方だ」
「ちなみに俺も指定されている時以外は全部朔先輩へのラブソングしか作ってませんからね?」
「おっと? 味方のふりして背後から撃ってくるじゃん」
俺の元カレ、重量級しかいねぇのかよ。勘弁してくれ。
「ファンとかどうでもよかったし、朔先輩に届く為にだけ歌ってました」
「えぇ……ファンが可哀想」
「一条がファンのこと興味無いのはわりと有名だったろ?」
「え、蓮って玲央の事知ってたの?」
「あのなぁ、これだけ有名なアーティストを知らない訳ないだろ」
「ちなみに俺も神崎さんの活躍は見てましたよ。まぁ調査して先輩の元カレだって分かってからですが」
「えぇ……お前どんな感情で見てたの?」
「どんな感情だと思います?」
知りたくないので玲央から視線を逸らす。どうやらこれ以上追撃はしてこないようなので、ほっとする。俺、ホラーとか駄目なんだよね。ふむ、もしかして蓮もファンの事興味なかったのか?
「あのなぁ、顔に出てるから言うが俺は普通にファンに感謝してるぞ。まぁ積極的にファンサービスとかをするつもりは無いが」
「その心は?」
「めんどくさいファンが増えるから」
「あ~」
顔、いいもんな。分かる。それでいてフィールドで活躍するきりっとした姿とは違う、フランクなファンサなんて見たらそりゃ堕ちるよな。蓮が悪い。
「そんなその他大勢の事は置いておいて、朔先輩、俺と神崎さんのこと、何だと思ってるんですか?」
「え? 重たい元カレ?」
あ、なんか選択肢間違えたっぽい。部屋の空気がマイナスになった。へへっ、バナナでも凍らせそうだ。
「俺達病院で告白し直したよな?」
「……あ、あれってそういうことだったの」
「神崎さん、しばらく朔先輩をトイレに蓮れて行かないでください」
「その心は?」
「お仕置きで失禁してもらいます」
「おけ、把握」
おい、なにハイタッチしてやがる。そこで最悪な結託するんじゃないよ。28にもなってお漏らしなんて嫌だが!? 何プレイだよ!
「えぐいえぐいえぐいえぐい。なんでそんな事しようとするの!? 人の心とかないんかぁ?」
「そっくりそのまま返してやるわ馬鹿」
「朔先輩の可愛い姿を見たいだけです。あ、ちゃんとシーツは交換するんで安心してください。先輩が十分悶えた後に」
「何一つ安心できる要素が無いかな!?」
いやでも、俺みたいなゴミ屑野郎に二回目の告白をしてくるなんて思わんやん。お前らの成功よりも自分の幸せを選ぶ未来を思い描いてしまうような化け物だぞ? お前ら目か脳がおかしいんじゃね? 病院行く?
「で、返事は?」
「先輩の想いを教えてください」
「え~……」
「だからなんで嫌そうなんだよ」
「一般人に世界的スター二人からの愛は重いって」
「図太いお前なら潰れないから大丈夫だ」
何その信頼、全然嬉しくない。
「あ、ちなみにどちらか選べないからどちらも選ばないというのは無しですからね。俺と神崎さんはそこは納得済みですから」
「どういうこと?」
「二人でお前を愛するってことだ」
「あ~、え? それって三人でお付き合いするって事?」
「まぁ渋々ですが」
「しゃーないだろ。お前選べないだろうし」
「まぁ、そりゃどっちか選べって言われても無理かな。どっちも同じくらい大切だし」
散々傷つけておいて今更どの口がって感じだけど。
「別にお前が俺の事を愛してくれてるならそれで良い。……愛してくれてるんだよな?」
「う~ん、まぁどちらかというと?」
「そこは断言しろよ……」
「朔先輩絶対この10年で性格めんどくさくなってますよね?」
「あ~まぁそれは自覚ある」
二人の事を散々言っておいてなんだが、俺も別れて10年以上の恋愛を引きずってるので、色々とこじれてるのだ。う~ん、ますますこの二人に相応しくないような。
「そういう所も愛おしいから問題無いですよ」
「だな」
「えぇ……お前ら変だって」
「仮にそうだとしても元凶はお前だから責任を持て」
「う~ん、そう言われると何も言えない」
責任を負うのは好きではないが、この二人の事なら受け入れざるをえない。
「というかふと思ったんだが、俺もう一つ責任があるっぽい?」
「なんだそのふわふわした発言は」
「いやさ、蓮って俺以外に恋人作らなかったんだよな?」
「ん? ああ、そうだがそれがどう繋がるんだ?」
「お前ってまさかその顔で童貞なの?」
「ぶふっ!?」
「あっ……え、素人童貞とか?」
「お前以外を抱く訳ないだろうが!」
「えぇ……」
世界で活躍するプロサッカー選手、神崎蓮(童貞)。う~ん字面が酷い。一途に俺を想ってくれてたんだ、みたいなのより重たいって感情の方が上回る。せめて風俗くらい使えばいいのに。
「……ところで一条、お前この話題になってから急に静かになったが」
「…………いや、その……」
「こいつ性欲なんてありませーんって顔してるけど、付き合って一週間で部屋に蓮れ込んで俺の事抱いてるぞ?」
「ちょっ!? 朔さん!?」
「…………そうかそうか、一条君はそういう男だったんだな」
「いや、俺は健全な男子高校生だったんで! そんな軽蔑するような目で見ないでください! 神崎さんが付き合ってたのは中学の時ですよね? それなら……」
「でも玲央なら中学でも襲われてたって確信はあるぞ?」
「うぐっ!? け、健全な男子中学生だっただけです!」
「まぁそうだな。付き合って一年くらい経ってようやくキスしてきた蓮が奥手だったというかピュア過ぎただけか」
「結局こっちに飛び火すんのかよ!? え、朔もしかして嫌だったのか?」
デカい図体して不安そうな顔であわあわしている蓮を見て思わず笑ってしまう。俺は手でちょいちょいと蓮を引き寄せて、その頬に口付けた。
「お前と付き合っていた日々は今でも色褪せないくらい輝いてるよ」
嘘偽りない、俺の本音だ。あの日々があったから9年間無茶してこれたんだ。勿論玲央と付き合ってた日々もそうだ。だからそうやって拗ねた顔をするな。可愛いだけだぞ。俺は自分から顔を寄せてきた玲央のほっぺにも口付けた。
「まぁ、俺に責任がある事案が判明したのでするか」
「? 何をだ?」
「そりゃセックスだろ」
「ぶふっ!? な、な、何言って!?」
いい歳してセックスって単語だけでなに顔真っ赤にして照れてるんだ。中学生の頃じゃないんだぞ? まぁ今でも可愛いが。
「え、お前プラトニック派? それなら……うーんでも。どうせお前の事だから俺が死んでも誰ともそういう関係になるつもりないんだろ?」
「当然だ!」
「じゃあやっぱ、やろうぜ? 今でもアレだけど、プロサッカー選手、神崎蓮30歳(童貞)とかになるのはファンの一人として俺が嫌だ。さっさと俺で脱童貞しとけ」
「いや、おまっ。こういうのはもっと雰囲気とか!? というかお前の身体に負担が掛かるのにそんなことできるわけっ!? 助けろ一条!」
「う~ん、立場的にこの一件には俺口出しし辛いかな」
まぁ非童貞だもんな玲央は。しかも俺が筆おろししてるし。そりゃ口出しできんよ。ふぅ仕方ない、恥ずかしくて言いたくなかったが口にするか。
「蓮に俺の全てを知ってもらいたいんだけど、ダメか?」
「……そんなん言われて断れる男がいるかよちくしょう……」
「あ、でも激しいのは流石に勘弁な?」
「分かってる! 任せろ!」
「いや、童貞ってがっつくからさぁ……」
「なんだその経験の籠った呟き……あっ」
「俺は健全な男子高校生だっただけです!!」
「玲央、泣いても止めてくれなかったから……」
「いやだって泣いてる朔さん凄く可愛かったから!」
うーん、今までの会話から察するにこいつさては泣き顔フェチだな? 好きな子程泣かせたい的な。こっわ。
「ゴムもローションも準備してあるんで、さっさとしてください。これ以上俺に飛び火しても困ります」
「いや、なんでそんなもん用意してんだよ……? え、おまえまじか……」
「そういうとこだぞ玲央」
「あぁあああああ!」
墓穴を掘った玲央が頭を抱えて蹲ってる。まぁ健全な27歳(笑)だもんな。……いや、よく俺と別れてからセックス無しでやってこれたな。いや、聞いて無いけど確信がある。こいつも俺以外に誰とも関係を持ってないだろ。はぁ……元カレ――違った彼氏が重い。
「あ、そうそう。俺はろくに動けないから玲央も手伝ってくれよ?」
「別にお前ぐらい抱えれるぞ?」
「あのね、俺も10年ぶりなの。そんないきなりハードなプレイは勘弁してくれ。それにまぁ……蓮がヒートアップした時のストッパーとして居たほうが良いかなって」
「どんだけ俺は信用されてないんだ……」
「……ある意味元凶俺な気がするんで手伝うのは受け入れます。色々と複雑ですが」
「あ、玲央とはまた別日な。流石に連続は無理だ。その時は蓮がフォローしてくれ。まじで。頼む」
「……任せておけ」
「いや、ほんと大丈夫ですよ?」
「蓮、頼んだからな?」
「全く信用して貰えてない……」
病人? とセックスする気満々で準備してる奴をどう信用しろと? あと前科。
自分じゃどうにもならないので、準備諸々は二人に全力介護してもらって、さぁやるぞって段階に来て蓮はまだ雰囲気が~とかもにょもにょしてるから口にキスして黙らせた。俺の裸見てギンギンになっておきながら今更何言ってんだか。よく俺のケツほぐしている間暴発しなかったな。自分で言うのもあれだがあの時俺、思いっきり喘いでたのに。比較対象が居ないのであれだが、多分俺は感じやすいタイプだと思う。
「ほらほら、筆おろししてやるからさっさと入れやがれ」
「だから雰囲気が……」
「あ~うっせぇな。蓮、お前の体温を俺に教えて?」
「っっ~~!?」
なんか完勃ちしてやがる、ちょろいとは思ったが黙っておいた。
「挿れるぞ?」
「あぁ……」
まぁ俺も10年ぶりのセックスなので実は緊張してたり。あと玲央と違って、蓮は男との経験が無いから途中で萎えられたら怖いなとか。まぁその心配は杞憂だったのか、ゆっくりと蓮のが俺の中に挿入されていくが、それの高ぶりが衰える様子は無かった。それが嬉しくてつい笑みがこぼれてしまう。すると蓮が愛おしそうな表情で俺の頬をそっと撫でた。童貞の癖に随分余裕があるじゃないか。経験者としてリードしなくちゃと思ったが、身体を自由に動かせなくて諦めた。いーや、蓮に丸投げだ。
「朔のなかっ、すげぇ……きもちぃ……」
「ははっ、それは良かった」
良かったが……それ全部入るかな? 蓮はガタイに比例してかチンコも滅茶苦茶デカくて長かった。正直久々の俺では全部を相手できる自信が無い。
「ばーか。安心しろ。全部は挿れねぇからよ」
俺の不安を見抜いたのか、蓮が俺の頭をくしゃくしゃと撫でる。無意識に強張ってたのがほぐれたのが分かった。俺に負担が掛からない様に、ゆっくりと動かすだけ。激しく動きたいだろうに、額から汗が零れ落ちているくらい我慢しているのは伝わってきた。それでも、俺が愛おしくて仕方ないって甘い顔で俺を見つめて、口づけを交わしてくる。
「好きだ、愛してる朔」
「うん、俺も」
茶化す余裕もなく、俺も素直な気持ちで答えた。ずっとずっと、あの夏祭りの日に止まってしまった関係が進んだ。それが嬉しくて涙が零れ落ちる。
「泣くなよ朔」
「うるせぇ……」
目尻にキスを降らせてくる蓮からつい顔を背けたが、逃げるなと言わんばかりに引き戻される。緩やかで、それでいて熱烈な愛情に俺は戸惑うばかりだった。
「んっ……そこ気持ちいい」
「ここか?」
「んあっ!」
ゆっくりと、けれど的確に俺の弱点を突く蓮の所為で、俺はどんどん昂っていってしまう。そろそろ、まずいかな? なんて思って蓮を見ると、蓮も息が上がり限界のようだった。
「朔、俺もうっ……!」
「んっ、おれ、もっ……!」
少しだけ突き上げられる速度が上がる。けれど、それは俺が苦しくない程度の差でしかない。そして、蓮はイク直前に抜いてゴムの中で果てた。別に中で出して良かったのだが、というか生で良かったのだが、それは口にしなかった。また雰囲気がって言われそうだし。
「さくっ……さいこうっ、だった」
「なら、よかった」
「ずっとずっと。お前が俺の傍から居なくなっても愛しているからな」
「っ……!?」
忘れてしまえばいいのに、切り替えればいいのに。こいつは本当にずっと俺だけを想い続けてくれるんだろうな。それが今はただ、嬉しくて仕方なかった。まぁそれはそれとして。
「れ~お」
「なんですか朔先輩?」
「俺エッチだった?」
「……それ聞きます?」
「うん、聞きたい」
「滅茶苦茶エッチでした。今すぐ抱きたいくらいに」
「それは流石に無理かなぁ~」
蓮が本当に丁寧に行為を行ってくれたから、ただただ見てるだけになった玲央だったが、その下半身は熱が籠っている。俺で興奮してくれたのが嬉しくて、ついそれに頬ずりするとびくりと跳ねた。
「本番は無理だけど、手でしてやるから出して?」
「口で――」
「ぶっ飛ばすぞお前。そんな体力ねぇわ」
馬鹿言ってる玲央の頭は蓮が代わりに叩いてくれた。こつ、じゃなくてゴツンって感じでかなり痛そうだけど。蓮は痛がる玲央を放置して、俺の身体を拭きだした。蓮はゴムをしていたが、俺自身が射精で腹部を中心に色々と汚してしまっていたのだ。「辛いとこ無いか?」なんて聞きながら甲斐甲斐しく俺の世話を焼いてくれる。うーん、ほんと玲央は蓮を見習え。
俺は眼前に突き出されたその膨張した男根に手を添え、ゆっくりと扱く。そういえば付き合ってた頃も、こいつがすぐ挿れたがるから、手コキなんてした事なかったな。自分で処理するのとは感覚が違って、上手くできない。
「わりぃな下手で」
「上手かったら解釈違いです」
「そ、そうか」
本当にこいつ面倒くせぇな。まぁそういう所も可愛く思えてしまう辺り、俺も重症だ。
「さくせんぱっ……!」
慣れない行為の所為で時間は掛かってしまったが、玲央もちゃんと感じてくれているようで、昂ぶりが解き放たれそうなのが伝わってきた。ああ、このままじゃせっかく蓮が拭いてくれたのにまた汚しちゃうな。なんて考えが過ぎって、俺は上半身を浮かして玲央のを口に咥えた。
「っっ~~!?!?!? くっ……!」
自己処理をそんなにしてないのか、俺の口から溢れ出るくらいびゅるびゅると飛び出してきた精液を全部受け止めきることはできず、結局身体を汚してしまった。分かってはいたが、精液ってやっぱ不味いんだな。少し飲み込んでしまったのが喉の中でねばついてえずいてしまう。慌てた蓮がペットボトルの水を持ってきてくれ、「汚れを気にせず吐き出せ」って言ってくれたので遠慮なくベッド上に口に含んだ水を吐き出した。その間は玲央はあわあわとしているだけだった。お前他人の世話とか慣れてないもんな。
そして蓮から「二度とするな」って般若の如き顔で睨まれて、フェラは禁止になった。因みに玲央はまた頭どつかれていた。ガチのやつで。なんかごめん玲央。
それから一週間後、今度は玲央とセックスすることになったのだが、まぁ案の定? 玲央は暴走して蓮に止められていた。やっぱ頼んでおいて良かったわ。恋愛という意味ではどっちも俺にしか向いてないが、なんていうか情? というものが蓮は周囲の人間にある程度あるのに対して、玲央はまじでない。だから全部俺に向いてて暴走しやすいのかもしれない。
「好きです、あの時から変わらず、貴方だけの事を愛しています!」
「俺もだから泣くなよ馬鹿」
普段はクールで近寄りがたい人間なのに、俺にだけは感情を全力で表出する。それがとても愛おしかった。まぁこいつが抱かれたい男ナンバーワンなのは納得いかないが。世の女性は騙されてる。いや、でもこういう一面も意外と人気になるのか?
一週間前に経験してるからか、蓮ほど大きくないからか(玲央のが小さいのではなく、蓮のが規格外)負担は少ない。だからか自然と声が漏れてしまう。
「あっ、あっ……! れおっ……!」
「朔先輩の中相変わらず最高すぎっ……!」
10年ぶりだというのに玲央は俺の弱いところばかり的確に突いてくる。ずるい、俺ばかり一方的に感じている。後輩のくせに! だが他人には見せないとろけるような甘い表情で見つめられ、まぁいいかと俺は抵抗を諦めた。ちなみに今回はゴム無しだ。蓮は反対したが俺がゴリ押しした。やっぱ愛した男達の全てを知って居たかったのだ。
「ふあっ、あっ、あっ、あっ! っく、っ……イクっ!!」
「朔先輩先にイっちゃたんですか? まぁ、可愛かったので許します」
「はぁ……はぁ……おまえも、よゆうぶってないでっ、さっさとイケ!」
「ははっ、朔先輩とセックスしてるのに余裕なんてあるわけないじゃないですか。俺だって必死ですよ」
そんな風には見えないが、まぁこいつは嘘はつかないだろ。でも、なんかムカつくから――。
「俺を孕ませてくれ」
なんて耳元で囁いておいた。すると俺の中に入っているものが一際大きくなったのを感じる。玲央の目が獰猛な捕食者のそれに変わっていた。俺を食い尽くしたくて仕方ないと言わんばかりに。それでも流石に学習したのか、俺に無理がない程度の動きだった。
「さくせんぱっ! 俺もうっ……!」
「俺の願い、分かってるよな?」
「はっはっ、ちょっ反則だろこれっ! っっ~~! イクッッッッ!!」
腹の中に玲央の精液が吐き出されたのを感じる。本当に孕めたら良かったのに、なんて不毛な事を考えてしまう。それは玲央も同じだったかもしれない。玲央は俺のお腹を擦っていた。
当然のようにタオルを準備して俺の身体を拭こうとする蓮を、ちょいちょいと引き寄せる。
「俺の中、今なら蓮のも全部挿ると思うぞ?」
「おまっ、何言って!?」
「蓮は俺に中出ししたくないのか? 孕ませたくないのか?」
「……お前煽りやがって、覚悟しろよっ」
玲央が察して場所を譲り、さっきまで挿っていたものが忘れられないのか、ひくついてるそこに蓮は昂ったそれを押しあてた。どうやら俺と玲央のセックスにあてられていたようだ。相変わらず蓮は丁寧に、ゆっくりと挿入する。すこしもどかしい。一気に挿入されて蓮の形に変えて欲しい、なんて思いは恥ずかしいので絶対口にしない。
「前より挿れやすいだろ?」
「それはそうだが……色々と複雑だ」
「まぁそりゃそうか。でもそれを選んだのはお前らだろ?」
「ま、そうだな。逃すくらいなら、絶対に手に入る方を選びたかったからな」
「え?」
「悪い口が滑った」
「…………」
「今、重いって思っただろ」
「常に思ってるから安心しろ」
「ははっ、この野郎」
本当に俺の恋人達は重すぎる。まぁ俺がふわふわしてるから、それくらいの方がつり合い取れて良いのかもしれんが。
「っっ……!」
「わりぃ! 痛かったか?」
「別に大したことねぇよ。良いから全部挿れろって。お前の全部で俺を味わいやがれ!」
「はぁ……朔には勝てねぇな。残り一気に行くからな?」
「んぐっ……!」
「大丈夫か? 全部入ったぞ」
正直全然大丈夫ではない。デカすぎんだよ馬鹿。こんな奥深く、玲央だって知らねぇよ。あ、思考を読まれたのか蓮が嗤った。あ~あんまり表に出さないけど初めてを玲央に奪われてたのかなり気にしてたんだなこいつ。そんな顔されたらなんも言えなくなるだろうが。
「ふぅ……ふぅ……悪い、まだ動かないでくれ……」
「分かってる。このままでも十分気持ち良いから気にすんな」
「十分じゃヤダ」
「っっ~~! おまっ! 俺の恋人が可愛すぎる……無理、しんどい……」
「ははっ、限界オタクじゃん」
因みに俺も蓮と玲央の限界オタクだ。勿論同担拒否のな。最古参だぞ!
「お前とのセックス中は雰囲気とかは求めても無駄なんだろうな……」
「嫌いになったか?」
「なわけ、毎秒どんどん好きになっていく。朔を好きになる気持ちに限界なんてない」
「…………」
「だからなんで嫌な顔をするんだ」
いや、これ悪いの俺か? 重すぎね?
「そろそろ動くぞ?」
「ああ、大丈夫だ」
慎重にゆっくりと蓮は俺の中を蹂躙していく。本来届いてはいけない場所だから、その優しい刺激ですら脳が揺さぶられる。
「ふあっ、あっ~」
頭がおかしくなりそうになりながら、必死に意識を保つ。これ思ってたよりやばいかも。こんな奥で中出しされたら、俺どうなってしまうんだ。
「何勝手に想像だけでよだれ垂らしてるんだ。この奥で俺が射精するのを期待したのか? 朔はやらしいな?」
「ちがっ……!」
「本当に?」
「…………ちがわ、ないけど」
「そっか。じゃあ期待に応えないとな」
俺と玲央のセックス中ずっと興奮してたからなのか、初めて根元まで挿入したからなのかは分からないが、蓮はもう限界だったみたいだ。
「出すぞ……! くっ……! イクっ!」
濃厚な精液が俺の深いところで解き放たれる。その瞬間、俺は射精せずに達していた。メスイキだ。気持ちよくて仕方ないのに声も出ない。頭が真っ白だ。
「俺の子を孕めよ?」
けれど耳元で囁かれた蓮の声ははっきりと聞こえてた。
「大丈夫か朔?」
「…………大丈夫に見えるか?」
「わりぃ」
体を動かすとケツからドロリと白濁液が零れ落ちてくる。蓮と玲央、二人の混ざり合ったそれは二人から愛されてる証の様で少し誇らしかった。それはそれとしてしんどい。だるい。このまま寝たいが、風呂入らないとだよな。まぁ自分じゃどうしようもないから二人任せなんだが。
「朔先輩?」
焦ったような玲央の声が聞こえて、ふと気づく。そういえば右側の視界があるな、と。どうやらセックス中に眼帯が外れてしまったようだ。だが何も怖くない、以前の様に独りぼっちで亡くなる未来は来ない。二人に抱きしめられて、穏やかに亡くなる未来が視えるだけ。そう思った。思っていた。けれどいつまで、待っても未来は『視え』なかった。そしていつも感じていた、右目の熱が消え失せていた。
「朔、お前右目って金色に、なっているんだよな?」
「ああ、お前ら見た事ないんだっけ? そだよ」
「朔先輩、右目……黒いんだけど?」
「は?」
玲央が持ってきてくれた手鏡で確認するが、確かに右目が黒色になっている。訳が分からない。そんな俺に更に新情報が入る。
「朔、お前足動かしてないか……?」
「え?」
そう無意識だったが、俺は両脚を動かしていた。一年前から完全に動かせなくなっていたはずなのに。『視え』ない未来に、元の黒色に戻った右目、そして動くようになった両脚。そんな嘘みたいな話があるのだろうか。
「あのさ……多分未来が見えなくなった」
もう『視え』ることは無いのだと、根拠のない確信があった。そして。
「俺もう少し生きていられる、かも? 分かんないけど、ぬか喜びさせちまうかもだけど、もしかしたらまだお前らの傍に居られるかも」
「朔、それは、ほんとうか!?」
「朔先輩……!」
玲央が泣いていた。いや、玲央だけじゃない、蓮も。そして二人を見た後、頬を触ってようやく自覚したが俺自身も。未来なんて無いと思っていた。だから二人の傍から離れた。でも、未来があるなら――。
未来ってなんだ?
分からない。今までずっと右目が教えてくれていた。でももう右目は映してはくれない。それじゃあ何を頼って生きていけば良いんだ? 俺を苦しめていた異能から解放されたはずだった。なのにどうしてこんなに苦しいんだ。どうして、こんなに怖いんだ?
震える俺は左右から抱きしめられる。蓮と玲央だ。
「朔、怖がらなくて良い」
「未来は俺達が切り開くから」
いつの間にか震えは止まっていた。もう俺は未来を『視る』ことはない。けれど、隣を歩いてくれるこの二人がいるなら、俺の未来はきっと怖くない。
それから半年、定期健診やリハビリを経て、俺は一人で歩けるようにまで回復した。因みに渋る二人のケツを蹴飛ばしてさっさと活動を再開させている。色々とごたごたはあったようだが、問題無く活動できるようになったようだ。二人の事は相変わらずマスコミやネットで騒がれていたが、俺の事はついぞ触れられることは無かった。日本だけならまだしも二人の活躍は海外も含まれる。だから総理大臣が味方だからって、どうにかできる問題じゃないのではないか? と不思議に思っていたのだが。オッサン曰く「君に救われたのは私だけでは無いからね」とのことだ。自分が死んでも誰も悲しむことは無いと思っていた。でも蓮と玲央は勿論、多分もっと多くの人が俺の事を大切に思ってくれていたようだ。
「朔」
「朔先輩」
二人が手を差し伸べてくる。その手を俺は躊躇うことなくとった。
どうやら俺は、とてつもなく幸せ者らしい。未来なんて『視え』なくても。
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