16 / 163
入学編
ep16 特異クラス
しおりを挟む
「ところで先生」
「なんでしょう?ヤソガミ君」
「今日、俺だけ登校時間をズラしたのは初日だからですか?」
実は今日、俺は他の生徒と登校時間が微妙にズラされていた。
だからこの時間はすでに一限目が始まっていて、広い校舎の中でも他に歩いている生徒がいなかった。
「もう授業も始まっているんですよね?それなのに先生に出てきてもらって悪いなって」
「ああ、そんなことは気にしなくて構わないですよ。私のクラスには関係ないですからね」
「はあ」
「それに登校時間をズラして私が出迎えたのは、絡まれないためです」
「か、からまれる?」
「まあ細かいことは気にしないでください」
いや気になるんですけど。
不安になってきたんですけど。
それに不安といえばもうひとつある。
「あ、あの、教室がやけに遠い気がするんですが......」
さっきから通路をかなり歩いているけど、一向にたどり着く気配がない。
もう教室らしい教室はすべて通り過ぎてしまった気がする。
「特異クラスの教室は少々離れた場所にありましてね。もうしばらくご辛抱ください」
先生は淡々と答えるだけ。
不安は募るばかり。
そうこうしているうちに......。
「こちらが特異クラスの教室です」
やっと教室前に到着した。
到着したけど......。
「ここですか!?」
一番に文句を言いそうなイナバは俺の頭の上ですぴ~と寝ていた。
おい!肝心な時にコイツは!
「ここって使われている部屋なんですか?と言いたげな顔ですね」
「い、いえ!まあ、はい......」
そこは明らかに他の教室から隔離され区別された場所にある、今では使われていないような妖しい教室だった。
「なんというか......雰囲気のある教室ですね......」
もはやそうとしか言いようがなかった。
あとこれは関係ないだろうけど...校舎の玄関はちょうど南方向。
そしてこの教室の位置は建物の北東の端っこ。
つまり......鬼門の位置!
鬼門とは邪気の出入りする方角を意味する。
ただの偶然だろうか?
「ヤソガミくん?どうしましたか?入りますよ?」
「は、はい!!」
覚悟を決めよう。
もう行くしかない。
でもその前に、イナバを鞄の中にしまって......と。
初っ端からイジられたくないし。
そういう意味ではイナバが眠っていてくれて良かったかも。
「では参りましょう」
ハウ先生が教室の扉を開けた。
先生に連れ立って教室に入っていくと......意外にも広々とした室内はガランとしていた。
古びた大学の講義室のような教室に、ニ十人ほどの生徒がポツポツと着席している。
壁や床や机や椅子には、使い古された形跡がありありと滲み出ている。
ふと視線を上げると、ホールのように天井が高い。
......ひょっとして室内で魔術の演習をしたりもするのかな。
「皆さんに、新しいクラスメイトを紹介します」
ハウ先生の言葉にみんなの視線が一気に集まる。
やばい。
めっちゃ緊張してきた。
ち、ちゃんと噛まないで挨拶できるかな。
「あ、あの、えっと、八十神天従です!よ、よろしくお願いします!」
ハズい!
声のボリュームおかしかったかも!
笑われるぞコレ!
「......あれ?」
シーン。
誰ひとりノーリアクション。
笑われるどころか、反応ひとつなし。
これはこれで......キツイかも。
その時。
パチパチパチパチ
ひとりが拍手をした。
目をやると、紅髪で細目のイケメン男子が微笑んでいた。
彼につられて、何人かの生徒も拍手をした。
「ではヤソガミ君。席に着いてください」
先生に着席を促される。
「あ、席はどこでもいいですよ。自由に好きな所へどうぞ」
自由に好きなところって言われても...どうしよう。
空いている席はいっぱいあるけど......。
「!」
壁際の奥にいる奴ら......不良か?
ガラの悪そうな男子が目つきの悪い顔で机に足を乗せている。
「アイツらには、関わっちゃダメだ......」
心の中でつぶやきながら窓際の真ん中ぐらいの席に着いた。
前二列は空いていて、二列後ろには気の弱そうな銀髪の生徒がひとりうつむき加減で座っている。
なんとなくここなら安全かな、と思った。
......て、こんなマインドで大丈夫かな?
また中学時代のようなぼっち生活は嫌だ。
でも、いきなりガンガン行くのはそもそも性格的にムリだし。
いや、まだ最初も最初だ。
今はこれでいい。
きっと大丈夫だ。
と思いたい。
「なんでしょう?ヤソガミ君」
「今日、俺だけ登校時間をズラしたのは初日だからですか?」
実は今日、俺は他の生徒と登校時間が微妙にズラされていた。
だからこの時間はすでに一限目が始まっていて、広い校舎の中でも他に歩いている生徒がいなかった。
「もう授業も始まっているんですよね?それなのに先生に出てきてもらって悪いなって」
「ああ、そんなことは気にしなくて構わないですよ。私のクラスには関係ないですからね」
「はあ」
「それに登校時間をズラして私が出迎えたのは、絡まれないためです」
「か、からまれる?」
「まあ細かいことは気にしないでください」
いや気になるんですけど。
不安になってきたんですけど。
それに不安といえばもうひとつある。
「あ、あの、教室がやけに遠い気がするんですが......」
さっきから通路をかなり歩いているけど、一向にたどり着く気配がない。
もう教室らしい教室はすべて通り過ぎてしまった気がする。
「特異クラスの教室は少々離れた場所にありましてね。もうしばらくご辛抱ください」
先生は淡々と答えるだけ。
不安は募るばかり。
そうこうしているうちに......。
「こちらが特異クラスの教室です」
やっと教室前に到着した。
到着したけど......。
「ここですか!?」
一番に文句を言いそうなイナバは俺の頭の上ですぴ~と寝ていた。
おい!肝心な時にコイツは!
「ここって使われている部屋なんですか?と言いたげな顔ですね」
「い、いえ!まあ、はい......」
そこは明らかに他の教室から隔離され区別された場所にある、今では使われていないような妖しい教室だった。
「なんというか......雰囲気のある教室ですね......」
もはやそうとしか言いようがなかった。
あとこれは関係ないだろうけど...校舎の玄関はちょうど南方向。
そしてこの教室の位置は建物の北東の端っこ。
つまり......鬼門の位置!
鬼門とは邪気の出入りする方角を意味する。
ただの偶然だろうか?
「ヤソガミくん?どうしましたか?入りますよ?」
「は、はい!!」
覚悟を決めよう。
もう行くしかない。
でもその前に、イナバを鞄の中にしまって......と。
初っ端からイジられたくないし。
そういう意味ではイナバが眠っていてくれて良かったかも。
「では参りましょう」
ハウ先生が教室の扉を開けた。
先生に連れ立って教室に入っていくと......意外にも広々とした室内はガランとしていた。
古びた大学の講義室のような教室に、ニ十人ほどの生徒がポツポツと着席している。
壁や床や机や椅子には、使い古された形跡がありありと滲み出ている。
ふと視線を上げると、ホールのように天井が高い。
......ひょっとして室内で魔術の演習をしたりもするのかな。
「皆さんに、新しいクラスメイトを紹介します」
ハウ先生の言葉にみんなの視線が一気に集まる。
やばい。
めっちゃ緊張してきた。
ち、ちゃんと噛まないで挨拶できるかな。
「あ、あの、えっと、八十神天従です!よ、よろしくお願いします!」
ハズい!
声のボリュームおかしかったかも!
笑われるぞコレ!
「......あれ?」
シーン。
誰ひとりノーリアクション。
笑われるどころか、反応ひとつなし。
これはこれで......キツイかも。
その時。
パチパチパチパチ
ひとりが拍手をした。
目をやると、紅髪で細目のイケメン男子が微笑んでいた。
彼につられて、何人かの生徒も拍手をした。
「ではヤソガミ君。席に着いてください」
先生に着席を促される。
「あ、席はどこでもいいですよ。自由に好きな所へどうぞ」
自由に好きなところって言われても...どうしよう。
空いている席はいっぱいあるけど......。
「!」
壁際の奥にいる奴ら......不良か?
ガラの悪そうな男子が目つきの悪い顔で机に足を乗せている。
「アイツらには、関わっちゃダメだ......」
心の中でつぶやきながら窓際の真ん中ぐらいの席に着いた。
前二列は空いていて、二列後ろには気の弱そうな銀髪の生徒がひとりうつむき加減で座っている。
なんとなくここなら安全かな、と思った。
......て、こんなマインドで大丈夫かな?
また中学時代のようなぼっち生活は嫌だ。
でも、いきなりガンガン行くのはそもそも性格的にムリだし。
いや、まだ最初も最初だ。
今はこれでいい。
きっと大丈夫だ。
と思いたい。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる