八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった

根立真先

文字の大きさ
60 / 163
過去と今

ep60 中学時代

しおりを挟む
 * * *


 中学に上がったばかりの頃。

 俺には親友と呼べるぐらいの友達がひとりいた。
 小学生の頃からの、俺にとっての最高の友達。
 いつも明るく優しくて、社交的で親切な彼に助けられたのは一度や二度じゃない。
 とかく内気で引っ込み思案だった俺にとって、彼は眩しいぐらいの存在だった。

「たかくん。クラスは別々になっちゃったけど、これからもよろしくね」
「あ、ああ!」

 中一になって、彼とは別のクラスになってしまう。
 けど、俺も頑張らないと。
 いつまでもあいつに助けられてばかりじゃダメだし。
 それに別々のクラスといっても隣同士。
 困ったらすぐに行ける......て、それじゃ今までと変わらないだろ!
 俺も俺で新しいクラスに馴染んでいかないと!
 そんな思いを胸に抱いて俺はひとり息巻いていた。 


「あれ?どうした?」


 彼の異変に気づいたのは、わりと早かったと思う。
 いつも明るいはずの彼の顔が、妙に暗く見えたんだ。

「風邪でも引いた?」

「う、うん。ちょっと体調が悪くてさ」

「保健室には行った?」

「これから、行こうかな」

「一緒に行こうか?」

「でも、あっちでクラスの友達がたかくんのこと呼んでるよ?」

「あっ、わるい!」

「ちゃんとクラスに馴染めているんだね」

「おかげさまで。そっちもだろ?」

「あ、う、うん。まあ」

「じゃっ、保健室行けよ!」

 俺はクラスメイトの所へ走っていった。
 今思えば、彼のことを見て見ぬフリをした最初の瞬間が、その時だったのかもしれない。


 ある日のこと......。


「なあ八十神。お前って小学校で〇〇と仲良かったんだろ?」

 隣のクラスの奴からいきなり妙なことを訊かれる。

「アイツのおもしろエピソードとか、なんか知らね?」

 質問の意図も意味もよくわからなかった。
 
「あー、なんかあったかなぁ」と答えを濁しながらも、なにか嫌なものを感じた。
 そいつの顔が妙にニヤニヤしているんだ。
 悪意がある?
 
「まーいいや。思い出したら教えてくれよ」

 そいつはニヤニヤしながら俺の肩をポンと叩いて、自分のクラスに引き返していった。

「なんなんだ?」

 そういえば最近、あいつと全然話してなかったな。
 なんかあいつ、小学校のころとは違って大人しくなったんだよ。
 学校で顔を合わしても挨拶ぐらいしかしないし、一緒に帰ることもなくなった。
 あれ?まさか俺、嫌われている?
 いやいやあいつに限ってそんなことはないだろ。
 今日、久しぶりにあいつと一緒に帰ろうかな。

「よお。久しぶりに一緒に帰ろーぜ?」

 放課後、隣のクラスに彼を訪ねていくと、妙な空気を感じた。 

「??」

 クラスの奴らはどこか訝しげな表情で俺を見る。
 そして、彼の制服はなぜかチョークの粉にまみれていた。
 その足元には黒板消しが何個か転がっている。

「どうかしたのか?」

 歩み寄っていくと、彼はひきつった笑いを浮かべた。

「な、なんでもないよ。掃除してたら、ドジっちゃってさ」

「なにやってんだよ」

 俺が彼の制服をはたこうとするなり、彼はその手をバッと振り払った。

「い、いいから」

「なんでだよ?汚れてるぞ?」

「自分でやるから」

「背中は届かないだろ」

「だからいいって言ってるだろ!」

 どういうわけか彼はかたくなに拒否をする。
 正直、イラッとした。
 こっちは親切で言っているのに、そんな態度はないだろ。
 納得ができない。
 
「なんで...」

 俺が問いただそうとした瞬間、ダッ!と彼は逃げるように教室から飛び出していってしまった。
 取り残された俺は唖然としてしまう。
 せっかく久しぶりに一緒に帰ろうと思ったのに。
 
「なんだよ。くそっ」

 苛立ちながら教室を後にする。
 途中、妙にニヤついたヤツらとすれ違い、その一人と目が合った。
 たしかコイツは......前に妙な質問をしてきたよな。
 あいつの小学校時代のおろしろエピソードを教えろとかなんとか。
 
「......」

 俺は無言で立ち去った。
 学校から帰りながら、胸がモヤモヤしていた。

「いったいなんなんだよ......」

 そのつぶやきは、自分で自分を誤魔化すためのものだったのかもしれない。
 断片的な出来事は、すでに繋がっていたんだ。
 でも、点と点を線にするのが怖かった。
 事実を認めたくなかった。
 なぜか?
 巻き込まれたくないから。


 それからの俺は......。


 隣のクラスにはいっさい顔を出さなくなった。
 学校で彼を見かけても、意図的に避けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

処理中です...