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過去と今
ep69 エマ・フィッツジェラルド(エマ視点)④
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「一緒にがんばろーね」
「うん!」
最初は本当に楽しかった。
ミャーミャーもいる。
今後こそ頑張れると思った。
けど、そんなあーしの思いはすぐに打ち砕かれる。
学校委員長のユイミ・テレジア・ジークレフだ。
「す、スゴイ......」
彼女の使う水魔法はまさに芸術的。
特別クラスでも上位に食い込むであろうレベル。
しかも名家ジークレフ家の御令嬢で美人。
非の打ち所がない。
「なんであんなヤツが特異クラスにいんだよ......」
彼女だけじゃなかった。
セリク・クレイトンの炎魔法も高レベルのものだった。
あいつらの魔法を見ていると、自分の才能のなさを嫌でも思い知らされる。
「エマちゃん。わたしたちもがんばろ?」
「うん」
それでも、しばらくはミャーミャーと一緒に頑張っていた。
そんなある日のこと。
あーしはハウ先生から妙なことを言われる。
「フィッツジェラルドさん。一度、魔法病院に行ってみてはいかがでしょう?」
言っている意味がわからなかった。
魔法病院は、主に魔術師のための病院で、魔法に関する病気や症状を扱う医療機関。
なんでそんな所にあーしが?
「フィッツジェラルドさん。貴女は魔法について悩んでいるでしょう?魔法病院に行けば問題を解決する糸口が見つかるかもしれません」
そう言われると、実際悩んでいたあーしは行かざるをえなかった。
後日。
あーしはハウ先生の紹介してくれた魔法病院に行って診断を受けた。
そこで信じられないことを告げられる。
「君は、一般的な水準に比較して顕在魔力量が低い」
「それは、以前にも言われたことがあります......」
「しかし本当の問題はそこじゃない」
「えっ?」
「君は、潜在魔力量が極端に低い」
「潜在...ですか?」
「通常、鍛え方次第である程度扱える魔力量は増やすことができる。たとえ年齢を重ねてもね。ただし、それは潜在魔力量を有することが前提」
「つまり、どういうことですか」
「〔魔力衰弱症〕の患者と酷似している。いくら鍛えようともはや筋肉のつかない身体、といえばわかりやすいかな」
「!!」
それは、ピークの過ぎた魔術師が引退する理由にもなる症状。
あーしは、若いのに、それだったんだ。
「魔力の低い国家魔術師というのも存在する。魔術師の優劣は必ずしも魔力量で決まるわけではない」
最後に病院の先生はそう言ってきたけど、あーしの耳には入らなかった。
「エマちゃん?どうしたの?大丈夫?」
魔法病院に行ったことはミャーミャーにも黙っていた。
当然、診断結果も隠したまま。
あーしはもう、どうでも良くなった。
学校は、テキトーにだらだらとやり過ごそう。
頑張っても意味なんかない。
無駄なだけだ。
幸い、特異クラスではそれでもやっていけた。
先生は何にも言ってこない。
親へ報告されることもない。
特異クラスが不良クラスと言われる所以がよくわかった。
実際、まわりの奴らのほとんども、たいしてやる気などなかったんだ。
「ダリーな。もうサボろーぜ」
「お前またサボりかよ、エマ~」
「うっせーな。トッパーに言われなくねーよ」
その後、不良のトッパーたちとツルむようになったのは自然なことだった。
ヤツらと一緒になってフェエルをからかうようになったのも自然なこと。
それでも一生懸命頑張ろうするミャーミャーが憎くなったのも自然なこと。
そして、あーしの憧れのジェットレディのスカウトで入学してきた特待生のヤソガミに、心底怒りを覚えたのも自然なことだった。
「うん!」
最初は本当に楽しかった。
ミャーミャーもいる。
今後こそ頑張れると思った。
けど、そんなあーしの思いはすぐに打ち砕かれる。
学校委員長のユイミ・テレジア・ジークレフだ。
「す、スゴイ......」
彼女の使う水魔法はまさに芸術的。
特別クラスでも上位に食い込むであろうレベル。
しかも名家ジークレフ家の御令嬢で美人。
非の打ち所がない。
「なんであんなヤツが特異クラスにいんだよ......」
彼女だけじゃなかった。
セリク・クレイトンの炎魔法も高レベルのものだった。
あいつらの魔法を見ていると、自分の才能のなさを嫌でも思い知らされる。
「エマちゃん。わたしたちもがんばろ?」
「うん」
それでも、しばらくはミャーミャーと一緒に頑張っていた。
そんなある日のこと。
あーしはハウ先生から妙なことを言われる。
「フィッツジェラルドさん。一度、魔法病院に行ってみてはいかがでしょう?」
言っている意味がわからなかった。
魔法病院は、主に魔術師のための病院で、魔法に関する病気や症状を扱う医療機関。
なんでそんな所にあーしが?
「フィッツジェラルドさん。貴女は魔法について悩んでいるでしょう?魔法病院に行けば問題を解決する糸口が見つかるかもしれません」
そう言われると、実際悩んでいたあーしは行かざるをえなかった。
後日。
あーしはハウ先生の紹介してくれた魔法病院に行って診断を受けた。
そこで信じられないことを告げられる。
「君は、一般的な水準に比較して顕在魔力量が低い」
「それは、以前にも言われたことがあります......」
「しかし本当の問題はそこじゃない」
「えっ?」
「君は、潜在魔力量が極端に低い」
「潜在...ですか?」
「通常、鍛え方次第である程度扱える魔力量は増やすことができる。たとえ年齢を重ねてもね。ただし、それは潜在魔力量を有することが前提」
「つまり、どういうことですか」
「〔魔力衰弱症〕の患者と酷似している。いくら鍛えようともはや筋肉のつかない身体、といえばわかりやすいかな」
「!!」
それは、ピークの過ぎた魔術師が引退する理由にもなる症状。
あーしは、若いのに、それだったんだ。
「魔力の低い国家魔術師というのも存在する。魔術師の優劣は必ずしも魔力量で決まるわけではない」
最後に病院の先生はそう言ってきたけど、あーしの耳には入らなかった。
「エマちゃん?どうしたの?大丈夫?」
魔法病院に行ったことはミャーミャーにも黙っていた。
当然、診断結果も隠したまま。
あーしはもう、どうでも良くなった。
学校は、テキトーにだらだらとやり過ごそう。
頑張っても意味なんかない。
無駄なだけだ。
幸い、特異クラスではそれでもやっていけた。
先生は何にも言ってこない。
親へ報告されることもない。
特異クラスが不良クラスと言われる所以がよくわかった。
実際、まわりの奴らのほとんども、たいしてやる気などなかったんだ。
「ダリーな。もうサボろーぜ」
「お前またサボりかよ、エマ~」
「うっせーな。トッパーに言われなくねーよ」
その後、不良のトッパーたちとツルむようになったのは自然なことだった。
ヤツらと一緒になってフェエルをからかうようになったのも自然なこと。
それでも一生懸命頑張ろうするミャーミャーが憎くなったのも自然なこと。
そして、あーしの憧れのジェットレディのスカウトで入学してきた特待生のヤソガミに、心底怒りを覚えたのも自然なことだった。
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