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過去と今
ep75 相談
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*
「じゃあ、また明日ね」
放課後、店の手伝いのためにいち早く教室を飛び出していったミア。
続いて俺とフェエルも帰ろうとすると、エマが俺の肩をポンポンと叩いた。
「ねえ、ちょっといい?」
数十分後......。
俺たちはカフェに入っていた。
「このカフェラテうまいし。こんなお店あったんだな~フェエルやるじゃん」
注文したドリンクに舌鼓を打つエマに、俺から切り出した。
「で、ハナシってなんなんだ?」
「まあまあ焦んなって」
「お前から振ってきたんだろ」
「なにそれゼッテーモテねーっしょ」
「よし、帰ろうフェエル」
「わー待って待って!ジョーダンだよジョーダン!」
「エマちゃん。フザケないでちゃんと教えて」
俺よりも先にフェエルがびしっと注意する。
「ぼくたちに相談したいことがあるんでしょ?」
「そ、そうなんだよね~アハハ...」
「ミアちゃんのことじゃない?」
フェエルがズバリ言う。
エマの顔を見ると、どうやら図星だ。
「バレてたか。はは...」
エマは力無く笑ってから、「ミャーミャーのことなんだけどさ......」と語り始めた。
エマによると......。
ヤソミ(俺)がやらかした一件の後、ふたりの仲はいったん元通りになった。
ところが、それからすぐに、ミアが妙によそよそしくなったらしい。
それが修復されることなく今に至っているという。
「あーし、今までミャーミャーに散々ヒドイことしてきたから、いい加減完全に嫌われちゃったんだ。しょーがないよね......」
エマは哀しそうに肩を落としたが、彼女の話には不自然と思われる点がある。
確かにミアにはエマを嫌う理由はいくらでもあるだろう。
しかし、それならばなぜ、ヤソミがやらかした一件の後、ふたりの仲はいったん元通りになったのか。
ただのエマの勘違いとも考えられるが、そうでないのなら......。
「ヤソミの一件の後、エマとミアの間でなにかあったのか?あるいはミアになにかあったとか」
エマは、うーんと唸ってから、ふと何かを思い出す。
「そういえば......ミャーミャーんちのお店が大変らしい。人も雇えなくなったりしてさ。ひょっとしたら、それでミャーミャーの気持ちも余裕がなくなってんのかな......」
「今日も店の手伝いで早く帰ってたよな」
「うん。でも、やっぱりそれは違うかなぁ」
「どういうことだ?」
「だって最近、ミャーミャーんちのお店の融資、増えたはずだから、一時期よりは余裕あるはず」
「それって、フィッツジェラルドバンクの融資のことか?」
「そーだよ?」
「最近って、いつの話だ?」
「ちょうどヤソミの一件の後ぐらいかな?」
「ちなみに融資が増えたのって......まさかエマが関係してないよな」
「あーし、ミャーミャーにいっぱい迷惑かけてきたから、そのお詫びになればいいかなと思って?あーしからパパにお願いはしてみたけど」
「なるほど......」
それじゃね?と思った。
エマは良かれと思ってやったことなんだろうが、それによってお互いの立場に一段と優劣ができてしまったんじゃないか?
てゆーか、娘の一声で融資を増やしたりするなんて、あるのか?
どんだけ娘が可愛いんだ。親バカか。
「つまりミアからしたら、エマは完全に頭の上がらない金貸しみたいな存在なんだな」
「な、なんだよその言いかた」
「ミアからしたらって話だよ」
「でも、うちの銀行からミャーミャーんちの店への融資は前からやってるから、今さらじゃん」
「蓄積されて今に至ったってことじゃないか」
次第にエマがずーんと沈んでいく。
俺の言い方にも問題があったかもしれない。
俺には過去に似たような光景を間近で目にしたことがあったから、ついキツイ言い方になってしまった。
実は昔、実家の神社が経営難に陥ったことがあって、両親とも方々に頭を下げながらお金の工面に苦労していたんだ。
ミアの家も、謂わばそんな状況なんじゃないだろうか。
真面目なミアは、高校生の娘ながらもその状況をよく理解していて、ゆえにエマに対して過度に遠慮してしまっている......。
「で、でもさぁ」
エマが困った顔を浮かべた。
「だったらミャーミャーんちの店の経営が好転しないかぎり解決しないってことじゃね?学生のあーしにはなんもできないじゃん」
確かにそうだ。
一学生の俺たちにどうこうできる問題じゃない。
商売繁盛の魔法なんかないしな。
......ん?
学生にはできない。魔法。......あっ。
「いいこと思いついたかも」
「?」
きょとんとするふたりに向かって、俺は言う。
「俺たちだけだと厳しいから、助っ人を頼んでみるのはどうだろう?」
「助っ人?」
「それとエマ。お前の魔法、役立つかもしれないぞ」
「じゃあ、また明日ね」
放課後、店の手伝いのためにいち早く教室を飛び出していったミア。
続いて俺とフェエルも帰ろうとすると、エマが俺の肩をポンポンと叩いた。
「ねえ、ちょっといい?」
数十分後......。
俺たちはカフェに入っていた。
「このカフェラテうまいし。こんなお店あったんだな~フェエルやるじゃん」
注文したドリンクに舌鼓を打つエマに、俺から切り出した。
「で、ハナシってなんなんだ?」
「まあまあ焦んなって」
「お前から振ってきたんだろ」
「なにそれゼッテーモテねーっしょ」
「よし、帰ろうフェエル」
「わー待って待って!ジョーダンだよジョーダン!」
「エマちゃん。フザケないでちゃんと教えて」
俺よりも先にフェエルがびしっと注意する。
「ぼくたちに相談したいことがあるんでしょ?」
「そ、そうなんだよね~アハハ...」
「ミアちゃんのことじゃない?」
フェエルがズバリ言う。
エマの顔を見ると、どうやら図星だ。
「バレてたか。はは...」
エマは力無く笑ってから、「ミャーミャーのことなんだけどさ......」と語り始めた。
エマによると......。
ヤソミ(俺)がやらかした一件の後、ふたりの仲はいったん元通りになった。
ところが、それからすぐに、ミアが妙によそよそしくなったらしい。
それが修復されることなく今に至っているという。
「あーし、今までミャーミャーに散々ヒドイことしてきたから、いい加減完全に嫌われちゃったんだ。しょーがないよね......」
エマは哀しそうに肩を落としたが、彼女の話には不自然と思われる点がある。
確かにミアにはエマを嫌う理由はいくらでもあるだろう。
しかし、それならばなぜ、ヤソミがやらかした一件の後、ふたりの仲はいったん元通りになったのか。
ただのエマの勘違いとも考えられるが、そうでないのなら......。
「ヤソミの一件の後、エマとミアの間でなにかあったのか?あるいはミアになにかあったとか」
エマは、うーんと唸ってから、ふと何かを思い出す。
「そういえば......ミャーミャーんちのお店が大変らしい。人も雇えなくなったりしてさ。ひょっとしたら、それでミャーミャーの気持ちも余裕がなくなってんのかな......」
「今日も店の手伝いで早く帰ってたよな」
「うん。でも、やっぱりそれは違うかなぁ」
「どういうことだ?」
「だって最近、ミャーミャーんちのお店の融資、増えたはずだから、一時期よりは余裕あるはず」
「それって、フィッツジェラルドバンクの融資のことか?」
「そーだよ?」
「最近って、いつの話だ?」
「ちょうどヤソミの一件の後ぐらいかな?」
「ちなみに融資が増えたのって......まさかエマが関係してないよな」
「あーし、ミャーミャーにいっぱい迷惑かけてきたから、そのお詫びになればいいかなと思って?あーしからパパにお願いはしてみたけど」
「なるほど......」
それじゃね?と思った。
エマは良かれと思ってやったことなんだろうが、それによってお互いの立場に一段と優劣ができてしまったんじゃないか?
てゆーか、娘の一声で融資を増やしたりするなんて、あるのか?
どんだけ娘が可愛いんだ。親バカか。
「つまりミアからしたら、エマは完全に頭の上がらない金貸しみたいな存在なんだな」
「な、なんだよその言いかた」
「ミアからしたらって話だよ」
「でも、うちの銀行からミャーミャーんちの店への融資は前からやってるから、今さらじゃん」
「蓄積されて今に至ったってことじゃないか」
次第にエマがずーんと沈んでいく。
俺の言い方にも問題があったかもしれない。
俺には過去に似たような光景を間近で目にしたことがあったから、ついキツイ言い方になってしまった。
実は昔、実家の神社が経営難に陥ったことがあって、両親とも方々に頭を下げながらお金の工面に苦労していたんだ。
ミアの家も、謂わばそんな状況なんじゃないだろうか。
真面目なミアは、高校生の娘ながらもその状況をよく理解していて、ゆえにエマに対して過度に遠慮してしまっている......。
「で、でもさぁ」
エマが困った顔を浮かべた。
「だったらミャーミャーんちの店の経営が好転しないかぎり解決しないってことじゃね?学生のあーしにはなんもできないじゃん」
確かにそうだ。
一学生の俺たちにどうこうできる問題じゃない。
商売繁盛の魔法なんかないしな。
......ん?
学生にはできない。魔法。......あっ。
「いいこと思いついたかも」
「?」
きょとんとするふたりに向かって、俺は言う。
「俺たちだけだと厳しいから、助っ人を頼んでみるのはどうだろう?」
「助っ人?」
「それとエマ。お前の魔法、役立つかもしれないぞ」
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