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動乱編
ep99 信頼
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*
「てかヤソガミってさ、マジでめちゃくちゃだよな」
エマがきゃはははと笑った。
「加減を知らないってゆーか」
「めちゃくちゃってわけではない。断じて......」
しかしそれ以上の言葉が出ない。
今回の合同魔術演習の内容は「仮想ゼノを捕獲して森から脱出すること」。
そう。「仮想ゼノを始末すること」ではないんだ。
俺は見事に魔犬どもをやっつけてしまった。
力の制御はできていたつもりだけど、それでもやり過ぎだった。
「ヤソガミ氏が、そんなに野蛮だったとは」
「そんなことはないぞ。俺はむしろそういうの、嫌いだし」
「自覚がないんなら尚更じゃん」
「エマちゃん。ヤソみんは野蛮ではないよ。ただ、魔法が強力すぎるだけなんだよ」
「でも、そこが問題だよね」
ミアが指摘する。
「さっきまで気がつかなかったけど、仮想ゼノを退治するんじゃなく捕獲するってことの意味はこういうことだったんだね。魔法の制御を実践形式で学ばせるためなんだ」
ここでふと俺は、あることが頭に思い起こされる。
それは授業最初に行われたガブリエル先生のルール説明。
なんだろう。何かが引っかかる。
「ヤソガミくん!」
ミアが猫耳をピクッとさせていち早く反応した。
どうやら仮想ゼノは考える暇も与えてくれないらしい。
視線の先から二頭の魔犬が向かってきていた。
皆、臨戦体制に入る。
「よし!今度こそヤツらを捕らえるぞ!」
*
「小僧」
イナバが頭から肩にひょっと降りてきた。
「何を落ち込んでおるのじゃ?」
そんなこと決まってるだろ。
みんなから俺に「戦闘禁止令」が下されたからだ!
すでに森に入ってから何度か戦闘を繰り返したが、未だに仮想ゼノ捕獲には至っていない。
原因は俺。
制御はできているつもりだけど、それでも俺の魔法は強力すぎるらしい。
「あーしだって役立ててないんだしさ」
エマが慰めの言葉をかけてくれたが、エマと俺とじゃ訳が違う。
「いや、エマの場合は魔法のタイプ的な問題で仕方がないけど、俺の場合は完全に俺自身の問題だから」
「ま、まあ、今回はミャーミャーとフェエルに任せるってことでいいじゃん」
「ぼくたちのことは気にしなくていいよ。今までヤソみんには助けられてばっかりだったし」
フェエルとミアが互いに頷き合ってから俺に微笑みかけてきた。
「うん。今までヤソガミくんに助けてもらったお礼、できていないし」
普段は控えめで大人しいふたりが、とても頼もしく見える。
いや、その言い方はフェエルとミアに対して失礼だ。
このふたりも、国家魔術師を目指している魔術師の卵なんだ。
「それに」
フェエルとミアは再び視線を交わし合うと、俺にあたたかい視線を向けてきた。
その眼差しに滲み出ているのは、厚い信頼の色。
「ぼくとミアちゃんが戦えているのは、後ろにヤソミんが控えていてくれるからだよ」
「気の弱いわたしとフェエルくんでも、ヤソガミくんがいると思えば安心して戦えるんだ」
イナバが俺の頬にポンと手を当ててくる。
「ということだそうじゃ」
俺はイナバに目で頷いて見せてから、フェエルとミアにあたたかい視線を返した。
とその時。
「てか、あーしもいるし!」
エマがあわてて割って入ってきた。
「あーしもチームヤソガミだし!」
キーッとなるエマを見ながら、みんなから自然と笑顔が溢れた。
それから俺はあいつへ振り向く。
「ライマスもな」
すぐに視線を逸らされたけど、ライマスもまんざらではなさそうだ、と勝手に思っておく。
チームヤソガミ、か。
まだ初陣も初陣だけど、良い結果でスタートしたいな。
「てかヤソガミってさ、マジでめちゃくちゃだよな」
エマがきゃはははと笑った。
「加減を知らないってゆーか」
「めちゃくちゃってわけではない。断じて......」
しかしそれ以上の言葉が出ない。
今回の合同魔術演習の内容は「仮想ゼノを捕獲して森から脱出すること」。
そう。「仮想ゼノを始末すること」ではないんだ。
俺は見事に魔犬どもをやっつけてしまった。
力の制御はできていたつもりだけど、それでもやり過ぎだった。
「ヤソガミ氏が、そんなに野蛮だったとは」
「そんなことはないぞ。俺はむしろそういうの、嫌いだし」
「自覚がないんなら尚更じゃん」
「エマちゃん。ヤソみんは野蛮ではないよ。ただ、魔法が強力すぎるだけなんだよ」
「でも、そこが問題だよね」
ミアが指摘する。
「さっきまで気がつかなかったけど、仮想ゼノを退治するんじゃなく捕獲するってことの意味はこういうことだったんだね。魔法の制御を実践形式で学ばせるためなんだ」
ここでふと俺は、あることが頭に思い起こされる。
それは授業最初に行われたガブリエル先生のルール説明。
なんだろう。何かが引っかかる。
「ヤソガミくん!」
ミアが猫耳をピクッとさせていち早く反応した。
どうやら仮想ゼノは考える暇も与えてくれないらしい。
視線の先から二頭の魔犬が向かってきていた。
皆、臨戦体制に入る。
「よし!今度こそヤツらを捕らえるぞ!」
*
「小僧」
イナバが頭から肩にひょっと降りてきた。
「何を落ち込んでおるのじゃ?」
そんなこと決まってるだろ。
みんなから俺に「戦闘禁止令」が下されたからだ!
すでに森に入ってから何度か戦闘を繰り返したが、未だに仮想ゼノ捕獲には至っていない。
原因は俺。
制御はできているつもりだけど、それでも俺の魔法は強力すぎるらしい。
「あーしだって役立ててないんだしさ」
エマが慰めの言葉をかけてくれたが、エマと俺とじゃ訳が違う。
「いや、エマの場合は魔法のタイプ的な問題で仕方がないけど、俺の場合は完全に俺自身の問題だから」
「ま、まあ、今回はミャーミャーとフェエルに任せるってことでいいじゃん」
「ぼくたちのことは気にしなくていいよ。今までヤソみんには助けられてばっかりだったし」
フェエルとミアが互いに頷き合ってから俺に微笑みかけてきた。
「うん。今までヤソガミくんに助けてもらったお礼、できていないし」
普段は控えめで大人しいふたりが、とても頼もしく見える。
いや、その言い方はフェエルとミアに対して失礼だ。
このふたりも、国家魔術師を目指している魔術師の卵なんだ。
「それに」
フェエルとミアは再び視線を交わし合うと、俺にあたたかい視線を向けてきた。
その眼差しに滲み出ているのは、厚い信頼の色。
「ぼくとミアちゃんが戦えているのは、後ろにヤソミんが控えていてくれるからだよ」
「気の弱いわたしとフェエルくんでも、ヤソガミくんがいると思えば安心して戦えるんだ」
イナバが俺の頬にポンと手を当ててくる。
「ということだそうじゃ」
俺はイナバに目で頷いて見せてから、フェエルとミアにあたたかい視線を返した。
とその時。
「てか、あーしもいるし!」
エマがあわてて割って入ってきた。
「あーしもチームヤソガミだし!」
キーッとなるエマを見ながら、みんなから自然と笑顔が溢れた。
それから俺はあいつへ振り向く。
「ライマスもな」
すぐに視線を逸らされたけど、ライマスもまんざらではなさそうだ、と勝手に思っておく。
チームヤソガミ、か。
まだ初陣も初陣だけど、良い結果でスタートしたいな。
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