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動乱編
ep100 簡易アルマ
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「小僧。また現れたぞ」
さっそくまたまた前方に魔犬どもが現れる。
今度は四頭。
「ミアちゃん」
「うん」
フェエルとミアがサッと一歩前に出る。
俺は御神札を構えてエマの傍につく。
「ねえヤソガミ」
「なんだ?」
「ふと思ったんだけどさ。あの魔犬、あんまり強くないよな?戦ってないあーしが言うのもなんだけど」
「そう言われれば、そうなのかな」
「たぶん、実際の小魔レベルのゼノより弱いよ?」
「ガブリエル先生が生徒の安全を考えて調節しているんじゃないか?」
「フツーに考えれば、そーだけどさ」
「そんな優しい先生には見えないけど」
「それな」
そんな会話をしている間に戦闘の決着がついた。
フェエルの緑魔法で動きを止められ、ミアの風魔法で戦闘不能となった魔犬どもが地面に横たわっている。
「とりあえずこれで四頭捕獲成功じゃん」
エマと俺はフェエルたちに歩み寄っていってハイタッチし合った。
「あと一頭捕獲すれば、全員ゼロではなくなるね」
フェエルがライマスに向かってやさしく微笑んだ。
バツが悪そうに小さく頷くライマスを見て俺は「そういえば...」となる。
「ヤソみん?どうしたの?」
「この石なんだけど......」
俺はポケットから、授業の最初に配られた〔簡易アルマ〕の石を取り出した。
「俺もエマもライマスも、これを使えば簡単に魔犬を捕らえることができるんだよな。......あれ?」
なぜかみんながきょとんしている。
え、俺なんか変なこと言った?
「ヤソガミって、あんなにスゴイ魔法使うのに、世間知らずってゆーの?マジウケるし」
くすくすと笑いながらエマがフェエルに振った。
「ヤソミん。その〔簡易アルマ〕はね?」
「ああ」
「倒した仮想ゼノを運ぶために使うのが第一の利用方法なんだよ」
「つまり、捕獲ではなく運搬ってことか?」
「もちろん直接捕獲することにも使えるけど、それだと複数の魔犬を捕らえるのは難しい。そして、〔簡易アルマ〕を使わずに倒した複数の魔犬は、物理的に運ぶのが難しい」
なるほどと思った。
そういえばハウ先生は仮想アルマの説明で「一回しか使えない」と言っていた。
「一体に対してしか使えない」とは言っていない。
「てゆーか、みんなよくあの説明だけでわかったな」
「あ、あの、ヤソミん」
「?」
「ガブリエル先生が、ジェットレディと同じコランダムクラスの国家魔術師で、高名なゼノ研究者だってことは、知らない?」
すいません。
全然知りません。
という顔で押し黙る俺。
「ええと......」
フェエルはやさしく苦笑してから説明してくれた。
なんでもガブリエル先生は、研究対象のゼノを捕らえて運ぶため、まさに「運搬用の簡易アルマ」を利用しているのだった。
それはリュケイオン魔法学園魔法科の生徒であれば周知の事実だという。
「だからみんな言われるまでもなく理解できていたってわけか...」
「うん。じゃあせっかくだから、説明ついでに一個使ってみようか」
フェエルの言葉を受け、みんなで倒した魔犬たちを一箇所に集めた。
「いくよ?」
簡易アルマの石をポケットから取り出したフェエルは、集められた四体の魔犬に向かってぴゅっと投げた。
一体の魔犬の体にパシッとぶつかる。
その瞬間、石からブゥーンと魔法陣が浮かび上がる。
「あっ、魔犬が」
魔法陣が鈍く光り始め、四体の魔犬たちを薄い光状の膜が繭のように包み込む。
魔法の繭は間もなくぎゅっと縮小したかと思うと、シューッと石に吸い込まれるように消えていった。
残ったのは、コロンコロンと地面に転がる石だけ。
「こういうことだよ」
フェエルは俺に笑顔を向けてから石を回収しにいった。
その時。
急に閃いたように嫌な予感に襲われた。
「フェエル」
反射的に呼び止めていた。
フェエルは足を止めて「?」と振り向いた。
転瞬、俺の中にあった点と点が線になる。
と同時に、フェエルへ向かって駆け出した。
「ヤソミん?」
フェエルが疑問の声を上げた時。
彼の後ろでドーンと小爆発が起こった。
さっそくまたまた前方に魔犬どもが現れる。
今度は四頭。
「ミアちゃん」
「うん」
フェエルとミアがサッと一歩前に出る。
俺は御神札を構えてエマの傍につく。
「ねえヤソガミ」
「なんだ?」
「ふと思ったんだけどさ。あの魔犬、あんまり強くないよな?戦ってないあーしが言うのもなんだけど」
「そう言われれば、そうなのかな」
「たぶん、実際の小魔レベルのゼノより弱いよ?」
「ガブリエル先生が生徒の安全を考えて調節しているんじゃないか?」
「フツーに考えれば、そーだけどさ」
「そんな優しい先生には見えないけど」
「それな」
そんな会話をしている間に戦闘の決着がついた。
フェエルの緑魔法で動きを止められ、ミアの風魔法で戦闘不能となった魔犬どもが地面に横たわっている。
「とりあえずこれで四頭捕獲成功じゃん」
エマと俺はフェエルたちに歩み寄っていってハイタッチし合った。
「あと一頭捕獲すれば、全員ゼロではなくなるね」
フェエルがライマスに向かってやさしく微笑んだ。
バツが悪そうに小さく頷くライマスを見て俺は「そういえば...」となる。
「ヤソみん?どうしたの?」
「この石なんだけど......」
俺はポケットから、授業の最初に配られた〔簡易アルマ〕の石を取り出した。
「俺もエマもライマスも、これを使えば簡単に魔犬を捕らえることができるんだよな。......あれ?」
なぜかみんながきょとんしている。
え、俺なんか変なこと言った?
「ヤソガミって、あんなにスゴイ魔法使うのに、世間知らずってゆーの?マジウケるし」
くすくすと笑いながらエマがフェエルに振った。
「ヤソミん。その〔簡易アルマ〕はね?」
「ああ」
「倒した仮想ゼノを運ぶために使うのが第一の利用方法なんだよ」
「つまり、捕獲ではなく運搬ってことか?」
「もちろん直接捕獲することにも使えるけど、それだと複数の魔犬を捕らえるのは難しい。そして、〔簡易アルマ〕を使わずに倒した複数の魔犬は、物理的に運ぶのが難しい」
なるほどと思った。
そういえばハウ先生は仮想アルマの説明で「一回しか使えない」と言っていた。
「一体に対してしか使えない」とは言っていない。
「てゆーか、みんなよくあの説明だけでわかったな」
「あ、あの、ヤソミん」
「?」
「ガブリエル先生が、ジェットレディと同じコランダムクラスの国家魔術師で、高名なゼノ研究者だってことは、知らない?」
すいません。
全然知りません。
という顔で押し黙る俺。
「ええと......」
フェエルはやさしく苦笑してから説明してくれた。
なんでもガブリエル先生は、研究対象のゼノを捕らえて運ぶため、まさに「運搬用の簡易アルマ」を利用しているのだった。
それはリュケイオン魔法学園魔法科の生徒であれば周知の事実だという。
「だからみんな言われるまでもなく理解できていたってわけか...」
「うん。じゃあせっかくだから、説明ついでに一個使ってみようか」
フェエルの言葉を受け、みんなで倒した魔犬たちを一箇所に集めた。
「いくよ?」
簡易アルマの石をポケットから取り出したフェエルは、集められた四体の魔犬に向かってぴゅっと投げた。
一体の魔犬の体にパシッとぶつかる。
その瞬間、石からブゥーンと魔法陣が浮かび上がる。
「あっ、魔犬が」
魔法陣が鈍く光り始め、四体の魔犬たちを薄い光状の膜が繭のように包み込む。
魔法の繭は間もなくぎゅっと縮小したかと思うと、シューッと石に吸い込まれるように消えていった。
残ったのは、コロンコロンと地面に転がる石だけ。
「こういうことだよ」
フェエルは俺に笑顔を向けてから石を回収しにいった。
その時。
急に閃いたように嫌な予感に襲われた。
「フェエル」
反射的に呼び止めていた。
フェエルは足を止めて「?」と振り向いた。
転瞬、俺の中にあった点と点が線になる。
と同時に、フェエルへ向かって駆け出した。
「ヤソミん?」
フェエルが疑問の声を上げた時。
彼の後ろでドーンと小爆発が起こった。
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