八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった

根立真先

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動乱編

ep129 八十神の本気

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「そうか」

 シャレクがいち早く理解する。

「ケルベロスは魔力に反応する性質がある。だから彼女の鏡魔法で作り出したランラの映像に雷撃を放ってしまったんだ。映像とはいえ、それは魔力そのものだからな」

「でも、位置とタイミングを間違えたら、それこそ自分自身が被弾してしまう可能性もある。判断と行動の早さは良いけれど、運に救われたわね」

 ジークレフ学校委員長が半ば批判するように補足した。
 俺は彼女に怪訝な眼差しをぶつける。
 そもそもあんたが俺を止めなかったら、エマがそんな危険をおかす必要もなかったんだぞ?

「なに?」

 学校委員長は冷たい視線を返してきた。
 言いたいことはあるが、今はそんなことをしている場合じゃない。

「ヤソガミ氏!生徒会長!ケルベロスが!」

 ライマスが慌ててケルベロスを指さした。
 転瞬。
 ケルベロスがエマに向かって突進する。

「チッ!」

 ランラがエマの前に躍り出た。

「テメーは退がれ!」

「あ、足が」

 エマは立ち上がれない。
 
「姉さん!」

 リンリも姉の隣に並び立った。
 エマに襲いかかるケルベロスに対しレイ姉妹が立ちはだかる形となる。
 俺も加わろうと飛び出した時。

 ズドドドドッ!!

 シャレクの魔法の矢による波状攻撃がケルベロスに着弾した。
 ケルベロスの突進スピードが減速する。
 それでも魔獣は止まらない。
 レイ姉妹が迎撃態勢に入る。
 その時。

「えっ?」

 なんと、ケルベロスの体が突進しながら光り出した。
 そのまま電撃も放つつもりか!
 
「ランラ!リンリ!離れろ!」

 俺は駆けながら叫んだ。

「フィッツジェラルドさんがいるんですよ!?」とリンリ。

「俺に任せろ!」

 レイ姉妹は一瞬だけ迷ったが、すぐに左右へ散る。
 そこへ俺が飛び込んでエマの目の前に立った。

「や、ヤソガミ!」

「大丈夫だ!俺が守る!」

 この時、俺は自然とそれを行っていた。
 考えてやったというより、危機的状況で勝手に身体が動いたと言っていい。
 俺の魔法は発動するための動作にやや時間がかかる。
 決定的な弱点だ。
 ではこうするのはどうだろう。
 防御しながら魔術動作に入ってしまうのは。

 ドガァァァァァァン!!

 予想通り雷撃が来た。
 エマの代わりに俺が的になった。
 強烈だが俺なら耐えられる。
 俺は御神札を掲げて防御しながら、御神札に神名を走らせる。
 初めてやったにしてはうまくやれたんじゃないか。

「〔天照大神アマテラスオオミカミ〕」

 雷撃が止んだ直後、魔法を発動した。
 俺の前に、神々しい白光を放ちながら、優美な神御衣かむみそを纏いし美しき女神が現れる。
 彼女は日本の最高神。
 すなわち、これは俺の持つ最強の魔法だ。

「!!」

 その場にいる誰もが、アマテラスの御姿みすがたに目を奪われている。
 もしかしたら、ケルベロスも。

 パァァァァァァッ!!

 神々しき女神がゆっくりと瞼を開いた時、眩いばかりの小さな太陽が森の上空に浮かび上がった。

「ギャアァァァァァッ!!」

 途端にケルベロスがけたたましい悲鳴を上げる
 奴の全身が溶けるように焼け始めていた。
 だが、森の木々にはまったく影響していない。
 やっぱり、と思った。
 天照大神の太陽は、邪悪な者のみを溶かすんだ。 

「良いぞ。以前とは違うな」

 イナバの言葉に俺は自信を滲ませる。
 今の俺は魔法学園の特待生。
 ヤソジマの時の俺とは違うんだ!

「す、すごい......」

 さすがのシャレクとジークレフさんも、驚嘆の息を漏らしている。
 なんせあのジェットレディも「とんでもない魔法」と言っていたぐらいだ。
 あの時は途中で魔法が途切れてしまったけど、今なら最後までいける。 

「このままケルベロスを、倒す!」
 
「ヤソガミ!すぐにその魔法を止めろ!」

「!?」

「いいから早く止めろ!」

「誰...」

 声の方に振り向いた。
 その姿を見て、俺は素直に魔法を解除した。
 ガブリエル先生だった。
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