八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった

根立真先

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動乱編

ep144 聞き捨てならないこと

「その呼び方はやめなさい」

 ジークレフ学級委員長が肩をそびやかせて颯爽とこちらへ向かって歩いてくる。
 その視線はフェエルには一瞥もくれず、スラッシュと俺を鋭く突き刺してくる。

「コーリングくん。貴方は何をしようとしているの?」

「ああ?」

 スラッシュと学級委員長が睨み合う。
 一段と空気が緊迫する。

「まあまあ二人とも」

 そこへ相変わらずの調子でセリクが間に入ってきた。

「セリク。貴方はいい加減にふざけるのはやめて」

 学級委員長は目に苛立ちを滲ませる。

「フザけてなんかいないさ。ボクはただ久しぶりに登校したスラッシュにヤソガミくんを紹介してあげようと思っただけさ」

「なぜそんな余計なことをしようとするの」

「なんでお前が仕切ろうとしてんだ」

 スラッシュが妙に静かな調子で学級委員長を制した。
 揉めているというわけでもなさそうだが、ふたりは微妙な距離感だ。
 セリクはいつも通りなのでよくわからない。
 いや、そもそも三人の関係性がよくわからない。

「なあフェエル」

「な、なに?」

「あいつらって、友達なのか?」

「セリクくんとスラッシュくんは小さい頃からの知り合いらしいけど......友達かどうかはわからないよ。ユイちゃん...じゃなくてジークレフさんに至っては、スラッシュくんとはクラスメイトってこと以外なにがあるのか、ぼくには.....」

「そうか」

 俺は改めて学級委員長に視線を転じる。

「なに?」

 彼女は目ざとく反応してきた。
 なにと言われても、訊きたいことが山ほどあるのはこっちだ。
 やっぱりハッキリさせないと気が済まなくなってきたぞ。

「委員長」

「だからなに?」

「あとで話したいことがあるんだが」

「話とは?」

 間髪入れず委員長は冷たい口調で訊き返してきた。
 仕方ない反応かもしれない。
 委員長が告発したという事実を俺が知ってしまったことを、彼女は知らない。
 だからしょうがないんだけど......正直、イラッとした。

「その話。オレも聞かせてもらっていいか」

「えっ」

 俺は虚をかれた。
 どういうつもりなのか、スラッシュが割り込んできたからだ。

「じゃあ、ボクも参加させてよ」

 こちらは真面目なのかフザけているのか、セリクも便乗してくる。

「ヤソみん。ちょっとタイミング悪いよ」

 フェエルに注意される。
 確かにタイミングとしては最悪だった。
 委員長に切り出すなら、今じゃなかった。
 ......それにしたって、セリクは別にしても、スラッシュはどういうつもりなんだ?

「なんでお前がって顔してるな」

 俺の心を見透かしたようにスラッシュが口端に微かな笑みを浮かべる。

「委員長と俺の問題だからな」

 当然のように俺が答えると、スラッシュは驚くべきことを口にする。

「コイツは俺のオンナだ」

 スラッシュは委員長の手首を掴んで自分にその体を引き寄せた。
 俺だけじゃない。
 フェエルもエマもミアも、目が点になる。

「あ、あんたら、付き合ってんの?」

 エマがわなわなと遠慮気味にふたりを交互に指さす。
 委員長の表情は変化している気がするが、感情は読み取れない。
 本当にふたりはそういう関係なのだろうか。
 そうであればスラッシュの行動も腑に落ちるが......。

「エマちゃんとヤソガミくんは付き合ってるの?」

 ふたりが答えるが先にセリクが笑顔で答えた。
 いや、答えじゃない。
 逆質問だ。

「へっ?」

 予想だにしない返しにエマは間抜けな声を出す。
 セリクは実に楽しそうに続ける。
 
「ねえエマちゃん、どうなのかな?」

「な、なんでそんなハナシになるんだよ」

 エマは顔を赤くしてうろたえる。

「ヤソガミくんは優しいよね」

「そ、それがなんだよ」

「エマちゃんにあんなことされたのに、受け入れて仲良くしてあげてるんだから」

「!」

 エマは思わず押し黙る。
 そこへセリクが聞き捨てならないことを口にした。
 
「まあ、心の底でどう思ってるかはわからないけどね」

 これには俺たち全員の顔色が変わる。
 なんでそんなことを言うんだ?

「それはもう終わった話だ」

 無意識に俺は立ち上がっていた。
 
「じゃあヤソガミくんは、エマちゃんのことを本音ではどう思っているのかな?」

 セリクは笑顔のままで訊いてくる。
 俺にいったい何を言わせたいんだ?

「もうやめなさい」

 委員長がセリクへ注意を入れた。
 
「べつに悪気があったわけじゃないよ」

「それもそれで問題よ」

「厳しいな~ジークレフさんは」

「もう席に戻りなさい。貴方も、コーリングくんも」

 委員長は肩をいからせてセリクとスラッシュに命令した。

「ふん」

 意外にも真っ先にスラッシュがきびすを返して席に戻っていった。
 セリクは俺たちに会釈をしてから、スラッシュに続いていった。

「騒がせたわね」

 彼らに続いて委員長も背中を向けようとした時、俺は彼女を呼び止める。

「あとで話す時間はもらえるのか?」

「私に貴方と話すことはないわ」

 結局、にべもなく委員長は俺の要求を断って行ってしまった。
 ちょうどそのタイミングでハウ先生が教室に入ってくる。

「皆さんすいません。少々遅れてしまいました」

 すぐに俺たちはハウ先生に視線を送るが、先生はいたって通常通りな振る舞いで反応を示さなかった。
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