八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった

根立真先

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動乱編

ep161 カレンの戦術

 俺は力を緩め、ふぅーっと息を吐いた。
 うまくいった。
 これでいいんですよね、と魔法剣士カレンのほうへ振り向く。
 ところが彼女の姿はもうそこにはなかった。
 俺は即座にピンと来て、ロテスコたちがいる建物の屋根の上にパッと視線を転じる。
 やはりだ。
 魔法剣士もそこへ立ち、ロテスコと黒ずくめの男へ迫っていた。
 反対サイドには三節棍を構えたリンリが立ち、ふたりで挟み込むような形になっている。

「俺にプテラスキングをやらせたのはカレンさんの作戦だったのか?」

 それだけじゃない。
 シャレクたちの動きは明らかに連携されていた。
 すべてはエマを救い出した上で魔鳥獣を倒し敵を押さえるための戦術だったということなのか。
 それをはかり指揮したのは、間違いなく魔法剣士カレンだろう。
 この状況で初対面の俺を利用し、そんなことをやってのけるなんて。
 これがダイヤモンドクラスの国家魔術師ということか。
 いずれにしても、エマが助かって良かった。

「ヤソガミ!」

 エマは俺たちのところへ戻ってきたかと思うと、俺の胸に飛び込んできた。
 俺は頬を緩めた。
 
「助かって良かった。ランラに感謝だな」

「うん。悔しいけどあのコ、すごいよ」

「エマちゃん!」

 ミアも駆け寄ってくる。
 エマは俺から離れると、今度はミアと抱き合った。
 俺はフェエルに微笑みかけ、ふたり頷き合ってから再びロテスコたちへ視線を戻した。

「魔法犯罪組織〔エトケテラ〕のロテスコとその仲間。大人しく投降しろ。そうすれば痛い目は見ないで済むぞ」

 魔法剣士カレンはロテスコたちへ最後通告を突きつけた。 

「ふ、フザけるな!お前は手を出さないと言ったはずだ!」

 往生際の悪いロテスコが抗議する。

「そうだな。約束通り私は手を出していない」

「なっ!」 

「それに私が手を出そうとすれば貴様は早々にあの女子をさらったまま逃げていってしまっただろう?」

「だ、だからわざとガキどもにやらせたのか!」

「貴様が思惑通りに動く単純な奴で良かった」

「くっ......!」

 ロテスコはぐうの音も出なくなる。
 すでに彼は追い詰められた。
 彼の前にはオリエンス最高の魔法剣士が、後ろには魔法学園生徒会委員のリンリが立っている。

「くっ、ここは即離脱だ!こんな所でダイヤモンドクラスとやり合うバカがいるか!フザけるな!」

 ロテスコは黒ずくめの仮面男へがなり立てた。
 仮面男は「チッ」と舌打ちしてから、何やら全身にバチバチと魔力を迸らせる。
 何をする気なんだ?

 バチィィィィィッ!  

 一瞬だった。
 ヤツらがいた屋根の上に電光が疾ったと思ったら、ロテスコの姿が煙をいたように忽然こつぜんと消えていた。

「ど、どこに!?」

 俺たちが視線を彷徨わせた時、すでにロテスコは黒ずくめの仮面男に抱えられて別の建物の屋根の上へ移動していた。
 位置的に見るとリンリの横を通り過ぎたと思われる。 
 当のリンリはやっと背後を振り向いていた。
 おそらく、最高の魔法剣士と真反対の方向をもっとも安全だと判断したんだろう。

「逃げられた!」

 誰もがそう思った。
 しかし、猛スピードで逃走する仮面男へ、超スピードで追いつく者がいた。
 魔法剣士カレンだ。
 やはりオリエンス最高の魔法剣士に隙はなかった。
 誰もがそう思った矢先。
 突然、魔法剣士の足がピタッと止まった。

「な、なんだ?」

 俺たちは彼女の行動の意味が理解できない。
 結局、その間にロテスコと仮面男は逃げていってしまった。
 魔法剣士は様子をうかがうように周囲を見渡す。
 何かを探している?

「ど、どうしたんだろうね」

 彼女を眺めながらフェエルが言った。
 
「お、俺にもわからない」

 俺は彼女の弟子であるシャレクへ振り向いてみた。
 だが、彼も怪訝けげんな様子で佇んでいるのみだった。
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