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ep69 〇っぱい星人

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「えへへ」

 ウサは愛くるしい猫のように俺の肩へほほをすりすりしてくる。
 俺は引きつづき無心さをつらぬくが......

「ねえおにーちゃん」

 ウサが呼びかけてきた。
 甘え声から一転、声のトーンが妙に低い。
 俺はドキッとして彼女のほうへ寝返りをうつ。

「ど、どうした?」

「おにーちゃんは、ウサがくっつくのがイヤなの?」

「えっ?い、イヤじゃないよ」

「だっておにーちゃん。いくらウサが甘えても触ってきてくれないどころかずっと銅像のように動かないし」

「そ、それは」

「どうせおにーちゃんはおっぱい星人なんだ」

「はっ??」

「ウサのおっぱいはネーコおねーちゃんやトラエおねーちゃんのように巨乳につくられていないから」

「いやいやそれは関係ないから...」

「かんけいある!ゼッタイそーだ!」

 ウサは言い張った。
 その時。

「そうだ。フミヒロは大の巨乳好きだ。だから慎ましい胸のウサには興味を抱けないのは仕方あるまい」

 いきなり背後からトラエが肉薄してきた。
 と同時に、俺の背中にふたつの柔らかいものがむにゅうっと押しつけられる。

「と、トラエ!?」

「大丈夫だフミヒロ。ワタシに任せておけ」

 トラエが頼もしくコソッと囁いてきた。

「で、でも、なんで背中に抱きついて...」

「いいから任せろ」

「トラエおねーちゃんがなんでそこにいるの?」

 ウサがいぶかしそうにトラエに問いかけた。

「ああ。見てられなくてな」

「どういうこと?」

「いいか?言ったとおりフミヒロは大の巨乳好きだ。だからウサには興味を示さないのだ」

 トラエは遠慮なく言いすてた。
 ......そんなこと言っちゃっていいんですか!?

「やっぱりそうなの!?」

 違います。

「現にこうしてフミヒロの背中にワタシの胸を押し当てると、フミヒロの体温が高まっていくのを感じる」

 なにを言ってるんですか貴女は。

「じゃあウサもそれやる!」

 なんでそうなる。

「ダメだ。フミヒロは巨乳しか受けつけない。これは先天的なものなんだ。何せフミヒロの母が巨乳だからな」

 やめてください母まで持ち出すのは。

「ガーーーン!」

 何に対してのショック?

「だからウサ。貧乳のお前は諦めろ。あとは巨乳のワタシに任せるんだ」

 なんでそんな挑発的な言い方をするんですかトラエさん。

「トラエおねーちゃんのイジワル!!」

 ウサは俺の腕をパッと離しぷんぷんして反対を向いた
 これは......助かったのか?

「これで安心して寝られるな、フミヒロ」

 トラエは押し当てていた胸を離してささやいた。

「あ、ありがとう。トラエ」

「以前からウサはワタシとぶつかることが多かったんだ。だからワタシが介入すれば泣くよりもイラ立つ方向へ進むと思ってな。どうやらうまくいったようだ」

 またしてもトラエに助けられてしまった。
 思わず俺は口走る。

「トラエ...姉ちゃん」

「なんだ?どうかしたか?」

 トラエはなんの変哲もない反応。

「な、なんでもないよ!おやすみ!」

「ああ。おやすみ」

 俺はトラエの存在に安心感を覚え、間もなくまどろんでいった......。
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