しにかけの転生者~しにかけた中年はしにかけた青年に転生し異世界で魔剣使いになる~

根立真先

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魔剣士誕生編

ep37 決着

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「よう。ずいぶんハデにやってくれちゃったみたいじゃん、キミ」

 ドレッド頭はガンつけるようにしゃがみ込んで、俺に向かって喋りかけてきた。

「おまえは......死んだんじゃないのか?なぜここにいる?」

「キミとその剣のチカラ......な~んか妙なモノを感じるねぇ。キミさぁ、なにもん?」

「おまえこそ何者だ?アンデッドとかいうヤツか?」

「オイオイ会話になってねーじゃん。まあいいさ。で、魔導書は?」

「それは知らないって言っただろ?まさかお前らは、それを探すために街をメチャクチャにしたのか?」

「メチャクチャにしたのは......まあ、ライフワークみたいなもんさ」

「お前らはマジでなんなんだ!?」

「あ、どうも。ぼくたち〔フリーダム〕です」

「ダメだ......話にならない!」

「いや~まったく、キミひとりにずいぶんヤラレちゃったみたいだねぇ」

「......」

「この地域は、マジメな勇者軍の連中の駐在地も遠くないとこにあるからさぁ。さっさと済ませたかったんだけどさぁ。キミのせいで台無しなんだよね~」

「勇者軍??」

「国際平和維持軍だったか?正式には。こんなとこで長々とあんまり騒いでるとさぁ、ウチの連中もうるさいからさぁ」

「さっきからなんの話だ??」

「つーことで、不本意ながら、おいとましますわ」

「は?」

「ただ、このままおめおめ帰るのも忍びないからさぁ。最後にお土産どうぞ」

「みやげ?」

 ドレッド仮面はおもむろに、空に向かって片手を掲げる。

特殊技能スペシャリティ〔パープル・ヘイズ〕」

 すると、ヤツの掲げた手の数十メートル先、空中の空間に、紫色の煙炎の塊がズズズズッと発生する。
 紫の煙炎は間もなく数メートルの大きさになり、宙に浮かんだまま凶暴に渦巻く。

「あ、あれは、魔法か!」
 
「キミ、そこのエールハウスから出てきたよねぇ?」

「え?」

「けっこう人、いたよねぇ」

「!」

「それじゃあ、はい。おつかれさま~」

「待て!倒れてるが、お前らの仲間だっているぞ!?」

「それも含めて、おつかれさまってこと......よっ!」

 ヤツが腕をサッと振り下ろした。
 それに呼応して、紫の煙炎がエールハウスめがけ無遠慮にゴオォォォ!と落下し始める。
 その時、

『やるのです!貴方はこの次元に唯一無二の、深淵の魔導剣士!』

 俺の頭に〔謎の声〕が響いた。
 転瞬、ドンッ!と俺は疾風のごとく飛び出し、地を蹴り壁を蹴り宙をうねり舞いながら、落下する煙炎に向かって突っ込んだ。

「うおぉぉぉぉ!!」

 なぜこんな無謀なことを?
 違う。無謀なんかじゃない。
 俺の魂と、俺の手に握られた剣が、確信的に俺に囁くんだ。
 “できる"と。

特殊技能スペシャリティ〔ニュンパ・ラスレイション〕』

 俺の体は宙を猛き旋風のようにうねりながら、〔魔導剣〕はあらゆるものを斬り裂くような凄まじい一閃を描く。

「はぁ??なにそれ??」

 感情の見えないドレッド仮面が、はじめて動揺したような声を上げた。
 他の仮面のヤツらも一様に驚きを隠せない。

「なっ!なんだ!?」
「どういうことだ!?」
「なんだあの力は!」

 俺はヤツの〔パープル・ヘイズ〕を見事に斬り裂いた。
 斬り裂かれた紫の煙炎は、宙に散り消えてしまったかのように滅失した。

「で、できた......」

『それこそが、〔魔導剣〕の真の力です』

『真の力......』

『〔魔導剣〕は、この世のありとあらゆる魔法を斬り裂きます』

 エールハウスの屋根に着地した俺は、ドレッド仮面へ剣尖を立てる。

「次はオマエだ!」

「......ふーむ、魔剣使い......か。これはまた、とんだイレギュラーだなぁ」

「次はオマエを斬る!」

「なかなか、オモシロイねぇ、キミ」

「?」

「おっけーおっけー。ほんじゃ、宴もたけなわってことで」

「逃げるのか!?」

「戦略的撤退ってヤツさ。今ここでこれ以上キミとやっても利益がない。いろんなイミでね」

「......お前ら〔フリーダム〕は、何者なんだ?」

「じゃ、おつかれさん」

「ま、待て!」

「......これ以上、キミひとりで街の人を守れるのかい?」

「...!それは...」

「どうやらキミは能力のわりに、頭がまだまだみたいだねぇ。まっ、ぼくたちのことを知りたければ〔フリーダム〕まで会いにくれば?」

「!」

「じゃ、おつかれ」

 仮面のヤツらは、ドレッド頭に従って一気一斉に退散していった。
 街をメチャクチャにしておきながら、なんの悪びれもなくあっさりと。

「とりあえず......終わったのか」

 俺は剣を下ろすと、途端に緊張の糸が途切れたのか、ガクンと膝を落とした。

 空はいつの間にかどんよりとした曇り空に覆われていて、いつしかポツポツと雨が降り出した。
 灰色の空の下に広がる、雨に濡れる荒らされた街。

「ヒドイな......でも、少しは、役に立てたのかな?俺は......」
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