しにかけの転生者~しにかけた中年はしにかけた青年に転生し異世界で魔剣使いになる~

根立真先

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魔剣使いの闘い~狂戦士編

ep139 キラース

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 *

「で、なんでこんな所なんだ」

「私に聞くな」

 俺もカレンも憮然ぶぜんとした。
 そこは今朝、まさに俺とジェイズが飲んだ酒場だった。
 そんな所に四者が集まった。

「まあそうカタくなんな」

 ジェイズはテーブルに足を乗っけてどかっと座っていた。
 その横に立っているアイがため息をついた。

「あたしこそ聞きたいぞ、ボス。なんでここなんだ」

「場所なんかどーでもいいだろ?それにここなら魔剣使いにも説明しやすいしな」

「大事な話をする場所ではないだろ」

「大事なハナシはまた場所を変えてするさ」

「......ったく。ボスの好きにしてくれ」

「それにしても、ひさしぶりだよなぁ~カレン嬢」

 ジェイズがカレンに視線を運んだ。

「ああ。兄様とは会ったみたいだがな」

「なんだ知ってたか」

「なぜ〔フリーダム〕なんぞに入った」

「ここじゃ大事なハナシはしねえ。アイとの会話聞いてたろ?」

「じゃあいつどこでする?」

「まあ焦んな。そんじゃあそろったところで行くか」

 ジェイズはおもむろに立ち上がるとドアへ向かって歩きだした。
 やや苛立ってカレンが呼び止めようとするも、
「どこへ行くんだ?」
 俺が彼女を制して尋ねた。

「キラースのところだ」

 ジェイズに代わってアイが鋭い目で答えた。


 *


「マジでヒマだったぜまったくよ~」

 キラースが俺たちの前を歩いている。
 その前をジェイズが歩いている。
 俺たちはキラースを解放してから、五人連れ立ってどこかへ向かい街路を進んでいた。

「そんでどこ行くんだよ?狂戦士さんよ」

 キラースが質問した。
 それは俺たちも同様に疑問に思っていること。

「そろそろだな」

 ジェイズは質問には答えず、ある地点まで来て立ち止まった。

「ああ?なんもねえぜ?」

 キラースの言葉どおり、そこは廃屋ぐらいしか残っていないただの街外れだった。
 すでに空は暗く、月明かりだけが妙にまぶしく辺りを照らしていた。
 
「キラース。テメーはなんの用があってここに来た?」

 ジェイズはゆっくりと振り向きながら言った。

「用?まあそりゃーあれだ。ヘッドフィールドに何か協力できないかって思ってよ」

 キラースはへらへらしながら答えた。

「テメー。死ぬ覚悟あんのか?」

「ああ?」

 転瞬、ジェイズはスッと手を伸ばすと、指一本でキラースの額をぱちんと弾いた。

「!!」

 一瞬だった。
 キラースはロケットのような勢いで激烈に何十メートルも吹っ飛んだ。
 さらに吹っ飛んだ先でドガァァァンと爆発した。
 
(ただのデコピンであのキラースが...まさに赤子の手をひねるように簡単にブッ飛ばされた?)

 俺は眼前の光景に驚愕きょうがくした。

「汚ねえ足で生意気にヘッドフィールドの土を踏んでじゃねえよクロヤローが」

 ジェイズが嫌悪感たっぷりに吐き棄てた。
 次の瞬間。
 ボガァァァン!とジェイズの手が爆破した。
 
「ほう?意外と頑張るじゃねえか」  

 だがジェイズにはかすり傷ひとつついていない。
 どうやら、やられた瞬間、キラースがジェイズの手に爆破魔法を仕掛けたようだ。
 しかしジェイズにはダメージのかけらも与えられていない。

「オイオイいきなりヒデェじゃねえかよ......」

 キラースが痛そうに頭をおさえながらこちらに戻ってきた。
 さすがに面食らったといった表情をしている。
 ジェイズは見下すように睨みつける。

「オレの手を爆破させるだけじゃなく、吹っ飛ばされてからも爆破して地面への激突のダメージを減らしやがったな?相変わらずムダに器用なヤツだ」

「ジェイズさんよぉ。幹部会で『キラースへの制裁』でも決定したのか?」

「残念ながらテメーへの処置、というかテメーについての言及も何もなかったぜ」

「マジか?ちょっと意外だぜ」

「サボった意味なかったな」

「ならなぜオレに攻撃した?フリーダムでも幹部同士で殺り合うのは御法度だぜ?」

「殺り合う?かる~く小突いただけだぜ?」

「......(フザけんな!当たりどころ悪かったらマジでシャレになんねえぞ!)」

「今後、オレがいない間に勝手にヘッドフィールドに足を踏み入れるんじゃねえ」

 ジェイズはドスの効いた低い声で言った。
 鋭い眼は冷酷に座っている。

「わ、わかったわかったわかったよ!そんなに怒るんじゃねえよ!」

 キラースは勘弁してくれと言わんばかりにあたふたとした。

「テメーの言うとおり幹部同士の殺し合いは禁止されているが、ちょっと小突いた拍子に死んじまったんならしょうがねえもんな」

「わかったわかった!マジでわかったぜ!それよりよ!?オレはお前にハナシがあるんだよ!」

「オレにはねえ。とっとと失せろ」

「ちょっと待ってくれよ!これはヘッドフィールドにとってもイイ話だぜ!?」

「ボスの言うとおりにしろ」

 アイがキラースの肩に手を置いた。
 ジェイズ以上に鋭い眼つきだ。
 キラースは彼女の手を振り払った。

「チッ!なんだよチクショー!ヘッドフィールドまでくんだりでハナシも聞かねえってなんだ!」

「そのまままっすぐ進めば街から出ていける。さっさと行け」

「わかったよチクショーが!行けばいいんだろ行けばよ!フザけんじゃねえ!」

 キラースはののしり言葉を吐きながら街外へと立ち去っていった。
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