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勇太と陽、それから海
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海と暮らし始めたのは、陽と同棲をしてから七年後のことだった。その時、海はまだ二歳で、今よりも随分と幼かった。
鬱になり、通院をして薬も飲み、けれど日中は酷く落ち込む毎日を過ごしていた。何度も、いなくなった方がましだと思ったし、どうすればいなくなれるだろうと考えた。
話すことすら億劫だった日もたくさんあった。言葉には出さないが、心配そうに見る陽にすら、いらだったことも数少なくはない。
どうすればいいかわからない。どうすればいらだつこともなく、心穏やかにいられるのかわからなかった。
そんな日々が何年も過ぎたころ、現れたのが海だった。初めて会ったのは、病院の待合室。
人生とは儚い。海と会ったその日、勇太は施設で兄妹のように育った姉を失ったのだった。
その人の名は、優里菜といった。勇太より二つ年上で、しっかり者で思えば陽に雰囲気が似ていた。
施設を出てからも連絡は取り合っていた。しかし、何年かすると連絡は途絶えた。そして再会した日、優里菜は命を失っていた。
原因は過労だと医者は言った。勇太が呼び出されたのは、優里菜が息を引き取る間際、優里菜が遺書を医者に託したからだった。
そこにいた海は、酷く不安そうだった。夫らしき人はいない。震える手で遺書を開くと、優里菜はシングルマザーだったと書かれていた。
―勇太にこんなこと託すのは筋違いだとわかってる。けど、この子を私たちと同じような思いにはさせたくない。お願い、勇太。この子と一緒に生きて。
震える手は更に震えた。けれど、その手を包む人がいた。陽だった。
電話を受けた時、一緒にいてくれたおかげで、陽は一緒に来てくれていた。そのことに、一生分くらい感謝した。
『初めまして、海くん?』
コクン。とりあえず、答えたという感じだ。きっと、母親に何があったのかはわからないだろう。けれど、何かがあったと怯える目は、覚えがあった。
これからこの子は、施設に入る。施設ではいろんなことがある。衣食住は与えられるが、その中では壮絶な物語が待ち受けている。
逃げたくても逃げられない。逃げれば毎日、生きていくことに困ってしまう。それが現実だ。
海の瞳をじっと見る。澄んだ穢れなど何一つない瞳に、心が洗われた気がした。
鬱になり、通院をして薬も飲み、けれど日中は酷く落ち込む毎日を過ごしていた。何度も、いなくなった方がましだと思ったし、どうすればいなくなれるだろうと考えた。
話すことすら億劫だった日もたくさんあった。言葉には出さないが、心配そうに見る陽にすら、いらだったことも数少なくはない。
どうすればいいかわからない。どうすればいらだつこともなく、心穏やかにいられるのかわからなかった。
そんな日々が何年も過ぎたころ、現れたのが海だった。初めて会ったのは、病院の待合室。
人生とは儚い。海と会ったその日、勇太は施設で兄妹のように育った姉を失ったのだった。
その人の名は、優里菜といった。勇太より二つ年上で、しっかり者で思えば陽に雰囲気が似ていた。
施設を出てからも連絡は取り合っていた。しかし、何年かすると連絡は途絶えた。そして再会した日、優里菜は命を失っていた。
原因は過労だと医者は言った。勇太が呼び出されたのは、優里菜が息を引き取る間際、優里菜が遺書を医者に託したからだった。
そこにいた海は、酷く不安そうだった。夫らしき人はいない。震える手で遺書を開くと、優里菜はシングルマザーだったと書かれていた。
―勇太にこんなこと託すのは筋違いだとわかってる。けど、この子を私たちと同じような思いにはさせたくない。お願い、勇太。この子と一緒に生きて。
震える手は更に震えた。けれど、その手を包む人がいた。陽だった。
電話を受けた時、一緒にいてくれたおかげで、陽は一緒に来てくれていた。そのことに、一生分くらい感謝した。
『初めまして、海くん?』
コクン。とりあえず、答えたという感じだ。きっと、母親に何があったのかはわからないだろう。けれど、何かがあったと怯える目は、覚えがあった。
これからこの子は、施設に入る。施設ではいろんなことがある。衣食住は与えられるが、その中では壮絶な物語が待ち受けている。
逃げたくても逃げられない。逃げれば毎日、生きていくことに困ってしまう。それが現実だ。
海の瞳をじっと見る。澄んだ穢れなど何一つない瞳に、心が洗われた気がした。
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