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勇太と陽、それから海
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部屋に帰ると陽はまだいなかった。時刻は午後五時半。陽の勤務時間は午後五時までだが、ぴったりに終わることはなかなか難しい。
そういう時は勇太が夕飯を作る。代わりに陽が風呂に入れてくれる。申し合わせたわけではないが、自然とそういう形になっていた。
勇太たちが住む部屋のキッチンは対面タイプで、料理をしながらでもリビングが見渡せる。ここに住んだ時は、海はいなかったのに。そう思うと、運命のような導きを感じる。
見ると海はスケッチブックを広げて、お絵描きをしている。買ったばかりのクレヨンを小さな手で持って、一生懸命に何かを描いている。
海は大人しい子だ。育った環境のせいかもしれないが、穏やかな性格だ。そのことに時々、我慢させているのではないかと不安に駆られることもあるが、保育所の暮らしぶりから今のところは見守ることにしている。
海を見ながら料理を作っていると、玄関が開く音がした。ただいま~と、もう夕方も過ぎ、太陽も沈む夜も近いというのに、疲れを感じさせない明るい声がした。
「お疲れ、陽」
「勇太もお疲れ。何作ってくれてんの?」
「今日は鶏肉とトマトの煮込み。あと、スープはもうできてるぞ」
「さすが、勇太。今日も美味しそうだね」
言いながら顔を近づけて来たので、ぎょっとした。海には勇太と陽が恋人だということはカミングアウトしていない。まだ小さいこともあるし、そのことで万が一、海が理不尽な思いをするならと危惧していることもある。
「おい、何すんだよ」
「海なら寝ちゃってるみたい」
見て?と言われ、その指の先を辿ると、スケッチブックに顔をくっつけ、クレヨンを握ったまま、小さな寝息を立てていた。
さっき見た時は機嫌よく、絵を描いていたというのに、子どもは目を離すと何をするかわからないと言った保育士の先生の言葉が蘇る。
と、海の姿を見ながらほほえましい気持ちになっていると、頬に柔らかな感触が当たった。
「寝てるからってな」
「ごめん。でも、我慢できなかったから。嫌だった?」
「嫌なわけねーだろ…」
もう一度、もう一回だけと、触れるだけのキスを重ねる。陽はキスが好きだ。
「これ以上はちょっと」
「だね。これ以上すると、止まられなくなっちゃうかもしれない」
いちいち言葉にされると困る。思うのに、図星過ぎて言葉が出ない。
「勇太?陽?」
「海~ただいま!お絵描きしてたの?」
海の甘えた声が聞こえ、陽が飛びつくように行く。すると、海も安心したように陽の膝の上に乗る。
「あのね、保育所でお絵描きしてね、勇太にも見せたけど陽にも見て欲しかったんだ!」
「どれどれ?」
ああ、きっと泣く。二人の姿を見ながら勇太は、そう思っていた。
だって、そこには、海を挟むように勇太と陽の姿が描かれている。
「陽?泣いてるの?悲しい?」
「違うよ。この絵があんまりにも上手すぎて、感動して泣いてたんだ」
このままでは号泣しかねない。付き合う前も後も、勇太は陽のことをあまり泣き上戸ではないと思っていた。が、実際は違ったようで、海と暮らしてから陽は結構、泣いている。
「ほら、そろそろ飯にするぞ?」
「うん!お腹空いた~」
感動する大人とは反対に、海は食卓に飛び乗って来た。子どもの切り替えの早さを、大人も見習うべきだろう。
「いただきます」
「「いただきます」」
決して血は繋がっていない。けれど、血なんてどうでもいいと思える瞬間がここにある。
笑顔で美味しいと言う海、それから微笑む陽。幸せな日々に、勇太の顔も綻んでいた。
そういう時は勇太が夕飯を作る。代わりに陽が風呂に入れてくれる。申し合わせたわけではないが、自然とそういう形になっていた。
勇太たちが住む部屋のキッチンは対面タイプで、料理をしながらでもリビングが見渡せる。ここに住んだ時は、海はいなかったのに。そう思うと、運命のような導きを感じる。
見ると海はスケッチブックを広げて、お絵描きをしている。買ったばかりのクレヨンを小さな手で持って、一生懸命に何かを描いている。
海は大人しい子だ。育った環境のせいかもしれないが、穏やかな性格だ。そのことに時々、我慢させているのではないかと不安に駆られることもあるが、保育所の暮らしぶりから今のところは見守ることにしている。
海を見ながら料理を作っていると、玄関が開く音がした。ただいま~と、もう夕方も過ぎ、太陽も沈む夜も近いというのに、疲れを感じさせない明るい声がした。
「お疲れ、陽」
「勇太もお疲れ。何作ってくれてんの?」
「今日は鶏肉とトマトの煮込み。あと、スープはもうできてるぞ」
「さすが、勇太。今日も美味しそうだね」
言いながら顔を近づけて来たので、ぎょっとした。海には勇太と陽が恋人だということはカミングアウトしていない。まだ小さいこともあるし、そのことで万が一、海が理不尽な思いをするならと危惧していることもある。
「おい、何すんだよ」
「海なら寝ちゃってるみたい」
見て?と言われ、その指の先を辿ると、スケッチブックに顔をくっつけ、クレヨンを握ったまま、小さな寝息を立てていた。
さっき見た時は機嫌よく、絵を描いていたというのに、子どもは目を離すと何をするかわからないと言った保育士の先生の言葉が蘇る。
と、海の姿を見ながらほほえましい気持ちになっていると、頬に柔らかな感触が当たった。
「寝てるからってな」
「ごめん。でも、我慢できなかったから。嫌だった?」
「嫌なわけねーだろ…」
もう一度、もう一回だけと、触れるだけのキスを重ねる。陽はキスが好きだ。
「これ以上はちょっと」
「だね。これ以上すると、止まられなくなっちゃうかもしれない」
いちいち言葉にされると困る。思うのに、図星過ぎて言葉が出ない。
「勇太?陽?」
「海~ただいま!お絵描きしてたの?」
海の甘えた声が聞こえ、陽が飛びつくように行く。すると、海も安心したように陽の膝の上に乗る。
「あのね、保育所でお絵描きしてね、勇太にも見せたけど陽にも見て欲しかったんだ!」
「どれどれ?」
ああ、きっと泣く。二人の姿を見ながら勇太は、そう思っていた。
だって、そこには、海を挟むように勇太と陽の姿が描かれている。
「陽?泣いてるの?悲しい?」
「違うよ。この絵があんまりにも上手すぎて、感動して泣いてたんだ」
このままでは号泣しかねない。付き合う前も後も、勇太は陽のことをあまり泣き上戸ではないと思っていた。が、実際は違ったようで、海と暮らしてから陽は結構、泣いている。
「ほら、そろそろ飯にするぞ?」
「うん!お腹空いた~」
感動する大人とは反対に、海は食卓に飛び乗って来た。子どもの切り替えの早さを、大人も見習うべきだろう。
「いただきます」
「「いただきます」」
決して血は繋がっていない。けれど、血なんてどうでもいいと思える瞬間がここにある。
笑顔で美味しいと言う海、それから微笑む陽。幸せな日々に、勇太の顔も綻んでいた。
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