守らせて、俺の全てで

ゆきの(リンドウ)

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世界一の恋人、そして夫

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「勇太、まだ寝てるのか?」
「もう少しだけ…」
「だーめ!ほら、起きろ!」

 陽が言うと、海まで「起きろー!」と言って、布団にジャンプしてくる。
 受けた衝撃はそこそこに大きい。つい、一年前まではジャンプされたとしても腰に鈍く痛みなど走らなかった。なのに、今、勇太の腰は鈍い痛みを覚えている。

 歳のせいなのだろうか。それとも、海の成長のせいなのだろうか。できれば、海の成長のせいにしておきたい。実際、海はここ一年で一気にお兄さんらしくなっていた。
 と、勇太が感慨深い想いに囚われていると、すぐさまお玉でフライパンを鳴らす音がする。
 耳をつんざく音に、近所迷惑だろと言葉がせり上がってくる。が、言ったところでじゃあ早く起きろと言われるため、勇太はとりあえずベッドのサイドテーブルに置いてある小さな時計を覗き込んだ。

「まだ八時じゃねーか」
「まだ?もう、の間違いじゃなくて?」
「それに今日は日曜日だろ?もう少し寝かせてくれよ…」
 携帯の画面を確認したから間違いはない。なのに、陽はお玉を持つ手を止める気はないらしい。

「本当に、勇太は寝坊助さんだよね?海?」
「寝坊助さんだね、陽」
「じゃあ、俺と海二人でお出かけしちゃおっか」
 耳をつんざく音が止まった。と、思うや否や、二人の可愛らしくも憎らしい会話が聞こえ、勇太は飛び起きた。

「陽、ごめん!俺、めっちゃ」
「忘れてたとは言わせないよ?ほら、もうお弁当も朝食もできてるから、起きてきてよ、勇太も」

 誰もが見惚れてしまう笑顔を朝から放ち、陽は海とともに部屋を出て行く。その姿に勇太もまた、見惚れていたが急いで起きることにした。
 というのも今日は、三人でピクニックへ行く予定があったのだ。
 事の発端は、海の一言だった。

『みんなでキャンプしたい!』
 どうやら保育所でキャンプの絵本を読んだらしい。迎えに行った時、保育士の先生が言っていた。
『陽は?キャンプしたい?』
『そうだね、久しぶりにいいかも!』
『じゃあ、勇太は?』
 問われ、すぐには返答できなかった。施設で育ったせいもあるが、勇太は根っからの根暗体質だ。キャンプなど、陽のようなタイプがやるものだと思っていたのだ。

『俺は…』
 ぐう、と怯む。幼い子どもの瞳は無駄にキラキラしている。
『したいけど、まだ寒いだろ?』
 勇太は妥協案を取ることにした。季節はまだ五月上旬で、今年は例年よりも肌寒い。

『じゃあ、できない?』
『それは…』
 大人にとって正論を言ったところで、子どもに伝わるかと言えばそうとは限らないものだ。
 しかし、できると言えば、今すぐ今日にでもやろうと言い出しかねない。そういうアクティブなところは陽に似た。

 以前も公園行きたいとせがまれ、いいねと言うとすぐさま、ジャンパーと帽子を持って現れた。子どもは言葉に忠実なのだ。
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