守らせて、俺の全てで

ゆきの(リンドウ)

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世界一の恋人、そして夫

(3)

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 結局、家を出たのはそれから一時間後の九時半。ちょうど、雲に隠れていた太陽が姿を見せ、本来の力を発揮し始めた時だった。

「あっついな、今日」

 勇太は太陽を手で覆い隠しながら言った。五月にしては少々、暑すぎる。毎朝、欠かさず天気予報だけはチェックしているが、今日は寝坊したせいでできなかった。
 ポケットから携帯を取り出し、天気のアプリを起動すると、天気は一日中晴れ、気温は二十五度と表示されていた。

 少々、身体に堪える日になるかもしれない。元々、勇太は太陽の元、遊ぶことを得意とはしない。それは昔からで、幼い時は室内遊びの番人と言われていたほどだ。
 しかも、帽子を忘れていた。暑さに弱い者にとって帽子は必須だ。
 取りに帰ろうか、と思うが、目的地は目の前だった。ここで帰ってしまえばまた、海の表情が曇ってしまう。

「勇太」
「ん?何?」
「これ、必要だろ?」
「これ…」
 思わず、言葉を失っていた。陽が勇太に渡したのは、水色の帽子とそれから日焼け止め。

「どうしてこれを陽が?」
「朝、慌ててたから忘れてるなって思って持ってきた。勇太、暑いの苦手だろ?」
 全く、これだからこいつは。惚れ直させてどうするつもりだ。

「…サンキュ」
「いいえ、どういたしまして」
 なんだか照れくさくて、陽の顔は見れなかった。

 それから公園に着いたのは、すぐだった。家からバスに乗り十五分、徒歩五分、五歳の子どもが歩くにしては十分に配慮された時間と距離に、勇太は陽に感心した。

「広いね!すごい!」
 言いながら海がキラキラした眼差しを向ける。どうやら保育所では来たことがないようで、初めてを見れたことに嬉しくなった。

「早速、始めますか」
「うん!」
 二人のはしゃぐ声が聞こえた。訳が分からない。
 けれど、次の瞬間、そのわけはわかることになる。

 まず、陽は芝生の上にレジャーシートを広げた。そこにリュックと弁当が入ったランチバッグを置く。

「勇太は見てる?それとも、一緒にやる?」
 見せられたのは、少し小振りのサッカーボール。それと、シャボン玉にバドミントン。

 (…いつの間に、こんなもの)

 知らない間に用意されていたグッズに感心しながら、勇太抜きで計画されていたことに少しの嫉妬を覚える。

 (一言、声掛けてくれても良かったのに)

 つい、そんな卑屈な言葉が脳裏を過ると、陽が「どうした?やっぱり、疲れたか?」と言う。

「疲れてねーよ、マジで」
「無理しないの。仕事忙しいのに、付き合ってくれたの知ってるからさ」
 ポン、と頭の上に軽い圧力が乗っかる。

「俺も海も、勇太が来てくれるだけで嬉しいんだよ?だから、無理はしないで、本当に」
 無理はしていない、本当に。けれど、その優しさが身に染みて、そしてその矛先が他でもない自分なのだと思うと嬉しくて、じわじわと身体の奥底からほっこりしたものがしみだしてきた。

 やっぱり、陽が好きだな―。
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