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世界一の恋人、そして夫
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結局、家を出たのはそれから一時間後の九時半。ちょうど、雲に隠れていた太陽が姿を見せ、本来の力を発揮し始めた時だった。
「あっついな、今日」
勇太は太陽を手で覆い隠しながら言った。五月にしては少々、暑すぎる。毎朝、欠かさず天気予報だけはチェックしているが、今日は寝坊したせいでできなかった。
ポケットから携帯を取り出し、天気のアプリを起動すると、天気は一日中晴れ、気温は二十五度と表示されていた。
少々、身体に堪える日になるかもしれない。元々、勇太は太陽の元、遊ぶことを得意とはしない。それは昔からで、幼い時は室内遊びの番人と言われていたほどだ。
しかも、帽子を忘れていた。暑さに弱い者にとって帽子は必須だ。
取りに帰ろうか、と思うが、目的地は目の前だった。ここで帰ってしまえばまた、海の表情が曇ってしまう。
「勇太」
「ん?何?」
「これ、必要だろ?」
「これ…」
思わず、言葉を失っていた。陽が勇太に渡したのは、水色の帽子とそれから日焼け止め。
「どうしてこれを陽が?」
「朝、慌ててたから忘れてるなって思って持ってきた。勇太、暑いの苦手だろ?」
全く、これだからこいつは。惚れ直させてどうするつもりだ。
「…サンキュ」
「いいえ、どういたしまして」
なんだか照れくさくて、陽の顔は見れなかった。
それから公園に着いたのは、すぐだった。家からバスに乗り十五分、徒歩五分、五歳の子どもが歩くにしては十分に配慮された時間と距離に、勇太は陽に感心した。
「広いね!すごい!」
言いながら海がキラキラした眼差しを向ける。どうやら保育所では来たことがないようで、初めてを見れたことに嬉しくなった。
「早速、始めますか」
「うん!」
二人のはしゃぐ声が聞こえた。訳が分からない。
けれど、次の瞬間、そのわけはわかることになる。
まず、陽は芝生の上にレジャーシートを広げた。そこにリュックと弁当が入ったランチバッグを置く。
「勇太は見てる?それとも、一緒にやる?」
見せられたのは、少し小振りのサッカーボール。それと、シャボン玉にバドミントン。
(…いつの間に、こんなもの)
知らない間に用意されていたグッズに感心しながら、勇太抜きで計画されていたことに少しの嫉妬を覚える。
(一言、声掛けてくれても良かったのに)
つい、そんな卑屈な言葉が脳裏を過ると、陽が「どうした?やっぱり、疲れたか?」と言う。
「疲れてねーよ、マジで」
「無理しないの。仕事忙しいのに、付き合ってくれたの知ってるからさ」
ポン、と頭の上に軽い圧力が乗っかる。
「俺も海も、勇太が来てくれるだけで嬉しいんだよ?だから、無理はしないで、本当に」
無理はしていない、本当に。けれど、その優しさが身に染みて、そしてその矛先が他でもない自分なのだと思うと嬉しくて、じわじわと身体の奥底からほっこりしたものがしみだしてきた。
やっぱり、陽が好きだな―。
「あっついな、今日」
勇太は太陽を手で覆い隠しながら言った。五月にしては少々、暑すぎる。毎朝、欠かさず天気予報だけはチェックしているが、今日は寝坊したせいでできなかった。
ポケットから携帯を取り出し、天気のアプリを起動すると、天気は一日中晴れ、気温は二十五度と表示されていた。
少々、身体に堪える日になるかもしれない。元々、勇太は太陽の元、遊ぶことを得意とはしない。それは昔からで、幼い時は室内遊びの番人と言われていたほどだ。
しかも、帽子を忘れていた。暑さに弱い者にとって帽子は必須だ。
取りに帰ろうか、と思うが、目的地は目の前だった。ここで帰ってしまえばまた、海の表情が曇ってしまう。
「勇太」
「ん?何?」
「これ、必要だろ?」
「これ…」
思わず、言葉を失っていた。陽が勇太に渡したのは、水色の帽子とそれから日焼け止め。
「どうしてこれを陽が?」
「朝、慌ててたから忘れてるなって思って持ってきた。勇太、暑いの苦手だろ?」
全く、これだからこいつは。惚れ直させてどうするつもりだ。
「…サンキュ」
「いいえ、どういたしまして」
なんだか照れくさくて、陽の顔は見れなかった。
それから公園に着いたのは、すぐだった。家からバスに乗り十五分、徒歩五分、五歳の子どもが歩くにしては十分に配慮された時間と距離に、勇太は陽に感心した。
「広いね!すごい!」
言いながら海がキラキラした眼差しを向ける。どうやら保育所では来たことがないようで、初めてを見れたことに嬉しくなった。
「早速、始めますか」
「うん!」
二人のはしゃぐ声が聞こえた。訳が分からない。
けれど、次の瞬間、そのわけはわかることになる。
まず、陽は芝生の上にレジャーシートを広げた。そこにリュックと弁当が入ったランチバッグを置く。
「勇太は見てる?それとも、一緒にやる?」
見せられたのは、少し小振りのサッカーボール。それと、シャボン玉にバドミントン。
(…いつの間に、こんなもの)
知らない間に用意されていたグッズに感心しながら、勇太抜きで計画されていたことに少しの嫉妬を覚える。
(一言、声掛けてくれても良かったのに)
つい、そんな卑屈な言葉が脳裏を過ると、陽が「どうした?やっぱり、疲れたか?」と言う。
「疲れてねーよ、マジで」
「無理しないの。仕事忙しいのに、付き合ってくれたの知ってるからさ」
ポン、と頭の上に軽い圧力が乗っかる。
「俺も海も、勇太が来てくれるだけで嬉しいんだよ?だから、無理はしないで、本当に」
無理はしていない、本当に。けれど、その優しさが身に染みて、そしてその矛先が他でもない自分なのだと思うと嬉しくて、じわじわと身体の奥底からほっこりしたものがしみだしてきた。
やっぱり、陽が好きだな―。
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