48 / 105
俺の彼氏とメリークリスマス
(2)-4
しおりを挟む
榊と住んでいる家は二階建てアパートの二階奥。見上げれば今日は部屋の灯りが付いていた。
料理のために外した腕時計を背広のポケットから取り出し見ると、午後九時半。
(今日は早く帰ってこれたんだ!くそ、そんなことなら教室で夕飯代わりにと作った料理を食べてこなければ良かったのに!)
最近はめっきり遅かった帰りのせいで、騒ぐ心が抑えきれない。
焦る気持ちで小走りになる足で、階段を駆け上る。
「ただいまッ!てっちゃんいる?」
「おかえり、雪」
小走りしたせいでドクドクと速まる鼓動がどくんと一際高まった気がした。
目の下に薄らと隈を作りながらもふわっと笑う榊が、とてつもなくかっこいい。
自然と流れるように抱きしめられ、ぎゅっと心臓が締め付けられたようだった。
好きだ、榊がやっぱり大好きだ。
靴も脱がないまま、榊の体温を奪うかのようにきつく広い背中に抱きついていた。
「雪…今日、どこ行ってた?」
「え?えっと、今日も菅さんと料理教室行ってた!」
首筋に顔を埋められているとふいに、榊が問う。嘘はついていない、だがなんとなく疚しい気持ちで焦っていたのはもしかしたら今日焼いたスコーンの甘い香りが残っていたせいなのかもしれない。
榊には知られるわけにはいかないのだ。今年はどうしてもサプライズを成功させたい。
「てっちゃんは今日早かったんだね?夕飯食べた?」
「いや、まだだけど」
「なら俺、簡単になんか作るよ。ちょっと待ってて」
「…ああ、わかった」
キッチンへと向かうスリッパの音がパタパタと響いていた。この時間、疲れた身体ならサムゲタンでも良さそうだな。
愛しい恋人の夕飯を考えながら雪は、明日の夕飯は何にしようかと、あらぬ期待をかすかに胸に抱いていた。
料理のために外した腕時計を背広のポケットから取り出し見ると、午後九時半。
(今日は早く帰ってこれたんだ!くそ、そんなことなら教室で夕飯代わりにと作った料理を食べてこなければ良かったのに!)
最近はめっきり遅かった帰りのせいで、騒ぐ心が抑えきれない。
焦る気持ちで小走りになる足で、階段を駆け上る。
「ただいまッ!てっちゃんいる?」
「おかえり、雪」
小走りしたせいでドクドクと速まる鼓動がどくんと一際高まった気がした。
目の下に薄らと隈を作りながらもふわっと笑う榊が、とてつもなくかっこいい。
自然と流れるように抱きしめられ、ぎゅっと心臓が締め付けられたようだった。
好きだ、榊がやっぱり大好きだ。
靴も脱がないまま、榊の体温を奪うかのようにきつく広い背中に抱きついていた。
「雪…今日、どこ行ってた?」
「え?えっと、今日も菅さんと料理教室行ってた!」
首筋に顔を埋められているとふいに、榊が問う。嘘はついていない、だがなんとなく疚しい気持ちで焦っていたのはもしかしたら今日焼いたスコーンの甘い香りが残っていたせいなのかもしれない。
榊には知られるわけにはいかないのだ。今年はどうしてもサプライズを成功させたい。
「てっちゃんは今日早かったんだね?夕飯食べた?」
「いや、まだだけど」
「なら俺、簡単になんか作るよ。ちょっと待ってて」
「…ああ、わかった」
キッチンへと向かうスリッパの音がパタパタと響いていた。この時間、疲れた身体ならサムゲタンでも良さそうだな。
愛しい恋人の夕飯を考えながら雪は、明日の夕飯は何にしようかと、あらぬ期待をかすかに胸に抱いていた。
0
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
後宮に咲く美しき寵后
不来方しい
BL
フィリの故郷であるルロ国では、真っ白な肌に金色の髪を持つ人間は魔女の生まれ変わりだと伝えられていた。生まれた者は民衆の前で焚刑に処し、こうして人々の安心を得る一方、犠牲を当たり前のように受け入れている国だった。
フィリもまた雪のような肌と金髪を持って生まれ、来るべきときに備え、地下の部屋で閉じ込められて生活をしていた。第四王子として生まれても、処刑への道は免れられなかった。
そんなフィリの元に、縁談の話が舞い込んでくる。
縁談の相手はファルーハ王国の第三王子であるヴァシリス。顔も名前も知らない王子との結婚の話は、同性婚に偏見があるルロ国にとって、フィリはさらに肩身の狭い思いをする。
ファルーハ王国は砂漠地帯にある王国であり、雪国であるルロ国とは真逆だ。縁談などフィリ信じず、ついにそのときが来たと諦めの境地に至った。
情報がほとんどないファルーハ王国へ向かうと、国を上げて祝福する民衆に触れ、処刑場へ向かうものだとばかり思っていたフィリは困惑する。
狼狽するフィリの元へ現れたのは、浅黒い肌と黒髪、サファイア色の瞳を持つヴァシリスだった。彼はまだ成人にはあと二年早い子供であり、未成年と婚姻の儀を行うのかと不意を突かれた。
縁談の持ち込みから婚儀までが早く、しかも相手は未成年。そこには第二王子であるジャミルの思惑が隠されていて──。
溺愛の加速が尋常じゃない!?~味方作りに全振りしたら兄たちに溺愛されました~
液体猫(299)
BL
毎日AM2:10分に予約投稿。
【《血の繋がりは"絶対"ではない。》この言葉を胸にクリスがひたすら愛され、大好きな兄と暮らす】
アルバディア王国の第五皇子クリスは冤罪によって処刑されてしまう。
次に目を覚ましたとき、九年前へと戻っていた。
巻き戻す前の世界とは異なるけれど同じ場所で、クリスは生き残るために知恵を振り絞る。
かわいい末っ子が過保護な兄たちに可愛がられ、溺愛されていく。
やり直しもほどほどに。罪を着せた者への復讐はついで。そんな気持ちで新たな人生を謳歌する、コミカル&シリアスなハッピーエンド確定物語。
主人公は後に18歳へと成長します(*・ω・)*_ _)ペコリ
⚠️濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭のみ重い展開あり。それ以降はコミカルでほのぼの✌
⚠️本格的な塗れ場シーンは三章(18歳になって)からとなります。
イケメンに惚れられた俺の話
モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。
こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。
そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。
どんなやつかと思い、会ってみると……
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話
日向汐
BL
「好きです」
「…手離せよ」
「いやだ、」
じっと見つめてくる眼力に気圧される。
ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26)
閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、
一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
📚 **全5話/9月20日(土)完結!** ✨
短期でサクッと読める完結作です♡
ぜひぜひ
ゆるりとお楽しみください☻*
・───────────・
🧸更新のお知らせや、2人の“舞台裏”の小話🫧
❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21
・───────────・
応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪)
なにとぞ、よしなに♡
・───────────・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる