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Vtuber邂逅編~その出会いは二度目の恋の始まり~

第八話「満を持して登場の爆乳魔女。その名はパルティータ」

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 読者の皆様、毎度お世話になっております。
 今回もまた毎度お馴染み、七都巳大竜がお送りいたします。

「ブラぁ~ボぉ~! おぉ~ぅ、ブラボぉぉ~っ!」
(なんだ……?)

 さて前回ラストシーン直後……拍手を伴って響き渡るは、若い女の声に御座いました。
 一体何事かと声のする方へ眼を遣れば、大広間の一角より此方に歩み寄って来る赤衣の女が一人……

「いやぁ~、マジで凄いよお兄さんっ。見ててマジで感動しちゃったもんさ。
 ほーんと、ここまで感動的な出来事なんてここ一年ぐらいご無沙汰だったってーかさァ~」
「……!」

 さては先程始末した連中の生き残りかと推測した自分めは、咄嗟に身構えたので御座いますが……

「おっとぉ、そっちのヤバいのは勘弁してくれるかなぁ?
 報復を危惧してるんなら大丈夫さ。あたしは奴らの仲間なんかじゃないよ」

 どうやらその女……改め御婦人は――俄かには信じ難い事実ですが――かのはしためどもの身内などではなく、何なら敵対関係にあるようでした。
 実際、御婦人が語られる所に拠りますれば……

「クライアントからの要請でね。どうにか追い出さなきゃってんで躍起になってたんだけど、お兄さんが片付けてくれて助かったわぁ~」

 深紅の皮革装束レザーファッションに身を包んだその御婦人……
 風貌から察するに年齢は推定二十代中盤程度でしょうか、頭髪は白く双眸は鮮やかな赤……

「やー、ほんとさ……奴らと来たら見掛け倒しなクソザコの癖に、悪運強いわ世渡り上手だわで面倒ばっかり起こしてくれちゃってて、結構ヤバい状況だったのよ」
「左様で、御座いましたか
 (……たぁ、谷間っっ……! てか、でかぁっっ……!?)」
「あたし自身何時か目に物見せてやろうって思ってて、今回の案件は千載一遇の特大チャンスだったワケなんだけどさ~? 実際やろうってなっても色々上手く行かなくて。
 ……って、ゴメンねぇ。なーんか自分語りの愚痴ばっかになっちゃったねぇ」
「ぃ、いえ、お気に、為さらずっ……
 (愚痴よりその服装を何とかして頂きたいっ……!)」

 顔立ちは紛れもなく美人の域にあり、加えて身に纏う装束により強調されたる体型さえ自分好みに抜群そのもの。
 お陰で思わず見惚れそうになるわ、目のやり場に困るわと、自分めは情けなくも彼女の話を聞くのにも苦心させられてしまったので御座います。

「と、と、いけないいけない。自己紹介がまだだったね、あたしはパルティータ・ピローペイン。フリーランスで便利屋をやってる魔術師さ」
「七都巳大竜と申します。職業は……つい先日、無職になったばかりで御座いまして……」
「ナナツミ……? ナナツミってまさか、神聖王国傘下の魔王討伐隊こと通称“勇者一団”に入った新入りアサシンの?」
「はい、如何にも自分が新入りアサシンのナナツミですが……よもや自分をご存知で?」
「そりゃ知ってるよ、当時は結構話題になったもん。けどまさか生きてるとは思わなかったけどね。
 報道じゃ魔王軍幹部"死神天秤デス・ライブラ"のダディ・ヤナンザとの交戦中に殉職したって話だったからさ~」

 ピローペイン女史の発言に、自分は耳を疑うと共に江夏の汚いやり口に呆れ返ってしまいました。
 魔王軍幹部"死神天秤デス・ライブラ"ダディ・ヤナンザ……
 神聖王国に仕えし四騎士の一人であり乍ら、恋人との死別に精神を病み自害の後、死神と化し魔王軍に寝返った"悲劇の裏切り者"として、悪名高くも同情されがちな彼ですが……

「それは偏向報道に御座いますなァ。何せヤナンザを討ち取ったのは他ならぬこの自分めに御座いますので。
 江夏めは当時、私用を優先しヤナンザ討伐の延期を発表しておりましたが……状況が状況であったもので、自分めが出向き討伐したので御座います」
「へぇ~、そうかぁ」
「と、仰有いますのは?」
「そのまんまの意味さ。あのエナツって勇者、初めて顔見た時からな~んか信用ならないなって気がしてたんだよねぇ~。
 ま、それも所詮はあたしの感想、明確なデータも無かったワケだけど……お兄さんの証言っていう信用に値するデータが加わったお陰で"明確に断言できる事実"になったってコトか。
 その感じだと、どうせお兄さんもなんか理不尽に追い出されたとかそういうアレでしょ?」
「如何にもその通りに御座います。丁度ヤナンザ討伐から二日後の夜、江夏から唐突に追放宣告を受けましてな」
「あらぁ~」
「その後紆余曲折を経て海に転落、意識を失ったまま漂流し気付けばこの大広間で目覚め……」
「今に至る、と。いやぁ~、とんだ災難だったねぇ」
「ええ、全く理不尽な目に遭わされました」
「うんうん、わかるよぉ。お兄さんはほんと苦労人だよねぇ。
 ……てなワケで提案なんだけどさぁ、お兄さん、もし良かったらあたしと組まない?
 まずそもそもここ出たとして行くとこないじゃんね? 一応これでも結構稼げてるし、その辺含めてあたしが面倒見てあげるよ?」
「ホウ、それはそれは……」

 ピローペイン殿からのご提案は、今の自分めにとってまさしく渡りに船に御座いました。
 職や住まいどころか衣類さえ皆無……まさに衣食住の総てを欠いて窮地にある自分からすれば、誘いに乗らせて頂く以外の選択肢など在ろう筈も御座いません。

「宜しいのですか?」
「うん、いいよぉ~。元々そのつもりでコンタクト取ったんだし。勿論、タダでってワケにはイかないケドさ……♥」

 刹那、ピローペイン殿の目付きが卑猥いやらしく歪み、その視線が斜め下方向へ向けられるのを、自分はそれとなく察知しました。
 同時に改めて己が全裸である事実を思い出し、途端体温と心拍数が上昇あがり始めるのを感じずにれず……

(い、いかんっっ……! 意識が、善からぬ衝動に乗っ取られてしまう……! 折角どうにか抑え込めた所であったのにからっっ……!)

 劣情……欲望と良識、興奮と羞恥、期待と抵抗……その他様々な要素が入り混じり、神経と血管を伝い細胞と体液、そして自我と意識、即ち魂を駆り立てるが如き感覚が、我が身を苛み悩ませます。
 当然自分は“それ”を抑え込まんとしますが上手く行かず……

「つまり、対価を支払えとっ……? 無論、此方もお世話になる以上、その点を疎かには出来ぬと認識しております……!」
「そっかぁ♥ そりゃ助かるねぇ~♥ じゃあ早速最初の頼み事、聞いて貰えるかなぁ?」
「ぬ、っっっ……!?」

 ずい、すずい……と自分の側へ躙り寄るピローペイン殿。
 その度にわざとらしく、曝け出されたるご自身の柔肌をこれでもかと見せ付けて来られるものですから、自分としては堪ったものではありません。

「とは、仰有いますがっっ……具、体的な頼み事の内容をお聞きしません事にはっ、対応のし様も無いので御座いましてっっ……!」
「はぁぁ~ん? なぁ~にもぉ~♥ トボけちゃってさぁ~♥ そんなコト言いつつ、実際内心ではもう察しついてんでしょっ♥ カラダの方はこぉーんな準備万端の臨戦態勢っ、
 ロボアニメのノリで言えば『ダイリュウ、何時でもイけまぁーすっ!』な状態のクセに、そこでイモ引くなんて男が廃るってか、主人公として不正解もイイトコなんじゃないの? お兄さんっ♥」
「……し、然し乍らピローペイン殿っっ……!」
「ピローペイン殿、かぁ~。んん~、良くないなぁそういうのは……
 これからお互いアレコレ支え合いながら生きてこうって時に、その相手を姓で呼ぶってのもどうなのよ?」
「それは、御尤もっ……失礼致しましたっ……パルティータ殿っ……!」
「堅苦しいなぁ、パルでいいよ♥ お互い気安くイこっ♥ ね、ダイちゃん?」
「かっ、畏まり、ましたっっ、パル殿っ……!」
「んん~……やっぱカタいねぇ~? 不慣れっていうか、不器用なカンジ? ガッチガチのゴリッゴリにカタ過ぎて、このままじゃ息苦しいったらないよねぇ~。
 ま、初対面だし緊張するのもしゃーないけどさ、それにしたってじゃ君にとっても良くないし、ここはあたしがひと肌脱いで ほ ぐ し て あげなきゃだねぇ♥」
「ほ、ほぐっっ……!?」
「あぁ、大丈夫だよ♥ 別に悪さしようってわけじゃないし、君を苦しめたり不幸にするつもりも、痛め付けたり不快がらせたりとかそんなコト微塵も考えてないから♥
 何も面倒なことなんてないし、厄介なこと、怖いこともない……あたしは君を幸せにして、救いたいだけなんだ♥
 だから身を任せてくれてればいいし、要求があれば可能な限り聞き入れる……勿論タダじゃないから、幾らか対価は頂くけどネ♥」
「……畏まり、ました……では、宜しくお願い申し上げます、パル殿っ……」
「ん。ダイちゃんは素直でいい子だねぇ。じゃ、早速始めようかぁ……♥」

 かくして自分めは、パル殿に導かれるまま甘美にして情熱的なひと時を過ごすことと相成ったので御座います……。
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