2 / 3
邂逅編
邂逅Ⅰ 出会い
しおりを挟む
邂逅Ⅰ 出会い
桜が散る。春と言えば桜だけど、ぶっちゃけ四月になるともう、大半が散ってしまう。
深夜、月明かりを纏い散っていく様は幻想的であり、人に「キレイ」と思わせる要素で溢れていたのを記憶している。
儚い。だからこそきらびやかであり、尊い。それは、幼い頃夢に見た将来そのものだった。
あれは一瞬にして消えた。蜃気楼のように。あの時見た景色、響き、インスピレーション、気持ちも全て。
夢だったのではないか。何度も疑った。
思い返せばなんて甘ったるい世界で生きていたんだと思う。
でも――。
でも諦められなかった。
あの時、胸の中にぽっかりと穴が空いたかのような、虚無感に襲われた。
自分には何もない。与えられたのは「呪い」だけ。
呪いから解き放たれたい。そう何度願ったことだろう。
だからまた戻ってきた。
自由になるために、失った夢を取り戻すために。
伊吹大学附属高等学校音楽科―――つまり。
音楽の世界へ―――
(二年四組ねー。はいはい。)
二年生全員の名前が書かれたクラス名簿の中から、やっとの思いで自分の名前を見つけた僕は、クラスへ向かう。
(しかし、私立のエリート校なだけあって広いな。)
名簿を見た感じ、十クラスはあった。少子高齢化の激しい現代社会において、なかなかのマンモス校だろう。
妙に長い廊下を歩き、クラスへと向かう。
クラスについた僕は席を探す。
黒板には席表がご丁寧に磁石で留められていた。
「あった。」
表から、やっとこさ生徒手帳の置いてある机を発見する。
申し遅れたが、僕の名前は橘夏希である。
音楽といえどドラムの知識しかない。
何せドラムをやっていた時代があったのだから当然だろう。
席についた僕は出席確認時刻までゆっくりする。
周りを見渡す限り、一年からの級友が四割程度だった。
この高校はそれぞれ専科があって、僕の場合は音楽科。クラス別けは専科関係なく選別される。
八時四十分。出席確認の時間だ。
新担任の朝倉菜奈という女教師は、去年からの付き合いだったりする。
「はーい、みんなおはよー。今日は、転校生が来てるよ。」
なんということだろう。突然の知らせに級友たちがざわつき始める。
「ささ、早よ入ってき。」
先生の合図と同時に、ガラッとドアを開けて入ってきたのは、妖しく艶光する漆黒(紫に近い)の髪を持つ女性だった。
女性だった。じゃあなくて。ちょっと待て!
髪の色は良いとしよう。まず、その格好。なんで白色のショートコート?それに白いカーボパンツ。耳にはピアスがちらほらと。そしてヘッドフォンを首に掛けている。
この高校はまず制服だ。それにピアスはダメだし、不要物の持ち込みもダメ。校則に反しまくっている。
「はーい、今日から新しくこのクラスに来た子です。それでは自己紹介どーぞ!」
「水原茜。音楽科。よろしく。」
クールというべきか、素っ気ないというべきか。
そういえば隣の席の人が居ないなーと思っていたら、水原は、僕の隣に座ってきた。
……マジかよ。
朝のHRが終わる。始業式まで時間がある。
コミュ力には自信がある。でもさ。
さすがに気まずいぞ?
でも何か話さない方が気まずいので話しかける。
「えっとーども。初めまして。橘夏希です。」
「……にょ?」
……え?にょ?ってなに?
「あのーよろしくお願いします……」
とりあえず素性を聞き出そうとする。
すると変人はノートパソコンを取り出して、せっせと開き始めた。
スマホは良い。でもパソコンはだめだろ!
僕の悲痛な心の叫びを気にせず、変人は黙々と作業を始める。
「初めまして!よろしくお願いします!!」
一際大きな声で言ってやった。
「にゃにゃ!?」
いや、猫かい!
「いえ、あのーよろしくお願いします……」
「え?ああ、あれって私に言っていた感じか。」
それ意外ないと思うんだけど……。半ばあきれながら会話を続ける。
「僕は橘夏希です。」
やっと言えたー。
「えっとー、あ、はい、ども、茜です。水原茜。」
なんでそんな句読点いっぱい使うんだよ。読みづらいだろ。
「えっとー、水原さんはどこの中学出身?」
ありきたりな質問で、会話を繋ごうと試みる。
「私……私は高校が初めてかな。」
「え?マジで。義務教育どしたん?」
「私は帰国子女だからね。」
帰国子女なのかよ……。
帰国子女とは、親の都合など、やむを得ない事情で海外で暮らし、日本に帰国した子供のことである。
水原はヘッドフォンを耳につけると、バッグからキーボードを取り出して、電源をいれる。
五線譜が印刷された楽譜を取り出すと、鉛筆でなにかを書き始めた。
邪魔をしない方が良い。そう判断した僕は、式典の準備を始めた。
「瑞々しい春の陽気溢れる中、真新しい制服に身を包み、正門をくぐって……」
校長の式辞とは長いものだ。その事実をこの十六年間でよく知っている。
この高校の入学式と始業式は合同で行われる。
てきとーに聞き流すと表情でばれたことがあるので、一応耳は傾けた。
「保護者の皆さま、この度はお子さんのご入学、おめでとうございます。愛情を込め育ててきたお子さんが義務教育を修了し、こうして将来への一歩を踏み出したことに、感慨もひとしおのことと存じます。教職員一同……」
やっぱ長ぇ。正直、過半数の人が聞いてないだろう。ふと女子席の方をみると、ホワイトのコートを着た茜が目立っていた。
そりゃあそうだろう。この高校の制服は、黒色。ブレザーである。桜色と黒色の混じったネクタイ、リボンが特徴だ。
そんな中に、ホワイトのコートを着た人がいたら違和感を持つだろうな……
長い入学式(と始業式)を終え教室に戻った僕らは、この学校についての説明を改めて長々と聞く羽目になった。
下校時間。神の時間が訪れる。
少し説明しておくと、この高校は学生寮があり、基本的には二人部屋で男女別だ。
正門を出て左手が男子で、右手が女子寮である。
高級ホテルのような豪華絢爛な作りになっているため、学費も勿論値が張る。
部屋は一年のときと変わらないのでいつも通り、九○七号室へと足を運ぶ。
ロビーへと入った僕は学生証をかざす。
エレベーターで九階まで上ると、七号室へ鍵をいれた。
ガチャリと音がなり、鍵が開く―――と思ったのも束の間、鍵が開かないではないか。
ひょっとして――と思い、鍵を再び回すと――
案の定、鍵は開いた。もともと鍵が開いていたのだ。
閉めたけどなぁとも思いつつ、中へ入ると女子の靴があった。
基本的に二人で一部屋なのだが、訳あって一人で過ごしていた。
しかし、僕にはこの靴の持ち主がわかるまで、時間はいらなかった。
何を隠そう、水原茜である。
急いで入るとそこには――
案の定というべきか、水原茜が居た。
「なんで、此処に……?」
率直な疑問を口にする。
「私の部屋になったから……だけど。」
「ルームメイトってことになるのか……」
水原曰く、先生に部屋が此処しか空いていないと、言われたらしい。
こうなったからには一緒に生活するしかない。
「ドラムとか色々散らかっているけど、悪いね。」
「あぁ全然大丈夫。私もmidiキーボード置いちゃったし。」
midiキーボードとはmidi入力が対応したソフトで音を入力できるキーボードで、DTMなどに使われるキーボードだ。
ふと視界にスタンドが倒れているのが映る。
「……あれ?なんか倒れてる」
「あっ……」
水原が反応する。
それは――
「あぁ!買ったばかりのハイハットがー!」
ちょうど買い換えたばかりのハイハットが倒されていたのだ。
「ご、ごめん。気づかなくて……」
「まぁ、良いけどさ」
気を取り直して。
「じゃあ水原さん。いや、固いか。じゃあ茜さん。これからよろしく」
「こちらこそよろしく。夏希。」
というのが僕と茜の邂逅である。
この先の人生に置いて、茜の存在が大きく影響することを、このときはまだ予想値にしていなかった。
桜が散る。春と言えば桜だけど、ぶっちゃけ四月になるともう、大半が散ってしまう。
深夜、月明かりを纏い散っていく様は幻想的であり、人に「キレイ」と思わせる要素で溢れていたのを記憶している。
儚い。だからこそきらびやかであり、尊い。それは、幼い頃夢に見た将来そのものだった。
あれは一瞬にして消えた。蜃気楼のように。あの時見た景色、響き、インスピレーション、気持ちも全て。
夢だったのではないか。何度も疑った。
思い返せばなんて甘ったるい世界で生きていたんだと思う。
でも――。
でも諦められなかった。
あの時、胸の中にぽっかりと穴が空いたかのような、虚無感に襲われた。
自分には何もない。与えられたのは「呪い」だけ。
呪いから解き放たれたい。そう何度願ったことだろう。
だからまた戻ってきた。
自由になるために、失った夢を取り戻すために。
伊吹大学附属高等学校音楽科―――つまり。
音楽の世界へ―――
(二年四組ねー。はいはい。)
二年生全員の名前が書かれたクラス名簿の中から、やっとの思いで自分の名前を見つけた僕は、クラスへ向かう。
(しかし、私立のエリート校なだけあって広いな。)
名簿を見た感じ、十クラスはあった。少子高齢化の激しい現代社会において、なかなかのマンモス校だろう。
妙に長い廊下を歩き、クラスへと向かう。
クラスについた僕は席を探す。
黒板には席表がご丁寧に磁石で留められていた。
「あった。」
表から、やっとこさ生徒手帳の置いてある机を発見する。
申し遅れたが、僕の名前は橘夏希である。
音楽といえどドラムの知識しかない。
何せドラムをやっていた時代があったのだから当然だろう。
席についた僕は出席確認時刻までゆっくりする。
周りを見渡す限り、一年からの級友が四割程度だった。
この高校はそれぞれ専科があって、僕の場合は音楽科。クラス別けは専科関係なく選別される。
八時四十分。出席確認の時間だ。
新担任の朝倉菜奈という女教師は、去年からの付き合いだったりする。
「はーい、みんなおはよー。今日は、転校生が来てるよ。」
なんということだろう。突然の知らせに級友たちがざわつき始める。
「ささ、早よ入ってき。」
先生の合図と同時に、ガラッとドアを開けて入ってきたのは、妖しく艶光する漆黒(紫に近い)の髪を持つ女性だった。
女性だった。じゃあなくて。ちょっと待て!
髪の色は良いとしよう。まず、その格好。なんで白色のショートコート?それに白いカーボパンツ。耳にはピアスがちらほらと。そしてヘッドフォンを首に掛けている。
この高校はまず制服だ。それにピアスはダメだし、不要物の持ち込みもダメ。校則に反しまくっている。
「はーい、今日から新しくこのクラスに来た子です。それでは自己紹介どーぞ!」
「水原茜。音楽科。よろしく。」
クールというべきか、素っ気ないというべきか。
そういえば隣の席の人が居ないなーと思っていたら、水原は、僕の隣に座ってきた。
……マジかよ。
朝のHRが終わる。始業式まで時間がある。
コミュ力には自信がある。でもさ。
さすがに気まずいぞ?
でも何か話さない方が気まずいので話しかける。
「えっとーども。初めまして。橘夏希です。」
「……にょ?」
……え?にょ?ってなに?
「あのーよろしくお願いします……」
とりあえず素性を聞き出そうとする。
すると変人はノートパソコンを取り出して、せっせと開き始めた。
スマホは良い。でもパソコンはだめだろ!
僕の悲痛な心の叫びを気にせず、変人は黙々と作業を始める。
「初めまして!よろしくお願いします!!」
一際大きな声で言ってやった。
「にゃにゃ!?」
いや、猫かい!
「いえ、あのーよろしくお願いします……」
「え?ああ、あれって私に言っていた感じか。」
それ意外ないと思うんだけど……。半ばあきれながら会話を続ける。
「僕は橘夏希です。」
やっと言えたー。
「えっとー、あ、はい、ども、茜です。水原茜。」
なんでそんな句読点いっぱい使うんだよ。読みづらいだろ。
「えっとー、水原さんはどこの中学出身?」
ありきたりな質問で、会話を繋ごうと試みる。
「私……私は高校が初めてかな。」
「え?マジで。義務教育どしたん?」
「私は帰国子女だからね。」
帰国子女なのかよ……。
帰国子女とは、親の都合など、やむを得ない事情で海外で暮らし、日本に帰国した子供のことである。
水原はヘッドフォンを耳につけると、バッグからキーボードを取り出して、電源をいれる。
五線譜が印刷された楽譜を取り出すと、鉛筆でなにかを書き始めた。
邪魔をしない方が良い。そう判断した僕は、式典の準備を始めた。
「瑞々しい春の陽気溢れる中、真新しい制服に身を包み、正門をくぐって……」
校長の式辞とは長いものだ。その事実をこの十六年間でよく知っている。
この高校の入学式と始業式は合同で行われる。
てきとーに聞き流すと表情でばれたことがあるので、一応耳は傾けた。
「保護者の皆さま、この度はお子さんのご入学、おめでとうございます。愛情を込め育ててきたお子さんが義務教育を修了し、こうして将来への一歩を踏み出したことに、感慨もひとしおのことと存じます。教職員一同……」
やっぱ長ぇ。正直、過半数の人が聞いてないだろう。ふと女子席の方をみると、ホワイトのコートを着た茜が目立っていた。
そりゃあそうだろう。この高校の制服は、黒色。ブレザーである。桜色と黒色の混じったネクタイ、リボンが特徴だ。
そんな中に、ホワイトのコートを着た人がいたら違和感を持つだろうな……
長い入学式(と始業式)を終え教室に戻った僕らは、この学校についての説明を改めて長々と聞く羽目になった。
下校時間。神の時間が訪れる。
少し説明しておくと、この高校は学生寮があり、基本的には二人部屋で男女別だ。
正門を出て左手が男子で、右手が女子寮である。
高級ホテルのような豪華絢爛な作りになっているため、学費も勿論値が張る。
部屋は一年のときと変わらないのでいつも通り、九○七号室へと足を運ぶ。
ロビーへと入った僕は学生証をかざす。
エレベーターで九階まで上ると、七号室へ鍵をいれた。
ガチャリと音がなり、鍵が開く―――と思ったのも束の間、鍵が開かないではないか。
ひょっとして――と思い、鍵を再び回すと――
案の定、鍵は開いた。もともと鍵が開いていたのだ。
閉めたけどなぁとも思いつつ、中へ入ると女子の靴があった。
基本的に二人で一部屋なのだが、訳あって一人で過ごしていた。
しかし、僕にはこの靴の持ち主がわかるまで、時間はいらなかった。
何を隠そう、水原茜である。
急いで入るとそこには――
案の定というべきか、水原茜が居た。
「なんで、此処に……?」
率直な疑問を口にする。
「私の部屋になったから……だけど。」
「ルームメイトってことになるのか……」
水原曰く、先生に部屋が此処しか空いていないと、言われたらしい。
こうなったからには一緒に生活するしかない。
「ドラムとか色々散らかっているけど、悪いね。」
「あぁ全然大丈夫。私もmidiキーボード置いちゃったし。」
midiキーボードとはmidi入力が対応したソフトで音を入力できるキーボードで、DTMなどに使われるキーボードだ。
ふと視界にスタンドが倒れているのが映る。
「……あれ?なんか倒れてる」
「あっ……」
水原が反応する。
それは――
「あぁ!買ったばかりのハイハットがー!」
ちょうど買い換えたばかりのハイハットが倒されていたのだ。
「ご、ごめん。気づかなくて……」
「まぁ、良いけどさ」
気を取り直して。
「じゃあ水原さん。いや、固いか。じゃあ茜さん。これからよろしく」
「こちらこそよろしく。夏希。」
というのが僕と茜の邂逅である。
この先の人生に置いて、茜の存在が大きく影響することを、このときはまだ予想値にしていなかった。
1
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
✿ 私は彼のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します
冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」
結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。
私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。
そうして毎回同じように言われてきた。
逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。
だから今回は。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる