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プロローグあるいは予告2
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「はぁー、また勝手に僕の家に入りこんで。きちんと靴脱いでください」
「はぁーい」
返事だけはよろしいオスニエル皇子を、なぜか受け入れはじめてしまっている自分に腹が立つ。
今日もどうせ来るだろうと、マロンタルトもグラタンもパイシチューも、すべて2個ずつ買ってしまった自分が憎い。
たたきに靴を揃えて脱ぐことを覚えたオスニエル皇子は、僕の持つ紙袋も持って、勝手知ったる僕の家の台所へ直行する。
こういうとこは紳士になってきた。
「お、オーググラッセタルト」
「“ル・パルシェ”の限定品です。“フォンデュ・フルール”の春摘みダージリンが合うと思います」
「戸棚の紺色の缶の?」
「そうです」
「一番左?」
「それです」
「わかった。明日な」
テキパキと戦利品を冷蔵庫に詰めていく様は、とても皇子には見えない。
良くできた夫だ。
「よし。入るか」
冷蔵庫を閉じたオスニエル皇子は、僕の背中をグイグイ押す。
待て待て待て。
人の背中を押して風呂に向かおうとすんな。
どうせ勝手に沸かしてあるんだろうけど。
「お一人でどうぞ」
「なぁ、どうして逃げるんだ?」
後ろから肩をガッチリと羽交い締めにされた。
切れ長の目におさまる綺麗な碧色の瞳が、こちらを鋭くのぞきこんでくる。
切なく僕を睨む皇子様から、なぜか目を離せなくなってしまった。
「ですから、僕には不相応だと申し上げております」
「それが俺の望みだとしても、フィルは聞いてくれないのだね。悲しいことだ」
「僕は貴方に相応しくありませんから」
「へぇ?強力すぎる魔力を持っているのに?俺に相応しくないと?」
「えぇ。貴方はきっと僕ではない方を所望し「そんなことはない!!」
「え?」
ほら怒鳴って誤魔化そうとする。
『ブサイクすぎて見てられない』僕は、あなたのパートナーとして相応しくないに決まってるでしょう。
あなた方と『同等の魔力量のさやは珍しい』から欲しいだけでしょう。
そりゃあ僕らは魔力量が同じぐらいだから、相性は最高で、魔法を使った副作用もすぐ解消できたでしょう。
実際にパートナーだった頃は、何度も経験しましたからそれは重々承知しております。
子を成せば、きっと素晴らしく優秀な皇子が誕生することでしょう。
ですがねオスニエル皇子、僕は便利な物扱いされるような場所には行きたくなのです。
周りの人から『ブサイク』呼ばわりされて、身分も不相応だとののしられ、果ては魔力量が貧相でも顔は極上の愛人にいびられそうな場所なんて。
死んでもごめんだっつってんだよ、こんバカ皇子!
「すまない」
苦虫をかみつぶしたような表情で、ポツリと謝るオスニエル皇子にどう返せばいいのかわからない。
この皇子の演技に騙されてはいけない。
「ごめんなさい。でも、貴方のパートナーだけは遠慮します」
「………そう」
僕の肩に顔をうずめた皇子の表情はわからない。
「ですから、シャワーを浴びたらお帰り「じゃあ、今日だけは、フィルが相手してよ」
このヘンタイ皇子、あろうことか僕の股間をもみはじめやがった!
「ちょっと、止めてください。昨日どころか毎日相手してるじゃないですかっ」
「ねぇ、今日相手してくれないならここで出させるけど、いいの?」
エロ皇子がここぞとばかりにイイ声で囁いてくる。
僕だって数回魔法を使ったから、悔しいがエロ皇子の誘惑に負けそうになる。
でもここはキッチンだ。
誰がこんなところでシたいと思うんだよ。
「止めてください」
「だったら、風呂行こうか」
コクリとうなずく。
今日もまんまとエロ皇子の魔の手に堕ちてしまった。
「はぁーい」
返事だけはよろしいオスニエル皇子を、なぜか受け入れはじめてしまっている自分に腹が立つ。
今日もどうせ来るだろうと、マロンタルトもグラタンもパイシチューも、すべて2個ずつ買ってしまった自分が憎い。
たたきに靴を揃えて脱ぐことを覚えたオスニエル皇子は、僕の持つ紙袋も持って、勝手知ったる僕の家の台所へ直行する。
こういうとこは紳士になってきた。
「お、オーググラッセタルト」
「“ル・パルシェ”の限定品です。“フォンデュ・フルール”の春摘みダージリンが合うと思います」
「戸棚の紺色の缶の?」
「そうです」
「一番左?」
「それです」
「わかった。明日な」
テキパキと戦利品を冷蔵庫に詰めていく様は、とても皇子には見えない。
良くできた夫だ。
「よし。入るか」
冷蔵庫を閉じたオスニエル皇子は、僕の背中をグイグイ押す。
待て待て待て。
人の背中を押して風呂に向かおうとすんな。
どうせ勝手に沸かしてあるんだろうけど。
「お一人でどうぞ」
「なぁ、どうして逃げるんだ?」
後ろから肩をガッチリと羽交い締めにされた。
切れ長の目におさまる綺麗な碧色の瞳が、こちらを鋭くのぞきこんでくる。
切なく僕を睨む皇子様から、なぜか目を離せなくなってしまった。
「ですから、僕には不相応だと申し上げております」
「それが俺の望みだとしても、フィルは聞いてくれないのだね。悲しいことだ」
「僕は貴方に相応しくありませんから」
「へぇ?強力すぎる魔力を持っているのに?俺に相応しくないと?」
「えぇ。貴方はきっと僕ではない方を所望し「そんなことはない!!」
「え?」
ほら怒鳴って誤魔化そうとする。
『ブサイクすぎて見てられない』僕は、あなたのパートナーとして相応しくないに決まってるでしょう。
あなた方と『同等の魔力量のさやは珍しい』から欲しいだけでしょう。
そりゃあ僕らは魔力量が同じぐらいだから、相性は最高で、魔法を使った副作用もすぐ解消できたでしょう。
実際にパートナーだった頃は、何度も経験しましたからそれは重々承知しております。
子を成せば、きっと素晴らしく優秀な皇子が誕生することでしょう。
ですがねオスニエル皇子、僕は便利な物扱いされるような場所には行きたくなのです。
周りの人から『ブサイク』呼ばわりされて、身分も不相応だとののしられ、果ては魔力量が貧相でも顔は極上の愛人にいびられそうな場所なんて。
死んでもごめんだっつってんだよ、こんバカ皇子!
「すまない」
苦虫をかみつぶしたような表情で、ポツリと謝るオスニエル皇子にどう返せばいいのかわからない。
この皇子の演技に騙されてはいけない。
「ごめんなさい。でも、貴方のパートナーだけは遠慮します」
「………そう」
僕の肩に顔をうずめた皇子の表情はわからない。
「ですから、シャワーを浴びたらお帰り「じゃあ、今日だけは、フィルが相手してよ」
このヘンタイ皇子、あろうことか僕の股間をもみはじめやがった!
「ちょっと、止めてください。昨日どころか毎日相手してるじゃないですかっ」
「ねぇ、今日相手してくれないならここで出させるけど、いいの?」
エロ皇子がここぞとばかりにイイ声で囁いてくる。
僕だって数回魔法を使ったから、悔しいがエロ皇子の誘惑に負けそうになる。
でもここはキッチンだ。
誰がこんなところでシたいと思うんだよ。
「止めてください」
「だったら、風呂行こうか」
コクリとうなずく。
今日もまんまとエロ皇子の魔の手に堕ちてしまった。
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