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ハローワールド2
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ちょっと待ってください!
ベッドからよたよたと下りて、なんとかパッツン美人さんを呼び止めようとした。
けどなんとか辿りついたドアの先、蒼い絨毯張りの廊下にはパッツン美人さんの姿はもう無かった。
諦めてドアを閉め、改めて室内を確認する。
華美ではないものの荘厳な雰囲気のある室内には、その雰囲気に合ったインテリアが使用されている。
ベッドにソファ、テーブルに書斎机、そしてなぜか姿見まで。
休むための私室というよりは、書斎にベッドを運びこんだようなつくりの部屋だ。
なんとはなしに姿見を見ると、そこにはたれ目のとんでもない美少年がうつっていた。
「え?」
こっちが驚くと、鏡の中の美少年も驚く。
つまり夢の中では、このサラッサラのエメラルドグリーンの髪の美少年になっているようだ。
銀色の瞳が浮き世離れした雰囲気のこの子になるなんて、大丈夫かな?
まあ“浮いている”という点では、文句なしの言動ができそうだけど。
なんて思っていると、乱雑にドアが開かれた。
「フィランダー!」
ドアを開いた筋肉質で長身のオネェさんが、わりと低めのイイ声で叫んだ。
その綺麗な巻き毛のオネェさんは、長い赤毛を振り乱しながらこちらに向かって突進してくる。
何がなんだか分からず固まっていると、オネェさんにタックルされて締め付けられた。
痛い痛い痛い!
なんつう締めあげだ、苦しい!
ギブですギブ!
パッツン美人さん、このオネェさん止めて!
「アラステアさん、フィランダーくんが苦しそうですよ」
「あら。フィランダー、大丈夫?」
「大丈夫、です」
大丈夫ではない気もするが、一応大丈夫だと言っておく。
青アザにならないといいけど。
「フィランダー、私がわかるかしら?」
曖昧に笑ってごまかそうとした。
オネェさんことアラステアさんも困ったような笑顔になる。
黙ってりゃただの美人なお姉さんだなこの人。
口を開けばオネェさんが露呈するけど。
動けばゴリr…こほん、脳筋が露呈する。
「フィランダーくん、アラステアさんのことは分かりますか?」
ごまかしを許さないような真面目な表情で問うパッツン美人さんに気圧される。
「えっと、あの、ごめんなさい」
「フィランダー?」
悲しそうな表情をするアラステアさんに、いたたまれなくなって話題を変える。
「こちらはどこでしょうか?」
「貴方の寝室よ」
「ハームズワース伯爵邸の北東角に位置する、フィランダー・ハームズワースの寝室です」
「僕の」
「そう、貴方の部屋よ」
「お父さん、」
「ローレンスは今出掛けていて居ないの。あぁ、これなら引き留めれば良かったかしら」
「いえ、外出中でしたら結構です」
どうやらアラステアさんはフィランダー・ハームズワースくんの父親ではないらしい。
僕の父親の名前を呼び捨てにしているということは、父方の兄弟だろう。
つまり父親は伯爵様、ということか。
「フィランダーくん、貴方は今まで何をしていたか覚えていますか?」
「メレディス様!私はたとえ〈妖精の悪戯〉が起きていようとも、フィランダーが生きていればそれでいいのです!」
「お言葉ですが、今の辺境伯の状態では、そう見えません」
「フィランダーはやっと自我が芽生えたのに!」
「辺境伯」
パッツン美人さんことメレディスさんが凄む。
「ごめんなさい、フィランダーがやっと自分で動いてくれたから嬉しくて」
「辺境伯、少し席を外してください」
「それは難しいわ。やっと動き始めたフィランダーをまた廃人にしてほしくないもの」
「辺境伯、お願いですから口を閉じていてください。〈妖精の悪戯〉は、かなり厄介ですので」
「そう、では黙っているからフィランダーの傍に居るわ」
そう言って、アラステアさんは僕の傍らに立って、羽織っているジャケットを僕に着せてくれた。
あったかい。
正直薄手のパジャマだけでは寒かったのでありがたい。
本当の親みたいに僕を気遣かってくれる優しい人だ。
今までの情報を要約すると、伯爵、というより辺境伯はアラステアさんの方だった。
父親はアラステアさんの兄弟、おそらく弟だろう。
伯父として自我の乏しいフィランダーくんの面倒をみてきたらしい。
廃人とまで言われたのには驚いたが、きっとそれだけ自分の意思が希薄だったんだろう。
それと〈妖精の悪戯〉という現象があり、僕はそうではないかと疑われている。
それは非常に厄介な現象のようだ。
「フィランダーくん、今年は何年か分かりますか?」
それぐらいなら分かる。
「20××年です」
アラステアさんの表情が凍りついた。
どうやら間違いだったらしい。
ベッドからよたよたと下りて、なんとかパッツン美人さんを呼び止めようとした。
けどなんとか辿りついたドアの先、蒼い絨毯張りの廊下にはパッツン美人さんの姿はもう無かった。
諦めてドアを閉め、改めて室内を確認する。
華美ではないものの荘厳な雰囲気のある室内には、その雰囲気に合ったインテリアが使用されている。
ベッドにソファ、テーブルに書斎机、そしてなぜか姿見まで。
休むための私室というよりは、書斎にベッドを運びこんだようなつくりの部屋だ。
なんとはなしに姿見を見ると、そこにはたれ目のとんでもない美少年がうつっていた。
「え?」
こっちが驚くと、鏡の中の美少年も驚く。
つまり夢の中では、このサラッサラのエメラルドグリーンの髪の美少年になっているようだ。
銀色の瞳が浮き世離れした雰囲気のこの子になるなんて、大丈夫かな?
まあ“浮いている”という点では、文句なしの言動ができそうだけど。
なんて思っていると、乱雑にドアが開かれた。
「フィランダー!」
ドアを開いた筋肉質で長身のオネェさんが、わりと低めのイイ声で叫んだ。
その綺麗な巻き毛のオネェさんは、長い赤毛を振り乱しながらこちらに向かって突進してくる。
何がなんだか分からず固まっていると、オネェさんにタックルされて締め付けられた。
痛い痛い痛い!
なんつう締めあげだ、苦しい!
ギブですギブ!
パッツン美人さん、このオネェさん止めて!
「アラステアさん、フィランダーくんが苦しそうですよ」
「あら。フィランダー、大丈夫?」
「大丈夫、です」
大丈夫ではない気もするが、一応大丈夫だと言っておく。
青アザにならないといいけど。
「フィランダー、私がわかるかしら?」
曖昧に笑ってごまかそうとした。
オネェさんことアラステアさんも困ったような笑顔になる。
黙ってりゃただの美人なお姉さんだなこの人。
口を開けばオネェさんが露呈するけど。
動けばゴリr…こほん、脳筋が露呈する。
「フィランダーくん、アラステアさんのことは分かりますか?」
ごまかしを許さないような真面目な表情で問うパッツン美人さんに気圧される。
「えっと、あの、ごめんなさい」
「フィランダー?」
悲しそうな表情をするアラステアさんに、いたたまれなくなって話題を変える。
「こちらはどこでしょうか?」
「貴方の寝室よ」
「ハームズワース伯爵邸の北東角に位置する、フィランダー・ハームズワースの寝室です」
「僕の」
「そう、貴方の部屋よ」
「お父さん、」
「ローレンスは今出掛けていて居ないの。あぁ、これなら引き留めれば良かったかしら」
「いえ、外出中でしたら結構です」
どうやらアラステアさんはフィランダー・ハームズワースくんの父親ではないらしい。
僕の父親の名前を呼び捨てにしているということは、父方の兄弟だろう。
つまり父親は伯爵様、ということか。
「フィランダーくん、貴方は今まで何をしていたか覚えていますか?」
「メレディス様!私はたとえ〈妖精の悪戯〉が起きていようとも、フィランダーが生きていればそれでいいのです!」
「お言葉ですが、今の辺境伯の状態では、そう見えません」
「フィランダーはやっと自我が芽生えたのに!」
「辺境伯」
パッツン美人さんことメレディスさんが凄む。
「ごめんなさい、フィランダーがやっと自分で動いてくれたから嬉しくて」
「辺境伯、少し席を外してください」
「それは難しいわ。やっと動き始めたフィランダーをまた廃人にしてほしくないもの」
「辺境伯、お願いですから口を閉じていてください。〈妖精の悪戯〉は、かなり厄介ですので」
「そう、では黙っているからフィランダーの傍に居るわ」
そう言って、アラステアさんは僕の傍らに立って、羽織っているジャケットを僕に着せてくれた。
あったかい。
正直薄手のパジャマだけでは寒かったのでありがたい。
本当の親みたいに僕を気遣かってくれる優しい人だ。
今までの情報を要約すると、伯爵、というより辺境伯はアラステアさんの方だった。
父親はアラステアさんの兄弟、おそらく弟だろう。
伯父として自我の乏しいフィランダーくんの面倒をみてきたらしい。
廃人とまで言われたのには驚いたが、きっとそれだけ自分の意思が希薄だったんだろう。
それと〈妖精の悪戯〉という現象があり、僕はそうではないかと疑われている。
それは非常に厄介な現象のようだ。
「フィランダーくん、今年は何年か分かりますか?」
それぐらいなら分かる。
「20××年です」
アラステアさんの表情が凍りついた。
どうやら間違いだったらしい。
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