青春の初期衝動

微熱の初期衝動

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微炭酸

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 僕にも彼女にも、恋人がいる。お互いにそれを知っている。ある日、彼女のスマホに彼氏らしき人からぽこんと通知が来た。それを偶然目にした僕は、彼女に問いかけた。すると、「本当の恋人」がいるとのこと。そこで僕にも「本当の恋人」がいることを告げた。「なんだ、お互い最低だね」と笑い合った。
 この関係は必ずどこかで終わる。それでも、どこか永遠のような気がして、「本当の恋人」とは違った楽しみ方ができた。例えば、「本当の恋人」とのクリスマスは1週間早めに済まして、僕たちは当日に人混みをかき分けて、イルミネーションやクリスマスマーケットに赴いた。
 楽しい時間だった。弾けるように夜の街を歩き、少し背伸びしたホテルに泊まった。お互い、クリスマスプレゼントを用意して。
 年越しの夜にはビデオ通話をしていた。そこに映る彼女は、素の表情をしていて、「こんな一面もあるんだな」と思った。いつしか「本当の恋人」を置いてけぼりにしてしまっていた。絶対にやめておかなければと思ったことがある。
 それが、旅行だ。はるばる先の京都に行くことを決めたのは、彼女と何気なく話していたとき、「旅行でもしてみない?と問いかけられた。それに僕は「いいね、どこ行きたい?」と軽はずみに受けてしまったのだ。
 京都への夜行バス。お菓子をシェアしたり、一緒に片耳ずつで音楽を聴いたり、手を繋いだり。アイマスクをして眠る彼女の姿には、くすりと笑ってしまったが、そのくらい自然体でいてくれているんだな、と安心した。
 朝、「本当の恋人」から連絡が来た。内容は他愛のないものだったが、これから京都を楽しむ瞬間に、ぐっと現実に引き摺り込まれたような感覚を覚えた。
 彼女は、事前に調べ上げていた観光名所やカフェに僕をつれて行き、着物を着て写真もたくさん撮った。2泊3日、ずっと胸がつかえるような感覚を覚えたまま、帰りの夜行バスに乗った。
 彼女はまたアイマスクをつけて寝ている。僕は、飲みかけのコーラを開けた。ぷす、と炭酸が少しだけ弾ける怠けた音がした。
 この日をもって、彼女とは別れた。最低で刹那的な恋に溺れる前に。
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