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8.理想の未来へ
(8)※
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「ぱーとなー?」
復唱した言葉は舌に馴染まなかった。泰徳がベッドの上に身を起こした。澄人も重い体を手で支えながらシーツに座る。泰徳の目が真っ直ぐに澄人を捉える。
「俺はお前を遠ざけようとして、それが間違いだと知った後、ただ悶々として日々を無駄に過ごした。主としてのつまらないプライドや、一度口にしたことを取り消す恥ずかしさに怯えた。お前に側に居てほしい俺から謝らなければならなかったのに」
澄人は首を振った。
「泰徳様は先ほど俺に頭を下げてくださいました。そんなことなさらず、ただ俺に戻れと命じてくだされば、俺は――わたくしは喜んで戻りました」
「それは違う。俺はお前と主従に戻りたかったんじゃない」
苦笑する泰徳を澄人は見つめた。
「あの事件のとき、俺はお前を失う恐怖で目の前が真っ暗になった。同時に知った、俺はお前に恋していると。だが無事だったお前に俺から告白したら、お前は自分の気持ちを殺し、俺の要求を呑んでしまう。だからお前が振りむいてくれるのを俺はずっと待っていた。セフレを持ったのも、お前の嫉妬を狙っていただけだ」
澄人は、え、と零した。泰徳が苦笑する。
「お前に言っただろう? セフレを持つなと言えと。あれはお前に、自分を選べと言ってほしかったからだ」
澄人は顔が紅潮するのを感じた。己の鈍さが恥ずかしい。
「気がつきませんでした」
「そんなうぶなお前だから好きなんだ」
泰徳が言葉を切り、澄人の手を取った。
「俺はお前が好きだ。愛している。俺から告白できなかったことを許してほしい。お前に命令だと思ってほしくなかったからだ。遠ざけようとしたことも許してほしい。お前の傷を見てお前がいつも命がけで俺を守ってくれていたことを思いだした。そんなお前の誠実さを忘れていた自分が恥ずかしくて耐えられなくて、逃げようとした」
澄人は泰徳の顔を下から覗きこんだ。
「泰徳様は勝手です。そんなふうに謝られたら、俺は許すことしかできません。だって、俺もあなたを愛しているんですから」
泰徳が、すまないと苦笑した。
「改めて言わせてほしい。お前を愛している、澄人。俺はお前のパートナーになりたい。それを前提に付きあってくれ」
澄人は身を乗りだして、泰徳にキスをした。目を瞠った泰徳に澄人は微笑んだ。
「謹んでお受けいたします。俺もあなたを愛しています」
泰徳が破顔し、澄人を胸に抱き込んだ。
「ありがとう。お前が設計してくれたあの家を二人でブラッシュアップして、一緒に住む家を建てよう。億単位の金がかかるから稼がないといけないが、お前との家だ。頑張るぞ」
「俺も――俺も頑張ります。泰徳さんと一生ともに歩めるように」
「澄人」
甘く名を呼ばれてまた唇を合わせる。
泰徳が好きだ。離れたくない気持ちを泰徳に見せたくて、泰徳と住む家を必死に設計した。澄人の本心は泰徳の伴侶になりたかったのだ。そして泰徳もそれを望んでくれていた。パートナーになりたいと言ってくれた。
ぽろっと涙がこぼれた。泰徳が驚いて覗きこんでくる。
「どうした、澄人」
澄人は泣きながら泰徳にしがみついた。
「愛してます、あいしてます、ずっと側に、一緒にいてください」
しっかりと抱き込まれた。
「ああ、離さない。お前こそ、俺を見捨てないでくれよ。実は自分の家事能力のなさに嫌気が差していた。これからはいろいろ教えてくれ」
澄人は泣きながら笑った。この三週間で泰徳もいろいろ考えていたのだ。
澄人と泰徳は見つめあい、また抱きあった。
洗濯をセットして、二人で風呂に入った。泰徳に中を掻きだすように探られ、また欲望が兆してしまった。同じようにそそり立つ泰徳の欲望とともにまとめて掴まれた。擦れあう泰徳の屹立と大きな手が与えてくる刺激に澄人は腰から蕩けるようで、たまらず泰徳の肩に縋った。
「あ、あっ、い、イくっ」
「んっ、おれ、もっ」
ぶるりと身を震わせて、悦びに身を任せた。
体を清めた後は、洗濯物を干し浴室乾燥をセットした。澄人は新しい下着もらって服を着るとベッドリネンを交換し、フロントのクリーニングサービスに出す準備をすませる。その間、泰徳が澄人のノートパソコンを片付けてくれた。寝室から出てきたとき、泰徳が澄人の印刷した図面を見ていた。
「何か気になる点がございますか?」
泰徳が苦笑いを浮かべた。
「その敬語も少しずつ変えていこう」
澄人は熱い頬を感じつつ小さく頷く。泰徳の目が図面に戻った。
「大学の頃は図面を引くのを苦手にしていたな」
「手描きは苦労しました。今はソフトを使っていますので」
「そのお陰で俺とお前の理想が簡単に一つになれたわけだ。ありがたいな」
肩を抱きよせられ、唇をちゅっと吸われた。
夕食はいつものイタリアンレストランを泰徳が予約した。そして泰徳は書斎に行き何かを手にして戻ってきた。
「これをまた渡しておく」
差しだされたのはこの部屋のカードキーと非常用合鍵だった。
「ありがとうございます」
澄人は頭を下げて両手で受けとり、胸に押しあててからしっかりとバッグにしまった。
復唱した言葉は舌に馴染まなかった。泰徳がベッドの上に身を起こした。澄人も重い体を手で支えながらシーツに座る。泰徳の目が真っ直ぐに澄人を捉える。
「俺はお前を遠ざけようとして、それが間違いだと知った後、ただ悶々として日々を無駄に過ごした。主としてのつまらないプライドや、一度口にしたことを取り消す恥ずかしさに怯えた。お前に側に居てほしい俺から謝らなければならなかったのに」
澄人は首を振った。
「泰徳様は先ほど俺に頭を下げてくださいました。そんなことなさらず、ただ俺に戻れと命じてくだされば、俺は――わたくしは喜んで戻りました」
「それは違う。俺はお前と主従に戻りたかったんじゃない」
苦笑する泰徳を澄人は見つめた。
「あの事件のとき、俺はお前を失う恐怖で目の前が真っ暗になった。同時に知った、俺はお前に恋していると。だが無事だったお前に俺から告白したら、お前は自分の気持ちを殺し、俺の要求を呑んでしまう。だからお前が振りむいてくれるのを俺はずっと待っていた。セフレを持ったのも、お前の嫉妬を狙っていただけだ」
澄人は、え、と零した。泰徳が苦笑する。
「お前に言っただろう? セフレを持つなと言えと。あれはお前に、自分を選べと言ってほしかったからだ」
澄人は顔が紅潮するのを感じた。己の鈍さが恥ずかしい。
「気がつきませんでした」
「そんなうぶなお前だから好きなんだ」
泰徳が言葉を切り、澄人の手を取った。
「俺はお前が好きだ。愛している。俺から告白できなかったことを許してほしい。お前に命令だと思ってほしくなかったからだ。遠ざけようとしたことも許してほしい。お前の傷を見てお前がいつも命がけで俺を守ってくれていたことを思いだした。そんなお前の誠実さを忘れていた自分が恥ずかしくて耐えられなくて、逃げようとした」
澄人は泰徳の顔を下から覗きこんだ。
「泰徳様は勝手です。そんなふうに謝られたら、俺は許すことしかできません。だって、俺もあなたを愛しているんですから」
泰徳が、すまないと苦笑した。
「改めて言わせてほしい。お前を愛している、澄人。俺はお前のパートナーになりたい。それを前提に付きあってくれ」
澄人は身を乗りだして、泰徳にキスをした。目を瞠った泰徳に澄人は微笑んだ。
「謹んでお受けいたします。俺もあなたを愛しています」
泰徳が破顔し、澄人を胸に抱き込んだ。
「ありがとう。お前が設計してくれたあの家を二人でブラッシュアップして、一緒に住む家を建てよう。億単位の金がかかるから稼がないといけないが、お前との家だ。頑張るぞ」
「俺も――俺も頑張ります。泰徳さんと一生ともに歩めるように」
「澄人」
甘く名を呼ばれてまた唇を合わせる。
泰徳が好きだ。離れたくない気持ちを泰徳に見せたくて、泰徳と住む家を必死に設計した。澄人の本心は泰徳の伴侶になりたかったのだ。そして泰徳もそれを望んでくれていた。パートナーになりたいと言ってくれた。
ぽろっと涙がこぼれた。泰徳が驚いて覗きこんでくる。
「どうした、澄人」
澄人は泣きながら泰徳にしがみついた。
「愛してます、あいしてます、ずっと側に、一緒にいてください」
しっかりと抱き込まれた。
「ああ、離さない。お前こそ、俺を見捨てないでくれよ。実は自分の家事能力のなさに嫌気が差していた。これからはいろいろ教えてくれ」
澄人は泣きながら笑った。この三週間で泰徳もいろいろ考えていたのだ。
澄人と泰徳は見つめあい、また抱きあった。
洗濯をセットして、二人で風呂に入った。泰徳に中を掻きだすように探られ、また欲望が兆してしまった。同じようにそそり立つ泰徳の欲望とともにまとめて掴まれた。擦れあう泰徳の屹立と大きな手が与えてくる刺激に澄人は腰から蕩けるようで、たまらず泰徳の肩に縋った。
「あ、あっ、い、イくっ」
「んっ、おれ、もっ」
ぶるりと身を震わせて、悦びに身を任せた。
体を清めた後は、洗濯物を干し浴室乾燥をセットした。澄人は新しい下着もらって服を着るとベッドリネンを交換し、フロントのクリーニングサービスに出す準備をすませる。その間、泰徳が澄人のノートパソコンを片付けてくれた。寝室から出てきたとき、泰徳が澄人の印刷した図面を見ていた。
「何か気になる点がございますか?」
泰徳が苦笑いを浮かべた。
「その敬語も少しずつ変えていこう」
澄人は熱い頬を感じつつ小さく頷く。泰徳の目が図面に戻った。
「大学の頃は図面を引くのを苦手にしていたな」
「手描きは苦労しました。今はソフトを使っていますので」
「そのお陰で俺とお前の理想が簡単に一つになれたわけだ。ありがたいな」
肩を抱きよせられ、唇をちゅっと吸われた。
夕食はいつものイタリアンレストランを泰徳が予約した。そして泰徳は書斎に行き何かを手にして戻ってきた。
「これをまた渡しておく」
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「ありがとうございます」
澄人は頭を下げて両手で受けとり、胸に押しあててからしっかりとバッグにしまった。
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