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【第二章・叛 逆 の 双 星】
Ж-30 氷 刃 双 牙 ~Double Fang Shock~
しおりを挟む上空から強襲する異様な圧迫感。
周囲の気圧に変化が生じ鼓膜にも異変が伝わる。
即座に闘氣を集束させ私は遮断出来たが、
真下の彼等は如何様か?
かなり強大な魔氣、 否、 強大且つ巨大だ。
「ワ、 ワ、 ワ、 『翼 竜 属』 だニャア~~~~!!
こんな浅層に現れるなんて聞いてないニャア~!!」
半猫の少女が頭上を指差し毛並みを逆立たせる。
「クソッ! 星界の巡りで、「位相」 がズレたんだろうぜ!
“サジタリアス” や “カプリコーン” の魔物は入ってこねーと想ったが、
ハグレが紛れ込みやがったかッ!」
森の上空で威嚇するように翅翼を羽撃かせる度に
颶風と見紛う気流が樹々を傾ませる。
並の小動物なら吹き飛ばされそうな風圧だ。
此れを一つの生命が放っているとは、
驚愕というより驚嘆に近い感情が背筋を走る。
しかし、 位相?
〘畏れながら御屋形様。
『グレイシァー・ワイバーン』
亜竜とは雖も当座での威敵階層は 【険難】 となりまする!
どうぞ御転進の程を!〙
うむ、 君がそう言うなら交戦は避けよう。
暫し状況を確認した後でな。
〘御屋形様!?〙
言葉とは裏腹に魔道具より大剣を掴み出す。
進言に従い交戦はしない。 交戦はな。
〘おのれ、 あの痴れ者共! 勝てぬと解したなら早々に去れば良いものを!
そんな事すら出来ぬのか戯けが!
畏れ多くも御屋形様に “殿” をお任せする羽目に陥ろうとはッ!〙
気持ちはありがたいがそう責めてやるな。
突発の恐慌状態では巧く思考が働かぬ、
私もそうであったろう。
む――?
「逃げろ! おまえら!」
狼人族と呼ばれていた半獣の青年が槍を構えて叫ぶ。
その貌は血の気を失い手も足も瘧を発している、
総身を覆う獣毛も冷汗で濡れていた。
「ニャア~!! ガルフ!?」
「バカ言ってんじゃないわよ! アンタ一人で、 死ぬ気!?」
猫人の少女と人間の女性が怯えながらもそう叫ぶ。
「翼 竜 属に 『標的』 されてんだ!
オレらのチーム・ランクで逃げ切れるわけねーだろ!
誰かが抑えなきゃいけねーんだよ!
なんだか知らねーがまだ攻撃を仕掛けてこねぇ!
今がチャンスだ! 行けッ!」
頭上からの冷たい暴風が吹き荒れる中、
浅黒い人間の青年が柄の長い戦斧を握って隣へ並ぶ。
「おいッ!」
「一人で翼 竜 属を抑えきれるつもりか?
後ろから殺されるのはごめんだぜ」
「勝手にしやがれっ! 莫迦が!」
「どっちが」
「……すまぬな、 布都」
脳裏にではなく直接口に出す。
くく、 已んぬる哉、 と無念の言葉が絞り出される。
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