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episode 25
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呼び掛けや合図があったのかもしれないが、さっきの爆音で耳鳴りがしたままなので、皆、身構えてはおらず、爆風によって上体が押され、前のめりになって転びそうになっていた。
一旦足を止め、後ろを振り返ると、そこには肩に筒状の物を担いだ男が一人、後ろを向いて立ち尽くしていた。
「バズーカ……」
声は聞こえないが、横に来ていた鶴岡さんの口の動きから、その単語が分かった。
いきなり現れた救世主をただ呆然と見つめていたが、煙の奥でまだ動く黒い影が見えた。
「マジか……まだ、生きてやがるのか?」
何度でも立ち上がってくる化け物に、流石に恐怖しか感じられなくなった時。
急に辺りが騒がしくなってきた。
進行方向へと視線を戻すと、数メートル先にあった交差点の左右に軍用車両が走って来ていた。
日本国防軍?
それとも、反逆軍?
とにかく、今はどちらにしても、後ろにいる化け物さえ何とかしてくれれば有難い。
車両の上部に装備されたミサイルが、俺達ではなく、化け物へと照準を合わせた。
「いけっ! ヤッてくれ!」
拳に力をいれたと同時に、ミサイルは発射された。
だがしかし、満身創痍である筈の化け物の動きは素早く、そして大きい。
一瞬にして左側へと横飛びをしてミサイルの爆撃を避けた。
「なっ!」
そうかと思えば、ヤツはいきなり一直線にこちらに向かってその巨体を動かした。
諸突猛進。
まさにその言葉がピッタリなほどの勢い。
迎撃の準備をしっかりしていなかった軍用車のミサイルは使用不可。
軍人らしき人達は、自分達と化け物の間にいる俺達の存在が障害となって、銃器関係や爆薬を使う事が出来ない。
ヤツは、自分を狙ったバズーカを持つ男の頭上を飛び越え、俺達の方へと向かって来る。
狙いは誰だ?
この中でヤツを最初に傷つけようとしたのは、鶴岡さん。
もしかしてっ!
考えるよりも先に、俺の体は動いていた。
飛び掛かるようにして襲い掛かる巨体の餌食にならないよう、鶴岡さんに体当たりをして突き飛ばす。
体勢を整える間もなく、銃口をヤツの頭に向けて引き金を引く。
乾いた音が3、4、5と連続で鳴り響くが、弾は命中することなく、耳やこめかみを掠めるだけであった。
怒りで血走っている二つの目の中心にある、真っ暗で底のない沼のような黒目が俺をしっかりと映していた。
大きく裂けた口から長い舌をベロりと出して、舌舐めずりをする。
眉毛も髪の毛も抜け落ち、頭の形もジャガイモみたいにデコボコとし、どこを捉えても何もかもが、彼の面影を何一つとどめていないというのに、俺は気が付いてしまった。
化け物の正体に……
一旦足を止め、後ろを振り返ると、そこには肩に筒状の物を担いだ男が一人、後ろを向いて立ち尽くしていた。
「バズーカ……」
声は聞こえないが、横に来ていた鶴岡さんの口の動きから、その単語が分かった。
いきなり現れた救世主をただ呆然と見つめていたが、煙の奥でまだ動く黒い影が見えた。
「マジか……まだ、生きてやがるのか?」
何度でも立ち上がってくる化け物に、流石に恐怖しか感じられなくなった時。
急に辺りが騒がしくなってきた。
進行方向へと視線を戻すと、数メートル先にあった交差点の左右に軍用車両が走って来ていた。
日本国防軍?
それとも、反逆軍?
とにかく、今はどちらにしても、後ろにいる化け物さえ何とかしてくれれば有難い。
車両の上部に装備されたミサイルが、俺達ではなく、化け物へと照準を合わせた。
「いけっ! ヤッてくれ!」
拳に力をいれたと同時に、ミサイルは発射された。
だがしかし、満身創痍である筈の化け物の動きは素早く、そして大きい。
一瞬にして左側へと横飛びをしてミサイルの爆撃を避けた。
「なっ!」
そうかと思えば、ヤツはいきなり一直線にこちらに向かってその巨体を動かした。
諸突猛進。
まさにその言葉がピッタリなほどの勢い。
迎撃の準備をしっかりしていなかった軍用車のミサイルは使用不可。
軍人らしき人達は、自分達と化け物の間にいる俺達の存在が障害となって、銃器関係や爆薬を使う事が出来ない。
ヤツは、自分を狙ったバズーカを持つ男の頭上を飛び越え、俺達の方へと向かって来る。
狙いは誰だ?
この中でヤツを最初に傷つけようとしたのは、鶴岡さん。
もしかしてっ!
考えるよりも先に、俺の体は動いていた。
飛び掛かるようにして襲い掛かる巨体の餌食にならないよう、鶴岡さんに体当たりをして突き飛ばす。
体勢を整える間もなく、銃口をヤツの頭に向けて引き金を引く。
乾いた音が3、4、5と連続で鳴り響くが、弾は命中することなく、耳やこめかみを掠めるだけであった。
怒りで血走っている二つの目の中心にある、真っ暗で底のない沼のような黒目が俺をしっかりと映していた。
大きく裂けた口から長い舌をベロりと出して、舌舐めずりをする。
眉毛も髪の毛も抜け落ち、頭の形もジャガイモみたいにデコボコとし、どこを捉えても何もかもが、彼の面影を何一つとどめていないというのに、俺は気が付いてしまった。
化け物の正体に……
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