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episode 25
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激しい爆発音と衝撃に、走るペースは落とさずに慌てて振り返った。
大きな砂埃が舞っているのを確認すると、再び前を向いた。
とうとう晴香さんが、刀ではなく手榴弾を使ったようだ。
《至近距離で爆破を受けたら、あんな巨体でも流石にひとたまりもないだろう》
長期戦となれば、晴香さんにも分が悪くなる。
懸命な判断だと思いながらも、何故か言い知れぬ不安が沸き起こる。
晴香さんと野獣のような変化を遂げた感染者との闘いは、決着がついたというのに、ドッドッドッと早鐘を打つ心臓は、俺の全身を振動させるほどの隆起と陥没を繰り返す。
このままのペースで走っていれば、晴香さんとも研究所に到着する手前で合流出来る。
突然変異的な寄生虫感染者は、晴香さんが倒した。
あとは研究所にいる一般人や祖父の仲間。
助けるべき人達を迅速に助け出した後、木っ端みじんにすればいいだけ。
死んだ化け物の詳細なんて、俺が心配することも、考える必要だってない。
俺は研究者でも学者でもない、単なる一介の高校生なんだから、いくら考えたって、化け物が出来上がる仕組みなんてわかりゃしないし、そんな知識いらねぇ。
頭の中を支配していた嫌な考えを追い出そうとするが、どうにも胸がざわつく。
駆け足の状態なので、足を大地に着けるのは僅かな時間。
しかも、靴を履いているのだから、足の裏から感じ取れる感覚なんてたかが知れている。
そんな一秒にも満たない時間だけでも、足元から違和感が伝わって来る。
ふわりと浮くような。
地震で大地が揺れているような。
体に沁みるような緊張が襲えば、五感が研ぎ澄まされて行く。
速くなっていく自分の鼓動の音だと思っていたものは、その大きさを徐々に増す。
体の中から聞こえていたと思っていたものは、鼓膜を直接震わせている。
まさか。
そんな、馬鹿な――――
「伏せろぉっ!」
一番後ろについていた筈の鶴岡さんの姿がいつの間にか、かなり後方にあった。
彼の叫びがあまりに切迫したものであったので、皆、反射的に地面に腹這いになると、先程よりも大きく激しい爆音が鳴り響いた。
耳に膜でも張られたかのような感じと、キーンとした耳鳴り。
顏を上げると、大きな土煙が見えた。
「みんなぁっ! 油断するなっ! 立ち上がって走れぇぇっ!」
怖い顏をした鶴岡さんが叫びながら全力疾走してくる。
彼の背後には粉塵が飛散し、霧がかったようにその奥が見えないものの、何か怪しい気配を確認することは出来ない。
だが、彼のあまりに激しい勢いが、緊急を要するものであることを物語っており、皆、慌てて立ち上がり、研究所を目指して全力で駆け出した。
誰一人として声を出すことなく、がむしゃらに走る。
心拍数が一気に上がる。
そんな中、またも足元を揺るがすような感覚がした。
ドッドッドッと鳴っているのは、俺の心臓じゃない。
この音は、足音だ。
《晴香さんがヤラれた》
あの化け物が生きてピンピンしているということは、晴香さんの死を意味すること。
彼女の死を痛ましく思うが、今は哀しみに浸っている場合ではない。
振り向いても、真っ直ぐ前を向いて走り続けていても、後ろから猛進してくる重量感溢れる足音の主にはいずれ俺達は捕らえられる。
だったら、振り向いて悪足掻きした方がマジだ。
銃のスライドを引き、いつでも引き金を引けるように持ち替える。
意を決して振り返ろうとした瞬間、またもや轟音が響いたのだった。
大きな砂埃が舞っているのを確認すると、再び前を向いた。
とうとう晴香さんが、刀ではなく手榴弾を使ったようだ。
《至近距離で爆破を受けたら、あんな巨体でも流石にひとたまりもないだろう》
長期戦となれば、晴香さんにも分が悪くなる。
懸命な判断だと思いながらも、何故か言い知れぬ不安が沸き起こる。
晴香さんと野獣のような変化を遂げた感染者との闘いは、決着がついたというのに、ドッドッドッと早鐘を打つ心臓は、俺の全身を振動させるほどの隆起と陥没を繰り返す。
このままのペースで走っていれば、晴香さんとも研究所に到着する手前で合流出来る。
突然変異的な寄生虫感染者は、晴香さんが倒した。
あとは研究所にいる一般人や祖父の仲間。
助けるべき人達を迅速に助け出した後、木っ端みじんにすればいいだけ。
死んだ化け物の詳細なんて、俺が心配することも、考える必要だってない。
俺は研究者でも学者でもない、単なる一介の高校生なんだから、いくら考えたって、化け物が出来上がる仕組みなんてわかりゃしないし、そんな知識いらねぇ。
頭の中を支配していた嫌な考えを追い出そうとするが、どうにも胸がざわつく。
駆け足の状態なので、足を大地に着けるのは僅かな時間。
しかも、靴を履いているのだから、足の裏から感じ取れる感覚なんてたかが知れている。
そんな一秒にも満たない時間だけでも、足元から違和感が伝わって来る。
ふわりと浮くような。
地震で大地が揺れているような。
体に沁みるような緊張が襲えば、五感が研ぎ澄まされて行く。
速くなっていく自分の鼓動の音だと思っていたものは、その大きさを徐々に増す。
体の中から聞こえていたと思っていたものは、鼓膜を直接震わせている。
まさか。
そんな、馬鹿な――――
「伏せろぉっ!」
一番後ろについていた筈の鶴岡さんの姿がいつの間にか、かなり後方にあった。
彼の叫びがあまりに切迫したものであったので、皆、反射的に地面に腹這いになると、先程よりも大きく激しい爆音が鳴り響いた。
耳に膜でも張られたかのような感じと、キーンとした耳鳴り。
顏を上げると、大きな土煙が見えた。
「みんなぁっ! 油断するなっ! 立ち上がって走れぇぇっ!」
怖い顏をした鶴岡さんが叫びながら全力疾走してくる。
彼の背後には粉塵が飛散し、霧がかったようにその奥が見えないものの、何か怪しい気配を確認することは出来ない。
だが、彼のあまりに激しい勢いが、緊急を要するものであることを物語っており、皆、慌てて立ち上がり、研究所を目指して全力で駆け出した。
誰一人として声を出すことなく、がむしゃらに走る。
心拍数が一気に上がる。
そんな中、またも足元を揺るがすような感覚がした。
ドッドッドッと鳴っているのは、俺の心臓じゃない。
この音は、足音だ。
《晴香さんがヤラれた》
あの化け物が生きてピンピンしているということは、晴香さんの死を意味すること。
彼女の死を痛ましく思うが、今は哀しみに浸っている場合ではない。
振り向いても、真っ直ぐ前を向いて走り続けていても、後ろから猛進してくる重量感溢れる足音の主にはいずれ俺達は捕らえられる。
だったら、振り向いて悪足掻きした方がマジだ。
銃のスライドを引き、いつでも引き金を引けるように持ち替える。
意を決して振り返ろうとした瞬間、またもや轟音が響いたのだった。
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