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自然
第六話 【兵どもが夢のあと】
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あの日は、暑い夏の日でした。
私は、彼氏と史跡巡りの旅をしてたんですが、ある山に今はなき城の跡と、有名な合戦があった場所に行った時の事です。
そこは、歴史的に有名な合戦地だというのに、樹木で光が遮られ、碑は倒れ、見事な空堀はあったものの、荒れ果て、一見、何も無いような雰囲気で。
どこか、薄ら寒く感じる場所でした。
平日でしたし、観光名所でも何でもない所で、余程の歴史マニアじゃなければ来ないような場所でしたので、勿論、私達二人しか、そこには居らず。
最初はカメラで写真を撮ったり、二の丸、三の丸、そして、本丸の跡を確認しつつ、頭の中で、どのような規模で、どのような雰囲気の城であったのかを想像しながら、彼氏と話をしてたの。
それから、少し、散策していると、倒れた大木があって。
それが座るのに丁度いい感じでして。
そこに座って、お弁当でも食べようって事になったんです。
で、二人で、まぁ……誰もいないし。
いちゃいちゃしながら食べていたんですが、なんか、視線を感じるのです。
キョロキョロ辺りを見渡すと、彼氏が、「どうした?」と聞いて来るものだから、素直に、「視線……感じない?」と聞いたのです。
勿論、辺りには誰もいません。
そもそも、ここに来るには、荒れた山道を歩いて来なくてはいけませんから、どんなに忍び足で来ようと、木の枝を踏む音、草をかき分ける音、何かしら、物音はする筈です。
でも、そんな音も気配も感じませんでしたし、動物が近くにいるような雰囲気もない。
いるのは、鳥と虫と私達二人だけ。
「気のせいだろ」という彼氏の言葉に、私も気を取り直して、また、いちゃいちゃ。
ま、若い年頃のカップルなんて、皆、そんなものですよね?
しかし。
やはり……感じるのです。
何かの視線を。
ビクリとして、彼から体を離し、バッと辺りを見渡すものの……。
辺りには、生い茂る木々と草花。
鳥たちの囀り。
蝉の鳴き声。
そして、朽ち果てた城跡を示す碑だけ。
とはいえ光が樹木に遮られ、薄暗い雰囲気がどことなく不気味で。
徐々に肌寒さを感じ、早々にこの場から立ち去りたい衝動に駆られました。
けれど彼氏は、まだお弁当も食べきっていないし、そんなのは、ここで多くの武士が血を流し死に絶えたという土地だという事から、自分でも無意識のうちに、妙な恐怖心が芽生えただけで、実際には何もない。
『幽霊見たり枯れ尾花』ってやつと一緒だと言うものですから、確かに神経質になりすぎているのかも……と、また、倒れた大木に座り直し、お弁当を食べつつ彼氏と……
と、その時です!
ザワザワザワザワッという、葉が擦れの音の中に、何だか、人が会話しているような……
いえ。
沢山の人が呻いているような。
ヴァァ……ヴヴゥゥゥ……と唸るような。
妙な音が混じっていたのです。
私は、思わずバッと、顔を上げました。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
思わず、大きく叫ぶと。
彼氏も上を見上げました。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
今まで、散々「気のせいだ」と言っていた彼氏は、全てを置いて、一気に山を駆け下りました。
えぇ。
私も腰が抜けそうだったのですが、なんとか、震える足に激を入れ、やっとのことで山を下りると、真っ青な顔をした彼氏が、息を荒げ、こう言いました
「お前……見たか?」
見たも何も。
彼より先に私が感じ。
彼より先に私が見たのです。
そう……あれは……
私達を取り囲むように、生い茂った樹木の葉。
それらが全て、【人間の目】になっていたのです。
あの目は一体なんだったのでしょうか?
あの血で無念の死を遂げた、武士たちの目だったのでしょうか?
彼らの血を吸い、彼らの肉を栄養として育った、あの木々に。
彼らの魂は未だ、無念を晴らす事が出来ずに宿ってしまっているのでしょうか?
私は、あの
【目】
が、未だに忘れられず、新緑の季節になり、葉が生い茂る木々を見る事が、怖くてなりません。
私は、彼氏と史跡巡りの旅をしてたんですが、ある山に今はなき城の跡と、有名な合戦があった場所に行った時の事です。
そこは、歴史的に有名な合戦地だというのに、樹木で光が遮られ、碑は倒れ、見事な空堀はあったものの、荒れ果て、一見、何も無いような雰囲気で。
どこか、薄ら寒く感じる場所でした。
平日でしたし、観光名所でも何でもない所で、余程の歴史マニアじゃなければ来ないような場所でしたので、勿論、私達二人しか、そこには居らず。
最初はカメラで写真を撮ったり、二の丸、三の丸、そして、本丸の跡を確認しつつ、頭の中で、どのような規模で、どのような雰囲気の城であったのかを想像しながら、彼氏と話をしてたの。
それから、少し、散策していると、倒れた大木があって。
それが座るのに丁度いい感じでして。
そこに座って、お弁当でも食べようって事になったんです。
で、二人で、まぁ……誰もいないし。
いちゃいちゃしながら食べていたんですが、なんか、視線を感じるのです。
キョロキョロ辺りを見渡すと、彼氏が、「どうした?」と聞いて来るものだから、素直に、「視線……感じない?」と聞いたのです。
勿論、辺りには誰もいません。
そもそも、ここに来るには、荒れた山道を歩いて来なくてはいけませんから、どんなに忍び足で来ようと、木の枝を踏む音、草をかき分ける音、何かしら、物音はする筈です。
でも、そんな音も気配も感じませんでしたし、動物が近くにいるような雰囲気もない。
いるのは、鳥と虫と私達二人だけ。
「気のせいだろ」という彼氏の言葉に、私も気を取り直して、また、いちゃいちゃ。
ま、若い年頃のカップルなんて、皆、そんなものですよね?
しかし。
やはり……感じるのです。
何かの視線を。
ビクリとして、彼から体を離し、バッと辺りを見渡すものの……。
辺りには、生い茂る木々と草花。
鳥たちの囀り。
蝉の鳴き声。
そして、朽ち果てた城跡を示す碑だけ。
とはいえ光が樹木に遮られ、薄暗い雰囲気がどことなく不気味で。
徐々に肌寒さを感じ、早々にこの場から立ち去りたい衝動に駆られました。
けれど彼氏は、まだお弁当も食べきっていないし、そんなのは、ここで多くの武士が血を流し死に絶えたという土地だという事から、自分でも無意識のうちに、妙な恐怖心が芽生えただけで、実際には何もない。
『幽霊見たり枯れ尾花』ってやつと一緒だと言うものですから、確かに神経質になりすぎているのかも……と、また、倒れた大木に座り直し、お弁当を食べつつ彼氏と……
と、その時です!
ザワザワザワザワッという、葉が擦れの音の中に、何だか、人が会話しているような……
いえ。
沢山の人が呻いているような。
ヴァァ……ヴヴゥゥゥ……と唸るような。
妙な音が混じっていたのです。
私は、思わずバッと、顔を上げました。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
思わず、大きく叫ぶと。
彼氏も上を見上げました。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
今まで、散々「気のせいだ」と言っていた彼氏は、全てを置いて、一気に山を駆け下りました。
えぇ。
私も腰が抜けそうだったのですが、なんとか、震える足に激を入れ、やっとのことで山を下りると、真っ青な顔をした彼氏が、息を荒げ、こう言いました
「お前……見たか?」
見たも何も。
彼より先に私が感じ。
彼より先に私が見たのです。
そう……あれは……
私達を取り囲むように、生い茂った樹木の葉。
それらが全て、【人間の目】になっていたのです。
あの目は一体なんだったのでしょうか?
あの血で無念の死を遂げた、武士たちの目だったのでしょうか?
彼らの血を吸い、彼らの肉を栄養として育った、あの木々に。
彼らの魂は未だ、無念を晴らす事が出来ずに宿ってしまっているのでしょうか?
私は、あの
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