百談

壽帝旻 錦候

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身体

第四話【切り株怖い】

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 俺は、切り株が嫌いだ。
 でも、木は好きだ。
 木造家具も、木造建築も、木造りの彫刻も好きだ。
 だが、切り株だけは嫌いだ。
 いや。
“苦手になった”と言うべきか。

 元々はアウトドアが好きで、キャンプやスキー、バーベキューなんて、毎年のように行っていたんだが、今年は、そんな理由で森や山、下手したら“自然”に近付かないようにしている。
 しかし、危険は日常生活にも潜んでいる。

 例えば、喫茶店。

 たまに、ほら!
 あるだろう?
 カントリー調をイメージしている店。
 そういう店に限って、味はたいした事ないくせに店の雰囲気だけは大事にして、切り株そのものを椅子やテーブルにしていたり。

 街を歩いていても、これまた危険。

 街路樹がたまに根元から切られ切り株だけが残っている。
 そんな物を見るたびに、俺は、ギョッとして脅えてしまうんだ。

 え?
 何故かって?
 あぁ。
 理由を聞いてくれるのか?
 あれは……そう。
 俺の嫁さんが蒸発した日からなんだよ。

 ん?
 あぁ。
 そんな、気にするなよ。
 そんな辛気臭い顔をさせる為に話す訳じゃないんだから。

 で、話は戻るが、その日から何故か。
 俺の家の台所の隅に、何故か、白いモヤっとしたものが、たまに見えるようになったんだ。
 最初は、場所が場所だけに

“ガス漏れか?”

とか

“煙か?”

とか思っていたんだが、それは、徐々にちょっと歪な“円柱”のような形になっていったんだ。

 あぁ!
 そうそう!

 歪な円柱って言えば“切り株”と同じだろ?
 その通りなんだよ。

 最初は白いモヤのようだったのに、時間が経てば経つほど赤紫みたいな色になって……。
 その後は、緑のような赤黒いような……茶色いような……腐って、苔が生えた切り株のような物になってさ。
 それが、台所の床から生えているように出ているんだよ。
 しかも、それ、すごい臭いんだ。

 おい。
 何、青ざめているんだ?
 ここからが、更に、重要なんだぞ?

 おいおい。
 口を押さえていないで聞いてくれよ!
 それでな、流石に俺も

“この気持ちの悪い物は、何かの“菌”から出来て、台所に寄生したんじゃないか?“

 って思って、よく見てみたんだよ。

そしたら……それ……


 どうも、“人間の首”みたいなんだよ。

 おい!
 大丈夫か?
 顔色悪いぞ?

 あぁ……お前がそう言うなら、話は続けるが……

 なんで分ったかって?

 そりゃぁ……その、腐った切り株の真ん中に、白い“骨”らしき物が見えたのと……
 嫁に……でっかいほくろが首にあったんだが……
 腐った切り株にも“同じ形のおおきなほくろ”みたいなものがあったんだ。

 あれ、どうやら、“嫁”みたいなんだよ。

 でも、あいつ、“首”だけだから、何も俺に話せないし、訴える事が出来ないんだよなぁ。



 おい!
 お前、汗が半端ないけど、体調悪いのか?


 まさか……



 いや、体調が悪いだけだよな?

 で、嫁の首の事なんだけどさぁ。

 あいつ、蒸発した日に、本当は男と駆け落ちするつもりだったみたいなんだ。
 え?
 そんな訳ない?
 いや!
 そうだったんだって!


「だって、あの日、奥さんは!」



 ん?
 ワナワナ震えながら口を押さえているけど……まさか?
 お前……お前が、あいつの不倫相手だったのか!
 許さねぇぇぇぇ!



「ゆ、ゆるしぃぃぃぃぃぃぃ」


 ザシュッ!


「ぎゃぁぁぁぁぁ!」


 グチャッ!
 ドチャッ!
 バタンッ!

 まさか、お前が嫁の不倫相手とはなぁ。
 嫁の頭は冷蔵庫の中だが、お前とは一緒になんてしてやらねぇよ?
 嫁は一生、台所に“生えていれば”いい。
 口煩く無くなった分、臭くはなったが……

 どんなに俺を恨んでも、頭が無ければ罵る事も訴える事も出来ないしなぁ。
 お前は、どうしようか?

 しっかし。
 話は戻るけど、切り株は嫁だけで結構だ。
 あぁも、あちこちで見かけると、まるで“首のない嫁”に監視されているようだしな。
 とは言っても、目はないんですけどねぇぇぇぇ!



 ぎゃははははははは!



 お前も、笑えよ!




 ……って、もう死んでるか。

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