百談

壽帝旻 錦候

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動物

第七話【最高級のスープ】

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 俺の知り合いの中国人のチャンさんがさ。
 この間、最高級中華を食べに連れて行ってくれたんだ。

 北京ダックにフカヒレ。
 燕の巣のスープに上海蟹。

 普通じゃぁ食べられない高級食材。
 俺は目を輝かせながら、あれもこれも食べてたんだけど。
 その中でも、チャンさんのオススメが【海亀のスープ】で。
 海亀っていったら、べっ甲になるやつだろ?
 ワシントン条約で捕獲禁止されているんじゃ……と思って聞いてみたら、どうも、海亀でも色々な種類がいるらしく。
 スープにするのは、べっ甲になるものとは違う種類の海亀らしい。

 それでも、今まで食べた事のない食材。
 すっぽんが美味いんだから、海のものなら更に美味いんだろうなぁって、テンション上がっちゃった訳!

 勿論、出て来た海亀のスープは……超絶美味かった!
 今まで食べていた物を遥かに超える旨さ!

 なんてーの?
 すっぽんよりも臭みも無くて、淡泊で。
 それでいて、こう……中毒性のある甘さというか、旨味というか。
 なんとも言えない美味しさ!

 感動のあまり、好喫(ハオチー)を連呼していたら、チャンさん。
 機嫌よくなっちゃって
 何やら、料理長呼んで話てんの。
 で、料理長が何やらワゴンで持って来て。
 一体何かと思えば……大きな桶。

 いや。

 桶というよりも、子供用プールのような物に入った『海亀』
 大きな瞳に尖った口ばし。
 大きくても何とも愛らしい顔。

 こんな可愛い動物を食べてしまったなんて……と、一瞬、罪悪感が芽生えたものの、あまりの可愛さに、思わず手を伸ばしたんだ。
 そしたら……

「いてっ!」

 海亀が俺の指を噛んだんだよ!
 狭いプールに入れられて、気が立ってんだろうなぁって、その時は思ったんだけどよぉ。
 その後、俺の指の傷口から、一滴、二滴……血がプールの中に滴り落ちると、その海亀は、踊るようにしながら、その赤い滴を口に入れるんだよ。

 俺は思わず、「えぇぇ?」と声を出したら、料理長が「这个东西的饵是尸体」って言うんだよ。

 俺ぁ、中国語なんて知らないから、「は?」って聞き返したさ。
 そしたらチャンさんが、うんうん頷いて「吃尸体」っていう訳!

 最初の言葉はよくわかんねーけど、チャンさんの単語は、確か……
 ツーシィティだったか、チィーシティだったか……

 おい!
 お前、顔色悪いぞ!

 え?
 その海亀の産地?

 あ~……それは、聞いていないけど、でも、中華料理だし、中国近海とかじゃねぇの?

 え?
 少し前に、あの辺で大型客船が沈没したって?

 は?
 多くの犠牲者が未だ海の中?

 おい!
 意味わかんねーよ!
 海亀から、なんでそんな事故の話になるんだよ!

 は?
「死体を食べる」って?

 え?
 さっきの言葉?
 チャンさんの?

 ……え?

「こいつの餌は死体だ」
「死体を食べる」

 って事は……



 あの海亀、人間の肉を食ってたって事か?
 じゃぁ……俺が美味しいって絶賛していた、海亀スープって……



 間接的に……俺も……?


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