百談

壽帝旻 錦候

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乗り物

第一話【味が忘れられない】

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自転車用の子供乗せ……あれ、何て言うんだっけ?
あぁ!
そうそう!
自転車用のチャイルドシート!
それそれ!
子どもが乗せられるように、荷台に取り付ける椅子みたいなヤツ!

あれさぁ。
今でこそ、足置きやら、シートベルトやら、雨除けに背もたれと、いたせりつくせりの王子様仕様だけど、昔ってほんと、ただ単に子供が座る“椅子”って感じだったことない?

シートベルトなんか無いから、子どもが親の背中掴むか、目の前の手すりみたいな物に摑まるかっていう感じでさぁ。
足だって、足置きからすぐに自分で外せちゃうから、常に足をプラプラさせてた記憶あるんだよね。

そのせいで、後輪に足挟んだりしなかった?

え?
ない?
え~……そっかぁ。
私、自分が鈍くさいのか、よく挟んで、怪我をした記憶があるんだ。

でね、うちの親って、物をすっごく大事にするじゃない?

だから、お母さんが使ってて、私が後ろに乗ってた自転車。
それ、今でも我が家では使っているのよ。

え?
あぁ!
未だに、問題なく使えるわよ!

自転車って、ホント、凄いわよね。
きちんと手入れさえしていれば、何年でも使えるんだもん。

でもさ、ほら。
私、すっごい鈍くさくって……


その自転車、たまに使うんだけど、何故か、よく転んだり、足を滑らせてペダルで脛を擦ったり……

生傷が絶えないのよねぇ。

ん?
うるさいわ!
確かに、運動音痴なのは認めるわよ!

でもさ、うちの爺ちゃんが言ってたのよ。

車とかオートバイとかの乗り物。
包丁や金槌とかの道具類。

こういう物は、一度でも人を傷つけたり殺したりすると、血の味を覚えてしまうんだって。
それで、隙を狙って、同じ事をしようとするらしいんだって。

え?
何で、そんな怖い話をするかって?

ほら!
私って隙だらけじゃん?
だから、あの自転車、私に狙いを定めていたのかなぁ……って。

キキキィィィィィィィィィィィ!
ガッシャーーーーーン!

あぁ……
でも、私が鈍くさいから狙われてた訳じゃなかったのね。

ごめん。
今、貸してた自転車。

それ、“あの”自転車だったのよ。





もう……聞こえていないだろうけど……


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