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乗り物
第四話【電車内での悪戯】
しおりを挟むガタンゴトンッ
ガタンゴトンッ
空いている車内の長椅子の端に座り、電車に揺られながらウトウトしていると、いつの間にか隣に子供が座っていたらしい。
キャッキャッキャッという、特有の甲高い声で目が覚めた。
薄らと目を開け、チラリと横目で見ると小学生低学年くらいか?
いや。
もしかしたら幼稚園くらいか?
かなり幼い男の子二人と女の子一人が、何やら楽しげに話している。
しっかし……
この空いている車内で、わざわざ俺の隣に来るなんて……
親は違う車両にでもいるのだろうか?
ったく……物騒な世の中なのに呑気なもんだな。
脳内でブツクサ文句を言っていると、子供達の会話が耳に入って来た。
クスクスクス……
「ねぇ……いーち、にぃーい、さぁーん……」
「はいはーい! 二十六人!!」
「もぅ! 今、数えていたでしょぉ!」
「だって、お前、おっせーんだもん」
「二人共、うるさいよ! それより、どうする?」
「うーん……二十六人全員!」
「ばっかじゃない? だから男の子って野蛮なのよね。」
「なんだとぉ? じゃぁ、お前だったら?」
「わたし? わたしなら……八人くらいかなぁ……」
「うわっ! すくなっ!」
「だから、うるさいって。ぼくは十二人かな……」
奥の車両を覗きながら、三人はキャッキャッ騒いでいる。
どうやら、車内にいる客に、悪戯をする計画を立てているのか、それとも他に何かをするつもりなのか。
よくは分らないけれど、無邪気な顔を見ていると、こんな子供のする事だ。
“ま、可愛いもんだろう……。”と、フッと口元を緩ませる。
その時突然、女の子が、「じゃぁ、キリよく十人でけってぇーーーい!」と、大きな声を上げた。
その瞬間、電車内の照明が一気に消えた。
“停電か?”と思い、辺りを見渡すと、窓の外には高架線が火花を散らしながら、うねるように踊る姿が見えた。
“え?”
そう思ったと同時に、耳元で、「おにいさんは、聞いちゃったから十人目だよ」という声と同時に。
ギギーーーッ!という金属音。
その直後。
ガタン!と大きな衝撃の波が来た。
慌てて、声のする方を見たが、その時には既に三人の子供の姿はなく……
そして、更に……次の瞬間
ドーーーーーン!
大きな破壊音と共に、真っ暗な闇へと意識を飛ばしていった。
**********************************************************************
【十六日午後十六時二十分ごろ、〇△市の丸〇電鉄で、×◇行き上り電車(六両編成)が、△◇駅に到着する直前のポイント(分岐点)を通過中に脱線した。乗客二十六人中十人が死亡。八人が重軽傷を負った。運転士も頭にけがを負った。地元警察と国の運輸安全委員会の鉄道事故調査官五人が現地入りして原因を調査している。同電鉄は全線で終日運休し、復旧の見込みは立っていない。】
クシャッ
クスクスクスクス……
「今回も楽しかったね~」
「次はどこでやる?」
「二人共。今度は人に気付かれないように話しましょうよ。」
「きどってんなよな! 別にいいじゃん。どのみち、アッチに行っちゃうんだからサ」
小さな子供が三人。
新聞を読んでいたかと思うと、クシャクシャに丸めてゴミ箱に捨てていた。
そんな、奇妙な光景を、駅のホームで私は不思議な面持ちで見つめていると、そのうちの女の子が振り向き、何故か、無邪気な笑顔をこちらに向けた。
子供の笑顔は可愛いのに。
何故か……
言い知れぬ、“怖さ”をその目に感じて、私は、その駅から立ち去った。
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