百談

壽帝旻 錦候

文字の大きさ
49 / 107
乗り物

第四話【電車内での悪戯】

しおりを挟む

ガタンゴトンッ
ガタンゴトンッ

空いている車内の長椅子の端に座り、電車に揺られながらウトウトしていると、いつの間にか隣に子供が座っていたらしい。
キャッキャッキャッという、特有の甲高い声で目が覚めた。

薄らと目を開け、チラリと横目で見ると小学生低学年くらいか?

いや。
もしかしたら幼稚園くらいか?

かなり幼い男の子二人と女の子一人が、何やら楽しげに話している。

しっかし……
この空いている車内で、わざわざ俺の隣に来るなんて……

親は違う車両にでもいるのだろうか?

ったく……物騒な世の中なのに呑気なもんだな。

脳内でブツクサ文句を言っていると、子供達の会話が耳に入って来た。

クスクスクス……

「ねぇ……いーち、にぃーい、さぁーん……」
「はいはーい! 二十六人!!」
「もぅ! 今、数えていたでしょぉ!」
「だって、お前、おっせーんだもん」
「二人共、うるさいよ! それより、どうする?」
「うーん……二十六人全員!」
「ばっかじゃない? だから男の子って野蛮なのよね。」
「なんだとぉ? じゃぁ、お前だったら?」
「わたし? わたしなら……八人くらいかなぁ……」
「うわっ! すくなっ!」
「だから、うるさいって。ぼくは十二人かな……」

奥の車両を覗きながら、三人はキャッキャッ騒いでいる。

どうやら、車内にいる客に、悪戯をする計画を立てているのか、それとも他に何かをするつもりなのか。
よくは分らないけれど、無邪気な顔を見ていると、こんな子供のする事だ。
“ま、可愛いもんだろう……。”と、フッと口元を緩ませる。

その時突然、女の子が、「じゃぁ、キリよく十人でけってぇーーーい!」と、大きな声を上げた。

その瞬間、電車内の照明が一気に消えた。
“停電か?”と思い、辺りを見渡すと、窓の外には高架線が火花を散らしながら、うねるように踊る姿が見えた。

“え?”

そう思ったと同時に、耳元で、「おにいさんは、聞いちゃったから十人目だよ」という声と同時に。

ギギーーーッ!という金属音。

その直後。

ガタン!と大きな衝撃の波が来た。

慌てて、声のする方を見たが、その時には既に三人の子供の姿はなく……

そして、更に……次の瞬間




ドーーーーーン!



大きな破壊音と共に、真っ暗な闇へと意識を飛ばしていった。




**********************************************************************

 【十六日午後十六時二十分ごろ、〇△市の丸〇電鉄で、×◇行き上り電車(六両編成)が、△◇駅に到着する直前のポイント(分岐点)を通過中に脱線した。乗客二十六人中十人が死亡。八人が重軽傷を負った。運転士も頭にけがを負った。地元警察と国の運輸安全委員会の鉄道事故調査官五人が現地入りして原因を調査している。同電鉄は全線で終日運休し、復旧の見込みは立っていない。】

クシャッ
クスクスクスクス……

「今回も楽しかったね~」
「次はどこでやる?」
「二人共。今度は人に気付かれないように話しましょうよ。」
「きどってんなよな! 別にいいじゃん。どのみち、アッチに行っちゃうんだからサ」

小さな子供が三人。
新聞を読んでいたかと思うと、クシャクシャに丸めてゴミ箱に捨てていた。
そんな、奇妙な光景を、駅のホームで私は不思議な面持ちで見つめていると、そのうちの女の子が振り向き、何故か、無邪気な笑顔をこちらに向けた。
子供の笑顔は可愛いのに。

何故か……



言い知れぬ、“怖さ”をその目に感じて、私は、その駅から立ち去った。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

Husband's secret (夫の秘密)

設楽理沙
ライト文芸
果たして・・ 秘密などあったのだろうか! むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ  10秒~30秒?  何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。 ❦ イラストはAI生成画像 自作

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

別れし夫婦の御定書(おさだめがき)

佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★ 嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。 離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。 月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。 おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。 されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて—— ※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。

処理中です...