百談

壽帝旻 錦候

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家電

第八話【お赤飯】

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この間さぁ。
ご飯を炊こうを思ったら、炊飯器が壊れちゃって。
その日は仕方なく、コンビニ弁当で済ませたの。
で、翌日、すぐに炊飯器を買いに行ったんだけど。
どうせ、新品買うなら、美味しく炊ける最新式圧力炊飯ジャーを買おうと、息巻いていったものの。

結構するんだよねぇ。

かといって、これから数年は使うものだし。
あまり妥協したくはないっていうか。

一人、家電ショップでウロウロしていたら、突然、店員さんに声をかけられたの。

「炊飯器をお探しですか? もし、よろしければ、最新炊飯器の“訳アリ”セール中物があるんですが」

爽やかな笑顔と共に伝えられる台詞の中に、気になる言葉が……

「あの。“訳アリ”って?」

思わず、訝しげな目で見ながら聞いちゃったわよ!
訳アリって、服や鞄なら縫製のホツレや小さな汚れとかだって、だいたい想像つくけれど、家電の訳アリって言ったら、機能的な問題とか、保障期間が無いとかだったら、困るじゃない!

そしたら、その爽やかな店員さんはニコニコと貼りついた笑顔を崩す事なく話し始めたわよ。

「大丈夫です。製品に異常はありませんし、保障期間も問題ありません。ただ、実は、その製品を造っていた製造工場の中で、閉鎖されてしまった工場がありまして。そこの分を大量仕入れした為、大変お安くご提供出来るという訳なんです。ま、要するに、倒産した会社の商品をまとめ買いしたような感じですかね」

その説明に、ちょっと納得して、とりあえず、製品だけ見せて貰う事にしたのね。

そしたら!
ほら!
先月発売されたばかりの人気商品でさぁ!

あの、「ふっくらツヤ立ち」の名文句で有名な圧力炊飯ジャー!
見た目に傷もなければ、全機能問題なし。
しかも、定価の半額!
メーカー保証は無いものの、お店の一年間保証はついてるし。
これはもう“買い”だなと。
ニコニコ笑顔でそれを持って帰宅したわよ。

で、早速、晩御飯用に炊いたんだけどさ。
出来上がってビックリ!

ジャーの蓋を開けたら……



赤いご飯!



ほっかほかの赤飯のような、赤いご飯!

“まさか、水道水に錆でも入ってたのかしら?”と思い、水道の蛇口を捻り、透明のコップで確認するものの、考えてみれば、うちは浄水器も設置していて、そんな事がある訳ない。
“じゃぁ、お米が悪いの?”とも、思ったけれど、特に、お米の匂いに変化はなく。
米櫃の中のお米もいつも通りの綺麗な白いお米。
おっかしいなぁ……とは思ったものの。
“もしかしたら、この炊飯ジャーのどこからか錆でも出ているのかな?”と思って。
勿体ないけど、炊き上がったお米は捨てて、再度、細かくジャーを洗って、翌朝の分をまた、タイマーにかけておいたのよ。

勿論、その日の夕飯はまた、コンビニ。

で、朝、ドキドキしながら蓋をあけると……また、赤飯状態。

これはいくらなんでもオカシイ! と思って、早速、昨日の家電ショップに、クレームに出掛けたわよ。
勿論、炊き立てのご飯の入ったままの炊飯ジャーを持って。

でもさ。
いくら探しても。
その家電ショップ……無いの。
どこを探しても……無いの。

と、いうか。
考えてみたら、この辺に、家電ショップなんて元々あった?

ぐるぐる車で探していると、ラジオから流れる音声……


【9日午前10時すぎ、〇△県十日丸市三山町の四菱三山工場で爆発が起きた。県警などによると、同社従業員五人と協力会社の派遣社員七人の男性十二人が死亡。三十七人がやけどや打撲などの重軽傷を負って病院に搬送された。この工場では、炊飯器……】


え?
四菱?
四菱って、昨日買った炊飯ジャーの……
思わず、車を停め、助手席に置いた炊飯ジャーのメーカーを確認しようと横を見た瞬間。

「ひぃぃぃっ!」

そこには、真っ黒に焦げた炊飯ジャーに、こびりつくような肉片が……

昨日の家電ショップは、一体何だったのか?
そして、あの日、買った、炊飯ジャーは一体どうして私の手元に来たのか?

それは、きっと、永久に分らないと思う。

それよりも。
この、炊飯ジャーは、一体どうすればいいのだろう?

あまりのショックに、逆に冷静に考えている彼女が、この後、再び、悲鳴にあげることになるとは、この時の彼女は知る由も無かった。

そう。
この後。
好奇心から……

“今朝、炊いたご飯、そのまんま中に入れっぱなしだけれど、一体、今は、どうなっているんだろう?”

なんていう、ほんの些細な出来心から、彼女は蓋を開けてしまう……
そこに、何が入っているのか……


知らないままに……



【訳アリ】にはご注意ください。


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