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家具
第三話【家族の団欒】
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僕の家のダイニングには、無垢で作られた、大きめの丸テーブルを取り囲むように、背もたれの高い木製の椅子が六脚並べられている。
我が家は祖父母、両親、僕、妹。
六人家族なのだから、椅子が六脚あるのは当たり前の事。
このダイニングテーブルで毎朝、毎夜、家族全員が揃って食事するのが、我が家のしきたり。
これは、余程の事が無い限り、誰も破る事の出来ない我が家の暗黙のルール。
今夜も、皆で揃って夕食だ。
ミシミシ……
バキィッ!
ガッターン!
食事中。
何の前触れもなく、突然、嫌な音を立てたかと思うと、祖父が座っていたダイニングチェアが、勢いよく壊れた。
“不吉な……”
家族の皆が、祖父に怪我がないかを心配するより先に、そう、口を揃えた。
椅子から落ちた、祖父ですらも……
それから、一週間もしないうちに、祖父は交通事故で亡くなった。
その日から、我が家には、五人の家族の為に、五脚のダイニングチェア。
相変わらず、毎朝、毎夜、皆で食事をしている。
この間、父が奇妙な事をしていた。
食事中、時々、体を小刻みに揺すっては、小さく首を傾げ、眉間に皺を寄せる。
丁度、父の正面の席である僕には、妙に気になる仕草であったが、“女三人寄ると姦しい“とは、よく言ったもので、祖母、母、妹は何かドラマの話題なのか、ずっと、談笑しながら食事をしていて、誰も、父の様子に気が付く者はいなかった。
その夜、僕がトイレに起きると、ダイニングに人の気配が……
真っ暗なダイニングに、誰かがいる。
静かに、こっそり覗いてみると、暗くて顔は見えないが、体型から、父だと分かる。
どうやら、椅子を動かしているようだ。
“一体何故?”
不思議に思いながらも、僕は尿意に耐えられず、トイレに急いだ。
それから数日後、今度は朝食時に、祖母の椅子が壊れた。
皆、また、口を揃えて、「不吉な……」”と言った。
祖母はそれから家から出なくなった。
祖父の仏壇に手を合わせる事が多くなった。
しかし、やはり、一週間もしないうちに、祖母は心筋梗塞で亡くなった。
その顔はまるで、何か恐ろしいものでも見たかのように、大きく目を見開き、顔を歪めていた。
その日から、我が家には、四人の家族の為に、四脚のダイニングチェア。
大きな丸いテーブルの周りに、かなり、ゆったりとした間隔で、座って食事をする。
そんな中、父が言った。
「もう、毎晩、皆が揃って食事する必要なんてないだろう」
その一言から、我が家では朝のみ、皆で揃って食事をする事が仕来りとなった。
夕飯は、遅くまで帰らない父以外の三人で食べる事になった。
そんなある日、夜中に、父と母が口論をしているような声で、目が覚めた。
父は怒鳴り声をあげ、家を出て行った。
その日、僕は、真っ暗な家の中、たった一か所、電気のついた部屋……ダイニングを静かに覗くと、そこには、嗚咽を上げながら、父の椅子に何かをしている母の姿があった。
こちらに背を向け、夢中で作業を続けているので、一体、何をしているのかは分らないが、僕は”不吉“なものを感じながらも、「この事は決して、見てはいけない。話してはいけない」と思って、踵を返して部屋に戻った。
翌朝、朝食になっても、父は帰って来なかった。
そう。
余程の理由がない限り、破ってはならない我が家の仕来りを破ったのだ。
妹と僕は、父に対して文句を言いながら朝食を食べたが、母はそんな父の事など、興味すら無いかのように黙々と食事をしていた。
その夜、父は久しぶりに早く帰って来た。
そして、夕飯を一緒に食べた。
僕も妹も、朝の事への怒りがある為、誰も父に話しかけたりしない。
いや。
むしろ、話しかけられても、ぶっきら棒な返事しかしない。
すると、母がとんでもない事を言い出した。
「浮気相手の所で一晩過ごした貴方を、子供達は相手になんてしないわ」
抑揚のない声で、真っ直ぐ父を見ながらそう言うと、僕らが驚く前に父は、一瞬で顔を真っ赤にさせた。
「お前! 子供達の前だぞ!」
バン!
バキィィ!
ガッターン!
父が机を強く叩きながら怒鳴ったかと思うと、椅子が大きな音を立てて壊れた。
大きな体の父は、そのまま尻もちをついた。
“自業自得”
何故だろう。
浮気をしていたと分かったせいなのか。
それとも“仕来り”を守らなかったせいなのか。
父に対しては、“裏切り者”という思いが頭の中を支配し、三人揃って、「不吉」
ではなく、「自業自得」と呟いていた。
父は壊れた椅子から落ちたままの格好で、顔を真っ青にしていた。
きっと、これから起こる事を予感していたのだろう。
父はそれから無言で部屋へ戻り、それから父は家を出て行った。
朝も夜も帰って来ない。
きっと“浮気相手”の所にいるのだろう。
でも。大丈夫。
一週間もしないうちに……
プルルルルルル
プルルルルルル
プルルルッルル
夕方、家中に鳴り響く電話の音。
母が出る。
淡々と事務的に答える。
受話器を置く。
僕も妹も、その様子を冷静な目で見ていた。
「お父さんが、さっき、男の人に刺されて死んだんだって」
抑揚のない声で母は僕らに言った。
今回はまさに“自業自得”
父の浮気相手には、旦那さんがいたそうだ。
いわゆる、ダブル不倫。
そう。
これは、痴情の縺れってやつだ。
涙なんて出やしない。
出て来るのは、溜息だけだ。
その日から、我が家には、三人の家族の為に、三脚のダイニングチェア。
変わった事は、朝だけになっていた家族全員での食事が、また、毎朝、毎夜、家族が揃っての食事になった事だけ。
でも、最近。
妹がかなりウザい。
やけに反抗してくるし、母に僕の悪口を吹き込む。
それだけじゃない。
僕の物を盗んで壊したりもする。
“あいつ……邪魔だな……”
僕は今夜、ダイニングチェアに、細工を仕掛けておこうと思う。
我が家は祖父母、両親、僕、妹。
六人家族なのだから、椅子が六脚あるのは当たり前の事。
このダイニングテーブルで毎朝、毎夜、家族全員が揃って食事するのが、我が家のしきたり。
これは、余程の事が無い限り、誰も破る事の出来ない我が家の暗黙のルール。
今夜も、皆で揃って夕食だ。
ミシミシ……
バキィッ!
ガッターン!
食事中。
何の前触れもなく、突然、嫌な音を立てたかと思うと、祖父が座っていたダイニングチェアが、勢いよく壊れた。
“不吉な……”
家族の皆が、祖父に怪我がないかを心配するより先に、そう、口を揃えた。
椅子から落ちた、祖父ですらも……
それから、一週間もしないうちに、祖父は交通事故で亡くなった。
その日から、我が家には、五人の家族の為に、五脚のダイニングチェア。
相変わらず、毎朝、毎夜、皆で食事をしている。
この間、父が奇妙な事をしていた。
食事中、時々、体を小刻みに揺すっては、小さく首を傾げ、眉間に皺を寄せる。
丁度、父の正面の席である僕には、妙に気になる仕草であったが、“女三人寄ると姦しい“とは、よく言ったもので、祖母、母、妹は何かドラマの話題なのか、ずっと、談笑しながら食事をしていて、誰も、父の様子に気が付く者はいなかった。
その夜、僕がトイレに起きると、ダイニングに人の気配が……
真っ暗なダイニングに、誰かがいる。
静かに、こっそり覗いてみると、暗くて顔は見えないが、体型から、父だと分かる。
どうやら、椅子を動かしているようだ。
“一体何故?”
不思議に思いながらも、僕は尿意に耐えられず、トイレに急いだ。
それから数日後、今度は朝食時に、祖母の椅子が壊れた。
皆、また、口を揃えて、「不吉な……」”と言った。
祖母はそれから家から出なくなった。
祖父の仏壇に手を合わせる事が多くなった。
しかし、やはり、一週間もしないうちに、祖母は心筋梗塞で亡くなった。
その顔はまるで、何か恐ろしいものでも見たかのように、大きく目を見開き、顔を歪めていた。
その日から、我が家には、四人の家族の為に、四脚のダイニングチェア。
大きな丸いテーブルの周りに、かなり、ゆったりとした間隔で、座って食事をする。
そんな中、父が言った。
「もう、毎晩、皆が揃って食事する必要なんてないだろう」
その一言から、我が家では朝のみ、皆で揃って食事をする事が仕来りとなった。
夕飯は、遅くまで帰らない父以外の三人で食べる事になった。
そんなある日、夜中に、父と母が口論をしているような声で、目が覚めた。
父は怒鳴り声をあげ、家を出て行った。
その日、僕は、真っ暗な家の中、たった一か所、電気のついた部屋……ダイニングを静かに覗くと、そこには、嗚咽を上げながら、父の椅子に何かをしている母の姿があった。
こちらに背を向け、夢中で作業を続けているので、一体、何をしているのかは分らないが、僕は”不吉“なものを感じながらも、「この事は決して、見てはいけない。話してはいけない」と思って、踵を返して部屋に戻った。
翌朝、朝食になっても、父は帰って来なかった。
そう。
余程の理由がない限り、破ってはならない我が家の仕来りを破ったのだ。
妹と僕は、父に対して文句を言いながら朝食を食べたが、母はそんな父の事など、興味すら無いかのように黙々と食事をしていた。
その夜、父は久しぶりに早く帰って来た。
そして、夕飯を一緒に食べた。
僕も妹も、朝の事への怒りがある為、誰も父に話しかけたりしない。
いや。
むしろ、話しかけられても、ぶっきら棒な返事しかしない。
すると、母がとんでもない事を言い出した。
「浮気相手の所で一晩過ごした貴方を、子供達は相手になんてしないわ」
抑揚のない声で、真っ直ぐ父を見ながらそう言うと、僕らが驚く前に父は、一瞬で顔を真っ赤にさせた。
「お前! 子供達の前だぞ!」
バン!
バキィィ!
ガッターン!
父が机を強く叩きながら怒鳴ったかと思うと、椅子が大きな音を立てて壊れた。
大きな体の父は、そのまま尻もちをついた。
“自業自得”
何故だろう。
浮気をしていたと分かったせいなのか。
それとも“仕来り”を守らなかったせいなのか。
父に対しては、“裏切り者”という思いが頭の中を支配し、三人揃って、「不吉」
ではなく、「自業自得」と呟いていた。
父は壊れた椅子から落ちたままの格好で、顔を真っ青にしていた。
きっと、これから起こる事を予感していたのだろう。
父はそれから無言で部屋へ戻り、それから父は家を出て行った。
朝も夜も帰って来ない。
きっと“浮気相手”の所にいるのだろう。
でも。大丈夫。
一週間もしないうちに……
プルルルルルル
プルルルルルル
プルルルッルル
夕方、家中に鳴り響く電話の音。
母が出る。
淡々と事務的に答える。
受話器を置く。
僕も妹も、その様子を冷静な目で見ていた。
「お父さんが、さっき、男の人に刺されて死んだんだって」
抑揚のない声で母は僕らに言った。
今回はまさに“自業自得”
父の浮気相手には、旦那さんがいたそうだ。
いわゆる、ダブル不倫。
そう。
これは、痴情の縺れってやつだ。
涙なんて出やしない。
出て来るのは、溜息だけだ。
その日から、我が家には、三人の家族の為に、三脚のダイニングチェア。
変わった事は、朝だけになっていた家族全員での食事が、また、毎朝、毎夜、家族が揃っての食事になった事だけ。
でも、最近。
妹がかなりウザい。
やけに反抗してくるし、母に僕の悪口を吹き込む。
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