85 / 107
家具
第七話【整理整頓】
しおりを挟む
今まで設置していた本棚では収まりきらなくなり、段ボールに本を仕舞い、数箱保管していると、突然、親戚の叔母が、「この本棚。亡くなった祖母の物だけど、うちじゃ誰も使わないから、使いなさいよ」と、叔父さんの軽トラで運んで来てくれた。
叔父さんと二人で自室へ運び、今までの本棚の横に設置する。
木製で厚みのあるスライド式の本棚。
今まで使っていたスチール製の本棚と比べるなんて、おこがましいが、高級感漂う、その風貌に見とれる。
「なんか、重厚感あるなぁ~」と、感歎の声を上げると、「なぁに……古いだけだ」と、愛想も何もない言葉を残し、叔父さんは叔母さんと共に帰って行った。
“しかし、こんな見るからに“イイ”物を、いきなりくれるなんて……一体、どういう風の吹き回しだ?“
そう思ったものの、考えてみれば、これだけ大きな本棚。
使わなければ、場所を取るだけ。
捨てるにしても、大型ゴミに出すとなると、逆に処分料を取られる。
だから、元々、本が好きだった俺なら、使うと見込んで持って来たのだろう。
あまり深く考えず、段ボール箱に仕舞っていた本達を、本棚に仕舞っていく。
とりあえず、今日は出した順に……そう思い、まずは段ボール箱から出した順番に収納していく。
全ての本を本棚へと移した段階で、一息つこうとキッチンへ足を向ける。
すると背後で音がした。
バサリッ……
バサリッ……
「え?」
振り向くとバサバサバサバサッ! と、本棚から一気に本が落ちていく。
「ちょ!」
思わず駆け寄り、本棚に手をかける。
本棚が斜めに傾いている訳でもなく、地震があった訳でもない。
“おかしい”と思い、スライドさせ、内側の本棚を確認しようとすると、更に、バサバサバサバサッ! 目の前で本が落ちていく。
「い、一体何なんだよ!」
誰もいない部屋で、一人叫ぶ俺。
怒鳴ったところで、片付けてくれる人もおらず。
仕方ないから、本を一冊一冊手に取る。
辺りに散らばった本は、既に、題名も著者名もバラバラだ。
こんなになってしまったら、もういっそ、著者名毎にきちんと分けた方が、正直、気持ちがいい。
そう思い、再度、著者名をあいうえお順に纏め、更には、その中でも、題名毎であいうえお順に並べていく。
勿論、スチール製の本棚の中身も全て出し、スライド式の方から、あいうえお順に。
スチール製の方には、どちらかというと、図鑑や図録系の物を収めていく。
数百冊はある本を、一人で整理整頓していると、あっという間に時間は過ぎて。
いつの間にか、夜になっていた。
「よし! 完璧だ!」
全ての整理整頓が終わり、再度、本棚の立てつけやら、なんやらを確認する。
“今度こそ、大丈夫だ!”と納得し、自室を出る。
バサリッ……
“え?……”
またもや背後で、いやな音が……
バサリッ……
まさか。
また、一からやり直し?
てか、この本棚、どんだけ不良品なんだよ!
そう思いながらも、怖々、後ろを振り返ると、先程のように一気に本が雪崩落ちる事はなく。
二冊落ちただけで、止まっている。
「な、なんだよ?」
恐る恐る近付き、落ちた本を見て、本棚の空いた場所とを見比べる。
一つは、著者名の分類は合っているものの、どうやら題名のあいうえお順が違っていたようだ。
そして、もう一つは、著者名が一字だけ違っていた。
「え……もしかして……きちんと整理されていないから落ちた……?」
ま、まさかな……と、思いながら、再度、きちんと順番に沿った場所へと、本を入れようとした時。
「え……えぇ!」
本と本の隙間に向かって、思わず叫び、そして仰け反った!
本と本の間から覗く顔。
ニマリと笑っているかのような目。
この目……どこかで……
「あぁ! ば、ばぁちゃん!」
そう叫んだ瞬間。
シュッ! と姿を消した。
そして、思い出されるばあちゃんの思い出。
「こりゃ! 整理整頓をきちんとせぇ! というとるじゃろが!」
「まったく! 本はバラバラに本棚に入れとったら、いざという時に探すのに苦労すると言うとろうが!」
そうだった。
昔から、ばあちゃんは、やたらと整理整頓にだけは煩い人だった。
もしかして。
これが嫌で叔父さん叔母さんは?
……しかし。
俺は、この本棚を誰かにやろうとは思わない。
何故なら。
結局は、ばあちゃんの言う事は正しいし。
本棚の奥に消え去った、ばあちゃんの顔は昔のまんま、口煩くても、愛情溢れる顔をしていたのだから。
叔父さんと二人で自室へ運び、今までの本棚の横に設置する。
木製で厚みのあるスライド式の本棚。
今まで使っていたスチール製の本棚と比べるなんて、おこがましいが、高級感漂う、その風貌に見とれる。
「なんか、重厚感あるなぁ~」と、感歎の声を上げると、「なぁに……古いだけだ」と、愛想も何もない言葉を残し、叔父さんは叔母さんと共に帰って行った。
“しかし、こんな見るからに“イイ”物を、いきなりくれるなんて……一体、どういう風の吹き回しだ?“
そう思ったものの、考えてみれば、これだけ大きな本棚。
使わなければ、場所を取るだけ。
捨てるにしても、大型ゴミに出すとなると、逆に処分料を取られる。
だから、元々、本が好きだった俺なら、使うと見込んで持って来たのだろう。
あまり深く考えず、段ボール箱に仕舞っていた本達を、本棚に仕舞っていく。
とりあえず、今日は出した順に……そう思い、まずは段ボール箱から出した順番に収納していく。
全ての本を本棚へと移した段階で、一息つこうとキッチンへ足を向ける。
すると背後で音がした。
バサリッ……
バサリッ……
「え?」
振り向くとバサバサバサバサッ! と、本棚から一気に本が落ちていく。
「ちょ!」
思わず駆け寄り、本棚に手をかける。
本棚が斜めに傾いている訳でもなく、地震があった訳でもない。
“おかしい”と思い、スライドさせ、内側の本棚を確認しようとすると、更に、バサバサバサバサッ! 目の前で本が落ちていく。
「い、一体何なんだよ!」
誰もいない部屋で、一人叫ぶ俺。
怒鳴ったところで、片付けてくれる人もおらず。
仕方ないから、本を一冊一冊手に取る。
辺りに散らばった本は、既に、題名も著者名もバラバラだ。
こんなになってしまったら、もういっそ、著者名毎にきちんと分けた方が、正直、気持ちがいい。
そう思い、再度、著者名をあいうえお順に纏め、更には、その中でも、題名毎であいうえお順に並べていく。
勿論、スチール製の本棚の中身も全て出し、スライド式の方から、あいうえお順に。
スチール製の方には、どちらかというと、図鑑や図録系の物を収めていく。
数百冊はある本を、一人で整理整頓していると、あっという間に時間は過ぎて。
いつの間にか、夜になっていた。
「よし! 完璧だ!」
全ての整理整頓が終わり、再度、本棚の立てつけやら、なんやらを確認する。
“今度こそ、大丈夫だ!”と納得し、自室を出る。
バサリッ……
“え?……”
またもや背後で、いやな音が……
バサリッ……
まさか。
また、一からやり直し?
てか、この本棚、どんだけ不良品なんだよ!
そう思いながらも、怖々、後ろを振り返ると、先程のように一気に本が雪崩落ちる事はなく。
二冊落ちただけで、止まっている。
「な、なんだよ?」
恐る恐る近付き、落ちた本を見て、本棚の空いた場所とを見比べる。
一つは、著者名の分類は合っているものの、どうやら題名のあいうえお順が違っていたようだ。
そして、もう一つは、著者名が一字だけ違っていた。
「え……もしかして……きちんと整理されていないから落ちた……?」
ま、まさかな……と、思いながら、再度、きちんと順番に沿った場所へと、本を入れようとした時。
「え……えぇ!」
本と本の隙間に向かって、思わず叫び、そして仰け反った!
本と本の間から覗く顔。
ニマリと笑っているかのような目。
この目……どこかで……
「あぁ! ば、ばぁちゃん!」
そう叫んだ瞬間。
シュッ! と姿を消した。
そして、思い出されるばあちゃんの思い出。
「こりゃ! 整理整頓をきちんとせぇ! というとるじゃろが!」
「まったく! 本はバラバラに本棚に入れとったら、いざという時に探すのに苦労すると言うとろうが!」
そうだった。
昔から、ばあちゃんは、やたらと整理整頓にだけは煩い人だった。
もしかして。
これが嫌で叔父さん叔母さんは?
……しかし。
俺は、この本棚を誰かにやろうとは思わない。
何故なら。
結局は、ばあちゃんの言う事は正しいし。
本棚の奥に消え去った、ばあちゃんの顔は昔のまんま、口煩くても、愛情溢れる顔をしていたのだから。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
めぐみ
歴史・時代
お民は江戸は町外れ徳平店(とくべいだな)に夫源治と二人暮らし。
源治はお民より年下で、お民は再婚である。前の亭主との間には一人息子がいたが、川に落ちて夭折してしまった。その後、どれだけ望んでも、子どもは授からなかった。
長屋暮らしは慎ましいものだが、お民は夫に愛されて、女としても満ち足りた日々を過ごしている。
そんなある日、徳平店が近々、取り壊されるという話が持ちあがる。徳平店の土地をもっているのは大身旗本の石澤嘉門(いしざわかもん)だ。その嘉門、実はお民をふとしたことから見初め、お民を期間限定の側室として差し出すなら、長屋取り壊しの話も考え直しても良いという。
明らかにお民を手に入れんがための策略、しかし、お民は長屋に住む皆のことを考えて、殿様の取引に応じるのだった。
〝行くな!〟と懸命に止める夫に哀しく微笑み、〝約束の1年が過ぎたから、きっとお前さんの元に帰ってくるよ〟と残して―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる