93 / 107
建物
第四話【ヒビ】
しおりを挟む
家の壁。
近所の塀。
学校の天井。
あらゆるところに「ヒビ」は入る。
僕は何故か、その「ヒビ」の中を覗きたくなる。
何故かって?
だってさ。
不思議じゃないか?
他の部分は全く壊れていないのに、壁や塀の一部分にだけ「ヒビ」が入るなんてさ。
物理的な問題だけじゃなく、「何か」の仕業だって思ったりしないか?
細く小さな裂け目。
亀裂のように入った割れ目。
大きな穴をも作ってしまうヒビ。
そんな【ヒビ】の奥には一体何があるのか?
好奇心を刺激される。
まぁ。
大抵は、何もない。
けれど、埃、ゴミ、虫の死骸。
それに、白アリや蜘蛛が巣を作っていることだってある。
え?
気持ちが悪いって?
でも、小さな明かりを差し込んで見る世界は、意外と面白いものなんだよ?
だってさ。
時々……いるんだ。
何がだって?
そりゃぁさ……“妖精”だよ!
たまに。
本当にごくたまに。
小さなオッチャンがいたり、変な緑色した虫のような動物のような……とにかく変な形をした物が、時には寝てたり、時には虫の死骸を運んでたり(食糧?)しているんだ。
いや!
本当さ!
疑うのなら、君も覗いてみるがいいよ!
何十回に一度くらいの割合だけど、見る事が出来るから!
でもね。
この、【ヒビ】を覗く行為って、結構、危険な遊びなんだ。
だってさ。
わかるだろ?
誰だって、自分のプライベートを他人に覗かれたくはない。
未知の生物が住んでいるのだから、意思の疎通だって出来ない。
小さな世界にとってみたら、僕なんて巨人だろ?
いつ攻撃してくるかも分からないのだから、彼らにとって、「危険生物」として認定されてもおかしくはない。
だからさ。
「ヒビ」を覗くのは注意した方がいい。
この間も。
祖父の葬儀の為に、母親の実家に行ったんだけど。
古い土蔵が庭にあるのを発見したんだよ。
うん。
勿論……ワクワクドキドキしちゃうよね。
葬儀中も、もう「ヒビ」のことで頭がいっぱい。
我慢できなくてさ。
葬儀後の会食の時に、こっそり抜け出して、その壁にあるヒビを覗こうとしたんだよ。
そしたらさ……いきなり。
ビュッ!
と、何かが飛び出して来たんだ。
俺は咄嗟に避けて、尻もちをついたんだけどさ。
足元に落ちているものを見て、ゾッとしたね。
だってさ。
奴らが武器として飛ばした物がさ……
【人間の爪】
だったんだから。
……でもね。
普通なら、ここで怖くなって逃げるだろうけれど、僕は違う。
このヒビの奥に棲んでいる「何か」に興味が沸いた。
ここに棲んでいるモノは一体……
スマホの明かりをヒビの隙間に当てる。
カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ……
いきなり白く細いものが僕の「目」を狙って来た。
よく見ると、それは何の物かは分からないが、間違いなく「指の骨」
尖った爪をつけた三本の指の骨が、カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ……と、バラバラに動かし、長い爪を鳴らし続けていた。
――獲物を捕らえられなかったイラつきを表しているかのように――――
よく見ると、ヒビからはズルリズルリ――と、長い黒髪が溢れだしてきていた。
そして、その奥にはギラリと光る目が……
これには流石の僕でも、「ヤバイ」と感じたさ。
その時。
「雄太~! 何をやっているの?」
いきなり消えた僕を探しに両親がやってきた。
「あと少しだったのに……」
低く呟かれた声。
それと同時に、「ヒビ」が真っ赤に染まり、まるで嘲笑しているかのような形へと変わった。
勿論、僕は両親の元へと走って逃げたさ。
その時、土蔵を振り返ったが、もう既に元通りになっていた。
それが僕の経験した中での、一番の恐怖体験だ。
あのヒビの中に一体何があるのか?
一体何が住んでいるのか?
未だにわからないが、それでも僕はヒビの中を覗くことを止められない。
そう。
人間、好奇心には勝てない生き物なんだと、僕は思う。
近所の塀。
学校の天井。
あらゆるところに「ヒビ」は入る。
僕は何故か、その「ヒビ」の中を覗きたくなる。
何故かって?
だってさ。
不思議じゃないか?
他の部分は全く壊れていないのに、壁や塀の一部分にだけ「ヒビ」が入るなんてさ。
物理的な問題だけじゃなく、「何か」の仕業だって思ったりしないか?
細く小さな裂け目。
亀裂のように入った割れ目。
大きな穴をも作ってしまうヒビ。
そんな【ヒビ】の奥には一体何があるのか?
好奇心を刺激される。
まぁ。
大抵は、何もない。
けれど、埃、ゴミ、虫の死骸。
それに、白アリや蜘蛛が巣を作っていることだってある。
え?
気持ちが悪いって?
でも、小さな明かりを差し込んで見る世界は、意外と面白いものなんだよ?
だってさ。
時々……いるんだ。
何がだって?
そりゃぁさ……“妖精”だよ!
たまに。
本当にごくたまに。
小さなオッチャンがいたり、変な緑色した虫のような動物のような……とにかく変な形をした物が、時には寝てたり、時には虫の死骸を運んでたり(食糧?)しているんだ。
いや!
本当さ!
疑うのなら、君も覗いてみるがいいよ!
何十回に一度くらいの割合だけど、見る事が出来るから!
でもね。
この、【ヒビ】を覗く行為って、結構、危険な遊びなんだ。
だってさ。
わかるだろ?
誰だって、自分のプライベートを他人に覗かれたくはない。
未知の生物が住んでいるのだから、意思の疎通だって出来ない。
小さな世界にとってみたら、僕なんて巨人だろ?
いつ攻撃してくるかも分からないのだから、彼らにとって、「危険生物」として認定されてもおかしくはない。
だからさ。
「ヒビ」を覗くのは注意した方がいい。
この間も。
祖父の葬儀の為に、母親の実家に行ったんだけど。
古い土蔵が庭にあるのを発見したんだよ。
うん。
勿論……ワクワクドキドキしちゃうよね。
葬儀中も、もう「ヒビ」のことで頭がいっぱい。
我慢できなくてさ。
葬儀後の会食の時に、こっそり抜け出して、その壁にあるヒビを覗こうとしたんだよ。
そしたらさ……いきなり。
ビュッ!
と、何かが飛び出して来たんだ。
俺は咄嗟に避けて、尻もちをついたんだけどさ。
足元に落ちているものを見て、ゾッとしたね。
だってさ。
奴らが武器として飛ばした物がさ……
【人間の爪】
だったんだから。
……でもね。
普通なら、ここで怖くなって逃げるだろうけれど、僕は違う。
このヒビの奥に棲んでいる「何か」に興味が沸いた。
ここに棲んでいるモノは一体……
スマホの明かりをヒビの隙間に当てる。
カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ……
いきなり白く細いものが僕の「目」を狙って来た。
よく見ると、それは何の物かは分からないが、間違いなく「指の骨」
尖った爪をつけた三本の指の骨が、カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ……と、バラバラに動かし、長い爪を鳴らし続けていた。
――獲物を捕らえられなかったイラつきを表しているかのように――――
よく見ると、ヒビからはズルリズルリ――と、長い黒髪が溢れだしてきていた。
そして、その奥にはギラリと光る目が……
これには流石の僕でも、「ヤバイ」と感じたさ。
その時。
「雄太~! 何をやっているの?」
いきなり消えた僕を探しに両親がやってきた。
「あと少しだったのに……」
低く呟かれた声。
それと同時に、「ヒビ」が真っ赤に染まり、まるで嘲笑しているかのような形へと変わった。
勿論、僕は両親の元へと走って逃げたさ。
その時、土蔵を振り返ったが、もう既に元通りになっていた。
それが僕の経験した中での、一番の恐怖体験だ。
あのヒビの中に一体何があるのか?
一体何が住んでいるのか?
未だにわからないが、それでも僕はヒビの中を覗くことを止められない。
そう。
人間、好奇心には勝てない生き物なんだと、僕は思う。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
めぐみ
歴史・時代
お民は江戸は町外れ徳平店(とくべいだな)に夫源治と二人暮らし。
源治はお民より年下で、お民は再婚である。前の亭主との間には一人息子がいたが、川に落ちて夭折してしまった。その後、どれだけ望んでも、子どもは授からなかった。
長屋暮らしは慎ましいものだが、お民は夫に愛されて、女としても満ち足りた日々を過ごしている。
そんなある日、徳平店が近々、取り壊されるという話が持ちあがる。徳平店の土地をもっているのは大身旗本の石澤嘉門(いしざわかもん)だ。その嘉門、実はお民をふとしたことから見初め、お民を期間限定の側室として差し出すなら、長屋取り壊しの話も考え直しても良いという。
明らかにお民を手に入れんがための策略、しかし、お民は長屋に住む皆のことを考えて、殿様の取引に応じるのだった。
〝行くな!〟と懸命に止める夫に哀しく微笑み、〝約束の1年が過ぎたから、きっとお前さんの元に帰ってくるよ〟と残して―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる