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建物
第五話【旧体育館の噂】
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「本当だってば! 俺、見たんだってば!」
そう騒ぎ立てるのは、同じクラスの相川。
どうやら幽霊を見たらしい。
しかも「出る」と噂の旧体育倉庫で。
普段はもう使われておらず、物置小屋のような扱いになっているものの、文化祭や体育祭の時に使うような物も仕舞ってある為、体育委員や文化祭実行委員になると、どうしても、年に一度はこの倉庫を使用する羽目に合う。
幽霊は決まって「夜」や、「雨の日の薄暗い時」にしか目撃者はいないので、皆、そこを使う時には“晴れの日の夕方まで”というのが、暗黙のルールとなっている。
ま、そんな変な噂があれども、日中の目撃者は皆無。
要するに、どこにでもある“学校の怪談”ってやつだ。
それなのに、目の前にいる相川は「本当に見たんだよぉ~!」と、騒ぎ立てる。
なんでも昨日は、来週に差し迫った体育祭の委員会で遅くまで居残らされ、しかも、どうしても必要な物が旧体育倉庫にあるからと取に行かされたらしい。
そして、そこで……
「あの……私も……見たの」
相川の話を半分、馬鹿にしたように聞いていると、横から、近藤さんが話に加わって来る。
「「「え?」」」
相川の周りにいた連中が一斉に近藤さんを見る。
「あのね。私も、体育員でしょ? だから、相川くんと一緒に旧体育倉庫に行ったのよ」
少し、顔を青白くさせながら真剣な口調で言った。
「そしたら……。ずぶ濡れの女の子が……扉の前に立っていたの……」
その言葉に、先程まで、ワイワイと相川をからかっていた奴らもシーンとなる。
しかし……
「でもよぉ。正直、あの旧体育倉庫の前って、結構、人、通るだろ?」
先程までからかっていた藤木が言い出した。
その言葉に皆が頷く。
「それなのに、今まで、“噂”だけで、見たって騒いだ奴、いる?」
皆、顔を見合わせた。
“さぁ……”
“噂でしか……”
“そう言えば聞いたことないなぁ……”
ボソボソと呟く。
すると、藤木はフンと鼻を鳴らした。
「ほらな。皆、聞いたことねぇだろ? 相川も近藤も、ただ、“噂”にビビッて何かと見間違えただけなんだって!」
「違うわ! 噂は“夜”と“雨の日の薄暗い日”に出るのよ?いつも人が通っているのは、日中の明るい時だけじゃない! あそこには絶対いるのよ!」
藤木の挑発的な態度に対し、近藤さんも退かなかった。
「じゃぁ……。皆で見に行けばいい」
やり取りを冷静に見ていた僕が静かに言うと、「そうだよな!」「それがいい!」と、皆が同調してくれ、その日の授業が終わったら旧体育倉庫の前に行く事になった。
近藤さんと相川は「夕方じゃ、意味ない」と怒っていたけれど、居ないなら居ない。
居るなら居る。
はっきりさせるのが、一番だと思うんだ。
僕は、授業が終わった後、皆に先に行ってもらうと、視聴覚室から暗幕を借りた。
え?
何をするかって?
それは……ふふふ。
僕が、旧体育倉庫に到着すると、そこにはクラスの殆どが集まっており、近藤さんと相川を責め立てていた。
「ほら。いないだろ?」
「夕方とはいえ、幽霊なら、明るさなんて関係ねーだろ?」
そんな二人が僕に気が付き、困ったような、助けを求めるかのような顔をした。
「明るさが関係あるのかもよ?」
僕がそう言うと皆、こっちを振り向いた。
「それは?」
藤木が聞いて来る。
「暗幕。これを二人が“見た”場所が暗くなるように……」
僕の返事が終わる前に、彼は被せて来た。
「それだったら、暗幕被って、“見た”場所に立てばいいんじゃねぇ?」
藤木がニヤリと笑って言った。
「幽霊なんて、いるわけねぇし。俺がやってやんよ!」
僕の手から暗幕を奪い取り、それを、自分の頭から被ると、倉庫の扉の前へとゆっくり歩き出した。
「おい! 近藤! どこで見た?」
暗幕の中から藤木が叫ぶ。
近藤さんは、恐る恐る、藤木に近付き、暗幕越しに藤木の手を取り、その“幽霊が立っていた”場所の方へとエスコートしていくと……
「う……うわぁぁぁぁあぁ!」
いきなり、藤木は、暗幕を捨て去り、突然、奇声を上げて逃げ出した。
その様子があまりに尋常ではなかった為、集まったクラスメイトは、誰も藤木の真似をしようとはせず、むしろ、気味悪がって、その場を後にした。
残された相川と近藤さんは、顔を真っ青にしながら僕に聞いてきた。
「ねぇ。こうなる事……知っていたの?」
「藤木も……見えたんだな?」
僕は、その言葉に対し、返事をするのでもなく、暗幕を拾い上げて被ると、藤木が“見た”であろう場所へと歩み寄った。
「よせ!!」
相川の言葉よりも早く、暗幕の中に“ソレ”は居た。
そう。
“彼女”はいつも、ここに“居た”のである。
ただ、見えないだけで。
ずっと……ずっと……
同じ場所に佇んでいるだけ。
きっと、ここで雨に濡れながら死んだのだろう。
それで、ここから身動きが取れないのだ。
ずぶ濡れの体で、ジトォっとした目で“生きている”僕を羨ましそうに、憎らしげに見るだけで、そこから動くことすら出来ない。
「ステルスみたいなもんか……」
僕は、暗幕を捨て去ると、二人に向かってこう言った。
「見えていないだけで、ここにずっと“居る”んだよ。だから、近付かない方がいい」
そう。
世の中、見えている物が全てではない。
僕は、ここを通る度に薄気味悪さを感じていたが、その理由がハッキリとした今、二度とここを通る事はないだろう。
そう騒ぎ立てるのは、同じクラスの相川。
どうやら幽霊を見たらしい。
しかも「出る」と噂の旧体育倉庫で。
普段はもう使われておらず、物置小屋のような扱いになっているものの、文化祭や体育祭の時に使うような物も仕舞ってある為、体育委員や文化祭実行委員になると、どうしても、年に一度はこの倉庫を使用する羽目に合う。
幽霊は決まって「夜」や、「雨の日の薄暗い時」にしか目撃者はいないので、皆、そこを使う時には“晴れの日の夕方まで”というのが、暗黙のルールとなっている。
ま、そんな変な噂があれども、日中の目撃者は皆無。
要するに、どこにでもある“学校の怪談”ってやつだ。
それなのに、目の前にいる相川は「本当に見たんだよぉ~!」と、騒ぎ立てる。
なんでも昨日は、来週に差し迫った体育祭の委員会で遅くまで居残らされ、しかも、どうしても必要な物が旧体育倉庫にあるからと取に行かされたらしい。
そして、そこで……
「あの……私も……見たの」
相川の話を半分、馬鹿にしたように聞いていると、横から、近藤さんが話に加わって来る。
「「「え?」」」
相川の周りにいた連中が一斉に近藤さんを見る。
「あのね。私も、体育員でしょ? だから、相川くんと一緒に旧体育倉庫に行ったのよ」
少し、顔を青白くさせながら真剣な口調で言った。
「そしたら……。ずぶ濡れの女の子が……扉の前に立っていたの……」
その言葉に、先程まで、ワイワイと相川をからかっていた奴らもシーンとなる。
しかし……
「でもよぉ。正直、あの旧体育倉庫の前って、結構、人、通るだろ?」
先程までからかっていた藤木が言い出した。
その言葉に皆が頷く。
「それなのに、今まで、“噂”だけで、見たって騒いだ奴、いる?」
皆、顔を見合わせた。
“さぁ……”
“噂でしか……”
“そう言えば聞いたことないなぁ……”
ボソボソと呟く。
すると、藤木はフンと鼻を鳴らした。
「ほらな。皆、聞いたことねぇだろ? 相川も近藤も、ただ、“噂”にビビッて何かと見間違えただけなんだって!」
「違うわ! 噂は“夜”と“雨の日の薄暗い日”に出るのよ?いつも人が通っているのは、日中の明るい時だけじゃない! あそこには絶対いるのよ!」
藤木の挑発的な態度に対し、近藤さんも退かなかった。
「じゃぁ……。皆で見に行けばいい」
やり取りを冷静に見ていた僕が静かに言うと、「そうだよな!」「それがいい!」と、皆が同調してくれ、その日の授業が終わったら旧体育倉庫の前に行く事になった。
近藤さんと相川は「夕方じゃ、意味ない」と怒っていたけれど、居ないなら居ない。
居るなら居る。
はっきりさせるのが、一番だと思うんだ。
僕は、授業が終わった後、皆に先に行ってもらうと、視聴覚室から暗幕を借りた。
え?
何をするかって?
それは……ふふふ。
僕が、旧体育倉庫に到着すると、そこにはクラスの殆どが集まっており、近藤さんと相川を責め立てていた。
「ほら。いないだろ?」
「夕方とはいえ、幽霊なら、明るさなんて関係ねーだろ?」
そんな二人が僕に気が付き、困ったような、助けを求めるかのような顔をした。
「明るさが関係あるのかもよ?」
僕がそう言うと皆、こっちを振り向いた。
「それは?」
藤木が聞いて来る。
「暗幕。これを二人が“見た”場所が暗くなるように……」
僕の返事が終わる前に、彼は被せて来た。
「それだったら、暗幕被って、“見た”場所に立てばいいんじゃねぇ?」
藤木がニヤリと笑って言った。
「幽霊なんて、いるわけねぇし。俺がやってやんよ!」
僕の手から暗幕を奪い取り、それを、自分の頭から被ると、倉庫の扉の前へとゆっくり歩き出した。
「おい! 近藤! どこで見た?」
暗幕の中から藤木が叫ぶ。
近藤さんは、恐る恐る、藤木に近付き、暗幕越しに藤木の手を取り、その“幽霊が立っていた”場所の方へとエスコートしていくと……
「う……うわぁぁぁぁあぁ!」
いきなり、藤木は、暗幕を捨て去り、突然、奇声を上げて逃げ出した。
その様子があまりに尋常ではなかった為、集まったクラスメイトは、誰も藤木の真似をしようとはせず、むしろ、気味悪がって、その場を後にした。
残された相川と近藤さんは、顔を真っ青にしながら僕に聞いてきた。
「ねぇ。こうなる事……知っていたの?」
「藤木も……見えたんだな?」
僕は、その言葉に対し、返事をするのでもなく、暗幕を拾い上げて被ると、藤木が“見た”であろう場所へと歩み寄った。
「よせ!!」
相川の言葉よりも早く、暗幕の中に“ソレ”は居た。
そう。
“彼女”はいつも、ここに“居た”のである。
ただ、見えないだけで。
ずっと……ずっと……
同じ場所に佇んでいるだけ。
きっと、ここで雨に濡れながら死んだのだろう。
それで、ここから身動きが取れないのだ。
ずぶ濡れの体で、ジトォっとした目で“生きている”僕を羨ましそうに、憎らしげに見るだけで、そこから動くことすら出来ない。
「ステルスみたいなもんか……」
僕は、暗幕を捨て去ると、二人に向かってこう言った。
「見えていないだけで、ここにずっと“居る”んだよ。だから、近付かない方がいい」
そう。
世の中、見えている物が全てではない。
僕は、ここを通る度に薄気味悪さを感じていたが、その理由がハッキリとした今、二度とここを通る事はないだろう。
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