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建物
第十話【人気病院】
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「では。腕を出して」
「はい」
シュッシュッシュッシュッシュ……
プシュー……
「血圧、問題ないですね。体温も。何か、気になる所とかはありますか?」
「いいえ。特には……」
「では、ゆっくり休んでくださいね」
「はい」
カツカツカツッ……
シャーーーーッ
「安田さん。こんばんは」
「こんばんは」
「おや? 安田さん。あなた……。明日にでも、肺のレントゲンを撮って貰った方がいいですねぇ……明日は、担当医の診察がありましたよね? その時に、胸が痛いと訴えてください」
「え? いいえ。私は胸なんて痛くありませんよ?」
「今は何の自覚症状もないのかもしれませんが……ちょっと、前を開けてくれますか?」
「え? あ、はい……ど、どうぞ……」
「少し冷たいですよ?」
ピタッピタッピタッ……
「うん。やっぱり。少し、微かですが嫌な音がします。担当医に“胸がなんだか変なんです”といった程度でも構いませんから、相談してください。私を信じて……」
「わかりました。先生が言うのでしたら」
「えぇ。それでは。今日はゆっくりおやすみください」
カツカツカツッ……ガラガラガラッ……
翌日──
「安田さん、お加減は?」
「少し、胸が……」
「胸? でも、手術した所は胆嚢なのですが……胸に違和感です……か? ちょっと前を開けてください」
「はい……」
ピタッピタッピタッ……
「…………安田さん。MRI撮りましょう」
「え? こんなに急に?」
「えぇ。なんでも不安要素は早めに確認した方がいいですからね」
「あぁ。はい」
*************************************************************
「安田さん……」
「はい」
「実は……肺のここ、わかりますか?」
「……いいえ……」
「そうですね。普通では分らないのですが、実は、ここに小さな小さな影があるんです」
「はぁ」
「この影が“癌”です」
「……」
「まだ、本当に初期の段階なので、手術で摘出すれば根治が望めます」
「癌……?」
「はい。早急に手術をすべきだと思いますが……」
****************************************************************
「ほら。またよ」
「うん、聞いた聞いた。安田さんの件」
「院長達は全然信用していないけどさぁ……」
「うん。患者さんや看護士たちの間では、もう、有名よね」
「「「真夜中の回診」」」
「優しい穏やかな医師が毎夜毎夜、患者を一人一人回診しては、病気を発見していく……」
「お陰で、普通では考えられないくらいに、早期発見出来るものだから、患者さんの多くは完治して、幸せに暮らせてるっていう……」
「だから、入院するなら、うちの病院! って言う程、この辺では有名なのにね」
「でも、その真夜中の回診をしている医者って、誰なのかしら?」
「昔、ここに勤務していた人の話では、たった一度の医療ミスで思い悩んで自殺した医師がいたらしくって。その人が、自責の念から、患者を助けたい一心で、夜な夜な……」
「うわぁ……じゃぁ、幽霊医師の診察って事?」
「でもさ。そのお陰で、我が病院は大繁盛!」
「有難い事よね」
〇〇県某私立総合病院では、今も尚。
真夜中の回診が行われているらしい……
その噂は、あちこちに広まり、今では県外からの患者も後を絶たないとか。
責任感の強い医師は、死んだ事によって、特殊な能力を身に着けたのか?
それとも……
単なる、「噂」なのか。
それは、その医師にあった者にしか分らない事である。
もし、皆さんが、どこかの病院に入院し、真夜中に不自然な回診があった場合は、その医師の言葉を信用する事もいいのかもしれませんよ?
「はい」
シュッシュッシュッシュッシュ……
プシュー……
「血圧、問題ないですね。体温も。何か、気になる所とかはありますか?」
「いいえ。特には……」
「では、ゆっくり休んでくださいね」
「はい」
カツカツカツッ……
シャーーーーッ
「安田さん。こんばんは」
「こんばんは」
「おや? 安田さん。あなた……。明日にでも、肺のレントゲンを撮って貰った方がいいですねぇ……明日は、担当医の診察がありましたよね? その時に、胸が痛いと訴えてください」
「え? いいえ。私は胸なんて痛くありませんよ?」
「今は何の自覚症状もないのかもしれませんが……ちょっと、前を開けてくれますか?」
「え? あ、はい……ど、どうぞ……」
「少し冷たいですよ?」
ピタッピタッピタッ……
「うん。やっぱり。少し、微かですが嫌な音がします。担当医に“胸がなんだか変なんです”といった程度でも構いませんから、相談してください。私を信じて……」
「わかりました。先生が言うのでしたら」
「えぇ。それでは。今日はゆっくりおやすみください」
カツカツカツッ……ガラガラガラッ……
翌日──
「安田さん、お加減は?」
「少し、胸が……」
「胸? でも、手術した所は胆嚢なのですが……胸に違和感です……か? ちょっと前を開けてください」
「はい……」
ピタッピタッピタッ……
「…………安田さん。MRI撮りましょう」
「え? こんなに急に?」
「えぇ。なんでも不安要素は早めに確認した方がいいですからね」
「あぁ。はい」
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「安田さん……」
「はい」
「実は……肺のここ、わかりますか?」
「……いいえ……」
「そうですね。普通では分らないのですが、実は、ここに小さな小さな影があるんです」
「はぁ」
「この影が“癌”です」
「……」
「まだ、本当に初期の段階なので、手術で摘出すれば根治が望めます」
「癌……?」
「はい。早急に手術をすべきだと思いますが……」
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「ほら。またよ」
「うん、聞いた聞いた。安田さんの件」
「院長達は全然信用していないけどさぁ……」
「うん。患者さんや看護士たちの間では、もう、有名よね」
「「「真夜中の回診」」」
「優しい穏やかな医師が毎夜毎夜、患者を一人一人回診しては、病気を発見していく……」
「お陰で、普通では考えられないくらいに、早期発見出来るものだから、患者さんの多くは完治して、幸せに暮らせてるっていう……」
「だから、入院するなら、うちの病院! って言う程、この辺では有名なのにね」
「でも、その真夜中の回診をしている医者って、誰なのかしら?」
「昔、ここに勤務していた人の話では、たった一度の医療ミスで思い悩んで自殺した医師がいたらしくって。その人が、自責の念から、患者を助けたい一心で、夜な夜な……」
「うわぁ……じゃぁ、幽霊医師の診察って事?」
「でもさ。そのお陰で、我が病院は大繁盛!」
「有難い事よね」
〇〇県某私立総合病院では、今も尚。
真夜中の回診が行われているらしい……
その噂は、あちこちに広まり、今では県外からの患者も後を絶たないとか。
責任感の強い医師は、死んだ事によって、特殊な能力を身に着けたのか?
それとも……
単なる、「噂」なのか。
それは、その医師にあった者にしか分らない事である。
もし、皆さんが、どこかの病院に入院し、真夜中に不自然な回診があった場合は、その医師の言葉を信用する事もいいのかもしれませんよ?
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