百談

壽帝旻 錦候

文字の大きさ
105 / 107
体験談

第八話【兵庫県の某ホテルにて】

しおりを挟む
出張が多い仕事ですと、結構、日本各地のホテルの“幽霊出る出る”情報が、あちこちから耳に入る訳で。
なるべく、そういったホテルを選ばないようにしています。

今回は、そんなホテルの中でも、「どうしても泊まらなくてはいけなくなっちゃった!」っていうものではなく。
「たまたま知らずに泊まっちゃった!」というホテルのお話。

そこは、当時。
兵庫県のとある駅前に出来たばかりの、某有名チェーンホテルで。
ビジネスホテルとはいえ、そこそこ広く、綺麗で快適な空間でした。

その日は、夜、接待だった為、チェックインして荷物を整理すると、すぐに、得意先と夜の繁華街へと繰り出しました。

二軒目三軒目と連れ回され、部屋に戻ったのは既に夜中の二時を回っていました。
勿論、お風呂に入り、歯磨きをし、すぐに寝た訳なんですが……


翌朝。
寝ぼけた頭で洗面所に行くと。


「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!」



なんと!
洗面所のコップに、まるで四本の指でなぞったような血の跡が……


“え? もしかして、昨日酔っ払って、どこかで、手を怪我した?”と、慌てて確認するものの、どこを見ても怪我がどころか、打ち身も虫刺されすらない。
顔や頭、体や足。
至る所を確認したものの、どこにも傷も打ち身もない。

「一体どういう事なんだ?」

不思議に思いつつも、流石に、このコップはもう使えない。

仕方ないので、部屋にセッティングしてある、無料のお茶セットの湯呑を使って、歯磨きをし、支度をしてロビーへ。
フロントの前で同じ会社の営業に会い、今朝の出来事を話すと……


「えぇ! やっぱ、出たんだ!」と言われました。


一体何の事だ?


出来てまだ、数か月のこのホテル。


“幽霊なんて出る要素ないだろ?”と、思っていたら……彼は顔を青ざめさせた。


「実は。ここ。オープン当日、飛び降り自殺があったらしくて。出る部屋があるらしいんだ……」


……おい。
そういう事は予約する前に、私に話すべきじゃねぇか?


「でも、出る部屋は決まってるって言っていたから、当たらないって思って予約したんだけど。そうかぁ。出たんだ」
「出てねぇよ! 朝、コップに血糊がついてたんだよ!」
「あー。出たのに、気が付かず、グースカ寝てたから怒って、“出たんだからね!”的な足跡を残していったのかもね」
「って、何呑気に、解説してんだよ! もう、ここには絶対泊まらないぞ!」
「いやぁ。まさか……出る部屋に当たっちゃうとは……」
「ロシアンルーレット的なホテル選びは今後断る!」


そんな話をしながらチェックアウトした訳ですが。


この話。
どうやら、フロントにも聞こえていたらしく、受付をしていた女性が奥へ消え、わしの番になった時、奥から男性が出て来て小声で呼び止められて、奥の部屋へと連れていかれた。


「昨夜は、こちらの不手際で。コップが汚れていたそうで。申し訳ございません。一泊分サービスまではいきませんが、割引させて頂きます」

どうやら。
あくまでも、先方は“幽霊”ではなく“汚れ”として、穏便に済ませたいらしい。

こちらとしても、こんなことで、ギャースカ煩く言ってる時間もない。
大人しく、フロントの対応に従った訳だが……


結局。
あれは【幽霊の悪戯】だったのか。
【汚れ】だったのかは、未だに“謎”です。


もし、皆様が、兵庫県の駅前の、チェーンホテルに泊まる機会がありましたら。
その部屋に通されない事をお祈り致します。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~

めぐみ
歴史・時代
お民は江戸は町外れ徳平店(とくべいだな)に夫源治と二人暮らし。  源治はお民より年下で、お民は再婚である。前の亭主との間には一人息子がいたが、川に落ちて夭折してしまった。その後、どれだけ望んでも、子どもは授からなかった。  長屋暮らしは慎ましいものだが、お民は夫に愛されて、女としても満ち足りた日々を過ごしている。  そんなある日、徳平店が近々、取り壊されるという話が持ちあがる。徳平店の土地をもっているのは大身旗本の石澤嘉門(いしざわかもん)だ。その嘉門、実はお民をふとしたことから見初め、お民を期間限定の側室として差し出すなら、長屋取り壊しの話も考え直しても良いという。  明らかにお民を手に入れんがための策略、しかし、お民は長屋に住む皆のことを考えて、殿様の取引に応じるのだった。 〝行くな!〟と懸命に止める夫に哀しく微笑み、〝約束の1年が過ぎたから、きっとお前さんの元に帰ってくるよ〟と残して―。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...