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第二章 学院入学編
⑨大切なものを守るため。
「何事だ…。こんなに集まって」
すでに多くの人が集まりすぎて、なかなか前まで辿り着けない状態だったが、この一声で人波があっという間に引いて一本の線ができるように道ができた。
その道をしっかりとした足取りで、燃えるような赤髪の男が進んでいく。
圧倒的な存在感に、クスクスと笑っていた生徒達もみんな口を閉ざして、辺りは一瞬にして静まり返った。
「い…イグニス様、今忘れ物があったので、誰のものなのか話し合っていたところです」
もっともらしい言い方で、ヘラヘラと笑っているブランソンに胸がムカムカとしてきた。
イグニスはブランソンの顔を冷たい表情で見た後、教卓の上に目線を移した。
「ああ、あれは……」
イグニスはノーベンの趣味については知らないはずだ。自室でひっそりとやっていたものだったからだ。
ディセルにだけは打ち明けたらしいが、今まであまり交流がなかったイグニスには何も伝えていないらしい。
イグニスがなんと言うのか、誰もの注目が集まった。
「あれは俺のだ」
まさかの一言に、その場はもっと静かになって、誰もいないかのような静寂が辺りを包んだ。
「へ? まっ…まさか……違う、その」
「なんだ? なぜお前が否定するんだ。あれは、俺の人形だ。何か問題でもあるか?」
ブランソンはありえない事態に汗を流していた。まさか、自分が持ち上げようとしていた人に、根本から折られるとは思わなかったのだろう。
「で…でも、あああれは……」
「あれは俺のだと言っている。なくなったから探していたんだ」
俺も信じられない気持ちでイグニスを見ていた。
天邪鬼でプライドの高いイグニスは、人からバカにされたり嘲笑されることなんて一番嫌うはずだ。
こんなに大勢の前で宣言したら、公に口にする者はいないが、陰ではバカにされたり揶揄ったり、ネタにされることもあるだろう。
そんなこと、絶対嫌だと言いそうなはずなのに……、イグニスは自分から進んでその場所に立っている。
「あの…、なっ…名前が、人形の服に名前が付いていたんです。もしかしたら、別の方の忘れ物かもしれないので、一応確認を……」
ブランソンは諦めたくないのだろう。最後の悪あがきでそんなことを言い出した。
ノーベンの鞄から盗み出したのだから、イグニスのものでないことは彼が一番よく知っている。
ずっと二人の仲があまり良くなかったことは知られているので、ブランソンもここまできて引けないと賭けに出たようだ。
「………イザベラだ」
俺の隣にいるノーベンがピクリと揺れた。
他の生徒が人形に駆け寄って、ドレスの裏をめくったら、イザベラという刺繍が確認できた。
そうだ、あれはノーベンの一番のお気に入りの、金髪に栗色の瞳のイザベラちゃんで間違いない。
イザベラちゃんはイグニスに手渡されて、イグニスはそれを大事そうに胸に抱えた。
「人が大切にしているものを、こんな風に晒して楽しいか?」
「そ…そんな、あれは私が置いたわけでないのです! 今朝登校したらそこに……」
「そうです! 他の誰かが…私達は知りません!」
ブランソン一味が次々と声を上げた。
ここで、何の騒ぎかと教師達も集まってきたのが見えた。
上手いこと自分達は知らないで乗り切ろうとしているのだろう。
そうはさせない!
俺はイグニスが開いた一本道を同じように歩いて前に出た。
「ゴホンっ、少し、よろしいですか? 私からも意見を……」
感情を抑えようとしたら、出だしから秀才眼鏡キャラが前面に出てしまったのでもうそれで突き通すことにした。
イグニスが不思議そうななんとも言えない顔をして俺を見てきた。
「昨日、遅刻した私は急いで教室に入ろうとしたのですが、そこで君達がラギアゾフご兄弟の席の辺りでガサゴソと探し物をしているところを見たのです」
「なっ……!? う…嘘だ!? そ…そんな、でたらめを言うな!」
「残念ながら、でたらめではありません。この目でしっかりと、貴方達がイグニス様の鞄から人形を取り出すところを見ました」
実際はそこまで見ていないしイグニスの鞄ではないのだが、俺は自信たっぷりに宣言した。そうすることで、みんなの視線が一気に集まった。
「嘘だ! 何を言っているんだ! 俺達がそんなことをするはず……」
ツカツカとブランソンに近づいた俺は、ガッとブランソンの手を掴んで自分の鼻に当てた。
「……おかしいですね。それではなぜ、貴方の手からオーディンの力の匂いがするのでしょう。人形の服を触った程度では移らないはずです。しつこく、机の中を調べたり、鞄の中を探し回ったりしなければ……ね。そこのお友達もみんなチェックしましょうか?」
追及としてはちょっと甘いのだが、俺の名探偵風の推理に、モブな彼らが上手く切り返してくるか賭けてみた。
案の定、プルプルと体を震わせたブランソン達は、次々と床に膝から崩れ落ちた。
支持していたイグニスに振り払われたのがよほどショックだったらしい。
抵抗する力が残っていなかったようだ。
「人が大切にしているものを盗むなんて、さすがにやりすぎましたね」
俺の言葉を最後に教師達が入ってきて、その場は収められた。
ブランソン達は連れて行かれて、事情を訊かれるために俺とイグニスとノーベンも別室に集められた。
三人だけになると、イグニスは抱えていたイザベラちゃんをノーベンに向かって差し出した。
「ほら、大事なものなら、持ち歩かずに家に置いておけ」
イザベラちゃんは無事、ノーベンの元へ帰ってきた。
イグニスから手渡されて、ノーベンはありがとうと声を震わせながら受け取った。
「ど…どうして……、どうして…イグニス兄さん」
「ああ、ノーベンがそれを持っていたのを見たことがあったからな」
「違うよ! なんで…兄さんがみんなの前まで出て……。どうして、僕の代わりに恥をかくなんて…、なんで、兄さんが……」
「……恥なんてかいていない。大切なものを守ろうとした、それだけだ」
信じられないという顔でノーベンは目を開いて口を震わせた。
今まで人を寄せ付けず、関わろうとしなかった男が自分を庇ってくれるなんて思わなかったのだろう。
「大切……?」
「……今まで兄らしいことは何もできずに悪かった。今更かもしれないが、俺はノーベン、お前のことを大切に思っている。お前を守るためなら誰に何を言われようと構わない」
「イグニス兄さ……、お父様になんて言われるか……」
「ああ、あの人なら大丈夫だ。俺はもともと話が通じないと思われているからな」
目を潤ませているノーベンの頭をイグニスはぽんぽんと撫でた。
いつもの厳つい目元も緩んで、優しい微笑みを浮かべている。
兄弟の仲睦まじい様子に心を打たれて、俺もうるっときてしまった。
あの人の話を聞かない人に、話が通じないと思われているというイグニスと父の関係がちょっと恐ろしいが、今は考えないことにする。
「……ところでテラ、加勢してくれたのはいいが、あの喋り方はなんだ?」
「へ?」
「そうだよ。テラはたまにあの感じになるよね。あんな気取った喋り方、似合わないよ」
兄弟愛に感動していたのに、急に矛先を向けられて、二人から本当に嫌そうな目で見られてしまった。
「ちょちょっと、待ってよ。俺がいつもの感じで出てったらおかしいだろう。誰も話聞いてくれないよ」
「そんな事はない。気にしすぎだろう」
「僕達と話している時が普通だってみんな気がついているよ。テラが好きなんだったら止めないけど……」
「いやー、好きって言うか……キャラ? あーもういいよ、みんな知ってんだったら何やってたんだよ俺」
自分でも無理があると思いながら、惰性で続けていたが、これではあの人またやっているよと思われていたということだ。
めちゃくちゃ恥ずかしくなって、手で顔を覆った。
誰も止めてくれなかったなんてと、悲しくなりながら隠れたい気分だった。
「テラ、大丈夫だよ。変なこと言うヤツなんていないからさ。そんなヤツがいたら僕がやっつけるから」
二人とも俺がインテリっぽく見せることで、強く見られようと思っていたことに気づいていたのだろう。そこを深く追及されなかったので、とりあえずノミのハートは守られた。
「そうだ! テラは何かイグニス兄さんに話があったんじゃないの? 昨日探していたよね?」
「え!?」
「そうなのか? すまない、昨日は結局、道が悪くて遠回りすることになって遅くなってしまったんだ。何の話だ?」
昨日はイグニスに告白するつもりで探していたのだ。しかし勢いが削がれたのと、ノーベンもいるこの状況で言えるわけがない。
「ああ…あ……ええと……」
超絶整った顔の二人にじっと見られて、何か悪いことでも白状しなければいけない気分で汗が流れてきた。
そこでやっと、ファビアン先生から聞いたアノ話が頭に降りてきた。
「そう…そうだ! 保健医から話があって。俺のオーディンの力の匂いが分からないって症状があっただろう! 調べてもらったら似たような症例があったらしいんだ。どうもこのままだと俺は短命で、二十歳前には死んじゃうらしいって…、ねー…びっくり…だよね…」
「はあ!?」
イグニスとノーベンは二人して目を開いて大口を開けて、すっかり仲良くなったように同時に叫んできた。
「そんな大事なこと!! どうして早く言わないんだ!!」
二人に片方ずつ腕を掴まれて、ぐらぐらと揺さぶられた。確かにノーベンのことがあってすっかり頭から抜けてしまうなんて俺もどうにかしている。
「で…でも、対処法があるって……また調べてもらって……」
「ノーベン、ディセルに連絡しろ! とにかく保健医のところへ行くぞ!」
「分かった、僕も知り合いの研究者にすぐ連絡する!」
「えええっ…でも、先生達にここにいろって……」
「バカ! のんびりしていられるか!!」
鬼のような形相になった二人に怒鳴られて、ノーベンは先に部屋を飛び出して行き、イグニスは俺をひょいっと担ぎ上げて走り出した。
大事なのだが、体調は全くおかしくないので、現実感がなかった。
この後、何が待ち受けているのか。
一つ片付いたらまた次で、イグニスの背中に掴まりながらこの件も無事に終わることを祈るしかなかった。
□□□
すでに多くの人が集まりすぎて、なかなか前まで辿り着けない状態だったが、この一声で人波があっという間に引いて一本の線ができるように道ができた。
その道をしっかりとした足取りで、燃えるような赤髪の男が進んでいく。
圧倒的な存在感に、クスクスと笑っていた生徒達もみんな口を閉ざして、辺りは一瞬にして静まり返った。
「い…イグニス様、今忘れ物があったので、誰のものなのか話し合っていたところです」
もっともらしい言い方で、ヘラヘラと笑っているブランソンに胸がムカムカとしてきた。
イグニスはブランソンの顔を冷たい表情で見た後、教卓の上に目線を移した。
「ああ、あれは……」
イグニスはノーベンの趣味については知らないはずだ。自室でひっそりとやっていたものだったからだ。
ディセルにだけは打ち明けたらしいが、今まであまり交流がなかったイグニスには何も伝えていないらしい。
イグニスがなんと言うのか、誰もの注目が集まった。
「あれは俺のだ」
まさかの一言に、その場はもっと静かになって、誰もいないかのような静寂が辺りを包んだ。
「へ? まっ…まさか……違う、その」
「なんだ? なぜお前が否定するんだ。あれは、俺の人形だ。何か問題でもあるか?」
ブランソンはありえない事態に汗を流していた。まさか、自分が持ち上げようとしていた人に、根本から折られるとは思わなかったのだろう。
「で…でも、あああれは……」
「あれは俺のだと言っている。なくなったから探していたんだ」
俺も信じられない気持ちでイグニスを見ていた。
天邪鬼でプライドの高いイグニスは、人からバカにされたり嘲笑されることなんて一番嫌うはずだ。
こんなに大勢の前で宣言したら、公に口にする者はいないが、陰ではバカにされたり揶揄ったり、ネタにされることもあるだろう。
そんなこと、絶対嫌だと言いそうなはずなのに……、イグニスは自分から進んでその場所に立っている。
「あの…、なっ…名前が、人形の服に名前が付いていたんです。もしかしたら、別の方の忘れ物かもしれないので、一応確認を……」
ブランソンは諦めたくないのだろう。最後の悪あがきでそんなことを言い出した。
ノーベンの鞄から盗み出したのだから、イグニスのものでないことは彼が一番よく知っている。
ずっと二人の仲があまり良くなかったことは知られているので、ブランソンもここまできて引けないと賭けに出たようだ。
「………イザベラだ」
俺の隣にいるノーベンがピクリと揺れた。
他の生徒が人形に駆け寄って、ドレスの裏をめくったら、イザベラという刺繍が確認できた。
そうだ、あれはノーベンの一番のお気に入りの、金髪に栗色の瞳のイザベラちゃんで間違いない。
イザベラちゃんはイグニスに手渡されて、イグニスはそれを大事そうに胸に抱えた。
「人が大切にしているものを、こんな風に晒して楽しいか?」
「そ…そんな、あれは私が置いたわけでないのです! 今朝登校したらそこに……」
「そうです! 他の誰かが…私達は知りません!」
ブランソン一味が次々と声を上げた。
ここで、何の騒ぎかと教師達も集まってきたのが見えた。
上手いこと自分達は知らないで乗り切ろうとしているのだろう。
そうはさせない!
俺はイグニスが開いた一本道を同じように歩いて前に出た。
「ゴホンっ、少し、よろしいですか? 私からも意見を……」
感情を抑えようとしたら、出だしから秀才眼鏡キャラが前面に出てしまったのでもうそれで突き通すことにした。
イグニスが不思議そうななんとも言えない顔をして俺を見てきた。
「昨日、遅刻した私は急いで教室に入ろうとしたのですが、そこで君達がラギアゾフご兄弟の席の辺りでガサゴソと探し物をしているところを見たのです」
「なっ……!? う…嘘だ!? そ…そんな、でたらめを言うな!」
「残念ながら、でたらめではありません。この目でしっかりと、貴方達がイグニス様の鞄から人形を取り出すところを見ました」
実際はそこまで見ていないしイグニスの鞄ではないのだが、俺は自信たっぷりに宣言した。そうすることで、みんなの視線が一気に集まった。
「嘘だ! 何を言っているんだ! 俺達がそんなことをするはず……」
ツカツカとブランソンに近づいた俺は、ガッとブランソンの手を掴んで自分の鼻に当てた。
「……おかしいですね。それではなぜ、貴方の手からオーディンの力の匂いがするのでしょう。人形の服を触った程度では移らないはずです。しつこく、机の中を調べたり、鞄の中を探し回ったりしなければ……ね。そこのお友達もみんなチェックしましょうか?」
追及としてはちょっと甘いのだが、俺の名探偵風の推理に、モブな彼らが上手く切り返してくるか賭けてみた。
案の定、プルプルと体を震わせたブランソン達は、次々と床に膝から崩れ落ちた。
支持していたイグニスに振り払われたのがよほどショックだったらしい。
抵抗する力が残っていなかったようだ。
「人が大切にしているものを盗むなんて、さすがにやりすぎましたね」
俺の言葉を最後に教師達が入ってきて、その場は収められた。
ブランソン達は連れて行かれて、事情を訊かれるために俺とイグニスとノーベンも別室に集められた。
三人だけになると、イグニスは抱えていたイザベラちゃんをノーベンに向かって差し出した。
「ほら、大事なものなら、持ち歩かずに家に置いておけ」
イザベラちゃんは無事、ノーベンの元へ帰ってきた。
イグニスから手渡されて、ノーベンはありがとうと声を震わせながら受け取った。
「ど…どうして……、どうして…イグニス兄さん」
「ああ、ノーベンがそれを持っていたのを見たことがあったからな」
「違うよ! なんで…兄さんがみんなの前まで出て……。どうして、僕の代わりに恥をかくなんて…、なんで、兄さんが……」
「……恥なんてかいていない。大切なものを守ろうとした、それだけだ」
信じられないという顔でノーベンは目を開いて口を震わせた。
今まで人を寄せ付けず、関わろうとしなかった男が自分を庇ってくれるなんて思わなかったのだろう。
「大切……?」
「……今まで兄らしいことは何もできずに悪かった。今更かもしれないが、俺はノーベン、お前のことを大切に思っている。お前を守るためなら誰に何を言われようと構わない」
「イグニス兄さ……、お父様になんて言われるか……」
「ああ、あの人なら大丈夫だ。俺はもともと話が通じないと思われているからな」
目を潤ませているノーベンの頭をイグニスはぽんぽんと撫でた。
いつもの厳つい目元も緩んで、優しい微笑みを浮かべている。
兄弟の仲睦まじい様子に心を打たれて、俺もうるっときてしまった。
あの人の話を聞かない人に、話が通じないと思われているというイグニスと父の関係がちょっと恐ろしいが、今は考えないことにする。
「……ところでテラ、加勢してくれたのはいいが、あの喋り方はなんだ?」
「へ?」
「そうだよ。テラはたまにあの感じになるよね。あんな気取った喋り方、似合わないよ」
兄弟愛に感動していたのに、急に矛先を向けられて、二人から本当に嫌そうな目で見られてしまった。
「ちょちょっと、待ってよ。俺がいつもの感じで出てったらおかしいだろう。誰も話聞いてくれないよ」
「そんな事はない。気にしすぎだろう」
「僕達と話している時が普通だってみんな気がついているよ。テラが好きなんだったら止めないけど……」
「いやー、好きって言うか……キャラ? あーもういいよ、みんな知ってんだったら何やってたんだよ俺」
自分でも無理があると思いながら、惰性で続けていたが、これではあの人またやっているよと思われていたということだ。
めちゃくちゃ恥ずかしくなって、手で顔を覆った。
誰も止めてくれなかったなんてと、悲しくなりながら隠れたい気分だった。
「テラ、大丈夫だよ。変なこと言うヤツなんていないからさ。そんなヤツがいたら僕がやっつけるから」
二人とも俺がインテリっぽく見せることで、強く見られようと思っていたことに気づいていたのだろう。そこを深く追及されなかったので、とりあえずノミのハートは守られた。
「そうだ! テラは何かイグニス兄さんに話があったんじゃないの? 昨日探していたよね?」
「え!?」
「そうなのか? すまない、昨日は結局、道が悪くて遠回りすることになって遅くなってしまったんだ。何の話だ?」
昨日はイグニスに告白するつもりで探していたのだ。しかし勢いが削がれたのと、ノーベンもいるこの状況で言えるわけがない。
「ああ…あ……ええと……」
超絶整った顔の二人にじっと見られて、何か悪いことでも白状しなければいけない気分で汗が流れてきた。
そこでやっと、ファビアン先生から聞いたアノ話が頭に降りてきた。
「そう…そうだ! 保健医から話があって。俺のオーディンの力の匂いが分からないって症状があっただろう! 調べてもらったら似たような症例があったらしいんだ。どうもこのままだと俺は短命で、二十歳前には死んじゃうらしいって…、ねー…びっくり…だよね…」
「はあ!?」
イグニスとノーベンは二人して目を開いて大口を開けて、すっかり仲良くなったように同時に叫んできた。
「そんな大事なこと!! どうして早く言わないんだ!!」
二人に片方ずつ腕を掴まれて、ぐらぐらと揺さぶられた。確かにノーベンのことがあってすっかり頭から抜けてしまうなんて俺もどうにかしている。
「で…でも、対処法があるって……また調べてもらって……」
「ノーベン、ディセルに連絡しろ! とにかく保健医のところへ行くぞ!」
「分かった、僕も知り合いの研究者にすぐ連絡する!」
「えええっ…でも、先生達にここにいろって……」
「バカ! のんびりしていられるか!!」
鬼のような形相になった二人に怒鳴られて、ノーベンは先に部屋を飛び出して行き、イグニスは俺をひょいっと担ぎ上げて走り出した。
大事なのだが、体調は全くおかしくないので、現実感がなかった。
この後、何が待ち受けているのか。
一つ片付いたらまた次で、イグニスの背中に掴まりながらこの件も無事に終わることを祈るしかなかった。
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