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第二章
⑦大事なパーティー
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騒動から数日、落ち着きを取り戻しつつある学園で、改めて関係者は生徒会会長室に集合していた。
「私は遊んでいたわけではないのですよ。各国に伝令を送り、違反した生徒の処遇を確認していたのです。全ての国がこれまで通り生徒会の統治を希望しており、無用な争いは避け、従わない生徒は退学と許可も取り付けました。こういう根回し役は大変なんです!」
ずっと不在だったルカリオが、疲れを感じされる顔で、ため息混じりに話した。
「いやー、もう、丸く収まったのは、ルカのお陰だよ。助かった助かった」
アルフレッドが、影の功労者に謝意を示した。
各国の貴族が集まるこの学園では、物事にも厳格な基準や決まりがあり、特に退学などの扱いには、事前に国の了解を取らなければ、話が進まないのである。
「それにしても、フレイム様は、スゴいですね!あんなに剣術に秀でていらっしゃるとは知らなかったです」
ユージーンが興奮ぎみで、フレイムに話しかけた。
「えー?剣?剣術より、そのケーキとクッキー食べていい?」
本人はいつもの調子で、のほほんとしていた。
「こいつの父親は、砂漠の獅子王と呼ばれて、一夜で千人斬りの伝説がある化け物だ。その力はしっかりと受け継がれている。まともにやりあえば、王殺しのライルも勝てないだろう。ただ、一度暴走状態になると、一月は休眠状態が続くから、非常に使いづらい」
フェルナンドが淡々と説明する横で、本人はお菓子を頬張りすぎてむせていた。
(思い出した、ゲームのフレイムは確か、襲われた主人公を、剣を使って助けたりしていたっけ…主人公は離脱しちゃったし、今となってはゲームとは全然別物になってしまったけど)
ジェイドの暴動は、一夜の夢のように、あっけなく幕を閉じた。
そもそも本人は学園を統治する気などさらさらなく、ただの、迷惑な遊びだったわけで。
生徒会を混乱させた、不正を告発する証拠や証言などは、全くのでっち上げであることはすでに証明された。
首謀者のジェイドは、退学処分となり、強制帰国。学園の修復にかかわる費用を支払うことになった。アルフレッドとの関係から、入国禁止など措置まではとられなかった。
信者になった生徒達は、それぞれ、退学や停学などの処分が自国の判断によって決められた。
エリーナは、首謀者ではないが、他の生徒に怪我をさせた事が悪質とされ、退学となり、教会で奉仕活動をする事になった。
実はエリーナは主人公特典として、隣国の王の妾が生んだ子だったということが、ゲームの後半で判明する。
長い間、行方不明であったとされていて無事王女となり、アルフレッドと結婚できるという筋書きだった。
今回、ルートから外れ、学園は退学となったが、どこかのタイミングで、王女として返り咲いてくる可能性はまだ残されていた。
会計係のアレックスは、まだ学園に復帰は出来ないが、順調に回復している。
「という訳で、色々報告を聞いてもらったが、今回の事で、辞めてしまった教師も多く、新しく採用するには少し時間がかかる。二年校舎の修理も必要だから、この際、早めに夏期休暇に入る事になった」
フェルナンドの説明に、皆一様に頷いた。
すでに、争いを避け、自国に帰った者も多かったので、休み期間を入れて、仕切り直しするのが現実的だろうという、意見が大半だったのだ。
「じゃ、大人しく城に戻りますか。でも、まー、またすぐに、みんな集まるからな」
アルフレッドが軽い調子で、背伸びをしながら話した。
「え?なにか集まるものがあるのですか?」
夏休みと言えば、プールに花火にお祭りのイメージしかなかったので、この世界にも、そんな学生のイベントがあるのかと思い、ちょっと期待をした。
「…リリアンヌ…」
フェルナンドは頭を抱え、他の者達も、あーこれは…と言いながら、目をそらして気まずそうにしていた。
「姉様、パーティーだよ」
たまりかねたユージーンが、助け船を出してきた。
(たー呆れたわ、パーティーパーティーって、またかよ。年中それしかやってないんじゃね)
「リリアンヌは、私が手紙に書いていた事を覚えていないのかな」
フェルナンドがこちらに、キラキラした笑顔を向けてきた。
「え?あの手紙のやり取りをしていた時の…ですか?」
(んー…なんかあったっけ…いつも始めの3行くらいは読んでいたんだけど…)
「すみません、忘れちゃいました」
気のせいか、フェルナンドの笑顔に、ピキっとヒビが入ったように見えた。
「そろそろ、私達は失礼しよう!さっさ、みんな行くぞ!」
ルカリオの掛け声で、蜘蛛の子を散らすように、皆、さーっといなくなり、フェルナンドと二人だけになってしまった。
「みんな、急にどうされたのでしょうね」
ローリエなんか、頑張ってねとウィンクまでして去っていた。
「リリアンヌ、ちょっと来て」
笑顔のままのフェルナンドに呼ばれ、またソファーに隣同士で並んだ。
「私は手紙に婚約パーティーの事を書いたんだよ」
フェルナンドの指が頬に触れ、そのまま髪をすべらせて、スルリととかした。
「婚約パーティー?え?私達のですか?」
「他に誰かいるの?私は学園があって戻れないから、夏期休暇中に二人で帰った際に、父と母に婚約を報告して、各国の王族を招待して、婚約発表のパーティーをするという事を書いて、リリアンヌからの手紙には、全てお任せしますと書いてあったけど…」
「え…そんな大事な事を…」
「忘れていたね」
フェルナンドは、笑顔から一転、ちょっとムッとした顔で、眉を寄せていた。
「それは…申し訳ございません…」
まさか、そんな大事な事が書いてあったとは、しかも、招待状もすでに配っていると聞いて、冷や汗が出てきた。
そういえば、何か大事な事が書いてあったような気がしたけど、読み返すのが面倒だったので、返信はお任せしますとだけ書いたのだ。
さすがに、その事を言うのは気が引けた。
「いいよ。私はリリアンヌには、とことん甘いんだ。せっかく好きだと言ってもらえたのに、リリアンヌに嫌われたくないからね。」
手を引かれて、フェルナンドの胸のなかに、捕らえられた。愛しそうに髪を撫でて、頭にキスをした。
「嫌うだなんて、そんな…私が悪いのに…」
「リリアンヌは悪くないよ。ちゃんと口頭で伝えなかった私のミスだ。実はね、ちょっとばかり頼んでいた物が遅れてしまってね。申し訳なくて言い出せなかったのもあるんだ」
「頼んでいた物です…かひにゃぁ!」
フェルナンドの手が背中を泳いでいるみたいに、動き出して、くすぐったくて変な声が出た。
抗議の目で見ると、フェルナンドは楽しそうに笑った。
「ふふふっ、ごめんごめん。あぁ、あそこに置いてある物だ」
指差された方向を見ると、漫画雑誌を4、5冊重ねたくらいの書類の山が見えた。
「あっあっあっ…あの氷山はいったい…」
「んー、招待者の情報をまとめたものだよ。名前と簡単な経歴、姿、特徴、食事の好き嫌い、趣味趣向、その他特記事項、主催者として、頭に入れておいてもらわないといけない。全員と挨拶するからね」
「そ……そんな…まさか…」
「大丈夫!あと、一月はあるし!ざっと500人分くらいだ。すぐに覚えられるよ」
フェルナンドが今日一番の眩しすぎる笑顔を見せた。
「あっ、それと、準備が出来たら、アレンスデーンに帰る予定だけど、ロロルコット伯爵邸には帰らないように!」
「それは…、なぜですか?」
「想像出来るんだよ。この書類の山が一月、全く動くことなく、リリアンヌの机に飾られている姿が。そして、ユージーンは監視役としては、一ミリも使い物にならないからね」
「あはははは…よく分かっていらっしゃる」
(無理だ…頭の毛が禿げそう…)
「リリアンヌは、私の部屋で暮らすんだよ。書類の手配が遅れてしまったのは、私の責任なんだ。だから、私が責任を持って!手取り足取りしっかりちゃっかりみっちり!リリアンヌに指導する事にしたから」
「え!?えええーーー!!!」
からりと晴れた青い空に、リリアンヌの声が響き渡った。
□□□
「私は遊んでいたわけではないのですよ。各国に伝令を送り、違反した生徒の処遇を確認していたのです。全ての国がこれまで通り生徒会の統治を希望しており、無用な争いは避け、従わない生徒は退学と許可も取り付けました。こういう根回し役は大変なんです!」
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「いやー、もう、丸く収まったのは、ルカのお陰だよ。助かった助かった」
アルフレッドが、影の功労者に謝意を示した。
各国の貴族が集まるこの学園では、物事にも厳格な基準や決まりがあり、特に退学などの扱いには、事前に国の了解を取らなければ、話が進まないのである。
「それにしても、フレイム様は、スゴいですね!あんなに剣術に秀でていらっしゃるとは知らなかったです」
ユージーンが興奮ぎみで、フレイムに話しかけた。
「えー?剣?剣術より、そのケーキとクッキー食べていい?」
本人はいつもの調子で、のほほんとしていた。
「こいつの父親は、砂漠の獅子王と呼ばれて、一夜で千人斬りの伝説がある化け物だ。その力はしっかりと受け継がれている。まともにやりあえば、王殺しのライルも勝てないだろう。ただ、一度暴走状態になると、一月は休眠状態が続くから、非常に使いづらい」
フェルナンドが淡々と説明する横で、本人はお菓子を頬張りすぎてむせていた。
(思い出した、ゲームのフレイムは確か、襲われた主人公を、剣を使って助けたりしていたっけ…主人公は離脱しちゃったし、今となってはゲームとは全然別物になってしまったけど)
ジェイドの暴動は、一夜の夢のように、あっけなく幕を閉じた。
そもそも本人は学園を統治する気などさらさらなく、ただの、迷惑な遊びだったわけで。
生徒会を混乱させた、不正を告発する証拠や証言などは、全くのでっち上げであることはすでに証明された。
首謀者のジェイドは、退学処分となり、強制帰国。学園の修復にかかわる費用を支払うことになった。アルフレッドとの関係から、入国禁止など措置まではとられなかった。
信者になった生徒達は、それぞれ、退学や停学などの処分が自国の判断によって決められた。
エリーナは、首謀者ではないが、他の生徒に怪我をさせた事が悪質とされ、退学となり、教会で奉仕活動をする事になった。
実はエリーナは主人公特典として、隣国の王の妾が生んだ子だったということが、ゲームの後半で判明する。
長い間、行方不明であったとされていて無事王女となり、アルフレッドと結婚できるという筋書きだった。
今回、ルートから外れ、学園は退学となったが、どこかのタイミングで、王女として返り咲いてくる可能性はまだ残されていた。
会計係のアレックスは、まだ学園に復帰は出来ないが、順調に回復している。
「という訳で、色々報告を聞いてもらったが、今回の事で、辞めてしまった教師も多く、新しく採用するには少し時間がかかる。二年校舎の修理も必要だから、この際、早めに夏期休暇に入る事になった」
フェルナンドの説明に、皆一様に頷いた。
すでに、争いを避け、自国に帰った者も多かったので、休み期間を入れて、仕切り直しするのが現実的だろうという、意見が大半だったのだ。
「じゃ、大人しく城に戻りますか。でも、まー、またすぐに、みんな集まるからな」
アルフレッドが軽い調子で、背伸びをしながら話した。
「え?なにか集まるものがあるのですか?」
夏休みと言えば、プールに花火にお祭りのイメージしかなかったので、この世界にも、そんな学生のイベントがあるのかと思い、ちょっと期待をした。
「…リリアンヌ…」
フェルナンドは頭を抱え、他の者達も、あーこれは…と言いながら、目をそらして気まずそうにしていた。
「姉様、パーティーだよ」
たまりかねたユージーンが、助け船を出してきた。
(たー呆れたわ、パーティーパーティーって、またかよ。年中それしかやってないんじゃね)
「リリアンヌは、私が手紙に書いていた事を覚えていないのかな」
フェルナンドがこちらに、キラキラした笑顔を向けてきた。
「え?あの手紙のやり取りをしていた時の…ですか?」
(んー…なんかあったっけ…いつも始めの3行くらいは読んでいたんだけど…)
「すみません、忘れちゃいました」
気のせいか、フェルナンドの笑顔に、ピキっとヒビが入ったように見えた。
「そろそろ、私達は失礼しよう!さっさ、みんな行くぞ!」
ルカリオの掛け声で、蜘蛛の子を散らすように、皆、さーっといなくなり、フェルナンドと二人だけになってしまった。
「みんな、急にどうされたのでしょうね」
ローリエなんか、頑張ってねとウィンクまでして去っていた。
「リリアンヌ、ちょっと来て」
笑顔のままのフェルナンドに呼ばれ、またソファーに隣同士で並んだ。
「私は手紙に婚約パーティーの事を書いたんだよ」
フェルナンドの指が頬に触れ、そのまま髪をすべらせて、スルリととかした。
「婚約パーティー?え?私達のですか?」
「他に誰かいるの?私は学園があって戻れないから、夏期休暇中に二人で帰った際に、父と母に婚約を報告して、各国の王族を招待して、婚約発表のパーティーをするという事を書いて、リリアンヌからの手紙には、全てお任せしますと書いてあったけど…」
「え…そんな大事な事を…」
「忘れていたね」
フェルナンドは、笑顔から一転、ちょっとムッとした顔で、眉を寄せていた。
「それは…申し訳ございません…」
まさか、そんな大事な事が書いてあったとは、しかも、招待状もすでに配っていると聞いて、冷や汗が出てきた。
そういえば、何か大事な事が書いてあったような気がしたけど、読み返すのが面倒だったので、返信はお任せしますとだけ書いたのだ。
さすがに、その事を言うのは気が引けた。
「いいよ。私はリリアンヌには、とことん甘いんだ。せっかく好きだと言ってもらえたのに、リリアンヌに嫌われたくないからね。」
手を引かれて、フェルナンドの胸のなかに、捕らえられた。愛しそうに髪を撫でて、頭にキスをした。
「嫌うだなんて、そんな…私が悪いのに…」
「リリアンヌは悪くないよ。ちゃんと口頭で伝えなかった私のミスだ。実はね、ちょっとばかり頼んでいた物が遅れてしまってね。申し訳なくて言い出せなかったのもあるんだ」
「頼んでいた物です…かひにゃぁ!」
フェルナンドの手が背中を泳いでいるみたいに、動き出して、くすぐったくて変な声が出た。
抗議の目で見ると、フェルナンドは楽しそうに笑った。
「ふふふっ、ごめんごめん。あぁ、あそこに置いてある物だ」
指差された方向を見ると、漫画雑誌を4、5冊重ねたくらいの書類の山が見えた。
「あっあっあっ…あの氷山はいったい…」
「んー、招待者の情報をまとめたものだよ。名前と簡単な経歴、姿、特徴、食事の好き嫌い、趣味趣向、その他特記事項、主催者として、頭に入れておいてもらわないといけない。全員と挨拶するからね」
「そ……そんな…まさか…」
「大丈夫!あと、一月はあるし!ざっと500人分くらいだ。すぐに覚えられるよ」
フェルナンドが今日一番の眩しすぎる笑顔を見せた。
「あっ、それと、準備が出来たら、アレンスデーンに帰る予定だけど、ロロルコット伯爵邸には帰らないように!」
「それは…、なぜですか?」
「想像出来るんだよ。この書類の山が一月、全く動くことなく、リリアンヌの机に飾られている姿が。そして、ユージーンは監視役としては、一ミリも使い物にならないからね」
「あはははは…よく分かっていらっしゃる」
(無理だ…頭の毛が禿げそう…)
「リリアンヌは、私の部屋で暮らすんだよ。書類の手配が遅れてしまったのは、私の責任なんだ。だから、私が責任を持って!手取り足取りしっかりちゃっかりみっちり!リリアンヌに指導する事にしたから」
「え!?えええーーー!!!」
からりと晴れた青い空に、リリアンヌの声が響き渡った。
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