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ロベール・シルヴァン編
Story 目覚めた獅子 × 捕食されたい女 END
ロベールに馬車の中でイカされた日。気がついたら俺はロベールの膝の上で寝ていた。うちの屋敷にとっくに着いていたが、起こさないでくれたようだった。
そんな、自分でも恥ずかしくて死ねそうな翌日。
馬車通りから校門へ行くと、入り口にロベールが立って待っていた。
(おお……、お待ちだ……どんな顔すれば良いのか……)
無視するのもおかしいので、ぎこちない動きで近づいて行った。
「おはよう……」
(昨日はどうも、とか言うのもおかしいよな……)
「レイチェル、おはよう」
(あっ、また笑った……)
今日はごく自然に口角が上がって、微笑んでいるように見えた。まだ笑顔というには、微々たるものだが、それでも、なかなかの破壊力で朝から心臓が高鳴った。
「待っててくれたの?」
「ああ。早く会いたかった……」
(おおお、ど直球!朝から心臓に悪い)
自然に手をとられて、二人で歩き出した。明らかに空気が違うので、みんなの視線が集まってくるのがわかる。
今日の授業のことなど、他愛ない話をする間も、ロベールに見られているというだけで緊張した。
教室の前で別れても、ドキドキはなかなか止まらず、席についてからはため息でごまかした。
「うわっ!なんですか!この空気!?」
となりの席のリュカが、熱い熱いと騒ぎ出した。
「もう、だだ漏れじゃないですか!こっちまで、赤くなりますよ!」
「……ごめん」
「どうせ、あの方とお付き合いを始めたのでしょう。言っておきますが、もう、一緒のランチはしませんからね。誘わないでください」
リュカにランチを拒否されたのは、仕方ないが、俺は前半が気になった。
「ん?……付き合い?」
「え?お互い、告白して、付き合うことになったのでは?」
リュカとの間に微妙な空気が流れた。
「そこ、大事ですよ!気持ちは確認しておかないと!流されちゃだめです」
リュカの言うことは、もっともだ。
俺は気持ちを確認することをすっ飛ばして先に進んでしまった。
(だめだ。ちゃんと告白しないと……、それに、確認しないといけないこともある)
俺は昼休み、ロベールを中庭に呼び出した。
ここはいつも人が少ないので、静かに話をするにはちょうどいい場所だ。
やって来たロベールは、こちらを見つけて、また嬉しそうに微笑んだ。
今にも触れたそうな勢いで来たので、ここはきっちり話さないとと思いすぐに声を出した。
「ロベール…、あのさ、話があって…!」
俺の雰囲気を察したのか、ロベールはきちんと中庭のベンチに座って膝を向き合わせてくれた。
「この間、ここで、ミシェルに話を聞いたの。その、ロベールの事を知りたくて、近い人に話を聞きたくて」
「そうか……」
「それで、お父様がかなり、厳しい人だとも聞いた。前にも言ったと思うけど、私の事で、何かロベールに迷惑がかかったりするのは嫌なんだ………、その、私は中途半端な気持ちじゃなくて………」
「レイチェル、大丈夫だ。確かに父は厳しい人だか、私の交際について、口は出さない。これまで、色々とあって、父とも話を重ねてきた。その上で、お互い利益にならないから、もう過剰に介入しないように関係を変えたんだ」
「そうか……。色々大変だったんだな」
ロベールが側に来て、俺の頭を撫でた。
それをされると、俺の心臓はきゅんと鳴ってしまう。
「レイチェル、好きだ……ずっと俺の側にいてほしい……」
「ロベール……、私も、同じ……んっっ」
俺が言葉を紡ぐ前に、唇は塞がれロベールが全て絡めとってしまった。
俺のしてきた恋愛は余裕があって、いつも高いところから自分を眺めていた。
だが、今は全然余裕はなくて、その熱に付いていくだけで精一杯だ。
「はぁはぁ、ちょっと、待って……」
「だめだ、待てない」
ロベールの口づけは容赦がない。息継ぎする暇など与えてくれず、息苦しさに意識がまた朦朧としてきた。
力が抜けた俺に、ロベールがのし掛かってきてまた奪われた。
まるで目覚めた獣に、全て食らいつくされるみたいだ。
しかし、それを何より望んでいるのは俺なのだから喜んで受けとめて、そのまま意識を手放した。
「レイチェル……、それでいい。歩くことも、話すことも、笑うことも、全部俺のものだ……。俺なしでは、呼吸が出来なくて、生きていけなくなればいい。俺を檻から解き放ったのは、君なのだから……」
泥のように重く途切れていく意識の底で、そんな声が聞こえた気がした。
それから俺とロベールは在学中に婚約を発表し、ロベールが卒業したら結婚をする約束をしている。
「だめだ」
「いーだろ別に、街なんていつも行っているし」
「そうよ、心配性にも程があるわよ!」
休みの日に、アンジェラと観劇に行く約束をしていたら、ロベールから待ったがかかった。
「行く途中で事故にでもあったら、賊に襲われたら、劇場で変な男が話しかけてきたら、さぁどうするつもりなんだ、アンジェラ」
「イヤな男ー!性格変わっているわよ!レイチェルのせいだからね」
「ええ!?そんな事言われても」
ロベールの甘やかしは、以前の度を越えて、ますますエスカレートしていた。
もはや俺はほとんど動かなくても、ロベールが全てやってくれる勢いだ。
「だから僕が忠告したんだよー!その通りになったんだからね。ふん!それに、レイチェルも乗っかってるから、お互い様でいいんじゃないの」
ミシェルの話が終わらないうちに、俺はひょいっと持ち上げられて、ロベールに抱き上げられた。
恥ずかしながら、最近の移動方法はほとんどこれだ。
「レイチェル、二人きりになりたい」
「……ちょっ……、もう……」
はいはい、早く行けばと、アンジェラとミシェルにサロンから追い出された。
「レイチェル……、今日は家に寄って欲しい」
「い……いいけど、もしかして……また……」
「俺はいつだってレイチェルが欲しい……。今だって我慢しているんだ」
隠すことなどない。ロベールの濃厚な愛は日に日に度合いが増していき、学園ではだめだと言っているのに、求められることも多々あり、困りつつも俺は重い愛を喜んでいた。
本当は本能のままに求め合いたい気持ちを今は必死に隠している。俺が落ちてしまったら、ロベールは一緒に落ちてしまうだろうから、まともに生活できなそうな気がするからだ。
「なんか最近私、ロベールに甘やかされてばかりで何も出来なくなりそうだよ」
俺がそう言うと、ロベールは微笑んだ。とびきり甘く嬉しそうな顔だ。ロベールは表情がどんどん顔に出るようになった。
「いいんだよ。レイチェル。それでいいんだ」
「だって!」
「そうでないと……、そうなるようにしているのだから」
「え?」
ロベールの囁く声は、生徒達の笑い声でかき消されて聞こえなかった。
ただ、ロベールの笑顔の先に、何か得体の知れないものを感じたけれど、幸せで満たされた俺は、微笑み返したのだ。
檻から解き放たれた獣は目覚めた。
代わりに檻に閉じ込められたのは、俺なのかもしれない。
□ロベールEnd□
そんな、自分でも恥ずかしくて死ねそうな翌日。
馬車通りから校門へ行くと、入り口にロベールが立って待っていた。
(おお……、お待ちだ……どんな顔すれば良いのか……)
無視するのもおかしいので、ぎこちない動きで近づいて行った。
「おはよう……」
(昨日はどうも、とか言うのもおかしいよな……)
「レイチェル、おはよう」
(あっ、また笑った……)
今日はごく自然に口角が上がって、微笑んでいるように見えた。まだ笑顔というには、微々たるものだが、それでも、なかなかの破壊力で朝から心臓が高鳴った。
「待っててくれたの?」
「ああ。早く会いたかった……」
(おおお、ど直球!朝から心臓に悪い)
自然に手をとられて、二人で歩き出した。明らかに空気が違うので、みんなの視線が集まってくるのがわかる。
今日の授業のことなど、他愛ない話をする間も、ロベールに見られているというだけで緊張した。
教室の前で別れても、ドキドキはなかなか止まらず、席についてからはため息でごまかした。
「うわっ!なんですか!この空気!?」
となりの席のリュカが、熱い熱いと騒ぎ出した。
「もう、だだ漏れじゃないですか!こっちまで、赤くなりますよ!」
「……ごめん」
「どうせ、あの方とお付き合いを始めたのでしょう。言っておきますが、もう、一緒のランチはしませんからね。誘わないでください」
リュカにランチを拒否されたのは、仕方ないが、俺は前半が気になった。
「ん?……付き合い?」
「え?お互い、告白して、付き合うことになったのでは?」
リュカとの間に微妙な空気が流れた。
「そこ、大事ですよ!気持ちは確認しておかないと!流されちゃだめです」
リュカの言うことは、もっともだ。
俺は気持ちを確認することをすっ飛ばして先に進んでしまった。
(だめだ。ちゃんと告白しないと……、それに、確認しないといけないこともある)
俺は昼休み、ロベールを中庭に呼び出した。
ここはいつも人が少ないので、静かに話をするにはちょうどいい場所だ。
やって来たロベールは、こちらを見つけて、また嬉しそうに微笑んだ。
今にも触れたそうな勢いで来たので、ここはきっちり話さないとと思いすぐに声を出した。
「ロベール…、あのさ、話があって…!」
俺の雰囲気を察したのか、ロベールはきちんと中庭のベンチに座って膝を向き合わせてくれた。
「この間、ここで、ミシェルに話を聞いたの。その、ロベールの事を知りたくて、近い人に話を聞きたくて」
「そうか……」
「それで、お父様がかなり、厳しい人だとも聞いた。前にも言ったと思うけど、私の事で、何かロベールに迷惑がかかったりするのは嫌なんだ………、その、私は中途半端な気持ちじゃなくて………」
「レイチェル、大丈夫だ。確かに父は厳しい人だか、私の交際について、口は出さない。これまで、色々とあって、父とも話を重ねてきた。その上で、お互い利益にならないから、もう過剰に介入しないように関係を変えたんだ」
「そうか……。色々大変だったんだな」
ロベールが側に来て、俺の頭を撫でた。
それをされると、俺の心臓はきゅんと鳴ってしまう。
「レイチェル、好きだ……ずっと俺の側にいてほしい……」
「ロベール……、私も、同じ……んっっ」
俺が言葉を紡ぐ前に、唇は塞がれロベールが全て絡めとってしまった。
俺のしてきた恋愛は余裕があって、いつも高いところから自分を眺めていた。
だが、今は全然余裕はなくて、その熱に付いていくだけで精一杯だ。
「はぁはぁ、ちょっと、待って……」
「だめだ、待てない」
ロベールの口づけは容赦がない。息継ぎする暇など与えてくれず、息苦しさに意識がまた朦朧としてきた。
力が抜けた俺に、ロベールがのし掛かってきてまた奪われた。
まるで目覚めた獣に、全て食らいつくされるみたいだ。
しかし、それを何より望んでいるのは俺なのだから喜んで受けとめて、そのまま意識を手放した。
「レイチェル……、それでいい。歩くことも、話すことも、笑うことも、全部俺のものだ……。俺なしでは、呼吸が出来なくて、生きていけなくなればいい。俺を檻から解き放ったのは、君なのだから……」
泥のように重く途切れていく意識の底で、そんな声が聞こえた気がした。
それから俺とロベールは在学中に婚約を発表し、ロベールが卒業したら結婚をする約束をしている。
「だめだ」
「いーだろ別に、街なんていつも行っているし」
「そうよ、心配性にも程があるわよ!」
休みの日に、アンジェラと観劇に行く約束をしていたら、ロベールから待ったがかかった。
「行く途中で事故にでもあったら、賊に襲われたら、劇場で変な男が話しかけてきたら、さぁどうするつもりなんだ、アンジェラ」
「イヤな男ー!性格変わっているわよ!レイチェルのせいだからね」
「ええ!?そんな事言われても」
ロベールの甘やかしは、以前の度を越えて、ますますエスカレートしていた。
もはや俺はほとんど動かなくても、ロベールが全てやってくれる勢いだ。
「だから僕が忠告したんだよー!その通りになったんだからね。ふん!それに、レイチェルも乗っかってるから、お互い様でいいんじゃないの」
ミシェルの話が終わらないうちに、俺はひょいっと持ち上げられて、ロベールに抱き上げられた。
恥ずかしながら、最近の移動方法はほとんどこれだ。
「レイチェル、二人きりになりたい」
「……ちょっ……、もう……」
はいはい、早く行けばと、アンジェラとミシェルにサロンから追い出された。
「レイチェル……、今日は家に寄って欲しい」
「い……いいけど、もしかして……また……」
「俺はいつだってレイチェルが欲しい……。今だって我慢しているんだ」
隠すことなどない。ロベールの濃厚な愛は日に日に度合いが増していき、学園ではだめだと言っているのに、求められることも多々あり、困りつつも俺は重い愛を喜んでいた。
本当は本能のままに求め合いたい気持ちを今は必死に隠している。俺が落ちてしまったら、ロベールは一緒に落ちてしまうだろうから、まともに生活できなそうな気がするからだ。
「なんか最近私、ロベールに甘やかされてばかりで何も出来なくなりそうだよ」
俺がそう言うと、ロベールは微笑んだ。とびきり甘く嬉しそうな顔だ。ロベールは表情がどんどん顔に出るようになった。
「いいんだよ。レイチェル。それでいいんだ」
「だって!」
「そうでないと……、そうなるようにしているのだから」
「え?」
ロベールの囁く声は、生徒達の笑い声でかき消されて聞こえなかった。
ただ、ロベールの笑顔の先に、何か得体の知れないものを感じたけれど、幸せで満たされた俺は、微笑み返したのだ。
檻から解き放たれた獣は目覚めた。
代わりに檻に閉じ込められたのは、俺なのかもしれない。
□ロベールEnd□
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