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第三章 闇を彷徨う心を癒したい

第58話 二人は心友

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 僕とジャイロはたまにケンカする親友、――心友?
 小学校のクラスメイトに、ジャイロの心友とか大丈夫かって、よく、心配された。
 大丈夫じゃないことなんて、何にもないんだけどな。
 それとも、みんなも知ってたのかな。
 ジャイロって、たまに誰かとケンカしないとゴリラになっちゃうんだ。
 オレ、ハーフゴリラだからよって、ニヤニヤしながら言ってた。

 ガキン!

 デゼルが中退してからの数日間、ジャイロをはじめ、何人かの男子生徒クラスメイトがすごくイライラして、授業中、先生にガンをつけてたんだ。
 そういう態度はよくないよって言ったら、やめさせたきゃ決闘に勝ってみなって、ジャイロに返されて。
 中学生になったことだし、殴り合いは卒業して決闘するぞって、ジャイロ、刃を潰した模擬刀とはいえ、訓練用の片手半剣バスタードソードを持ち出してきたんだ。
 その割に、「例の、マルスの使ってみろよ」なんて言ってきたから、たぶん、ジャイロは冷静だと思う。ゴリラにならないために、そろそろ、僕とケンカしたかったんだろうね。
 ジャイロに勧められた僕の武器は模擬刀じゃなく、魔の海に浮かぶ伝説の孤島エッダ・ハマヌの、秘密の地下神殿に潜って手に入れてきた神代の秘宝。
 こうやって説明すると、だから中二病やめろって、ジャイロに叱られるんだけど。
 誇張でもなんでもなく、デゼルが水神になって海を鎮められるから上陸できた、そうでなければ近づけない魔境に、僕たち行ってきたんだ。
 軍神マルスの祝福を受け、刀身に虹色の光をまとう、神代に鍛えられた小剣ショートソード
 柄や峰の意匠も繊細優美な、芸術品のようでもある小剣だけど、神の祝福を受けているから絶対に刃こぼれしない。
 僕、攻撃に小剣ショートソードは使わないし、ふつうの小剣で片手半剣バスタードソードなんて受けられるものじゃないから、お言葉に甘えることにした。
 小盾スモールシールドの方も、同じ地下神殿に納められていた、剣はもちろん、魔法まで弾き返してしまえる『アテナの鏡』。
 ジャイロのための神剣も先に手に入れて、地下神殿の魔物はジャイロがそれで一掃してくれたんだけど、神代の武器の威力って、本当にすごいものだった。

 何の話だっけ。
 思い出した、決闘の話だよね。

 僕たちが放課後の校舎裏で本格的な決闘を始めると、ジャイロのバスタードソードと僕のアテナの鏡がぶつかって、きらめく光の波紋が舞い拡がった。

 刃をつぶした模擬刀でも、バスタードソードは重量で敵をへし折る攻撃もできるタイプの武器だから、止めるつもりで受けたりはしない。
 かわすか、盾で受けながら後方に跳んだりして、衝撃を受け流すんだ。
 もちろん、難しいんだよ。
 たくさん、訓練したんだから。
 僕の闘い方は小剣と小盾でのガードが主体で、敵のスキをついての闇魔法でかく乱、僕のペースに持ち込めたら勝負を決めに行くもの。

 何度目だろう、ジャイロのバスタードソードに勢いよくはね飛ばされた僕が、体勢を崩すことなく着地した時だった。

「きゃ~! サイファ様~!!」

 僕とジャイロが決闘するの、見にきた女の子たちが騒ぎ始めたんだ。
 デゼルがいなくなったら、急に、女の子たちが僕のことで騒ぐようになって。
 すごく、やりにくい。
 僕はガーディアンだから、女の子の悲鳴なんて聞こえたら、危ない目に遭って助けて欲しいのかと思って、つい、反応してしまうんだ。
 ジャイロには集中力が足りねぇなって言われるけど、実戦で女の子の悲鳴が聞こえるのなんて、デゼルが危ない時に決まってるんだ。
 その声が聞こえなかったら、闇主として失格だよ。僕は死鬼じゃない。
 ガゼル様に言われたこと、忘れないようにしなくちゃね。

 ――サイファ様――

 えっ!?
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